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配管が防火区画を貫通するすき間はなぜ埋めなければならないのか|給水管や配電管に求められる不燃材料の処理を解説

防火区画を貫通する配管のすき間はなぜ埋めなければならないのか給水管や配電管に求められる不燃材料の処理を解説する記事のアイキャッチ画像

建物が完成したあとも、給水管配電管を通すために壁や床へ穴をあけることがあります。
その壁や床が防火区画だった場合、穴をあけっぱなしにしてよいのかは意外と知られていません。
建築基準法施行令は、すき間の処理と管そのものの構造の両方を条文で定めています。
条文をたどるとすき間を埋めるだけでは足りない場合があることが見えてきます

リフォームで新しく配管を通す工事をしました。
壁にあけた穴はどうすればよいのでしょうか。

その壁が防火区画かどうかで対応が変わります。
防火区画なら、すき間をふさぐ処理が建築基準法施行令で義務づけられています

すき間さえふさげば、それで終わりですか。

実はそれだけでは足りません。
管そのものの構造にも別の基準があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 給水管や配電管が防火区画を貫通する場合は、すき間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければなりません
  • 対象になる区画は防火区画だけでなく防火壁防火床界壁にも及びます
  • すき間の処理に加えて、管自体を不燃材料で覆う・外径を制限する・認定を受けた耐火措置にするのいずれかに適合させる必要があります
  • 一時間準耐火基準の区画で囲われたパイプシャフトの中は個別処理が不要になる例外があります
  • 後からのリフォームや設備更新で開けた穴も同じ処理が必要です

防火区画を貫通する配管のすき間の不燃材料による処理と管自体の耐火構造とパイプシャフト内の区画の条件を示した図解

防火区画を貫通する配管のすき間はなぜ埋めなければならないのか

防火区画の壁を貫通する配管のすき間から火や煙が抜けてしまうことを示したイメージ
すき間があいたままだと、そこが火や煙の通り道になります。
建築基準法施行令はこの穴を放置しないよう定めています。
建築基準法施行令第百十二条第二十項 給水管、配電管その他の管が第一項、第四項から第六項まで若しくは第十八項の規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第七項若しくは第十項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第十一項本文若しくは第十六項本文の規定による準耐火構造の床若しくは壁(略)(以下この条において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない
すき間をふさぐ材料は不燃材料に限られます
防火区画は火災を一定の区画内に閉じ込めるための壁や床です。をあけて配管を通した時点で、その区画は本来の性能を失います。
条文が求めているのは、管のまわりのすき間をモルタルなどの不燃材料で埋め戻し、区画としての連続性を取り戻すことです。
発泡ウレタンや石こうボードの端材のような可燃性の材料で穴を塞いだだけでは、この基準を満たしません。
配管工事のあとに壁の仕上げを戻す前に、すき間の処理が済んでいるかを確かめる習慣をつけてください。

壁紙やパテで穴の見た目を整えるだけでは駄目なんですね。

そのとおりです。
見た目ではなく不燃材料で埋まっているかどうかが基準です。

どんな管やどんな防火区画がこの規制の対象になるのか

給水管と配電管が壁の防火区画と床の防火区画をそれぞれ貫通していることを示したイメージ
対象になる管は水道の配管だけではありません。
区画のほうも、フロアを分ける壁や床だけにとどまりません。
建築基準法施行令第百二十九条の二の四第一項第七号 給水管、配電管その他の管が、第百十二条第二十項の準耐火構造の防火区画、第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁(略)を貫通する場合においては、これらの管の構造は、次のイからハまでのいずれかに適合するものとすること。
給水管と配電管その他の管が対象です
給水管や配電管に限らず、排水管や通信線を通す管も含めて「その他の管」として同じ扱いを受けます。
区画のほうは、フロアを分ける準耐火構造の防火区画に加えて、防火壁防火床、共同住宅の住戸を区切る界壁、間仕切壁、隔壁までが対象に並びます。
つまり「うちは区画された階の壁だけ気をつければよい」という発想では足りません。住戸間の壁を貫通する配管も同じ規制がかかります。
自分の建物のどこにこれらの区画が通っているかを、配管図面と照らし合わせて把握しておくことが最初の一歩です。

共同住宅の住戸を仕切る壁も対象になるとは思っていませんでした。

界壁も条文に名指しされています。
まずは配管図面で区画の位置を確認してください。

管そのものにはどんな構造が求められるのか

配管の貫通部を不燃材料で覆う施工と防火区画の断面を示したイメージ
すき間の処理だけでは終わりません。
管そのものが火にどう反応するかも条文で問われます。
同号イ 給水管、配電管その他の管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に一メートル以内の距離にある部分を不燃材料で造ること
同号ロ 給水管、配電管その他の管の外径が、当該管の用途、材質その他の事項に応じて国土交通大臣が定める数値未満であること。
同号ハ (略)加熱開始後二十分間、区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。
イ・ロ・ハのいずれか一つを満たせば足ります
イは貫通部の前後1メートルの範囲を管ごと不燃材料で覆う方法、ロは管の外径そのものを細く抑えておく方法、ハは国土交通大臣の認定を受けた耐火二層管などの製品を使う方法です。
塩化ビニル管のような樹脂製の管は火熱で溶けたり燃え広がったりするおそれがあるため、すき間をふさいだだけでは区画の性能を保てません。
新築時の設計図に載っている貫通部は、たいていイかハの方法で処理されています。図面が残っているかを確認しておくと、あとの点検が楽になります。

プラスチックの管はすき間を埋めただけでは駄目なんですね。

そうです。
管そのものが耐火二層管などの認定品かどうかを確かめてください。

実務で見落としやすいのはどこか

点検口が開いたままのパイプシャフトと後から追加された未処理の配管を示したイメージ
例外の条件を取り違えると、かえって危険な状態を見逃します。
条文にはただし書きがあります。
同号ただし書 ただし、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中にある部分については、この限りでない
パイプシャフトの中なら無条件で免除されるわけではありません
免除される条件は、シャフト自体が一時間準耐火基準の床・壁または特定防火設備でしっかり区画されていることです。シャフトの点検口が防火戸になっておらず開けっぱなしになっていれば、この条件は満たされません。
もう一つの落とし穴は後からの工事です。エアコンの更新やネットワーク配線の増設で新しく配管や配線を通したとき、貫通部の処理をやり直さずに仕上げだけ戻してしまう例が実務では珍しくありません。
新築時に基準を満たしていても、後工事のたびに区画の性能が少しずつ崩れていくおそれがあります。工事のたびに貫通部が増えていないかを確認してください。

パイプシャフトの点検口、いつも開けっぱなしでした。

それでは免除の条件が崩れてしまいます。
点検口を閉めておく習慣から見直してください。

明日からなにを確認すればよいのか

懐中電灯を持った担当者が配管の貫通部のすき間処理を点検している様子を示したイメージ
条文が求めているのは完成時だけの話ではありません。
維持管理として日常的に確認できることがあります。
確認しておきたい項目
  • パイプシャフトや天井裏で、配管まわりのすき間がふさがれずに残っていないか
  • 最近のリフォームや設備更新で、新しく壁や床に穴をあけた箇所がないか
  • パイプシャフトの点検口が防火戸のまま閉まっているか
  • 貫通部の処理方法(不燃材料の被覆・認定品の使用など)が施工記録として残っているか
まずは目視できる範囲から見て回ることが第一歩です
天井点検口を開けて、配管のまわりに白い不燃材料の処理跡があるかを確かめてください。処理跡が見当たらない貫通部があれば、そこは要注意です。
リフォーム業者に工事を依頼するときは、防火区画を貫通する工事かどうかを先に伝えておくと、処理の抜け漏れを防げます。
自分たちで判断がつかない貫通部が見つかったら、建築士や施工業者に相談し、必要な是正を行ってください。

つまり天井裏を懐中電灯で見て回れば、おかしな箇所には気づけそうですね

そのとおりです。
リフォームの発注前に区画のことを一言伝えるだけでも変わります。

よくある質問

Qすき間を市販の耐火パテで埋めれば基準を満たしますか?
A建築基準法施行令第百十二条第二十項が求めているのは不燃材料ですき間を埋めることです。市販の耐火パテがこの基準を満たすかどうかは製品ごとの性能によって異なるため、認定や適合性の確認は施工業者または建築士にご確認ください。
Q木造の戸建て住宅でもこの規制の対象になりますか?
A建築基準法施行令第百十四条の界壁は長屋や共同住宅の住戸を区切る壁を対象にしています。単独の戸建て住宅で防火区画そのものが存在しない場合は、この規制が直接には及びません。ご自宅の壁が対象かどうかは建築士にご確認ください。
Q換気や空調のダクトも同じ基準ですか?
Aダクト(風道)は建築基準法施行令第百十二条第二十一項が別に定めており、防火ダンパーという専用の設備で区画する仕組みです。給水管や配電管のすき間処理とは条文も対策も分かれています。
Q未処理の貫通部が見つかったら誰に相談すればよいですか?
A是正の方法は建物の構造や貫通部の状況によって異なるため、建築士や工事を行った施工業者にまずご相談ください。消防用設備等の点検とあわせて気づいた場合は、所轄消防署にも状況をお伝えいただくと安心です。

まとめ

給水管や配電管が防火区画を貫通する場合は、すき間を不燃材料で埋めなければなりません
対象の区画は防火壁・防火床・界壁にも及びます
管そのものも不燃材料で覆う・外径を制限する・認定品を使うのいずれかが必要です
パイプシャフト内の免除は、シャフト自体の区画性能が条件です
点検口を開けっぱなしにすると免除の条件が崩れます
後からのリフォームや設備更新でも同じ処理が必要です
未処理の貫通部が見つかったら建築士や施工業者に相談してください

すき間の処理と管そのものの構造、どちらも見る必要があると分かりました。
天井点検口から見て回ります。

すき間の処理跡と点検口の状態、この2つを見れば大枠はつかめます。
気になる箇所があれば早めの是正が安心です
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第112条第20項
  • 建築基準法施行令第113条
  • 建築基準法施行令第114条
  • 建築基準法施行令第129条の2の4
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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