地震後や停電時に、自家発電設備の始動ボタンを押しても原動機が回らないことがあります。
焦って何度も押すと、蓄電池の電力を消耗し、セルモーターや配線の異常を悪化させるおそれがあります。
BCPでは連打を止め、状態を記録し、始動系統を点検してから一回ずつ再試験します。
発電機が始動しません。
もう一度押してええですか。
連打せず操作を止めます。
三回始動できる設備なら押してもアカンのですか。
能力基準と現場操作は別です。
- 始動しないときはボタンを連打しません
- 警報と動作音と発見時刻を操作前に記録します
- 蓄電池から原動機まで始動系統を確認します
- 再試験は取扱説明書に従い一回ずつ行います
- 始動不能時の代替電源と安全措置をBCPで決めます
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目次
自家発電設備が始動しないときは何度もボタンを押してよいのか

始動ボタンを何度も押さないでください。
警報、表示灯、動作音、セルモーターの回り方を記録し、指定された手順が確認できるまで操作を止めます。
消防庁告示の自家発電設備の基準では、セルモーター用の高率放電用蓄電池に、各始動の間を5秒空け、10秒の始動を3回以上行える容量を求めています。
これは設備が備えるべき能力の基準であり、異常時に現場担当者が無条件で3回押してよいという操作指示ではありません。
実際の始動時間、休止時間、再試験回数は機種ごとに異なります。
取扱説明書と保守事業者の判断に従います。
三回という数字は操作回数やないんですね。
まず異常の原因を確認しましょう。
どの設備と条件を確認するのか

確認対象はボタンや制御盤だけではありません。
充電装置、蓄電池、配線、セルモーター、原動機を一つの始動系統として見ます。
- 制御盤の警報名、表示灯、計器指示
- 始動操作時の動作音とセルモーターの回り方
- 始動用蓄電池の外観、電圧、液量
- 端子、接続板、ケーブルの緩みや腐食
- 充電装置の表示と入力・出力状態
- セルモーターのピニオンと原動機のリングギヤ
- 燃料、潤滑油、冷却水、非常停止の状態
自動始動と手動始動、セルモーター式と空気始動式では確認箇所が変わります。
完成図書、設備番号、取扱説明書を照合して対象を取り違えないようにします。
ボタンだけ見ても足りませんか。
始動系統を一続きで見ます。
始動しないときは何をするのか

操作中止、状態記録、連絡、専門点検、再試験の順で進めます。
- 煙、異臭、発熱、漏液、燃料漏れがないか離れて確認する
- 始動操作を止め、再操作禁止を周知する
- 警報、表示灯、動作音、発見時刻を記録する
- 設備責任者と保守事業者へ連絡する
- 蓄電池から原動機まで始動系統を点検する
- 必要な整備後に取扱説明書どおり一回ずつ試験する
- 電圧確立、切替え、負荷作動を確認して復旧を承認する
始動を保留する間は、消防用設備への給電状況を確認します。
必要に応じて巡回、火気制限、代替電源、所轄消防署への相談を組み合わせます。
押す前に警報と音を残します。
停止中の安全措置も決めましょう。
ボタンを連打すると何を見落とすのか

始動できない原因は、蓄電池の電圧低下だけとは限りません。
端子の緩み、ケーブル損傷、充電異常、セルモーターの不具合、ピニオンのかみ合い、燃料遮断、非常停止などが考えられます。
- 蓄電池を消耗して次の始動余力を失う
- 端子やケーブルの発熱を見落とす
- セルモーターの異常を悪化させる
- 警報表示や動作音の変化を記録できない
- 非常停止や燃料遮断の原因を見落とす
- 始動できても自動切替えや負荷作動を確認していない
- 現場操作と復旧承認の責任が曖昧になる
消防庁告示は、セルモーターピニオンと原動機リングギヤの不かみ合い防止装置も求めています。
再操作だけでなく、機械側と電気側の両方を確認します。
押し直すほど原因が分からなくなるんですね。
最初の状態を保つことが大切です。
明日から始動失敗へどう備えるのか

平常時から、正常な始動音、表示灯、電圧確立までの時間を記録します。
正常時と比較できる記録があれば、災害後の異常を早く絞り込めます。
- 発電機、充電装置、蓄電池の設備番号をそろえる
- 正常な表示灯、動作音、電圧確立時間を記録する
- 始動時間、休止時間、再試験条件を取扱説明書から抜き出す
- 異常時に押してよい人と操作を止める人を決める
- 保守事業者と所轄消防署の連絡先を確認する
- 始動不能時の代替電源と安全措置を決める
- 復旧試験と承認までを訓練して記録する
操作中止から代替措置、点検、再試験、復旧承認までをBCPへ組み込みます。
消防計画の初動とBCPの事業継続をつなぐ担当者も決めます。
再試験の条件まで確認票へ入れます。
迷わない手順にしておきましょう。
よくある質問
まとめ
連打せず最初の状態を残します。
始動系統を一式で確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- 総務省消防庁 自家発電設備の基準 昭和48年消防庁告示第1号
- 総務省消防庁 蓄電池設備の基準 昭和48年消防庁告示第2号
- 総務省消防庁 消防用設備等の点検基準・点検要領・点検票
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および公的資料に基づく一般的な解説です。自家発電設備が始動しない場合は、自己判断で始動ボタンの連打、端子の取外し、遮断器操作、非常停止の解除をせず、設備仕様を把握した専門業者へ相談してください。個別の点検、整備、再始動、負荷試験、代替措置、復旧判断は、設備の仕様と施設の運用状況に応じて所轄消防署や専門家へご確認ください。





