都市ガスを使う家庭に、契約しているガス会社の担当者が定期的に点検へやってくることをご存じでしょうか。
建物の消防用設備等は、管理者自身が点検して消防署に報告する義務を負っています。
ところが家庭のガス機器では、逆にガス会社の側から利用者へ点検にやってくる仕組みになっています。
本記事ではガス事業法第百五十九条が定める周知と調査の義務、そして調査を断った場合にどうなるかを解説します。
先日ガス会社の人がうちに来て、コンロや給湯器を見ていったんですが、あれって何のためなんですか。
それはガス事業法が定める義務です。
ガス会社の側に周知と調査の義務があります。
消防設備は自分たちで点検しているのに、ガス機器だけ扱いが違うんですね。
はい、条文を見ながら仕組みの違いを確認しましょう。
- ガス事業法第百五十九条は、ガス小売事業者に消費機器の周知と調査の義務を課しています。
- 周知は使用上の注意事項を伝えること、調査は技術上の基準への適合を確かめることの2つに分かれます。
- 調査は所有者や占有者の承諾が前提で、承諾が得られなければ調査義務そのものが生じません。
- 基準に適合しないと分かったときは、ガス小売事業者が是正措置を通知する義務を負います。
- 消防法上の点検報告義務とは義務を負う側が逆になっている点が特徴です。
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目次
ガス小売事業者になぜ周知と調査の義務があるのか

条文を見ると、この違いの理由が見えてきます。
消防法第十七条の三の三が求める点検報告は、建物の関係者が消防用設備等を自ら点検して報告する仕組みです。
一方でガス事業法第百五十九条は、家庭の消費機器についてガス小売事業者が利用者へ働きかける側に立つ仕組みになっています。
一般の利用者は機器の技術基準を詳しく知らないことが多いため、供給者側に周知と調査の両方を課しているのだと考えられます。
次は、この義務がどこまでの機器に及ぶのかを見ていきましょう。
知らないうちに危険な使い方をしないよう、ガス会社が教えてくれる仕組みなんですね。
そのとおりです。
次はどこまでの機器が対象かを確認しましょう。
対象になるのはどんなガス機器なのか

定義から確認しましょう。
条文上の消費機器には、ガスコンロ、給湯器、ガスファンヒーターといった家庭でよく使う器具がまとめて含まれます。
排気筒や接続コードのような附属装置も対象に含まれるため、機器本体だけを見ていれば足りるわけではありません。
義務を負うのは、その利用者にガスを供給しているガス小売事業者で、契約している会社が窓口になります。
次は、周知と調査という2つの義務が具体的に何をすることなのかを見ていきましょう。
排気筒みたいな付属品まで見てもらえるとは思いませんでした。
はい、附属装置まで含めた範囲です。
次は周知と調査の中身を見てみましょう。
周知と調査は具体的に何をすることなのか

それぞれの中身を確認しましょう。
第一項の周知は、使用上の注意事項を伝えるという情報提供の義務です。
第二項の調査は、実際に機器が技術上の基準に適合しているかどうかを確かめる義務ですが、立ち入りの承諾を得られない場合は調査そのものが免除されます。
つまり周知は一方的に行えますが、調査は利用者の協力があって初めて成り立つ仕組みです。
次は、調査で基準に適合していないと分かった場合にどうなるのかを見ていきましょう。
承諾しないと調査してもらえないんですね。
それって利用者にとって不利じゃないんですか。
そこが実務上の落とし穴です。
次の項目で確認しましょう。
調査を断ったらどうなるのか

基準に適合しないと分かった場合の義務もあわせて確認しましょう。
第二項のただし書きにより承諾を拒めば調査自体が行われませんが、それは基準への適合を確認する機会を自分で手放すことでもあります。
逆に調査を受け入れて基準に適合していないと分かった場合、ガス小売事業者は是正措置と、それを怠ったときに生じる結果を書面等で通知する義務を負います。
さらに第五項では、ガスによる災害が発生し又は発生するおそれがある場合、利用者から通知を受ければ速やかに措置をとる義務もガス小売事業者側に課されています。
点検を面倒に感じて断ってしまうと、こうした通知や対応の機会そのものを逃してしまう点に注意してください。
忙しいからと毎回断っていたら、危ない状態を教えてもらえないままになるということですね。
はい、機会を逃すことになります。
次は明日からの対応をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

確認すべきポイントを整理します。
調査を受け入れることで、初めて技術上の基準への適合を確認してもらえます。
調査の結果、是正が必要だと通知された場合は、その内容を後回しにせず対応してください。
そしてガス臭いなど異常を感じたときは、利用者側からもすぐにガス会社へ連絡することが条文上の対応につながります。
消防用設備等の点検報告のように自分で点検する義務ではありませんが、通知や調査に協力する姿勢が実務上のポイントです。
今度点検の案内が来たら、断らずに受け入れてみます。
受け入れる姿勢が一番の備えになります。
次によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
ガス機器の点検の仕組みがよく分かりました。
今度は断らずに調査を受けてみます。
調査への協力が一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第159条
- 消防法第17条の3の3
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の周知や調査の運用は、契約しているガス小売事業者にご確認ください。





