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製造所の建築物はなぜ地階を持てず屋根にも基準があるのか|壁柱床の耐火構造と屋根の不燃材料を解説

製造所の建築物の壁を担当者が見上げて点検している写真

危険物を取り扱う建築物というと、消火設備や警報設備の基準ばかりに目が向きがちです。
しかし政令が定める製造所の技術基準には、地階の禁止や壁・柱・床の耐火構造、屋根のふき方まで、建物そのものの骨格に関わる規定が並んでいます。
これらは既存の建物を危険物施設に転用しようとしたときに、あとから直せず計画が止まる原因になりがちです。
この記事では危険物の規制に関する政令第九条第一項が定める建築物本体の三つの基準を、条文に沿って整理します。

危険物を扱う建物を建てるとき、地階を作ってはいけないとか、屋根の材料まで決まっているとか、細かい基準が多い気がします。

はい、政令第九条第一項に建築物本体の基準がまとめられています。
地階なし・壁と柱と床の耐火構造・屋根の不燃材料、この三つが柱になります。

地階の禁止と耐火構造の壁は分かるとして、屋根の不燃材料はどこまで細かいんでしょうか。

金属板でふくのが基本ですが、扱う危険物によっては耐火構造の屋根が認められる特例もあります。

この記事の結論
  • 危険物を取り扱う建築物は地階を持つことができません(政令第九条第一項第四号)。
  • 壁・柱・床・はり・階段は不燃材料で造り、延焼のおそれのある外壁は耐火構造の壁にします(同項第五号)。
  • 屋根は不燃材料で造ったうえで、金属板など軽量な不燃材料でふくのが原則です(同項第六号)。
  • 第二類の危険物(粉状のものと引火性固体を除く)だけを扱う建築物は、屋根を耐火構造にできる特例があります。
  • 既存の建物を危険物施設に転用するときは、この三つの構造基準を最初に確認する必要があります。

危険物を取り扱う建築物の地階なし・壁柱床の耐火構造・屋根の軽量な不燃材料という三つの構造基準をまとめた図解

製造所の建築物本体はなぜ細かく構造が決まっているのか

製造所の建築物全体と標識を示すイメージ
製造所の壁や窓については、耐火構造や防火設備としての基準がすでに個別の号で定められています。
それとは別に、建築物本体の骨格にあたる地階・壁柱床・屋根にも、それぞれ独立した基準が用意されています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項 法第十条第四項の製造所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。(第四号 地階を有しないこと/第五号 壁、柱、床、はり及び階段の不燃材料と延焼のおそれのある外壁の耐火構造/第六号 屋根の不燃材料と第二類の危険物のみを取り扱う場合の特例)
製造所の建築物は、地階・壁柱床・屋根という三つの部分にそれぞれ独立した基準を持っています。
地階を持たないこと、壁や柱や床を耐火構造にすること、屋根を不燃材料でふくこと、この三つが建築物本体の骨格を決めます。
いずれも建物が燃え広がらないための構造上の備えという共通点があります。
既存の建物を危険物施設に転用しようとすると、この骨格の基準が壁になることが少なくありません。
号ごとに何を求めているかを順番に見ていきます。

地階や屋根まで構造が決まっているとは知りませんでした。

はい、建築物本体の骨格を守るための基準です。

地階を持てないのはなぜか

地階のない建築物と地階がある建築物を比較するイメージ
地階があると、燃えた危険物の蒸気や熱が地下にこもりやすくなります。
そこで製造所の建築物は、そもそも地階を持たない構造にすることが求められています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第四号 危険物を取り扱う建築物は、地階(建築基準法施行令第一条第二号に規定する地階をいう。)を有しないものであること。
危険物を取り扱う建築物には、地階そのものを設けることができません。
ここでいう地階とは、建築基準法施行令第一条第二号が定める、床が地盤面下にあり床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上ある階を指します。
条文が定義を直接示していない場合でも、参照先の政令にあたって地階の範囲を確認する必要があります。
半地下のような構造でも、この基準に当てはまれば地階として扱われる点に注意が必要です。

半地下のような部分も地階になりますか。

はい、床面から地盤面までの高さが天井の高さの三分の一以上あれば地階として扱われます。

壁や柱や床はどんな構造が求められるのか

炎に面しても耐える壁や柱床の構造のイメージ
壁・柱・床は建築物を支える骨格そのものです。
危険物を扱う建築物では、この骨格にも不燃材料と耐火構造という二段構えの基準があります。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第五号 危険物を取り扱う建築物は、壁、柱、床、はり及び階段を不燃材料で造るとともに、延焼のおそれのある外壁を出入口以外の開口部を有しない耐火構造(建築基準法第二条第七号の耐火構造をいう。以下同じ。)の壁とすること。
壁・柱・床・はり・階段は不燃材料で造り、延焼のおそれのある外壁はさらに耐火構造にします。
不燃材料であることは建築物全体に共通する前提で、そのうえで延焼のおそれのある外壁には一段上の基準が上乗せされます。
耐火構造とは、建築基準法第二条第七号が定める、通常の火災が終了するまで倒壊や延焼を防止できる性能を満たす構造を指します。
延焼のおそれのある外壁は、出入口以外の開口部を持たない耐火構造の壁にしなければなりません。
窓を設けたい面が延焼のおそれのある部分に当たるかどうかは、設計の早い段階で確認しておく必要があります。

延焼のおそれのある外壁だけ、なぜ基準が重くなるんですか。

隣地や道路に近い面ほど、火災が燃え広がるリスクが高いためです。

屋根はなぜ軽い不燃材料でふくのか

軽量な不燃材料の屋根と耐火構造の屋根を比較するイメージ
屋根は建物の中でもっとも外気にさらされる部分です。
危険物を取り扱う建築物では、屋根のふき方にも原則と特例が用意されています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第六号 危険物を取り扱う建築物は、屋根を不燃材料で造るとともに、金属板その他の軽量な不燃材料でふくこと。ただし、第二類の危険物(粉状のもの及び引火性固体を除く。)のみを取り扱う建築物にあつては、屋根を耐火構造とすることができる。
屋根は不燃材料で造ったうえで、金属板など軽量な不燃材料でふくことが原則です。
軽い屋根材にするのは、万一の爆発や倒壊の際に被害を小さく抑えるためと考えられます。
ただし第二類の危険物(粉状のものと引火性固体を除く)だけを取り扱う建築物に限っては、屋根を耐火構造にすることも認められています。
この特例が使えるかどうかは、取り扱う危険物の類別によって変わります。
複数の類の危険物を扱う建築物では、特例の対象にならない点に注意が必要です。

うちは第四類の危険物も扱うので、特例は使えないんですね。

はい、特例の対象は第二類の危険物のみを扱う建築物に限られます。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が製造所建築物の地階と壁と屋根を確認している様子
ここまでの三つの基準を、現場で確認できる形に落とし込みます。
新築だけでなく、用途変更や増改築の計画段階でも見落としやすい部分です。
  • 建築物に地階がないか、図面と現地の両方で確認する。
  • 半地下のような部分があれば、床面から地盤面までの高さを実測して地階に当たらないか判定する。
  • 壁・柱・床・はり・階段が不燃材料で造られているかを確認する。
  • 隣地や道路に近い外壁が延焼のおそれのある部分に当たるかを整理し、該当する場合は耐火構造の壁になっているかを確認する。
  • 屋根の材料が金属板など軽量な不燃材料か、または第二類の危険物のみを扱う特例により耐火構造の屋根を選んでいるかを確認する。
既存の建物を危険物施設に転用する計画では、この三つを最初に確認すると手戻りを防げます。

まずは図面で地階の有無から確認してみます。

はい、図面と現地の両方で確認するのが確実です。

よくある質問

Q半地下の倉庫のような部分も地階として扱われますか?
Aはい。危険物の規制に関する政令第九条第一項第四号が参照する建築基準法施行令第一条第二号の基準に当てはまれば、床面から地盤面までの高さによって地階として扱われます。
Q延焼のおそれのある部分は建物のどこでも同じ基準になりますか?
Aいいえ。延焼のおそれのある部分に当たる外壁だけが出入口以外の開口部を持たない耐火構造を求められ、それ以外の壁は不燃材料であれば足ります。
Q屋根を耐火構造にする特例はどんな建築物でも使えますか?
Aいいえ。特例が使えるのは第二類の危険物(粉状のものと引火性固体を除く)のみを取り扱う建築物に限られます。
Q不燃材料であれば、どんな金属板を使っても屋根の基準を満たしますか?
A条文は屋根を不燃材料で造ったうえで金属板その他の軽量な不燃材料でふくことを求めており、不燃材料であることに加えて軽量であることも条件になります。

まとめ

製造所の建築物には、政令第九条第一項第四号から第六号までの構造基準が適用されます。
地階は建築基準法施行令第一条第二号が定める基準に当てはまる階を指し、これを有することができません。
壁・柱・床・はり・階段は不燃材料で造り、延焼のおそれのある外壁はさらに耐火構造にします。
耐火構造とは建築基準法第二条第七号が定める、倒壊や延焼を防止できる構造を指します。
屋根は不燃材料で造ったうえで、金属板など軽量な不燃材料でふくことが原則です。
第二類の危険物のみを取り扱う建築物に限り、屋根を耐火構造にできる特例があります。
図面と現地の両方で確認してください。

まずは地階の有無から図面を見直してみます!

建築物本体の構造確認は、お気軽にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第九条第一項第四号・第五号・第六号
  • 建築基準法施行令第一条第二号(地階の定義)
  • 建築基準法第二条第七号(耐火構造の定義)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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