BLOG

耐火構造で避難階段が二つあると避難器具の個数は減るのか|消防法施行規則第26条第1項の読替えが定める二つの要件を解説

耐火構造で避難階段が二つあると避難器具の個数は減るのか|消防法施行規則第26条第1項の読替えが定める二つの要件を解説

避難器具は収容人員に応じて設ける個数が決まります。
ところが同じ人数でも建物の造りによって必要な個数が変わる規定があります。
消防法施行規則第26条第1項は耐火構造避難階段の二つがそろう階について計算のもとになる人数を読み替えると定めています。
この記事では消防法施行令と消防法施行規則の条文だけを見て読替えの二つの要件と個数の変わり方を整理します

うちのビルは鉄筋コンクリート造で避難階段も二つあります。
それでも避難器具の個数は人数だけで決まるのでしょうか。

造りも効きます。
消防法施行規則第26条第1項は要件がそろえば計算のもとになる人数を読み替えると定めています。

読み替えるというのは何を何に置き換えることなのですか。
避難器具がまるごと要らなくなるという話でしょうか。

免除ではありません。
百人を二百人にというように個数を数えるときの区切りの人数のほうが大きくなります。

この記事の結論
  • 避難器具の個数は消防法施行令第25条第2項第一号が収容人員の区切りごとに決めている
  • 消防法施行規則第26条第1項はその区切りを百人から二百人へ二百人から四百人へ三百人から六百人へ読み替えると定めている
  • 要件は特定主要構造部を耐火構造としたものであることと直通階段を避難階段又は特別避難階段としたものが二以上あることの二つ
  • 読み替えられるのは個数を出す計算だけで避難器具を設けるかどうかの入口は変わらない
  • 第26条は第2項以降が数を引く免除する規定なのに対し第1項だけが区切りそのものを変える規定になっている

避難器具の個数を減らせる二つの要件について階の区分と耐火構造と避難階段と個数の計算という四つの確認点を示した図解

避難器具の個数を減らす規定はどこにあるのか

大きな法令集から小さな法令集へ矢印がのびその奥に四階建てのビルが立っているイラスト
個数の基準そのものは施行令に書かれています。
減らす側の規定は施行令から総務省令へ渡されています。
【消防法施行令第25条第2項第一号】前項各号に掲げる階には、次の表において同項各号の防火対象物の区分に従いそれぞれの階に適応するものとされる避難器具のいずれかを(略)設置すること。ただし、当該防火対象物の位置、構造又は設備の状況により避難上支障がないと認められるときは、総務省令で定めるところにより、その設置個数を減少し、又は避難器具を設置しないことができる。
減らす側の規定は消防法施行規則第26条にまとまっています。
第26条は避難器具の設置個数の減免という見出しで七つの項を持っています。
このうち第2項から第4項までは算出した数から避難階段や渡り廊下や避難橋の数を引く規定で第5項から第7項までは設置しないことができる場合を定めた規定です。
そして第1項だけが引き算でも免除でもなく計算に使う人数そのものを読み替える規定になっています。
自分のビルがどの項に乗れるかを調べるときは第1項から順に見ていくと重ね方を間違えません。

七つも項があるとは思いませんでした。
どれか一つに当てはまればよいのでしょうか。

第2項以降は前の項で出した数を受けて引く書き方になっています。
まず第1項に乗れるかを見てから先へ進むのが順番です。

計算のもとになる人数を読み替えられるのはどの階か

厚い壁のビルの左右に階段室が一つずつ付いていてその横に人が立っているイラスト
入口は避難器具が要る階であることです。
そのうえで階の側に二つの要件がかかります。
【消防法施行規則第26条第1項】令第二十五条第一項各号に掲げる防火対象物の階が次に該当するときは、当該階に設置する避難器具の個数は、令第二十五条第二項第一号本文中「百人」を「二百人」に、「二百人」を「四百人」に、「三百人」を「六百人」に読み替えて算出して得た数以上とする。 一 特定主要構造部を耐火構造としたものであること。 二 直通階段を避難階段又は特別避難階段としたものが二以上設けられていること
要件は構造と階段の二つだけです。
一つ目の特定主要構造部を耐火構造としたものは建物の側の条件で用途や面積は問われていません。
二つ目は直通階段のうち避難階段又は特別避難階段としたものが二以上あることで直通階段が二つあるだけでは足りません。
柱書が対象にしているのは令第25条第1項各号に掲げる防火対象物の階なので福祉施設の階でも旅館の階でも物品販売店舗の階でも同じように働きます。
確認申請の書類で構造を確かめ図面で階段の種別を数えるところから始めてください。

階段が二つあることは図面ですぐ分かります。
ただ避難階段かどうかまでは考えたことがありませんでした。

そこが第1項のいちばんの分かれ目です。
階段室の扉や区画の造りで避難階段かどうかが決まるので図面の凡例を見てください。

読み替えると必要な個数はどれだけ変わるのか

同じ広さの床が二つ並び左には避難器具の箱が三つ右には二つ置かれているイラスト
読み替えられるのは三つの数字です。
どの数字が使われるかは階の区分で決まっています。
【消防法施行令第25条第2項第一号(抜粋)】(略)同項第一号、第二号及び第五号に掲げる階にあつては、収容人員が百人以下のときは一個以上、百人を超えるときは一個に百人までを増すごとに一個を加えた個数以上、同項第三号に掲げる階にあつては、収容人員が二百人以下のときは一個以上、二百人を超えるときは一個に二百人までを増すごとに一個を加えた個数以上、同項第四号に掲げる階にあつては、収容人員が三百人以下のときは一個以上、三百人を超えるときは一個に三百人までを増すごとに一個を加えた個数以上設置すること。(略)
区切りの人数が倍になります。
福祉施設や旅館の階と直通する階段が二以上ない階は百人区切りなので読み替えると二百人区切りになります。
劇場や物品販売店舗などの階は二百人区切りなので四百人区切りに事務所や工場などの階は三百人区切りなので六百人区切りになります。
たとえば令別表第一(六)項の階で収容人員が300人なら読み替える前は1個に二つを加えた3個ですが読み替えた後は1個に一つを加えた2個になります。
収容人員が150人の階なら読み替える前は2個で読み替えた後は1個です。

つまり区切りが倍になるぶん個数がおよそ半分になるということですね。
数え方の意味がやっと分かりました。

そのとおりです。
ただし区切り以下の人数なら読み替えても1個のままなので小さな階では差が出ません。

実務で見落としやすいのはどこか

床の上に五人が立ちその右端に避難器具の箱が残ったままで左に点検表を持つ人がいるイラスト
読替えは計算の途中にだけ効きます。
似た言葉が項ごとに違う書かれ方をしている点にも注意が要ります。
【消防法施行規則第26条第2項】令第二十五条第一項各号に掲げる防火対象物の階に建築基準法施行令第百二十条、第百二十一条及び第百二十二条の規定により必要とされる直通階段で、建築基準法施行令第百二十三条及び第百二十四条に規定する避難階段(屋外に設けるもの及び屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限る。)又は特別避難階段としたものが設けられている場合は、当該階に設置する避難器具の個数は、令第二十五条第二項第一号本文又は前項の規定により算出して得た数から当該避難階段又は特別避難階段の数を引いた数以上とすることができる。(略)
読み替えられるのは個数の計算だけです。
避難器具を設けるかどうかの入口は令第25条第1項が用途と階と収容人員で決めていて第26条第1項の読替えの対象には入っていません
たとえば(六)項の二階が収容人員20人で入口の基準に当たるなら読替えが使えても避難器具そのものは必要です。
もう一つは避難階段という言葉の書かれ方で第26条第2項には屋外に設けるもの及び屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限るという括弧書きが付いているのに対し第1項第二号にはこの括弧書きがありません。
同じ言葉でも項ごとに範囲の書き方が違うので実際の当てはめは所轄消防署にご確認ください。

読替えが使えたら避難器具が要らなくなると思い込んでいました。
あくまで個数の話なのですね。

設置しないことができる規定は第5項から第7項までです。
そちらは要件も対象の階も違うので別の条件として読み分けてください。

明日からなにを確認すればよいのか

点検表を持つ人と図面と巻尺を置いた机と階段室が二つある建物の模型を並べたイラスト
まず自分の階が避難器具の対象かどうかから始めます。
柱書には対象から外れる階も書かれています。
【消防法施行令第25条第1項】避難器具は、次に掲げる防火対象物の階(避難階及び十一階以上の階を除く。)に設置するものとする。 一 別表第一(六)項に掲げる防火対象物の二階以上の階又は地階で、収容人員が二十人(下階に同表(一)項から(四)項まで、(九)項、(十二)項イ、(十三)項イ、(十四)項又は(十五)項に掲げる防火対象物が存するものにあつては、十人)以上のもの
確かめる順番は四つです。
一つ目はその階が令第25条第1項のどの号に当たるかで避難階と11階以上の階は柱書で対象から外れています。
二つ目は収容人員の人数で三つ目は特定主要構造部が耐火構造かどうかを確認申請の書類で確かめることです。
四つ目は直通階段のうち避難階段又は特別避難階段としたものが二以上あるかを図面で数えることです。
二つの要件がそろっていれば読み替えた区切りで個数を出し直し今ある避難器具の数と突き合わせてください。

確認申請の書類と図面をそろえれば自分でも確かめられそうです。
今の器具の数と並べて見てみます。

その並べ方でよいです。
数が合わないときは増設か減設かの判断が要るので所轄消防署へ図面を持って相談してください。

よくある質問

Q直通階段が二つあれば第1項の要件を満たしますか?
A第26条第1項第二号が求めているのは直通階段を避難階段又は特別避難階段としたものが二以上あることです。ふつうの直通階段が二つあるだけでは条文の書きぶりを満たしません。
Q読替えを使うと避難器具を置かなくてよくなりますか?
A第1項は個数を出す計算の区切りを読み替えるだけの規定です。読み替えても1個以上という下限は残るので設置そのものが不要になることはありません。
Q第1項と第2項は同時に使えますか?
A第2項は令第25条第2項第一号本文又は前項の規定により算出して得た数から引くと書かれています。第1項で読み替えた数を受けて引く順番になっています。
Q十一階以上の階には避難器具は要りませんか?
A令第25条第1項の柱書は避難階及び十一階以上の階を除くと定めています。避難器具の対象からは外れますが他の消防用設備等の基準は別に働きます。

まとめ

避難器具の減免は令第25条第2項第一号ただし書から規則第26条へつながっている
第26条第1項だけが引き算でも免除でもなく計算の区切りを読み替える規定である
要件は特定主要構造部を耐火構造としたものであることと避難階段又は特別避難階段が二以上あることの二つ
百人は二百人へ二百人は四百人へ三百人は六百人へ読み替えられる
どの区切りが使われるかは令第25条第1項の号の区分で決まる
避難器具を設けるかどうかの入口は読替えの対象に入っていない
第2項の避難階段には括弧書きがあるが第1項第二号には無い

構造と階段で区切りの人数が変わるという読み方をはじめて知りました。
さっそく図面を出して数え直します。

階段の種別の読み方で迷ったら㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第25条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第26条
  • 建築基準法施行令第123条及び第124条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
耐火構造で避難階段が二つあると避難器具の個数は減るのか|消防法施行規則第26条第1項の読替えが定める二つの要件を解説
避難器具は収容人員に応じて設ける個数が決まります。 ところが同じ人数でも建物の造りによって必要な個数が変わる規定があります。 消防法施行規則第26条第1項は耐火構造と避難階段の二つがそろう階について計算のもとになる人数を...