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圧縮天然ガススタンドの防火設備はなぜポンプのそばに起動装置を置くのか|火災時に迷わず操作できる位置の基準を解説

圧縮天然ガススタンドの防火設備であるポンプ機器が給油取扱所の建物脇に設置されている様子

ガソリンスタンドに圧縮天然ガスや液化石油ガスの充塡設備を併設する――そんな給油取扱所が増えています。
ただ、CNGやLPGを扱う以上、ふつうのガソリンスタンドには無い専用の消火・散水設備が求められることは、意外と知られていません。
消防庁はこの設備を「防火設備」と呼び、細かな設置場所まで通知で示しています。
なかでも見落とされがちなのが、そのポンプ機器の「起動装置」をどこに置くかというルールです。

CNGスタンドって、ふつうのガソリンスタンドと同じ消火設備でいいんですよね。

いいえ、「防火設備」という専用の散水設備が別に必要になります。

その設備のポンプを動かすスイッチは、どこに付けても構わないんですか。

いいえ、起動装置の位置にもルールがあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 圧縮天然ガススタンドや液化石油ガススタンドを併設する給油取扱所には、専用の「防火設備」(散水装置等・防火用水供給設備)が求められる
  • 根拠は「圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について」(平成10年3月11日 消防危第22号)
  • 防火設備の位置は、圧縮機と同じく給油空地等以外の場所
  • 防火設備のポンプ機器の起動装置はポンプ付近かつ火災など緊急時に速やかに操作できる箇所に設ける
  • 危険物の規制に関する規則の条文自体は「速やかに操作できる箇所」としか定めておらず、「ポンプ付近」は通知が加えた運用上の解釈

防火設備の起動装置はポンプのそばかつ緊急時に速やかに操作できる場所に置くことを示す図解

圧縮天然ガススタンドの防火設備はなぜ通知で示されたのか

圧縮機・貯蔵設備・ディスペンサーが並ぶ圧縮天然ガススタンドの全景
給油取扱所に圧縮天然ガスや液化石油ガスの充塡設備を併設できるようになったのは、危険物の規制に関する規則の改正がきっかけです。
ただ、条文だけでは現場でどう運用すればよいか分かりづらい部分が多く残りました。
「圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について」(平成10年3月11日 消防危第22号 消防庁危険物保安室長、改正 平成29年1月消防危第31号) 危険物の規制に関する政令第17条第3項第4号並びに危険物の規制に関する規則第27条の3及び第27条の4に基づく圧縮天然ガス又は液化石油ガス(以下「圧縮天然ガス等」という。)を内燃機関の燃料として用いる自動車等に当該ガスを充填するための設備を設ける給油取扱所(以下「圧縮天然ガス等充填設備設置給油取扱所」という。)の技術上の基準については、下記のとおり運用上の指針を定めることとしたので、貴職におかれましては、下記事項に十分留意の上、その運用に遺憾のないよう配慮されるとともに(略)。
この通知は、条文だけでは決まらない設置場所や運用の細目を、消防庁が具体的に示したものです。
圧縮天然ガススタンドとは、天然ガスを圧縮機・貯蔵設備・ディスペンサー・ガス配管を通じて自動車等に充塡する一連の設備のことです。
液化石油ガススタンドも、受入設備や充塡用ポンプ機器を加えた同じような構成です。
ふつうのガソリンスタンドには無いこれらの設備が加わる分、火災リスクに応じた専用の対策が必要になりました。

条文があるのに、なぜ別に通知まで出す必要があるんですか。

「速やかに操作できる箇所」だけでは現場で判断が割れるので、具体例を示したんです。

どの給油取扱所のどの設備が対象になるのか

貯蔵設備の近くに設けられた散水装置と防火用水供給設備
対象になるのは、圧縮天然ガススタンドや液化石油ガススタンドを設けた給油取扱所そのものではなく、そこに付く「防火設備」です。
防火設備という言葉が指す範囲は、条文で決まっています。
(同通知) 防火設備(一般高圧ガス保安規則第6条第1項第39号の防消火設備又は液化石油ガス保安規則第6条第1項第31号の防消火設備のうち防火設備をいう。(略)以下同じ。)とは、火災の予防及び火災による類焼の防止のための設備であって、次のものをいう。圧縮天然ガススタンドを設けた施設にあっては、当該圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備に設けられ、又は当該圧縮天然ガススタンドのディスペンサー若しくはその近傍に設けられる散水装置等及び防火用水供給設備。
防火設備の正体は、貯蔵設備やディスペンサーの近くに設ける散水装置等と防火用水供給設備です。
液化石油ガススタンドの場合は、これに受入設備の近傍も加わります。
つまり、ガスが漏れたり圧縮機で異常が起きたりしたときに、周囲へ延焼させないための水回りの設備一式ということです。
消火器や屋内消火栓とは別に、この専用設備を設けているかどうかがまず確認すべき対象です。

屋内消火栓があれば、この防火設備は要らないんじゃないですか。

いいえ、ガス設備専用の別枠として求められる設備です。

防火設備とポンプの起動装置はどこに置くのか

給油空地の外側に設置された防火設備とそのポンプ機器
防火設備そのものの位置と、それを動かすポンプ機器の起動装置の位置は、それぞれ別に決まっています。
ここが今回の通知の中心部分です。
(同通知) 防火設備関係 ア 防火設備の位置は、給油空地等以外の場所とすること。 イ 防火設備のポンプ機器の起動装置は、ポンプ付近に設けるほか、火災その他の災害に際し速やかに操作することができる箇所に設けること。
危険物の規制に関する規則第27条の3第6項第6号 防火設備の位置、構造又は設備の基準は、当該設備に係る法令の規定によるほか、そのポンプ機器にあっては、次のとおりとすること。 イ 位置は、圧縮機の位置の例によること。 ロ 起動装置は、火災その他の災害に際し、速やかに操作することができる箇所に設けること。
防火設備の位置は、圧縮機と同じく給油空地等以外の場所です。
そのうえで、ポンプ機器の起動装置はポンプのすぐそばに設け、なおかつ火災など緊急時に迷わず操作できる箇所に置くことが求められます。
給油空地とは、自動車等が給油のために停まる場所のことで、そこに防火設備やポンプを置いてしまうと、いざというときに車が邪魔になって近づけません。
起動装置をポンプから離した場所にまとめてしまうと、今度は操作する人がどこにあるか探す時間がかかってしまいます。

起動装置は事務所の中にまとめておいたほうが管理しやすい気がします。

いいえ、「ポンプ付近」という条件がありますので、離しすぎは基準から外れます。

実務で見落としやすいのはどこか

ポンプのそばに設けた起動装置と離れた壁に集約してしまった誤った起動装置の対比
見落としやすいのは、条文と通知とで書きぶりが違う点です。
条文だけを読んで判断すると、実際の指導内容とずれてしまうことがあります。
危険物の規制に関する規則第27条の3第6項第6号ロ 起動装置は、火災その他の災害に際し、速やかに操作することができる箇所に設けること。
条文の文言だけを見ると「速やかに操作できる箇所」としか書かれていません。
「ポンプ付近に設ける」という具体的な位置は、通知が示す運用上の解釈として加わっています。
既存のガソリンスタンドにCNGやLPGの設備を後から増設する改修工事では、起動装置だけを既存の防火管理の操作盤に相乗りさせてしまい、ポンプから離れた場所に置いてしまう例が起こりがちです。
条文の字面だけで「速やかに操作できればどこでもよい」と判断せず、通知が示す「ポンプ付近」という条件まで踏まえて設計する必要があります。

条文だけ見て「速やかに操作できればOK」と判断しそうでした。

そこが通知を読んでいるかどうかの差になりますね。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを手に防火設備の起動装置の位置を確認する点検員
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所を管理している、あるいはこれから設置を検討している場合は、次の点を確認してください。
どれも設計や現地確認の前に押さえておきたい項目です。
(同通知) 貴職におかれましては、下記事項に十分留意の上、その運用に遺憾のないよう配慮されるとともに、各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村に対してこの旨を周知されますようお願いします
まず、防火設備そのものが給油空地等の外側に設置されているかを現地で確認します。
次に、そのポンプ機器の起動装置がポンプ付近にあるかを、実際にポンプの横に立って目で確かめます。
起動装置の前に物が置かれていないか、火災など緊急時に走って迷わずたどり着けるかも、あわせて見ておきたいところです。
既存の給油取扱所にCNGやLPGの設備を増設する計画がある場合は、設計段階でこの位置基準を関係者と共有しておきます。

今度の点検で、起動装置の位置も見てみます。

ポンプ付近かどうかを、ぜひ現地で確かめてみてください。

よくある質問

Q防火設備はどこに設置すればよいですか?
A圧縮機と同じく、給油空地等以外の場所に設置します。
Q防火設備のポンプ機器の起動装置はどこに設ければよいですか?
Aポンプ付近に設けるほか、火災その他の災害時に速やかに操作できる箇所に設けます。
Q「ポンプ付近」というルールは危険物の規制に関する規則に書かれていますか?
A規則第27条の3第6項第6号は「速やかに操作することができる箇所」としか定めておらず、「ポンプ付近」は通知が示す運用上の解釈です。
Q既存のガソリンスタンドにCNGやLPGの設備を後から追加する場合も対象になりますか?
Aはい。新設・増設を問わず、圧縮天然ガススタンド等を設ける給油取扱所には防火設備の基準が適用されます。

まとめ

圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所には、通常のガソリンスタンドには無い専用の「防火設備」が必要になる。
根拠は「圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について」(平成10年3月11日 消防危第22号、改正 平成29年1月消防危第31号)
防火設備は散水装置等及び防火用水供給設備で、貯蔵設備やディスペンサーの近くに設ける。
防火設備の位置は、圧縮機と同じく給油空地等以外の場所とする。
ポンプ機器の起動装置は、ポンプ付近かつ火災その他の災害時に速やかに操作できる箇所に設ける。
危険物の規制に関する規則第27条の3第6項第6号の条文自体は「速やかに操作できる箇所」としか書いておらず、「ポンプ付近」は通知が加えた運用上の解釈である。
既存の給油取扱所にCNG・LPG設備を増設するときは、起動装置の位置を現地で実際に確認する

ポンプ付近の起動装置、次の点検で必ず確認します。

それがいちばんの近道です。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について」(平成10年3月11日 消防危第22号 消防庁危険物保安室長、改正 平成29年1月消防危第31号)
  • 根拠条文 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第27条の3第6項第1号・第6号
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第17条第3項第4号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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