ガソリンスタンドで携行缶に給油してもらう場面は珍しくありません。
ただしその量が増えると、単なる給油ではなく危険物の取扱いとして別の規制がかかります。
どこまでが許される小分けで、どこからが違反になるのかは、実際に起きた火災事故を受けて整理されました。
この記事では小分け行為と取扱所の区分を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
携行缶にガソリン入れてもらうんは、何缶までならええんや。
指定数量が境目です。
小分け行為が指定数量以上であった場合は消防法第10条第1項の規定に違反するとされています。
そんな厳しいこと言われるようになったんは、なんかあったんか。
照会には実際の火災事故が添えられています。
配達先での移し替え作業中の引火で木造建物2棟が全焼した事例です。この記事でまとめて解説します!
- 給油取扱所における給油以外の小分け行為が指定数量以上であった場合は消防法第10条第1項の規定に違反する
- 小分け行為が指定数量未満の場合はさしつかえないとされている
- 販売取扱所の店舗とは建築物内において危険物を販売する施設をいいその建築物の設置場所については制限されない
- 小型船舶のための給油施設は政令第3条の給油取扱所に該当する
▼
目次
指定数量以上の小分け行為は消防法第10条第1項に違反する

昭和61年7月11日付け消防危第72号は、長崎県からの照会に答えたものです。
管下で危険物に関する火災事故が発生したことを受けて、給油取扱所における指定数量以上の危険物の小分け行為について疑義が生じたというものでした。
照会の内容は給油取扱所における危険物の給油以外の小分け行為については、昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号岩見沢市消防長あて回答によれば、指定数量未満の場合はさしつかえないとされているが、小分け行為が指定数量以上であつた場合は消防法第10条第1項の規定に違反すると解してよろしいかです。
指定数量が境目になります。
消防法第10条第1項は、指定数量以上の危険物は製造所や貯蔵所や取扱所以外の場所で取り扱ってはならないと定めています。
給油取扱所は自動車等への給油のための施設ですから、そこで指定数量以上の小分けを行えば、許可された用途を超えることになります。
照会には木造2棟が全焼した火災事故が添えられていた

この照会が出された背景には、実際に起きた事故があります。
参考として添えられた危険物に関する火災事故の概要には、次のように記されていました。
200リットルを20リットルのポリ缶に分けたということは、10缶に及ぶ小分けが行われたことになります。
ガソリンの指定数量は200リットルですから、この配達はまさに指定数量にあたる量でした。
そして事故が起きたのは給油取扱所ではなく配達先での移し替え作業中です。
危険物が施設の外に持ち出され、管理された環境から離れたところで扱われたことが被害につながっています。
指定数量未満の小分けはさしつかえないとされている

すべての小分けが禁じられているわけではありません。
昭和61年の照会が引用しているとおり、昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号の岩見沢市消防長あて回答では指定数量未満の場合はさしつかえないとされています。
日常的に見かける携行缶1缶や2缶への給油は、この範囲に収まっているということです。
もっとも量の問題とは別に、容器の適否や取扱いの安全は当然に求められます。
ガソリンを収める容器には金属製の適合品を用い、車内に置いたまま長時間放置しないなどの基本は、量の多少にかかわらず守るべきものです。
販売取扱所の店舗は建築物の設置場所を問わない

昭和40年6月1日付け自消丙予発第99号は、山梨県総務部長からの照会です。
農薬卸小売業者が危険物販売取扱所を設置したいという申請について、設置位置が一般社会通念上考えられる道路に面した店舗の場合と異なり、道路に面している既設店舗の奥の別棟内であるため、政令第3条第2号にいう店舗の解釈が問われました。
照会には懸念も添えられています。このような屋内貯蔵所の実態に類似するものについて、これを店舗と認めて許可することは、付近の住居の用に供する建築物に対して10メートル以上の保有距離を要するとされる屋内貯蔵所を回避して、販売取扱所として申請する傾向を助長することになり、危険物の規制上好ましくない結果を生ずるおそれがあるという内容でした。
奥の別棟でも店舗です。
そのうえで条件が示されています。
当該施設が添付図面に示されたような場所に設置される場合でも、貯蔵を目的とするものでなく販売取扱いを目的とするものであり、かつ、それが同政令第18条に規定する技術上の基準に適合するものであれば、販売取扱所として設置されて差し支えないとされました。
場所ではなく目的と基準への適合で判断するという考え方です。
逆にいえば、実態が貯蔵であれば販売取扱所としては認められないということでもあります。
小型船舶のための給油施設も給油取扱所に該当する

昭和39年8月6日付け自消丙予発第81号は、神奈川県企画調査部長からの照会です。
石油製品販売業者から船舶用給油施設の設置について照会があったとして、四つの疑義が示されました。
残る三つはいずれも施工上の工夫についてでした。
岩盤が硬く海水が湧出するため空地から水平距離で約60メートル離れた位置に地下貯蔵タンクを埋設すること、塩分による侵蝕を防ぐため配管をアスファルト塗りジュート巻きにする施工法、そして漏洩の自動探知装置が市販されていないため人為的に操作するバルブを取り付けることの可否です。
現地の事情は考慮されます。
区分としては給油取扱所にあたるとしたうえで、現場の条件に応じた施工は認めるという柔軟な判断です。
自動車に給油する施設だけが給油取扱所ではないという点も、あわせて押さえておきたいところです。
よくある質問
まとめ
- 給油取扱所における給油以外の小分け行為が指定数量以上であった場合は消防法第10条第1項の規定に違反する
- 小分け行為が指定数量未満の場合はさしつかえないとされている
- 照会には固定給油設備から20リットルポリ缶に小分けし配達した事例が添えられている
- 配達先でポリ缶からポリ缶にうつしかえ作業中に引火し木造建物2棟が全焼した
- 政令第3条第2号にいう店舗とは建築物内において危険物を販売する施設をいう
- 店舗である建築物の設置場所については制限されない
- 貯蔵を目的とせず販売取扱いを目的とし政令第18条の基準に適合すれば販売取扱所として設置できる
- 小型船舶のための給油施設は政令第3条の給油取扱所に該当する
缶に分けて運ぶんが一番危ないんやな。数の問題やなかったわ。
そのとおりです。
事業所で燃料を扱う場合の容器や保管方法についてもご相談を承ります。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第11条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第3条・第18条 e-Gov法令検索
- 船舶用給油施設の設置について(昭和39年8月6日付け自消丙予発第81号 予防課長から神奈川県企画調査部長あて回答)
- 店舗内に設置する販売取扱所について(昭和40年6月1日付け自消丙予発第99号 予防課長から山梨県総務部長あて回答)
- 給油取扱所における指定数量以上の危険物の小分け行為について(昭和61年7月11日付け消防危第72号 危険物規制課長から長崎県あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。ガソリンの容器への詰替えについては、現在は本人確認や使用目的の確認等の措置が求められています。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




