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田園住居地域の農産物直売所はなぜ500平方メートルまで建てられるのか|建築基準法別表第二(ち)項第四号の規制を解説

田園住居地域の農産物直売所はなぜ500平方メートルまで建てられるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

田園住居地域は、住宅地と農地が同居する珍しい用途地域です。
建築基準法別表第二(ち)項は、この地域で建てられる建築物を号ごとに一つずつ列挙する方式を採っています。
その中で農産物の直売所だけが、一般の店舗よりもかなり広い上限を与えられています。
田園住居地域だからといって、どんな店舗でも同じ広さまで建てられるわけではありません

田園住居地域って、田んぼのそばに住宅が建っているような場所のイメージでした。

実は建築基準法別表第二(ち)項が、そこで建てられる建築物を号ごとに決めているんです。
まず条文を見てみましょう。

農産物の直売所も、この条文と関係があるんですか。

はい、直売所だけ面積の上限が広いんです。
順番に確認しましょう。

この記事の結論
  • 田園住居地域内では、建築基準法第48条第8項により別表第二(ち)項に掲げる建築物以外は原則建てることができません。
  • (ち)項第四号は、農産物直売所を含む店舗や飲食店を床面積の合計500平方メートル以内で認めています
  • 一般の店舗は第五号の規定により150平方メートル以内までしか建てられません。
  • 四号・五号のいずれも、三階以上の部分をその用途に供する建築物は対象から除かれています
  • 該当するか判断が難しい場合は、特定行政庁の許可を早めに相談する必要があります。

田園住居地域は農業関連だけ広さが違う図解で直売所は500平方メートルまで一般店舗は150平方メートルまで三階以上は対象外

田園住居地域では何が建てられるのか

田園住居地域の住宅と農地が並ぶ街並みのイラスト
田園住居地域は、平成30年の都市計画法改正で新設された用途地域です。
住宅地の環境を守りながら、農地とその周辺の営みを両立させることを目的としています。
建築基準法第48条第8項 田園住居地域内においては、別表第二(ち)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が農業の利便及び田園住居地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
田園住居地域は、列挙された建築物だけが建てられる原則禁止型の地域です
(ち)項一号は、第一種低層住居専用地域の(い)項第一号から第九号までをそのまま引き継ぎ、住宅・学校・診療所などを建てられる建築物としています。
ただし書きに「農業の利便」という言葉が明記されているのは、住居系の用途地域の中でも(ち)項だけの特徴です。
残る号は農地そのものや農業に関わる建築物、そして店舗・飲食店を対象にしており、次の見出し以降で確認します。
まずは田園住居地域が第一種低層住居専用地域に近い規制の枠組みを持つことを押さえておく必要があります。

田んぼの中に住宅が建っているだけの場所だと思っていました。

実は第一種低層住居専用地域に近い規制が敷かれているんです。
まず建てられる店舗の中身を見てみましょう。

農産物直売所はなぜ500平方メートルまで建てられるのか

農産物直売所の建物に許可マークと大きな工場に禁止マークを並べたイラスト
(ち)項第四号は、農産物を扱う店舗や飲食店を対象にした号です。
一般の店舗とは違う、独自の面積の上限が設定されています。
建築基準法別表第二(ち)項第四号 地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗その他の農業の利便を増進するために必要な店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるものでその用途に供する部分の床面積の合計が五百平方メートル以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く。)
この号は、農産物直売所を含む一部の店舗を500平方メートルという上限まで認めています
対象になるのは条文の「政令で定めるもの」に当たる建築物だけで、中身は建築基準法施行令第百三十条の九の四が定めています。
その一号に挙げられているのが、田園住居地域及びその周辺の地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗、つまり直売所です。
床面積の合計が500平方メートル以内であれば、三階以上の部分に使わない限りこの号の対象として建てられます。
政令が対象とするのは直売所だけではなく、ほかにも該当する建物があるので次の見出しで確認します。

うちの近くにある大きめの直売所も、この号のおかげで建てられているんですね。

はい、500平方メートルという上限のおかげで大きめの直売所も認められます。
ほかにも対象になる建物があります。

農家レストランやパン屋も同じ枠に含まれるのか

農家レストランとパン屋の建物を並べたイラスト
政令が定める対象は、直売所だけではありません。
農産物を材料にした飲食店やパン屋なども、この号の枠に含まれています。
建築基準法施行令第百三十条の九の四 法別表第二(ち)項第四号の規定により政令で定める建築物は、次に掲げるものとする。一 田園住居地域及びその周辺の地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗 二 前号の農産物を材料とする料理の提供を主たる目的とする飲食店 三 自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(第一号の農産物を原材料とする食品の製造又は加工を主たる目的とするものに限る。)で作業場の床面積の合計が五十平方メートル以内のもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)
政令は直売所に加えて、農産物を使った飲食店とパン屋等の三種類を対象にしています
二号の飲食店は一号の農産物を材料とする料理の提供を主たる目的とするものに限られ、農産物と無関係の飲食店は対象になりません。
三号のパン屋や豆腐屋などは、作業場の床面積の合計が50平方メートル以内かつ原動機の出力が0.75キロワット以下という条件が付いています。
直売所本体は500平方メートルまで認められる一方で、パン屋などの製造部分には別の上限が重ねて課されている点に注意が必要です。
建物全体の用途を確認するときは、直売所・飲食店・製造の各部分を分けて数える必要があります。

直売所の隣にパン屋があるのも、この条文のおかげだったんですね。

はい、農産物を材料にした食品であることが条件です。
次は一般の店舗の上限を見てみましょう。

一般の店舗はなぜ150平方メートルまでしか建てられないのか

一般の小さな店舗の建物のイラスト
(ち)項第五号は、農産物と関係のない一般の店舗を対象にした号です。
四号と比べると、上限の面積が大きく異なります。
建築基準法別表第二(ち)項第五号 前号に掲げるもののほか、店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるものでその用途に供する部分の床面積の合計が百五十平方メートル以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く。)
第五号は、農産物と直接関係のない一般の店舗を150平方メートルまでという上限で認めています
対象となる建築物は建築基準法施行令第百三十条の五の二が定めており、日用品店・理髪店・美容院・学習塾などが列挙されています。
実はこの政令は第二種低層住居専用地域(ろ)項第二号と共通で、田園住居地域の一般店舗は第二種低層住居専用地域とまったく同じ範囲・同じ面積で扱われています。
四号の農産物関連の店舗だけが500平方メートルまで広げられており、田園住居地域の店舗規制は農業を軸に上乗せされた形になっています。
自分の店舗がどちらの号に当たるかは、扱う商品が地域の農産物かどうかで見分ける必要があります。

同じ店舗なのに、農産物を扱うかどうかで上限がこんなに違うんですね。

はい、農産物を扱うかどうかで号そのものが分かれます。
最後に共通する制限を確認しましょう。

三階建て以上の店舗や増改築のときは何を確認すればよいか

役所窓口の図面と三階建ての建物模型のイラスト
四号・五号のどちらにも、面積とは別のもう一つの制限が付いています。
建物を計画する段階でここを見落とすと、面積の基準を満たしていても建てられません。
建築基準法別表第二(ち)項第四号・第五号(括弧書き) (三階以上の部分をその用途に供するものを除く。
四号・五号のどちらも、三階以上の部分をその用途に供する建築物は対象から除かれています
床面積の合計が上限以内であっても、店舗や飲食店の部分が三階以上に及ぶ建物はこの号の対象になりません。
増築で階数が増えたり、既存の建物の三階を店舗に転用したりする場合は、あらためて確認する必要があります。
面積・階数のいずれかで基準を外れる場合は、特定行政庁が農業の利便及び住居の環境を害するおそれがないと認めて許可する道が残されています。
着工前に床面積の合計と階数の両方を数え直し、迷う場合は早めに相談することが欠かせません。

面積だけじゃなくて、階数も見ないといけないんですね。

はい、面積と階数の両方を確認する必要があります。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q田園住居地域では住宅しか建てられませんか?
Aいいえ。建築基準法別表第二(ち)項一号は第一種低層住居専用地域と同じ住宅・学校・診療所等を認めており、加えて四号・五号の店舗も条件付きで建てられます。
Q農産物直売所であれば面積に上限はありませんか?
Aいいえ。(ち)項第四号は床面積の合計500平方メートル以内という上限を設けており、これを超える場合は原則建てられません。
Q一般の雑貨店を田園住居地域に建てることはできますか?
Aできます。(ち)項第五号の規定により床面積の合計150平方メートル以内であれば、日用品店などの一般の店舗も建てられます。
Q直売所を三階建てにすることはできますか?
A三階以上の部分を直売所として使うことはできません。四号・五号とも三階以上の部分をその用途に供するものは対象外とされています。

まとめ

田園住居地域内では、建築基準法第48条第8項により別表第二(ち)項に掲げる建築物以外は原則建てることができません。
(ち)項一号は第一種低層住居専用地域の(い)項一号から九号までをそのまま引き継ぎ、住宅・学校・診療所等を認めています
(ち)項第四号は、農産物直売所などを床面積の合計500平方メートル以内で認めています。
対象になる建物は施行令第百三十条の九の四が定め、直売所・農産物を使った飲食店・パン屋等の三種類です。
一般の店舗は第五号の規定により床面積の合計150平方メートル以内までしか建てられません
第五号の政令は第二種低層住居専用地域(ろ)項第二号と共通で、同じ範囲の店舗を対象にしています。
四号・五号とも三階以上の部分をその用途に供する建築物は対象外で、判断が難しい場合は特定行政庁の許可を早めに相談する必要があります

面積と階数の両方を確認しながら進めます!

特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第8項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法別表第二(ち)項第四号・第五号、(い)項第一号から第九号まで(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十条の九の四、第百三十条の五の二(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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