運送会社や工場の敷地に自家用の給油設備を置くとき、それが貯蔵所にあたるのか取扱所にあたるのかで、求められる基準が変わります。
危険物の規制に関する政令第2条は貯蔵所の区分を定めていますが、同じ設備でも使い方によって扱いが分かれます。
1日の給油量が少なければよいのか、タンクの容量は関係するのかは、条文だけでは判断できません。
この記事では貯蔵所と取扱所の区分を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
うちのトラックに給油するだけの小さい設備でも、給油取扱所になるのでしょうか。
目的で分かれます。
回答では給油を主な目的とする場合は給油取扱所として規制するとされています。
1日の給油量が少なければ、対象外になるのでしょうか。
それだけでは決まりません。
タンクに収納しうる数量が指定数量以上なら給油取扱所としての規制の対象になります。
この記事でまとめて解説します!
- 給油を主な目的とする場合は給油取扱所として規制する
- 1日の給油量が指定数量未満であっても簡易タンクに収納しうる危険物の数量が指定数量以上である場合は給油取扱所としての規制の対象となる
- 自家用のもので給油の機会が少なく1日の給油量が指定数量未満のものは簡易タンク貯蔵所として取り扱うべきである
- 屋内貯蔵所で貯蔵中のドラム罐等より小分けする場合は貯蔵に伴う取扱いと解する
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目次
給油を主な目的とするなら給油取扱所として規制される

昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、簡易タンク貯蔵所と簡易タンクのみをおく給油取扱所との区分についての照会です。
鳥取県総務部長から簡易貯蔵タンクにて給油を行なう場合、1日の取扱数量が指定数量未満であるときは、いずれに区分して規制するかと問われました。
設備の大きさや数量ではなく、何のために置いているのかが最初の分かれ目になります。
逆に貯蔵を主な目的とする場合は、貯蔵に伴う行為として、設問の取扱いは差し支えないともされています。
まず目的で分かれます。
照会ではあわせて政令第14条第9号には簡易貯蔵タンクに給油のための設備を設ける場合のことが規定されているが、この設備を設けた場合は、貯蔵所の簡易タンク貯蔵所として規制されるものであつても、給油業務又は詰替業務を行なつてよいと解してよいかとも問われていました。
目的によって区分が分かれるのですね。
給油が主なら給油取扱所です。
設備を置く目的を、計画書に明記してください。
収納しうる数量が指定数量以上なら給油取扱所になる

1日の給油量が少なければそれで足りるのか、という点にも回答が及んでいます。
ここが実務でもっとも誤解されやすいところです。
見るのは容量のほうです。
実際に何リットル使ったかではなく、そのタンクに何リットル入るのかで判断されるということです。
使用量が少ないから対象外だろうという前提で設備を置くと、あとで基準に適合しないことが分かる場合があります。
設備を計画する段階で、タンクの容量と指定数量を突き合わせておく必要があります。
入る量で判断されるのですね。
使用量ではありません。
タンクの容量を、実物の銘板で確かめてください。
自家用で給油の機会が少なければ簡易タンク貯蔵所として扱う

同じ日付の別の回答では、自家用の給油設備について具体的な線引きが示されています。
栃木県足利市消防長からの照会は政令第14条第9号により同令第17条第1項第7号の設備を設けた簡易タンクで、トラック運送会社その他官公庁等の自動車給油設備すなわち自家用のものに使用されるものは、簡易タンク貯蔵所として規制すべきであるか、それとも給油取扱所として規制すべきであるかというものでした。
原則は給油取扱所であり、例外として簡易タンク貯蔵所の扱いが認められるという順序です。
その例外にあたるには給油の機会が少ないことと1日の給油量が指定数量未満であることの両方が求められます。
照会の中では簡易タンク貯蔵所について屋外にあつて、かつ、木造建築物等より延焼防止上十分な安全距離を有する場合は、附近建築物の簡易タンクに面する部分を耐火又は防火構造としなければならない等の規定もなく、最も経費を要しない貯蔵所であるとも説明されています。
自家用で機会が少なければ、別の扱いになるのですね。
使い方で分かれます。
給油の頻度と量を、記録に残しておきましょう。
貯蔵中のドラム缶から小分けするのは貯蔵に伴う取扱いにあたる

貯蔵所の中で行う作業がどこまで許されるのかも問われています。
奈良県地方課長からの照会は政令第2条の貯蔵所における貯蔵のための取扱いとは、具体的にいかなる場合のことをいうのかというものでした。
具体例として屋内貯蔵所において自家用小型自動車に時時給油するため、貯蔵中のドラム罐等より小分けする場合の如きは、どうかと挙げられています。
貯蔵所の中での小分けは、別の施設の許可を要する行為にはならないという整理になります。
ただしこれは貯蔵が主たる目的であることが前提です。
主従が逆転すれば別です。
小分けや給油の頻度が上がって実質的に給油が目的になれば、最初の項目でみたとおり給油取扱所としての規制に移ることになります。
貯蔵所の中での小分けも、認められる場合があるのですね。
貯蔵に伴う取扱いとされます。
作業の内容を、許可の範囲と照らしてください。
区分に当てはまっても基準に適合しなければ設置は認められない

区分が決まればそれで設置できる、というわけではありません。
昭和47年5月11日付け消防予第99号は、港湾内にけい留されている油槽についての照会です。
照会された施設は長さ13.7メートル、幅6.1メートル、深さ1.5メートル、鉄板の厚さ6ミリメートル、容量125立方メートルの直方型の油槽で、岸壁にけい留して引火点76度の重油を貯蔵し、船舶に給油するというものでした。
区分と適合は別の話です。
屋外貯蔵所についても同様の判断があります。
昭和51年11月24日付け消防危第100号では、10メートル四方の屋外貯蔵所に5メートル×10メートルのスレートぶきの屋根を設けてよいかと問われ、回答は認められないでした。
政令第16条に設置基準が定められている以上、そこに規定のないものを付け加えることはできないという整理です。
区分が決まれば設置できる、というわけではないのですね。
基準への適合が別に要ります。
設備を入れる前に、位置と構造から相談してください。
よくある質問
まとめ
- 給油を主な目的とする場合は給油取扱所として規制する
- 貯蔵を主な目的とする場合は貯蔵に伴う行為として給油業務や詰替業務を行なつても差し支えない
- 1日の給油量が指定数量未満でも簡易タンクに収納しうる数量が指定数量以上なら給油取扱所の規制の対象となる
- 自家用の給油設備は一般には給油取扱所と解すべきである
- 給油の機会が少なく1日の給油量が指定数量未満のものは簡易タンク貯蔵所として取り扱うべきである
- 屋内貯蔵所で貯蔵中のドラム罐等より小分けする場合は貯蔵に伴う取扱いと解する
- けい留された油槽は屋外タンク貯蔵所に該当するが技術上の基準に適合しないので設置を認めることはできない
- 屋外貯蔵所に政令第16条に規定していない屋根を設けることは認められない
使う量ではなく、タンクの容量で見るのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
自家用の給油設備を置く前に、タンク容量と指定数量の確認からご相談ください。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第11条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第2条・第11条・第14条・第16条・第17条 e-Gov法令検索
- 簡易タンク貯蔵所と簡易タンクのみをおく給油取扱所との区分について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から鳥取県総務部長あて回答)
- 貯蔵のための取り扱いとは(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から奈良県地方課長あて回答)
- 固定給油設備を設けた簡易タンクの区分について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から栃木県足利市消防長あて回答)
- 港湾内にけい留されている油槽の規制について(昭和47年5月11日付け消防予第99号 予防課長から鹿児島県あて回答)
- 屋根を設ける屋外貯蔵所について(昭和51年11月24日付け消防危第100号 危険物規制課長から群馬県あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




