BLOG

エレベーターの昇降路はどんな基準で作られているのか|建築基準法施行令第129条の7が定める構造を解説

エレベーターの昇降路はどんな基準で作られているのかを建築基準法施行令第129条の7から解説する記事のアイキャッチ画像

エレベーターのかごだけでなく、かごが走る筒状の空間である昇降路にも、建築基準法施行令で定められた構造基準があります。
第129条の7は、昇降路の壁・戸から施錠装置、突出物、床先のすきままで、防火と安全のための条件を定めています。
昇降路は建物内で上下階を貫通する空間で、火や煙の通り道にもなり得るため、かごとは別に細かなルールが課されています。
この記事では第129条の7が定める昇降路の構造基準と、防火管理者が確認すべき点を条文にそって解説します。

保守点検の業者さんに「昇降路側の壁も基準があります」と言われたんですが、かごの中の話とは違うんですか。

はい、昇降路は「かご」とは別の場所として、独自の構造基準が定められています。

なるほど、点検の説明を理解するには昇降路側のルールも知っておいたほうがよさそうですね。

はい、建築基準法施行令第129条の7が壁・戸・施錠装置などをまとめて定めています。
順番に要点を見ていきましょう。

この記事の結論
  • 昇降路は壁又は囲い及び戸で、外の人や物がかご・釣合おもりに触れないようにしなければなりません。
  • 昇降路の壁と戸は原則難燃材料で造りますが、地階又は三階以上に居室のない建築物は適用除外となります。
  • 出入口の戸には、かごが停止していない位置での転落を防ぐ施錠装置を設けなければなりません。
  • 昇降路内への突出物は原則禁止で、認められるのはレールブラケットなど限られたものだけです。
  • 出入口の床先とかごの床先のすきまは四センチメートル以下、乗用・寝台用はかごと壁の間を十二・五センチメートル以下にしなければなりません。

昇降路を守る難燃材料の壁と戸戸の施錠装置突出物の禁止床先のすきまという四つの構造基準を並べた図解

エレベーターの昇降路にはどんな構造が求められるのか

昇降路の壁と戸のとなりに隙間を空けて吊るされた釣合おもりを示す図
エレベーターの「かご」が走る筒状の空間を昇降路といいます。
昇降路の外にいる人や物が、かごや釣合おもりに触れてしまわないよう、構造そのものに条件が課されています。
建築基準法施行令第129条の7 一 昇降路外の人又は物が籠又は釣合おもりに触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁又は囲い及び出入口の戸を設けること
昇降路は壁か囲いと戸で外部から仕切ることが大原則です。
かごが昇降する空間と、廊下やホールなど人が立ち入る空間を明確に分け、接触や転落の危険を防ぐ狙いがあります。
条文では籠(かご)だけでなく釣合おもりにも触れないようにする、と定められている点が見落とされがちです。
釣合おもりはワイヤーでかごとつながって昇降路内を高速で上下する重りで、人が誤って触れれば大きな事故につながります。
点検の際は、この壁・囲い・戸の三点が揃っているかをまず確認するとよいでしょう。

「囲い」と「戸」って、具体的にどう違うんですか。

囲いは昇降路を仕切る構造全般を指し、はそのうち人が出入りする開口部に付く可動部分です。

どの昇降路に難燃材料が必要になるのか

難燃材料で作られた戸と低層の小さな建物を並べた図
昇降路の壁や戸は、火が燃え広がらないよう素材にも条件があります。
ただし、すべての建物に一律で義務づけられているわけではありません。
建築基準法施行令第129条の7 二 構造上軽微な部分を除き、昇降路の壁又は囲い及び出入口の戸は、難燃材料で造り、又は覆うこと。ただし、地階又は三階以上の階に居室を有さない建築物に設けるエレベーターの昇降路その他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定めるエレベーターの昇降路にあつては、この限りでない。
昇降路の壁と戸は原則として難燃材料で造るか、覆わなければなりません。
これは火災時に昇降路が煙や炎の通り道になるのを防ぐためです。
一方で、ただし書きにより地階または三階以上に居室のない建築物のエレベーターは対象外とされています。
低層で居室のない倉庫や機械棟のような建物では、延焼のリスクが小さいと判断されているためです。
自分の建物がこの適用除外に当たるかどうかは、設置時の検査記録や図面で居室の有無を確認すれば分かります。

うちは倉庫棟なんですが、それでも昇降路の壁は難燃材料にしないといけないんですか。

地階と三階以上のどちらにも居室が無ければ、ただし書きにより対象外になる可能性があります。
図面で確認してみましょう。

出入口の戸にはなぜ施錠装置が要るのか

施錠装置の付いた戸と、かごが不在の昇降路を示す図
昇降路の出入口の戸には、施錠のための装置を設けることが定められています。
これはかごが停止していない位置で戸が開いてしまう事故を防ぐためです。
建築基準法施行令第129条の7 三 昇降路の出入口の戸には、籠がその戸の位置に停止していない場合において昇降路外の人又は物の昇降路内への落下を防止することができるものとして国土交通大臣が定める基準に適合する施錠装置を設けること
戸の施錠装置は、かごが来ていない階での転落事故を防ぐための仕組みです。
かごがその階に停止していなければ、施錠装置が働いて戸を開けられないようになっています。
逆にいえば、この装置が正しく機能していない状態は、昇降路内への転落という重大事故に直結します。
定期点検で「戸の施錠装置」という項目が出てきたら、まさにこの号に基づく確認だと理解しておきましょう。
違和感のある動作(戸がかご不在でも開く、施錠に時間がかかる等)があれば、速やかに保守業者へ連絡することが大切です。

点検報告書に「施錠装置、正常」と書いてあるだけで、実際に何を見ているのか分からなくて。

かごがそのフロアに来ていないときに戸が開かないかどうかを、業者が実際に動作させて確認しています。

昇降路の中に物を置いてよいのか

わずかに突き出たレールブラケットと大きく突き出た禁止の物を並べた図
昇降路の内部は、原則として物を置いたり突き出させたりしてはいけない空間です。
ただし、エレベーターの構造上どうしても必要なものだけは例外として認められています。
建築基準法施行令第129条の7 五 昇降路内には、次のいずれかに該当するものを除き、突出物を設けないこと。イ レールブラケット又は横架材であつて、地震時において主索その他の索が触れた場合においてもエレベーターの機能に支障が生じないよう金網、鉄板その他これらに類するものが設置されている等の基準に適合するもの ロ・ハ (略)
昇降路の中は原則として突出物を設けてはいけません。
かごや釣合おもりが高速で上下する空間なので、余計な突出物があると重大事故につながるためです。
そのため条文は「原則禁止」を明確にしたうえで、例外を限定列挙する形をとっています。
認められる例外はレールブラケットや横架材など、エレベーターの構造上どうしても必要で、地震対策が講じられたものに限られます。
現場でありがちな落とし穴は、点検や工事のために持ち込んだ足場や資材を、そのまま昇降路内に残してしまうことです。

工事の後、足場のような物が昇降路の中に残っていたことがあるんですが、あれは大丈夫なんでしょうか。

突出物は原則禁止なので、条文の例外に当たらない資材は速やかに撤去する必要があります。

出入口とかごのすきまはどこまで許されるのか

出入口の床先とかごの床先のすきまを測る様子を示す図
昇降路の出入口の床とかごの床の間には、わずかなすきまがあります。
このすきまの大きさにも、転落防止のための数値基準が定められています。
建築基準法施行令第129条の7 四 出入口の床先と籠の床先との水平距離は、四センチメートル以下とし、乗用エレベーター及び寝台用エレベーターにあつては、籠の床先と昇降路壁との水平距離は、十二・五センチメートル以下とすること
出入口とかごの床のすきまには、具体的な数値の上限があります。
すきまは狭いほど安全ですが、機械的に完全にゼロにはできません。
そこで条文は、四センチメートル以下という上限を定めています。
乗用エレベーターと寝台用エレベーターには、さらにかごの床先と昇降路壁との水平距離十二・五センチメートル以下という別の基準も加わります。
点検のときにこのすきまが広がっていないかを確認することが、防火管理者にできる日常的なチェックになります。

つまり、すきまが広がっていたら、それだけで基準違反のサインになるということですね。

四センチメートルという具体的な数値があるので、目視で気になったときは保守業者に測定を依頼してください。

よくある質問

Q昇降路の壁と、かごの壁は同じ条文で定められているのですか?
Aいいえ。昇降路の壁は建築基準法施行令第129条の7、かごの壁は同令第129条の6という別々の条文で定められています。
Q難燃材料の適用除外に当たるかどうかは、誰が判断するのですか?
A建築確認の段階で判断されますが、防火管理者としては図面や確認済証で建物の扱いを把握しておくことが実務上大切です。
Q施錠装置が正常に動いているかは、どうやって確認すればよいですか?
A昇降機の定期検査報告の中で、専門技術者が戸が開かないことを実際に動作させて確認します。報告書の該当項目を確認しましょう。
Q昇降路の中に配管を通してもよいのですか?
A条文が定める基準に適合する配管設備に限り認められていますが、通常の配管を自由に通してよいわけではありません。工事の際は必ず専門業者に確認してください。

まとめ

昇降路は壁又は囲い及び戸で外部と仕切ることが原則です。
壁と戸は難燃材料で造るのが原則ですが、地階・三階以上に居室のない建築物は適用除外となります。
出入口の戸には施錠装置を設け、かご不在時の転落を防ぎます。
昇降路内への突出物は原則禁止で、認められるのはレールブラケット等の限られた例外だけです。
床先の水平距離は四センチメートル以下にしなければなりません。
乗用・寝台用エレベーターはかごと昇降路壁の水平距離十二・五センチメートル以下という追加基準もあります。
これらはすべて建築基準法施行令第129条の7が定める昇降路側の構造基準です。

戸の施錠装置と床先のすきまを、次の点検日に確認します!

難燃材料の対象かどうかの確認もあわせて承ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の7

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
エレベーターの昇降路はどんな基準で作られているのかを建築基準法施行令第129条の7から解説する記事のアイキャッチ画像
エレベーターのかごだけでなく、かごが走る筒状の空間である昇降路にも、建築基準法施行令で定められた構造基準があります。 第129条の7は、昇降路の壁・戸から施錠装置、突出物、床先のすきままで、防火と安全のための条件を定めて...