消防用の機械器具に付いている検定マークやメーカーの自主表示マークは、店頭に並ぶ前の段階から法律で管理されています。
マークの正しさを守っているのは、実は最終的に使う建物の管理者だけではありません。
総務大臣は、その機械器具を扱う販売業者に対しても報告を求めたり、事務所や倉庫に立ち入って検査したりする権限を持っています。
この記事では、消防法第21条の14と第21条の16の7が定める報告徴収・立入検査の仕組みと、拒んだ場合の第44条の罰則を、実際の条文にもとづいて解説します。
うちは検定マークの付いた消火器を買っているので、それで安心だと思っていました。
建物を使う側としてはそれで十分ですが、実は売る側にも別の義務が課されています。
売る側にも義務があるんですか。
うちには関係ない話だと思っていました。
はい、消防法は販売業者に対しても、総務大臣が報告や立入検査を行えると定めています。
- 総務大臣は、検定対象機械器具等と自主表示対象機械器具等の両方について、販売業者等に報告や立入検査を求める権限を持っています
- この権限は、表示の除去命令や回収命令を実効あるものにするために置かれています
- 立入検査を行う職員には身分証明書の提示義務があり、犯罪捜査のためには使えません
- 報告拒否・虚偽報告・立入検査の拒否や妨害はすべて第44条第十六号の罰則の対象になります
- 違反すると30万円以下の罰金又は拘留に処せられます
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目次
なぜ販売業者にも消防への報告や立入検査が及ぶのか

流通の入口である販売業者の段階から、マークの正しさを確かめる仕組みが法律に置かれています。
「前二条」とは、不正な表示を除去させる命令(第21条の12)と、危険な機械器具等の回収を命じる命令(第21条の13)を指します。
これらの命令を根拠のある形で出すために、総務大臣はまず販売業者等から報告を取り、必要なら現地で立入検査を行うことができます。
つまり販売業者は、命令を受ける立場だけでなく、その前段階の調査にも協力する立場に置かれています。
除去命令や回収命令が出る前に、まず調べに来るということですか。
そのとおりです。
命令の前段階として、報告や立入検査の権限が別に定められています。
検定対象品と自主表示対象品のどちらの販売業者も対象になるのか

販売業者への調査権は、そのどちらの制度にもそれぞれ置かれています。
第21条の14は検定対象機械器具等(消火器や住宅用防災警報器など、型式承認と型式適合検定を経る器具)の販売業者等が対象です。
第21条の16の7は自主表示対象機械器具等(製造・輸入業者自らが技術上の規格への適合を確認して表示を付ける器具)の販売業者等が対象です。
扱っている機械器具等がどちらの制度に属するかにかかわらず、販売業者等は同じ内容の報告徴収・立入検査を受ける立場にあります。
うちが仕入れている器具が、検定と自主表示のどちらなのか、正直よく分かっていません。
仕入れ先に確認しておくとよいですね。
どちらの制度でも調査を受ける立場は変わりません。
総務大臣は具体的に何を求めることができるのか

条文には、調査する側にも守るべき条件が定められています。
求められるのは、業務に関する報告と、事務所・事業所・倉庫への立入検査の2つです。
立入検査では、消防の用に供する機械器具等そのものだけでなく、帳簿や書類その他の物件も検査の対象になり、関係者への質問も行われます。
第21条の14第3項は、この立入検査の権限を犯罪捜査のためのものと解釈してはならないとも定めており、あくまで表示制度を守るための調査に限られます。
証明書を見せてもらえるなら、応じても安心できますね。
はい、証明書の提示は職員の義務です。
提示がなければ確認を求めてください。
拒否や虚偽報告をするとどうなるのか

除去命令や回収命令に違反した場合とは、別の条文で罰せられる点に注意が必要です。
罰則は30万円以下の罰金又は拘留で、除去命令や回収命令そのものへの違反(第41条・拘禁刑又は100万円以下の罰金)よりは軽いものです。
とはいえ、命令が出る前の調査段階で拒めば独立して処罰される以上、命令を避けるために調査を拒否する対応は成り立ちません。
点検報告義務違反(第44条第十一号)と同じ第44条の枠組みですが、対象になる条文も義務の中身もまったく別物です。
命令さえ受けなければ大丈夫だと思っていましたが、調査を拒むだけでも駄目なんですね。
そうです。
調査への協力そのものが独立した義務になっています。
販売業者は明日から何を確認すればよいのか

販売業者として、次の点を確認しておく必要があります。 調査には誠実に応じる一方で、相手の身元を確認する権利もあることを覚えておきましょう。
以下のポイントを、日頃の業務にあわせて確認しておきましょう。
- 取り扱っている機械器具等が検定対象と自主表示対象のどちらに当たるか把握しているか
- 立入検査に来た職員の身分証明書を確認しているか
- 仕入れ・在庫・販売に関する帳簿や書類を、すぐに提示できる状態で整理しているか
- 報告を求められたとき、事実と異なる内容を答えていないか
- 除去命令・回収命令が出た場合の対応も、あわせて社内で確認できているか
取扱いの記録は、日頃からきちんと整理しておきます。
それがいいですね。
日頃の整理が、いざというときの対応を早くします。
よくある質問
まとめ
売る側にもこんな仕組みがあるとは知りませんでした。
検定制度への対応は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第21条の14(検定対象機械器具等の販売業者等に対する報告徴収及び立入検査)
- 消防法第21条の16の7(自主表示対象機械器具等の販売業者等に対する報告徴収及び立入検査)
- 消防法第21条の12・第21条の13(検定対象機械器具等の表示の除去命令及び回収命令)
- 消防法第21条の16の5・第21条の16の6(自主表示対象機械器具等の表示の除去命令及び回収命令)
- 消防法第44条・第41条(罰則)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





