学校の校舎は、昼間の授業だけでなく、夕方以降の部活動や、地域の人への学校開放にも使われます。
国の基準では、学校の誘導灯は地階や無窓階などに限られますが、東大阪市では火災予防条例が床面積で上乗せをしています。
そのうえで、東大阪市消防局の運用基準は、昼間だけ使う学校と、日没以降の部活動や学校開放の扱いを具体的に書いています。
この記事では、国の基準と東大阪市の条例、運用基準を分けて整理し、夜も使う学校の誘導灯がどこで決まるのかを順にたどります。
東大阪市で学校の施設を管理しています。
夕方からの部活動や、地域のサークルへの貸し出しが増えてきました。
夜に使うかどうかで、誘導灯の扱いが変わることがあります。
東大阪市の基準には、学校の項目がはっきり書かれています。
昼間の学校には、誘導灯がいらない場合があるのですか。
うちの校舎にも、付いていない棟があります。
はい、昼間だけ使う学校には特例があります。
国の政令、市の条例、運用基準の順に読みましょう。
- 国の消防法施行令第26条は、学校の(7)項には地階、無窓階及び11階以上の部分だけに避難口誘導灯と通路誘導灯を求めています
- 東大阪市火災予防条例第50条は、(7)項で床面積の合計が300平方メートル以上の学校に誘導灯を上乗せし、昼間だけ使い採光が避難上十分なものを除いています
- 東大阪市の運用基準は、昼間だけ使う(6)項ニと(7)項の部分について、消防法施行令第32条又は条例第52条を適用して誘導灯を設置しないことができるとしています
- 日没以降の臨時的な授業、クラブ活動、学校関係者以外のサークル活動やイベントも、同じ特例の項目に挙がっていて、誘導標識の特例もこれを借りています
- 大阪市と堺市の公開資料には、夜の部活動や学校開放の項目は見当たらないので、管轄の消防署で確かめます
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目次
国の基準では学校に誘導灯はどこまで必要なのか

誘導灯と誘導標識の設置は、消防法施行令第26条第1項で決まります。
一 避難口誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分
四 誘導標識 別表第一(一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物
学校に関係する用途は、消防法施行令別表第一の次の2つです。
| 用途の項 | 別表第一に書かれている用途 | 国の政令で誘導灯が必要な部分 |
|---|---|---|
| (6)項ニ | 幼稚園又は特別支援学校 | 建物の全体 |
| (7)項 | 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの | 地階、無窓階及び11階以上の部分 |
一方で、誘導標識は(1)項から(16)項までのすべてが対象なので、学校にも必要です。
ただし、第3項で、誘導灯を基準どおりに設けた部分は、その有効範囲内の誘導標識を省けます。
また、消防法施行規則第28条の2は、居室から避難口を見とおせて歩行距離が短い階などを、誘導灯がいらない部分として定めています。
つまり国の基準は、学校については「地階や無窓階など、逃げにくい部分に誘導灯」という考え方です。
これに、市の火災予防条例が上乗せをすることがあります。
国の政令だけなら、ふつうの2階建ての校舎には誘導灯がいらないのですね。
国の政令だけなら、そう読めます。
ただし東大阪市では、条例の上乗せを確かめる必要があります。
東大阪市の火災予防条例は学校の誘導灯をどう上乗せしているのか

東大阪市火災予防条例では、第5章の第42条から第52条までが、消防用設備等の付加基準です。
誘導灯は、第50条に定められています。
2 令別表第1(5)項ロ、(7)項及び(12)項ロに掲げる防火対象物(同表(16)項ロに掲げる防火対象物に存するものを含む。)で、床面積の合計が300平方メートル以上のもの(日出から日没までの時間のみ使用する防火対象物で採光が避難上十分であるものを除く。)には、通路誘導灯を設けなければならない。
3 前2項の規定により設ける避難口誘導灯及び通路誘導灯は、令第26条第2項各号(第3号及び第5号を除く。)及び規則第28条の3(第5項を除く。)の規定の例により設置し、及び維持しなければならない。
国の政令と違って、地階や無窓階に限らず、建物に設けることになります。
ここで大事なのが、かっこ書きの除外です。
(7)項のうち、日出から日没までの時間のみ使用し、採光が避難上十分なものは、条例の対象から外れています。
昼間だけ使う学校は、条例の上乗せがかからないということです。
逆に、夜も使う学校は「日出から日没までの時間のみ」に当たらないので、床面積の合計が300平方メートル以上なら、条例の対象になると読めます。
第3項は、設置の仕方を、国の政令第26条第2項と規則第28条の3の例によるとしています。
昼間だけの学校は、条例の上乗せから外れるのですね。
では、夜に部活動をすると対象になるのですか。
条例の文言だけなら、その可能性があります。
そこで、運用基準の特例を読みましょう。
東大阪市の運用基準は昼間だけ使う学校の誘導灯をどう扱っているのか

その「誘導灯及び誘導標識の運用基準」の第2が、避難口誘導灯です。
5の特例は、次の書き出しで始まります。
学校の項目は、キです。
根拠として挙げられているのは、消防法施行令第32条又は条例第52条です。
消防法施行令第32条は、消防長又は消防署長が、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないなどと認めるときに、国の基準を適用しない規定です。
条例第52条は、同じ趣旨で、消防長が条例第5章の付加基準を適用しないことを定めています。
つまりキは、条例の除外だけでは外れない、国の政令が求める部分(幼稚園の建物や、学校の地階、無窓階など)にも、特例の道を開いていると読めます。
通路誘導灯の特例にも、同じ項目があります。
さらに、誘導標識の特例が、この2つの特例を借りています。
(1) 避難口誘導灯又は通路誘導灯の設置に関し特例基準を適用できる部分
- 消防法施行令第26条第1項が、(6)項は建物の全体に、(7)項は地階、無窓階及び11階以上の部分に、避難口誘導灯と通路誘導灯を求め、誘導標識は(1)項から(16)項までのすべてに求めます
- 東大阪市火災予防条例第50条が、(7)項で床面積の合計が300平方メートル以上のものに誘導灯を上乗せし、日出から日没までの時間のみ使用し採光が避難上十分なものを除きます
- 運用基準 第2 避難口誘導灯 5 特例(1)キが、昼間だけ使い採光が十分な(6)項ニ(特別支援学校を除く)と(7)項の部分について、令第32条又は条例第52条を適用して避難口誘導灯を設置しないことができるとします
- 運用基準 第3 通路誘導灯 4 特例(1)スが、同じ部分の通路誘導灯について、同じ扱いを定めます
- 運用基準 第5 誘導標識 7 特例(1)が、誘導灯の特例基準を適用できる部分は、令第32条を適用して誘導標識も設置しないことができるとします
- 特例は、消防長又は消防署長の判断が前提なので、昼間だけの使用と採光が十分かどうかを、管轄の消防署に確かめます
運用基準の凡例では、無印は消防法令や東大阪市火災予防条例、通知などで示された法令解釈基準を含む「法令基準」です。
昼間だけの学校なら、誘導灯だけでなく誘導標識まで省ける場合があるのですね。
はい、ただし採光が避難上十分という条件が付きます。
次は、夜に使う場合を見ましょう。
夜に部活動や学校開放で使うと誘導灯の扱いはどうなるのか

「日出から日没までの時間にのみ使用」と言えるかどうかが、気になるところです。
東大阪市の運用基準は、キのすぐ後に、日没以降の使い方を挙げています。
(ア) 臨時的な学校等の授業
(イ) クラブ活動
(ウ) 臨時的に学校等施設関係者以外の者が当該施設の一部を使用して行う各種サークル活動、イベント等
通路誘導灯の特例のセにも、同じ3つの使い方が挙がっています。
そして、誘導標識の7の特例(1)は、誘導灯の特例基準を適用できる部分を挙げているので、クとセの部分にも及ぶと読めます。
日没以降の臨時的な授業、クラブ活動、学校関係者以外のサークル活動やイベントは、それだけで昼間の特例から外れるわけではありません。
ただし、クの(ア)と(ウ)には「臨時的」という言葉が付いています。
夜間に授業をする学校のように、日没以降もいつも使っている場合は、キにもクにも当たらないと考えて、相談するのが安全です。
学校開放で日没以降に使うときの、誘導灯の付け方についても、運用基準の第7に項目があります。
体育館や特別教室だけを夜に開放するときは、使う部分から2方向に逃げられるように、誘導灯を付けるよう求めています。
夜も使う校舎の管理者は、次の順に整理しておくと、相談がスムーズです。
- 建物が(7)項の学校か、(6)項ニの幼稚園か、他の用途との(16)項の複合かを確かめます
- 地階、無窓階、11階以上の部分があるか、条例第50条の床面積の合計300平方メートル以上に当たるかを確かめます
- 日没以降に使う部屋と、使い方(臨時的な授業、クラブ活動、学校関係者以外のサークル活動やイベント、いつもの夜間授業)を書き出します
- 夜に使う部屋から屋外までの経路を図面に書き込み、2方向に避難できるかを確かめます
- 図面と使い方の一覧を持って、管轄の消防署に相談します
夜の部活動だけで、すぐに誘導灯が必要になるわけではないのですね。
でも、いつも夜に使うなら相談が必要と。
はい、「臨時的」かどうかが分かれ目になりそうです。
使い方を書き出して、消防署に確かめましょう。
大阪市や堺市では夜に使う学校の誘導灯をどう扱っているのか

まず、大阪市火災予防条例第45条も、学校の誘導灯を上乗せしています。
(1) 令別表第1(5)項ロ、(7)項及び(12)項に掲げる防火対象物(小規模特定用途複合防火対象物又は同表(16)項ロに掲げる防火対象物に存するものを含む。)で、床面積の合計が300平方メートル以上のもの
昼間だけ使うものを除くかっこ書きは、第2項の通路誘導灯の方にあります。
避難口誘導灯は、審査基準の特例適用基準で扱われています。
政令別表第1(7)項に掲げる防火対象物又はその部分で、次の(ア)及び(イ)に適合するもの。
(ア) 日の出から日没までの間のみ使用し、自然光により避難上有効な照度が得られること。
(イ) 誘導標識が省令第28条の3第5項に定める技術上の基準に従い設置されていること。
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 条例の上乗せ | 第50条。(5)項ロ、(7)項、(12)項ロで床面積の合計300平方メートル以上 | 第45条。(5)項ロ、(7)項、(12)項で床面積の合計300平方メートル以上(通路誘導灯は(5)項ロと(7)項) | 第70条。(7)項と(12)項で延べ面積300平方メートル以上(通路誘導灯は(7)項) |
| 条例の中の昼間の除外 | 避難口誘導灯と通路誘導灯の両方 | 避難口誘導灯と通路誘導灯の両方 | 通路誘導灯だけ |
| 運用基準の昼間の特例の対象 | (6)項ニ(特別支援学校を除く)と(7)項 | 避難口誘導灯は(7)項、通路誘導灯は(6)項ニと(7)項 | (7)項(特例適用基準に★印) |
| 避難口誘導灯の昼間の特例に誘導標識の条件 | 書かれていない | あり(規則第28条の3第5項) | あり(省令第28条の3第5項) |
| 日没以降の臨時的な授業、クラブ活動、サークル活動やイベント | 特例に挙がっている(ク、セ) | 見当たらない | 見当たらない |
| 夜に使う部分からの2方向避難 | ◆印の行政指導(第7) | 見当たらない | 見当たらない |
違うのは、東大阪市だけが、日没以降の部活動や学校開放を特例の項目に書き、誘導標識を条件にしていない点です。
大阪市と堺市では、避難口誘導灯の昼間の特例を使うときに、誘導標識を規則第28条の3第5項に従って設けることが条件になっています。
「見当たらない」は、各市が公開している誘導灯の基準を読んだ範囲でのことで、扱いがないという意味ではありません。
大阪市の避難口誘導灯の特例については、大阪市で避難口誘導灯がいらない出入口の記事で詳しく解説しています。
夜の使い方まで書いてあるのは東大阪市だけで、ほかの市は個別に相談するのですね。
はい、公開されている基準を読む限りはそうなります。
建物のある市の消防署に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
昼間の特例と夜の使い方の関係が、条文の順に分かりました。
まずは夜に使う部屋の一覧を作ります!
使う部屋と経路の図面があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「誘導灯及び誘導標識の運用基準」凡例、第2 避難口誘導灯 5 特例(1)(柱書、キ、ク)、第3 通路誘導灯 4 特例(1)(柱書、ス、セ)、第5 誘導標識 7 特例(1)、第7 その他 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 東大阪市火災予防条例(昭和48年東大阪市条例第38号)第50条、第52条(東大阪市例規集)
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3章 第2節 誘導灯及び誘導標識 第2 避難口誘導灯 5 特例(1)キ、第3 通路誘導灯 4 特例(1)ス https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例第45条(大阪市例規データベース)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版(令和8年4月1日改正)第3章 第1節 第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 細目 6 特例適用基準(1)エ・(2)ウ、堺市火災予防条例第70条の条文と解説及び運用 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法第17条第2項
- 消防法施行令第26条、第32条、別表第1
- 消防法施行規則第28条の2、第28条の3第5項
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準、条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している基準を読んだ範囲でのものです。誘導灯や誘導標識が必要かどうか、特例が適用されるかどうかについての個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





