排煙設備は火災の煙を外へ出すためだけの設備ではなく、消防隊が消火活動をおこなう拠点を守るための設備でもあります。
だからこそ施行規則には、風道や排煙機が地震で壊れないようにするための基準が定められています。
この基準はスプリンクラー設備などの耐震基準と同じ条文を土台にしていますが、対象になる部品はまったく違います。
この記事では排煙設備に求められる耐震措置の中身と、他の設備との違いを条文から整理します。
うちのビルにも排煙設備が付いていますが、地震のときにちゃんと動くかなんて考えたこともありませんでした。
そのとおりです。
排煙設備にも施行規則で決まった耐震の基準があります。
スプリンクラーの水槽を固定する話は聞いたことがありますが、排煙設備も同じ話ですか。
対象が違います。
順番に見ていきましょう。
- 排煙設備は消防法施行令上「消火活動上必要な施設」に位置づけられている
- 施行規則第30条第11号により風道・排煙機・給気機・非常電源に耐震措置が求められる
- 求められる措置は施行規則第12条第1項第9号の地震による震動等に耐えるための有効な措置と同じ条文である
- スプリンクラー設備の対象は貯水槽等であり、排煙設備の対象とはまったく違う
- 増設や更新工事のたびに耐震措置が引き継がれているかを確認する必要がある
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目次
排煙設備はなぜ地震対策も必要なのか

だからこそ、地震で壊れてよい設備とはされていません。
避難のための設備というイメージが強いですが、消防法施行令はこれを消火活動上必要な施設という別のグループに分類しています。
特別避難階段の付室や非常用エレベーターの乗降ロビーにたまった煙を排出し、消防隊が安全に活動できる状態を保つのが目的です。
避難用の設備と違って、火災が起きたその瞬間だけでなく、消防隊が到着してからも機能し続けることが前提になります。
地震のあとに火災が起きる複合災害では、この前提が崩れないようにする備えが必要です。
排煙設備って、逃げるための設備だとばかり思っていました。
消防隊のための設備でもあります。
だから壊れにくさが求められます。
耐震措置が必要なのはどの部分なのか

条文は対象になる部分を名指しで挙げています。
風道は煙や空気を運ぶダクト、排煙機と給気機はそれを動かす送風機、非常電源はこれらを止めないための電源です。
第30条第11号は自分で措置の中身を書かず、第12条第1項第9号という別の条文の措置をそのまま使うという書き方をしています。
排煙設備は水を使う設備ではないので、貯水槽や配管といった部品はそもそもありません。
次の章で、その第12条第1項第9号が実際に何を求めているかを見ていきます。
排煙機と給気機、名前が似ていて区別が付きません。
排煙機は煙を出す側、給気機は代わりに空気を入れる側です。
規則が求める有効な措置とは何か

条文はもともとスプリンクラー設備などのために書かれたものです。
具体的な工法まで条文が細かく指定しているわけではなく、有効な措置という形で結果だけを求める書き方になっています。
排煙設備の場合は、この措置を風道・排煙機・給気機・非常電源に置き換えて読むことになります。
一般には機器の転倒や移動を防ぐ耐震固定や、風道の変位を吸収する可とう継手などが有効な措置として扱われますが、どこまでの措置が必要かは設備の規模や設置状況によって変わります。
判断に迷う場合は、設計者や所轄消防署に確認しておくと安心です。
「有効な措置」って、結局どこまでやればいいんでしょうか。
条文は結果だけを求めていて、工法までは決めていません。
なぜスプリンクラーの耐震基準と対象が違うのか

けれど読み込む側の設備によって、対象になる部品は変わります。
スプリンクラー設備(第14条)や屋外消火栓設備(第22条)は水を使う設備なので、貯水槽等(貯水槽・加圧送水装置・配管など)が対象です。
排煙設備(第30条)は水を使わない設備なので、対象は風道・排煙機・給気機・非常電源に置き換わります。
「耐震措置イコール貯水槽の固定」という理解のまま排煙設備を点検すると、そもそも対象の部品を見落とすことになります。
自分の建物にどの設備があり、それぞれの耐震措置の対象が何かを、条文の号ごとに確認しておく必要があります。
同じ条文なのに、設備ごとに対象が変わるとは知りませんでした。
はい。
そこは設備ごとに読み替えられている点に注意が必要です。
防火管理者は明日から何を確認すればよいのか

図面と現地の両方を見ることが大切です。
まず設計図書や維持台帳で、風道・排煙機・給気機・非常電源の耐震固定や可とう継手の記載を確認します。
古い建物では、そもそも施工時に耐震措置が講じられていたかどうかから確認が必要になることもあります。
増設や更新工事をしたときは、新しく入れた機器にも同じ措置が引き継がれているかを見ます。
判断に迷う措置の内容は、設計者や所轄消防署に相談してください。
うちは古い建物なので、まず図面が耐震措置に触れているか確認してみます。
それが第一歩です。
分からない点は遠慮なくご相談ください。
よくある質問
まとめ
うちの排煙設備も、風道や排煙機の固定まで確認してみます!
ご確認いただきありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第7条第6項(消火活動上必要な施設の定義)
- 消防法施行規則第30条第11号(排煙設備の耐震措置)
- 消防法施行規則第12条第1項第9号(地震による震動等に耐えるための有効な措置)
- 消防法施行規則第14条(スプリンクラー設備に関する基準の細目)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





