125頭の牛を飼う牛舎、高さ21メートルのツリーハウス、海底トンネルの展望室。
建物の姿はまったく違いますが、すべて令別表第1の何項に該当するかという同じ問いを突きつけられています。
思わず意外だと感じる答えも少なくありません。
質疑応答が示したのは建物の見た目や規模ではなく機能と実態で項が決まるという考え方です。
高さ21メートルのツリーハウスって防火対象物になるんですか。
なります。
項番号も意外です。
牛舎とか駐車設備も対象になるんですか。
それも含めて5つの事例を順に見ていきます。
- 125頭を飼育する牛舎は(15)項に該当し令32条で消火器のみで足ります
- 虚弱児を宿泊させる教育施設は学校棟が(7)項、宿舎棟が(5)項ロに分かれます
- 屋外の3段式駐車設備は(13)項イに掲げる防火対象物に該当します
- 高さ21メートルのツリーハウスは(15)項に該当し階数は1とみなされます
- 展望室のある沈埋トンネルの立坑は道路の用に供される部分として扱われます
▼
目次
125頭の和牛を飼育する牛舎は何項に該当するか

田園に囲まれた山間いの牛舎でも、例外にはならないのでしょうか。
特殊な用途だからといって規制の対象外にはならず、(15)項に該当します。ただし周囲の環境や延焼のリスクを考慮した上で、令第32条を適用して消火器の設置のみで足りるという現実的な運用が示されました。
形式的には規制対象でも、実態に応じて設備の負担が調整されているということです。
畜舎や作業所のような特殊な用途の建物を管理しているなら、まず該当する項を確認し、そのうえで周囲の環境から令32条の緩和が使えないか検討してください。
対象にはなるけど、消火器だけでいいんですね。
令32条の緩和が使えないか検討してください。
虚弱児を宿泊させて教育する施設は何項になるか

教育する棟と宿泊させる棟がある場合、それぞれ何項として扱われるのでしょうか。
質問では学校棟を(6)項ハと想定していましたが、回答は(7)項という学校そのものの項を示しました。一方、宿舎棟は質問どおり(5)項ロで認められています。
同じ施設の中でも、教育機能を持つ棟と宿泊機能を持つ棟とでは、別々の項として規制されるということです。
教育と宿泊の両方の機能を持つ施設を運営しているなら、棟ごとに機能を分けて、それぞれの項を確認してください。
学校棟は(6)項ハだと思っていたので意外でした。
棟ごとに機能を分けて
それぞれの項を確認してください。
屋外の3段式駐車設備は防火対象物になるか

建築行政庁は建築物にも工作物にも当たらないという見解を示していますが、消防法上はどうなるのでしょうか。
建築行政庁が建築物にも工作物にも当たらないとしていても、消防法上は(13)項イに掲げる防火対象物として扱われます。屋根や壁の有無にかかわらず、車両を収容する機能があれば規制の対象になるということです。
建築基準法上の扱いと消防法上の扱いが、必ずしも一致しないという点に注意が必要です。
屋外に駐車設備を設置する計画があるなら、建築確認の要否とは別に、消防法上の防火対象物に該当するかを確認してください。
建築物じゃないのに防火対象物になるんですね。
建築確認とは別に
消防法上の該当性を確認してください。
高さ21メートルのツリーハウスは何項に該当するか

建物ではなく工作物として建てられたこの施設は、消防法上どう扱われるのでしょうか。
人工の木でできたツリーハウスは(15)項に該当し、階段や小屋を含む立体的な構造物であっても、階数は1とみなすという扱いになりました。床面積も建物全体ではなく、階段と通路部分だけを対象とします。
一般的な建築物の階数・床面積の考え方とは異なる、工作物ならではの算定方法です。
展示施設として特殊な工作物を計画しているなら、通常の建物とは異なる階数・床面積の考え方が適用される可能性を踏まえて確認してください。
見た目は何階もあるのに階数は1なんですね。
工作物ならではの考え方を踏まえて確認してください。
展望室のある沈埋トンネルの立坑はどう扱われるか

トンネル本体と展望室のある立坑は、まとめて一つの防火対象物として扱われるのでしょうか。
立坑に展望室という独自の機能があっても、トンネル部分と一体をなす構造と認められれば、立体道路制度上の「道路の用に供される部分」として規制されます。展望室だけを切り離して別の防火対象物とする扱いにはなりません。
トンネルや高架道路に付随する展望施設・管理施設を計画しているなら、道路本体との構造的な一体性がどう判断されるかを確認してください。
展望室だけ別扱いになるのかと思っていました。
道路本体との
構造的な一体性を確認してください。
よくある質問
まとめ
建物の形が違っても、見るところは同じなんですね。
うちの施設も確認してみます。
見た目ではなく
機能と実態から確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 牛舎等に対する消防用設備の設置について(昭和54年11月27日 消防予第229号 消防庁予防救急課長から静岡県消防防災課長あて回答)
- 防火対象物の取扱いについて(昭和55年10月28日 消防予第227号 消防庁予防救急課長から千葉県総務部長あて回答)
- 屋外に設けられる3段式駐車設備について(昭和58年3月15日 消防予第40号 消防庁予防救急課長から秋田県生活環境部長あて回答)
- 展示施設に供される工作物(物見塔)の規制について(平成3年7月18日 消防予第148号 予防課長から千葉県総務部長あて)
- 立体道路に係る「道路の用に供される部分」の判断等について(平成4年5月22日 消防予第108号 予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 消防法施行令別表第1
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





