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自衛消防隊はどこまで出動するのか|消防隊到着の前後で変わる責任者と処分の権限

工場の敷地で放水訓練をする自衛消防隊

工場や大規模な事業所には自衛消防隊が置かれています。
自社の建物で火災が起きたときは自ら消火にあたりますが、消防隊が到着したあとの指揮はどうなるのでしょうか。
また敷地の外で火災があったとき、応援に出動する義務はあるのかも実務上の問題になります。
この記事では自衛消防隊の出動範囲と責任の所在を消防庁の質疑応答に沿って整理します。

うちの自衛消防隊は、消防車が来たあともそのまま指揮をとってよいのでしょうか。

そこで切り替わります。
最高責任者は市町村消防機関が現場に到着するまでとされ、そのあとの処分は消防機関の責任者の指示によります。

よその火災にも出動しなければならないのでしょうか。

強制はされません。
該当する規定がない場合はその出動を強制すべき筋のものではないとされています。
この記事でまとめて解説します!

この記事の結論
  • 自衛消防隊の消火行為の最高責任者は市町村消防機関が現場に到着するまではその消防部の現場の最高責任者である
  • 消防機関が出動してきた場合の破壊等の処分行為の責任者は市町村消防機関の責任者であって単独で処分を行なうことはできない
  • 規定に該当しない場合は自衛消防隊の出動を強制すべき筋のものではない
  • どこまで出動させるかはできうる限りあらかじめ一般的に了解事項として定めておくことが望ましい

消防隊が到着するまでの最高責任者は自衛消防隊の側にある

自社の建物に放水する自衛消防隊員のイラスト

昭和28年9月2日付け国消総発第110号は、教会本部に設置される消防部隊についての照会です。
問われたのは当教会所有の建築物その他の工作物の火災の際に、消防法第29条第2項及び第3項に規定する延焼防止の措置を行なう場合の責任は誰にあるかという点でした。

回答はこれらのものに対する現場における消火行為及び消火のために必要な行為の最高責任者は、市町村消防機関が現場に到着するまでは、貴消防部の現場の最高責任者であると解されるです。
到着までは自衛側が仕切ります

ただし根拠となる条文については注意が示されています。
この場合の行為は消防法第29条の規定に基づいて行なわれるものでなく、応急消火行為としてなされるものと解され、その場合の最高責任者は貴消防部の現場の最高責任者であるという意味であるとされました。

つまり自衛消防隊の活動は第29条の権限に基づく処分ではなく応急消火行為として位置づけられているということです。
権限の性質が違う以上、できることの範囲も異なってきます。

到着するまでは、こちらが最高責任者になるのですね。

その区切りで切り替わります。
初期対応の指揮を誰が執るか、消防計画に書いておいてください。

消防機関の到着後は処分の責任者が消防機関の側へ移る

自衛消防隊員が下がり消防隊員が前に出るイラスト

同じ回答では、消防機関が到着したあとの扱いも示されています。
対象となるのは市町村消防機関が出動してきた場合と、本部の管理下にない建築物等について消防部が出動した場合です。

回答は建築物等に対する一部又は全部の破壊等の処分行為の責任者は、市町村消防機関の責任者であつて、貴消防部の指揮者は右責任者の指示によるべきであり、単独で前記の処分を行なうことはできないです。
単独では処分できません

建物を壊すといった重い措置は、消防機関の責任者の判断のもとで行われるということです。
自衛消防隊としては到着後は指示を受けて動く立場になると整理しておく必要があります。

到着したあとは、指示を受けて動くのですね。

重い措置は消防機関の判断です。
引き継ぎの手順を、訓練で確かめておきましょう。

敷地外への出動は強制されないが自発的な協力は拒まれない

工場の敷地の境界を越えて外の建物へ向かう矢印のイラスト

昭和29年5月17日付け国消総発第36号は、自衛消防隊の出動範囲についての照会です。
照会では機動力を有する工場特設消防隊が相当数あり、事実上常に一般火災にも出動して公設消防隊に協力し感謝されているが、消防法第29条第5項の適用がない場合には自衛消防隊は自衛区域以外の火災に対し如何なる範囲まで出動すべきであるかと問われました。

回答はまず前提を確認します。消防法においては消防の責任は市町村の消防機関にあるとしているので、消防機関以外の者に消防活動を行なわせ、又は協力すべき義務を負わせるのは、同法第25条及び第29条第5項の規定に該当する場合だけであるとされています。

そのうえで結論が示されます。
自衛消防隊が機動力を有するものであつても、これらの規定に該当しない場合は、その出動を強制すべき筋のものではないが、自発的に協力援助する意志を有し、かつ援助を必要とする場合は、これを拒む理由もないとされました。

出動しなければならないわけではなく、しかし申し出があれば断る理由もないという位置づけです。
義務ではないが妨げでもありません

敷地の外への出動は、強制されないのですね。

自発的な協力は妨げられません。
方針を社内で決めておくと現場が迷いません。

出動の範囲はあらかじめ了解事項として定めておくことが望ましい

机の書面の上で握手を交わす2人のイラスト

では実際にはどこまで出動させるべきなのでしょうか。
回答はその判断の所在を明らかにしています。

如何なる範囲まで出動さすべきかは、一に現場統制又は応援の必要度等を総合的に勘案した消防長の判断によるところであり、この点については、できうる限りあらかじめ一般的に了解事項として定めておくことが望ましいとされています。

火災が起きてから協議していては間に合いません。
事前の取り決めが要ります

自衛消防組織を持つ事業所では、所轄消防本部との間で出動の範囲や連絡方法を平常時に取り決めておくことが、この回答の趣旨に沿った備えになります。

範囲は、あらかじめ決めておくのがよいのですね。

火災が起きてからでは間に合いません。
所轄消防本部と、出動の範囲と連絡方法を取り決めてください。

自発的に出動して協力を要請されたら第29条第5項の指示として扱う

現場に到着した自衛消防隊に協力を要請する消防吏員のイラスト

了解事項がないまま自衛消防隊が現場に出向いた場合の扱いも示されています。
これは消防法第36条の2による公務災害補償と結びつく重要な整理です。

回答では了解事項があつて、それにより応援出動すべき場合了解事項がなく、自衛消防隊が自発的に出動して現場附近に到着した場合が区別されています。
後者については以後現場附近に在る者とみなしてこれに協力を要請したときは、同法第29条第5項による指示があつたものとして処理するのが適当であるとされました。

協力を要請された時点で第29条第5項の指示があったものとして扱われるということです。
これにより、その後の活動中に災害を受けた場合の補償の根拠が整うことになります。

自発的に駆けつけただけでは立場が定まりませんが、現場で要請を受けることで位置づけが変わるという点は押さえておく価値があります。

協力を要請された時点で、扱いが変わるのですね。

補償の根拠にもつながります。
出動の記録は、時刻まで残しておいてください。

よくある質問

Q. 消防隊が到着したあとも自衛消防隊が指揮を執りますか?
執りません。建築物等に対する一部又は全部の破壊等の処分行為の責任者は市町村消防機関の責任者であって、消防部の指揮者は右責任者の指示によるべきであり、単独で処分を行なうことはできないとされています。
Q. 敷地の外の火災にも出動する義務がありますか?
ありません。消防法第25条及び第29条第5項の規定に該当しない場合は、その出動を強制すべき筋のものではないとされています。ただし自発的に協力援助する意志を有し援助を必要とする場合は、これを拒む理由もないともされています。
Q. 出動範囲は誰が決めますか?
現場統制又は応援の必要度等を総合的に勘案した消防長の判断によるとされています。この点についてはできうる限りあらかじめ一般的に了解事項として定めておくことが望ましいとされています。
Q. 取り決めなく出動した場合はどう扱われますか?
現場附近に到着したあと、現場附近に在る者とみなして協力を要請したときは、消防法第29条第5項による指示があったものとして処理するのが適当であるとされています。

まとめ

  • 自衛消防隊の消火行為の最高責任者は市町村消防機関が現場に到着するまではその消防部の現場の最高責任者である
  • この場合の行為は消防法第29条の規定に基づくものでなく応急消火行為としてなされるものと解される
  • 消防機関が出動してきた場合の破壊等の処分行為の責任者は市町村消防機関の責任者である
  • 自衛消防隊の指揮者は右責任者の指示によるべきであり単独で処分を行なうことはできない
  • 消防法第25条及び第29条第5項に該当しない場合は出動を強制すべき筋のものではない
  • 自発的に協力援助する意志を有し援助を必要とする場合はこれを拒む理由もない
  • 出動の範囲はできうる限りあらかじめ一般的に了解事項として定めておくことが望ましい
  • 自発的に出動して協力を要請されたときは第29条第5項による指示があつたものとして処理する

先に消防署と話をつけておくということですね。
すっきりしました。

そのとおりです。
自衛消防組織の編成や消防計画の見直し、所轄消防本部との調整までお手伝いできますのでご相談ください。

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第25条・第29条・第36条の2 e-Gov法令検索
  • 自衛消防隊の行なう消防作業の責任について(昭和28年9月2日付け国消総発第110号 総務課長から奈良県丹波市天理教会本部あて回答)
  • 自衛消防隊の出動範囲について(昭和29年5月17日付け国消総発第36号 総務課長から富山県消防課長あて回答)
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の消火活動中の緊急措置等に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

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