「ドレンチャーって結局、火事のときにちゃんと水が出るものなんでしょうか」——防火管理者から㈱防災屋によく寄せられる質問です。
ドレンチャー等も煙・熱感知器による自動的な作動に加え、停電時に備える予備電源や人の手で起動させる手動作動装置まで備え、火災時に確実に水幕を形成する仕組みになっています。
防火設備定期検査では、連動機構用予備電源から自動作動装置、手動作動装置、そして複数のドレンチャー等が一斉に作動する総合的な作動の状況まで、6つの検査項目が定められています。
本記事では、ドレンチャー等の連動機構を支えるこの6項目を定期検査で実際にどう確認するのか、判定基準とあわせて解説します。
ドレンチャーって結局、火事のときにちゃんと水が出るものなんでしょうか。
そのあたりがよく分かっていません。
大きな特徴の一つは、人の手でも起動できる手動作動装置が備わっている点です。
連動機構用予備電源や自動作動装置とあわせて、防火設備定期検査の検査項目にも入っています。
停電のときにドレンチャーがどうなるのか、実は気になっていました。
自動で作動しなくなったりしないんでしょうか。
連動制御器には予備電源が内蔵されているので、常用電源が止まっても自動的に切り替わります。
その切替が正常に働くかどうかも、検査で実際に確認しています。
- 連動機構用予備電源は、劣化・損傷の有無と容量の両方を別項目として確認します。
- 自動作動装置は手動作動装置・感知器・開閉弁等の端末機器と制御盤相互の信号を中継する装置で、常時人がいる場所ではないため設置状況を重点的に確認します。
- 手動作動装置は床から80cm〜150cmを目安に、速やかに操作できる位置に設置します。
- ドレンチャー等の作動の状況は、誤って放水して水損させないよう、事前に弁類の開閉状態や他設備への移報・連動を確認したうえで検査します。
- 防火区画の形成の状況は、竪穴区画に設置された複数のドレンチャー等が一斉に作動するかを確認します。
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目次
連動機構用予備電源はなぜ劣化と容量の両方を確認するのか

連動制御器には、停電時にも感知器や自動作動装置を動かし続けるための予備電源が内蔵されています。
劣化及び損傷の状況と容量の状況、この2つが別の検査項目として定められています。
予備電源は連動機構の最後の砦です。
劣化及び損傷の状況では、制御盤内の予備電源に変形・変色・発熱等がないか、本体やカバーに損傷がないか、配線に損傷や芯線の露出等がないかを目視等で確認します。
容量の状況では、予備電源試験スイッチ等を操作して予備電源に切り替え、制御盤の機能に支障がないかを目視等で確認します。
経年劣化などで予備電源を交換した際に、製品表示銘板に記載された仕様と一致していない例が散見されるため、その場合は特記事項として所有者等に報告します。
容量表示が指定値未満だと容量不足、指定値より大きいと充電できないおそれがあるため、いずれも要注意です。
予備電源を交換したとき、指定値と違うものを付けてしまうことがあるんですね。
少し意外でした。
はい、指定値より大きくても小さくても不具合の原因になります。
交換履歴がある制御盤は、特に注意して確認しています。
自動作動装置はなぜ信号の中継役を担うのか

自動作動装置は、感知器や開閉弁と制御盤をつなぐ、いわば連動機構の中継地点です。
装置内には中継器や通話装置が内蔵されることもあります。
自動作動装置は信号の交差点です。
手動作動装置、火災感知装置(感知器)、開閉弁等の端末機器と制御盤相互の信号を中継し、電源等の制御をつかさどる装置で、常時人がいる場所で操作されるものではないため、検査時には設置状況の確認が重要になります。
検査では周囲に使用上及び点検上の障害となるものがないか、外形に変形・損傷がないか、表示や機能、表示灯の点灯が正常かを目視等で確認します。
制御盤との相互間通話が明瞭に行えるかという通話装置の確認もあわせて行います。
結線接続では、断線・端子の緩み・脱落・損傷等がないかを確認します。
自動作動装置というのが感知器そのものではないというのは、今日初めて知りました。
制御盤の中にあるものなんですね。
おっしゃるとおり、感知器や開閉弁からの信号を取りまとめる中継役です。
制御盤を開ける機会があれば、あわせてご案内します。
手動作動装置はなぜ開閉弁の手動起動弁と役割が違うのか

手動作動装置は、水幕形成部の付近に設置され、人が手動で本設備を起動させるための操作部です。
開閉弁側にある手動起動弁とは、設置の目的も操作の場面も異なります。
手動作動装置は最後の一押しを担う装置です。
火災時には、場合により感知器からの信号よりも速やかに水幕を形成させなければならず、手動作動装置を操作しないと延焼や避難への支障につながるため、取付け及び劣化の状況を確認します。
設置場所は人の手で操作できる高さとして床から80cm〜150cmを目安とし、いたずら防止のためこれより高い所に設置されている場合は、直接目視できない又は近づいて操作できない状態になっていないかを確認します。
電気的な操作で開閉弁を起動する設備では、万一電気的な操作ができない場合に開閉弁の手動起動弁を操作する運用もあり、この手動起動弁自体は開閉弁の検査項目として別に確認します。
用途によりいたずら等で操作されないよう、操作部に施錠等の措置があるかもあわせて確認します。
手動作動装置と開閉弁の手動起動弁って、別のものだったんですね。
今まで同じものだと思っていました。
設置場所も操作の場面も違うので、検査でも別々に確認しています。
両方とも速やかに操作できる状態になっているかがポイントです。
ドレンチャー等の作動の状況はなぜ実放水を避けて確認することがあるのか

ここからは、個々のドレンチャー等が実際にきちんと作動するかを確かめる仕上げの検査です。
誤って放水すると水損につながるため、慎重に進めます。
総合的な作動の状況は仕上げの検査です。
個々のドレンチャー等の系統ごとに、熱又は煙を感知したときに適切に作動するかを、放水区域に放水できる場合は感知器を作動させる方法で、放水できない場合は放水試験による方法で確認します。
実放水する場合を除き、事前に弁類の開閉状態、配管の漏れ、他設備への移報・連動などを十分に確認してから検査を実施し、誤って放水しないよう注意します。
火災感知用ヘッドは作動の都度ヘッドの交換工事が必要となるため、スプリンクラー設備の点検方法に準じて実施しません。
連動機構用予備電源ごとに、少なくとも1以上のドレンチャー等について予備電源に切り替えた状態でも作動の状況を確認します。
毎回本当に水を出して確認しているわけではないんですね。
少し安心しました。
建物の状況に応じて、試験配管に切り替える方法も使います。
事前の弁類の確認など、安全を優先して進めています。
防火区画の形成の状況はなぜ複数のドレンチャー等をまとめて見るのか

最後は、複数のドレンチャー等が連携して初めて意味を持つ検査です。
一系統だけを見ていては分からない項目になります。
防火区画の形成は複数系統の連携で決まります。
建築物中の一以上の竪穴区画を対象に、当該区画に設置されているドレンチャー等について、煙感知器又は熱煙複合式感知器を設けている場合は、一の感知器からの作動信号により、連動範囲にある竪穴区画を形成する複数のドレンチャー等(散水ヘッド)が一斉に作動することを確認します。
この場合、感知器の作動により連動して作動する開閉弁を予め確認し、誤放水等がないよう、開閉弁二次側の止水弁を閉止しておきます。
止水弁を閉めてから検査するというのは、水損防止のためなんですね。
納得しました。
はい、誤放水を防ぐための重要な手順です。
検査前の弁の確認まで含めてご案内しています。
よくある質問
まとめ
予備電源から手動作動装置まで、ドレンチャーにこんなに何段階もの仕組みがあるとは思いませんでした。
開閉弁の手動起動弁とは別物だったことも、社内でちゃんと共有しておきます!
それはとても心強いです。
ドレンチャー等の連動機構の詳しい点検は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第11項から第13項まで・第19項第2号
- 昭和48年建設省告示第2563号(防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件)
- 昭和48年建設省告示第2564号(防火設備に係る構造方法を定める件)
※本記事は公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における検査項目の判定は、実際の検査結果や特定行政庁の指導によって異なる場合があります。詳細は検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。





