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大規模倉庫はなぜ維持保全計画を作らなければならないのか|3,000平方メートル超から義務になる仕組みと立入検査を解説

夜の物流倉庫の外観を背景にした大規模倉庫の維持保全計画に関する記事のアイキャッチ画像

大規模な倉庫を管理していると、防火シャッターがきちんと閉まるかどうかは当然の関心事だと思います。
平成29年2月、埼玉県三芳町の物流倉庫で起きた火災では、その防火シャッターが正常に閉鎖しませんでした。
感知器のショートや、降下位置に置かれていたコンベヤ・荷物が原因でした。
国はこの火災を受け、建築基準法を改正して大規模倉庫に維持保全計画の作成を義務づけました。

うちの倉庫、防火シャッターの点検はちゃんとやってるつもりです。

実は消防の点検とは別に、建築基準法上の義務もあるんですよ。

消防と建築で、別々に決まりがあるということですか。

はい。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成29年2月、埼玉県三芳町の倉庫火災で防火シャッターが正常に閉鎖しなかったことを受け、建築基準法が改正されました
  • 延べ面積が3,000平方メートルを超える倉庫等は、維持保全計画の作成が義務になりました。
  • 延べ面積50,000平方メートルを超える倉庫は、特定行政庁による立入検査や報告徴収の重点対象にもなっています。
  • 消防法令の点検とは別に建築基準法上のこの義務があることを、知らない管理者も少なくありません。
  • 維持保全計画には、防火シャッター降下部の障害物対策など民間団体のガイドラインを踏まえることが求められます。

大規模倉庫に維持保全計画が義務化される流れを示す図解

大規模倉庫はなぜ維持保全計画を作らなければならないのか

倉庫の防火シャッターが半分閉じたまま止まり消防車が駆けつける様子を示す図
平成29年2月、埼玉県三芳町の大規模な物流倉庫で火災が発生しました。
その火災の広がり方が、建築基準法の改正につながりました。
平成29年2月に発生した埼玉県三芳町倉庫火災において火災が長期化した原因の一つとして、倉庫の内部に設けられていた複数の防火シャッターが、火災信号を発する感知器のショートや、降下位置に設けられていたコンベヤや荷物の放置などによって、適切に閉鎖しなかったことが原因の一つとされた。(建築基準法の一部を改正する法律等の施行について(情報提供)別紙4「大規模倉庫を対象とした適切な維持保全の促進」 令和元年6月24日付け国住指第654号・国住街第41号)
防火シャッターは、火災を一つの区画に閉じ込めて燃え広がらせないための設備です。
その要となる設備が正しく降りなかったことで、火災は長時間にわたって延焼を続けました。
国はこの火災を受けて、感知器の配線基準の改正とあわせて、建築物を常に適法な状態に保つ「維持保全」の制度そのものにもメスを入れました。
感知器や配線そのものの技術基準については、当サイトの別記事で詳しく解説しています。

コンベヤの荷物が挟まって閉まらない、というのは怖いですね。

だから計画そのものを義務化する方向に進んだんです。

どんな倉庫がこの制度の対象になるのか

倉庫の床面積をメジャーで測るイメージ図
対象になるかどうかは、まず延べ面積で決まります。
基準になる面積は、実は1つではありません。
法第8条第2項では、従来、定期報告を行わなければならない建築物を対象として、その所有者等に対し、必要に応じて、維持保全に関する準則又は計画(以下「維持保全計画」という。)の作成を行うことを求めていたが、改正法により、維持保全計画の作成対象として、延べ面積が3,000平方メートルを超える倉庫等を位置付けることとした。(前掲通知 第8「適切な維持保全(法第8条及び第12条関係)」)
法第8条第2項第1号の政令で定める特殊建築物は、次に掲げるものとする。(略)二 法別表第一(い)欄(五)項又は(六)項に掲げる用途に供する特殊建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が三千平方メートルを超えるもの(建築基準法施行令第13条の3第1項第2号)
つまり、倉庫(別表(五)項)や自動車車庫等(別表(六)項)で、用途に使う部分の床面積の合計が3,000平方メートルを超えていれば、新築か既存かを問わず維持保全計画の作成が必要です。
もう一つの数字、延べ面積50,000平方メートル超は、法律で決まった作成義務の基準ではなく、特定行政庁が優先して立入検査や報告徴収を行う運用上の目安です。
自分の倉庫が3,000平方メートルを超えているかどうかは、登記簿や確認済証で確認できます。

3,000平方メートルと50,000平方メートル、意味が違うんですね。

はい。
義務の基準と運用の重点は分けて考えてください。

維持保全計画は具体的に何を求めているのか

維持保全計画書と防火シャッター降下部のコンベヤを示す図
計画を作れば終わり、というものではありません。
中身がきちんと事故の原因に対応しているかが問われます。
維持保全計画が作成又は変更された場合にあっては、その内容が、一般社団法人日本産業機械工業会において作成した「大規模倉庫における防火シャッター降下部のコンベヤに関するガイドライン」を適切に踏まえた内容になっていることを点検すること。(略)なお、維持保全計画の作成にあたっては、公益社団法人ロングライフビル推進協会において「大規模倉庫に関する維持保全計画参考様式」が作成されているので、適宜紹介されたい。(前掲通知 別紙4「大規模倉庫を対象とした適切な維持保全の促進」)
求められているのは、防火シャッターの降下部にコンベヤや荷物を置かない運用を、計画の中に具体的に書き込むことです。
自分たちでゼロから様式を作る必要はなく、業界団体のガイドラインや参考様式を土台にできます。
計画を作っていない事業者に対しては、特定行政庁が火災リスクを説明したうえで作成を要請する運用になっています。
つまり「まだ作っていない」だけでは終わらせてもらえない仕組みです。

参考にできる様式があるなら、ちょっと安心しました。

ただし中身の点検までされる点は忘れないでください。

実務で見落としやすいのはどこか

消防の書類と建築の書類が別々のフォルダーになっている様子を示す図
見落としの多くは、担当が分かれていることから生まれます。
消防と建築、それぞれの立入検査は別の制度です。
各特定行政庁においては、次に掲げる事項に配慮し、適切に立入検査等を行うこと。延べ面積50,000平方メートルを超える大規模倉庫の所有者・管理者に対し、令和元年末までに、維持保全計画の作成を行ったかどうかの報告を求めること。その上で、定期的(3年〜5年を目処に)、立入検査や報告徴収などを実施し、維持保全計画が適切に運用されていることを確かめること。立入検査等の実施にあたっては、消防本部と合同で実施するなど連携を図ること。(前掲通知 別紙4「大規模倉庫を対象とした適切な維持保全の促進」)
一番の見落としは、消防用設備等の点検を行っていれば十分だと思い込むことです。
維持保全計画は建築基準法第8条に基づく別の制度で、担当窓口も特定行政庁の建築部局になります。
立入検査は消防本部と合同で行われることもあるため、消防の点検日に建築側の質問も一緒に受けることがあります。
新築時だけでなく、既に稼働している倉庫も面積要件に当てはまれば対象になる点も見落としやすいところです。

消防の点検を受けていれば十分だと思っていました。

窓口が違うので、両方を意識してくださいね。

明日から何を確認すればよいか

チェックリストと防火シャッター下の障害物をどける様子を示す図
まず確かめてほしいのは、自分の倉庫の延べ面積です。
そこから先は、順番に確認していけば難しくありません。
維持保全計画を作成していない事業者に対しては、適切な維持保全がなされなかった場合の火災リスクについて丁寧に説明し、その作成に向けた協力を要請すること。(略)定期報告の対象として特定行政庁が指定した倉庫については、定期報告が適切に行われていない場合、特定行政庁は所有者等に対し督促を行い、報告の履行の徹底を図るとともに、法令に基づき適切な対応を図られたい。(前掲通知 別紙4「大規模倉庫を対象とした適切な維持保全の促進」)
最初に、自分の倉庫の用途に使う部分の床面積が3,000平方メートルを超えているかを確認しましょう。
超えていれば、維持保全計画がすでにあるか、無ければいつまでに作るかを社内で決めておきます。
計画の中身は、防火シャッターの降下部にコンベヤや荷物を置かない運用になっているかを重点的に見直してください。
判断に迷ったときは、専門家に一度現場を見てもらうのが近道です。

今日帰ったら、まず自分の倉庫の面積を確認してみます。

はい。
その一つの確認が大きな違いになります。

よくある質問

Q3,000平方メートル以下の倉庫は何もしなくてよいですか?
A維持保全計画の作成義務は3,000平方メートル超が基準ですが、それ以下の建築物にも建築基準法第8条第1項の常時適法状態を保つ努力義務は及びます。
Q維持保全計画は誰に届け出るのですか?
A計画そのものの届出義務はありませんが、特定行政庁の立入検査や報告徴収の際に作成状況や内容を確認されます。
Q自動車車庫だけの建物も対象になりますか?
Aはい。建築基準法別表第一(六)項の自動車車庫・自動車修理工場も、倉庫と同じ床面積基準で対象になります。
Q消防法上の防火対象物点検とは別物ですか?
Aはい。維持保全計画は建築基準法第8条に基づく制度で、消防法令の点検や消防計画とは根拠法令も窓口も異なります。

まとめ

平成29年2月の埼玉県三芳町倉庫火災を受け、建築基準法第8条が改正されました。
火災が長期化した原因は防火シャッターの不作動で、感知器のショートと荷物の放置が要因でした。
対象は延べ面積3,000平方メートル超の倉庫・自動車車庫等(別表(五)項・(六)項)です。
50,000平方メートル超は、特定行政庁が優先して立入検査や報告徴収を行う運用上の目安です。
計画には業界団体のガイドラインや参考様式を踏まえた降下部対策を書き込みます。
消防の点検を受けていても、建築基準法上のこの義務は別に存在します。
判断に迷うときは、専門家に現場を確認してもらうのが近道です。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「建築基準法の一部を改正する法律等の施行について(技術的助言)」(令和元年6月24日付け国住指第653号・国住街第40号 国土交通省住宅局長)
  • 「建築基準法の一部を改正する法律等の施行について(情報提供)」(令和元年6月24日付け国住指第654号・国住街第41号 国土交通省住宅局建築指導課長・市街地建築課長)
  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第8条第2項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第13条の3

※本記事は公表されている法令および国の通知に基づく一般的な解説です。運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または所轄消防署にご確認ください。

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