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放射性同位元素を扱う施設はなぜ消防機関との連携を予防規程に書くのか|対象となる施設と定めるべき5つの事項を解説

放射性同位元素施設の前に消防車が停まる様子

放射性同位元素や放射線発生装置を扱う施設では、火災や漏えいなど不測の事態が起きたとき、誰が駆けつけ何を確認するのかがあいまいになりがちです。
平成30年の原子力規制委員会規則の改正により、対象となる施設の放射線障害予防規程には都道府県警察・消防機関・医療機関との連携をどう図るかを明記することが求められるようになりました。
消防本部が現場で有効な活動を行うには、施設の情報を事前に把握しておく必要があるからです。
本記事では、この改正の背景と予防規程に定めるべき事項、施設側が今から確認しておくことを解説します。

うちは病院の放射線治療科で放射性同位元素を扱こてます。
予防規程に消防機関との連携も書かなあかんて聞いたんですけど。

平成30年の規則改正で追加された項目です。
まずは対象になるかどうかから確認しましょう。

全部のRI施設が対象なんですか。

いいえ、原子力規制委員会が定める特定の同位元素や装置を使う施設に限られます。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 対象施設は放射線障害予防規程に消防機関等との連携を明記する必要があります
  • 対象は原子力規制委員会が定める特定の放射性同位元素や放射線発生装置を使う施設に限られます
  • 予防規程には職務・組織、設備資機材、実施手順、訓練、連携先の5つを定めます
  • 消防本部へは所在場所の図面や核種・数量など7つの情報を事前に伝えます
  • 対象外の施設でも消防本部から情報提供を求められることがあります

放射性同位元素施設と消防機関の連携の流れを示す図解

放射性同位元素を扱う施設はなぜ消防機関との連携を予防規程に書くよう求められるようになったのか

放射性同位元素の保管室と消防車が並ぶイラスト
放射性同位元素等を扱う許可や届出には、以前から放射線障害予防規程の作成が義務付けられていました。
ここに新しく加わったのが、消防機関等との連携という項目です。
「原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う原子力規制委員会関係規則の整備等に関する規則の施行について」(平成30年消防特第40号・消防庁国民保護・防災部特殊災害室長) 整備規則により放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則が改正され、許可届出使用者等のうち、原子力規制委員会が定める放射性同位元素又は放射線発生装置の使用をする場合に限り、放射線障害予防規程に定めるべき事項として、「都道府県警察、消防機関及び医療機関その他の関係機関との連携に関すること」等の応急の措置を講ずるために必要な事項が追加された
放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則第21条第1項第14号ホ 都道府県警察、消防機関及び医療機関その他の関係機関との連携に関すること。
連携の明記は工夫ではなく守るべき義務になりました。
平成30年4月に施行されたこの整備規則より前は、予防規程に定めるべき事項は施設内部の職務・組織・設備・訓練が中心で、外部機関との連携は明文化されていませんでした。
火災や漏えいの現場では、施設の担当者と消防隊のどちらが何を確認するかが決まっていないと、対応が後手に回ります。
そこで改正では、放射線障害予防規程という届出書類そのものに、消防機関等との連携をどう図るかを書き込ませる形にしました。
届出書類に書くことで、施設側にも消防機関側にも「決めてある」という状態を残せます。

予防規程って前から出してましたけど、内容を見直す必要があるんですね。

はい、平成30年より前に届け出た規程は、そのままでは要件を満たしません
あとで詳しく見ていきましょう。

どの施設のどの放射性同位元素が対象になるのか

病院の放射線治療室と研究施設の実験室が並ぶイラスト
対象になるのは、放射性同位元素等の規制に関する法律にもとづく許可届出使用者等のうち、原子力規制委員会が定める特定の放射性同位元素や放射線発生装置を使う施設だけです。
病院の放射線治療科や核医学科、大学・研究機関の実験施設、非破壊検査を行う事業者などが主な該当先になります。
許可届出使用者、届出販売業者(表示付認証機器等のみを販売する者を除く)、届出賃貸業者(表示付認証機器等のみを賃貸する者を除く)及び許可廃棄業者は、原子力規制委員会が定める放射性同位元素又は放射線発生装置の使用をする場合に限り、応急の措置を講ずるために必要な事項について放射線障害予防規程に定める。
すべての放射性同位元素取扱施設が対象になるわけではありません。
微量な放射性同位元素を測定機器に組み込んだだけの施設や、表示付認証機器等のみを扱う施設は、この項目の対象から外れます。
一方で、病院の放射線治療・核医学部門のように出力の大きい放射線発生装置や比較的多量の放射性同位元素を扱う施設は対象になりやすくなります。
自施設が対象かどうかは、使用している同位元素の核種や数量、装置の種類を原子力規制委員会規則の指定リストと照らし合わせて確認します。
判断に迷う場合は、既存の許可申請書や届出書に添付した使用の目的や数量の記載を確認するところから始めます。

うちの科は治療用の装置なので、たぶん対象ですね。

放射線取扱主任者に確認すれば分かるはずです。
次は予防規程の中身を見てみましょう。

予防規程は消防機関との連携について何を定めるよう求めているのか

施設の図面と連絡先一覧を消防隊員へ手渡すイラスト
連携に関する事項は、職務・組織、設備資機材、実施手順、訓練とあわせて5つの柱の1つとして定めます。
消防庁は消防本部が施設側から受け取るべき情報の目安も示しています。
応急の措置を講ずるために必要な事項として、イ 応急の措置を講ずる者に関する職務及び組織に関すること、ロ 応急の措置を講ずるために必要な設備又は資機材の整備に関すること、ハ 応急の措置の実施に関する手順に関すること、ニ 応急の措置に係る訓練の実施に関すること、ホ 都道府県警察、消防機関及び医療機関その他の関係機関との連携に関すること、の5つを定める。消防本部が使用者等から提供を受けるべき情報として、①事業者の業務内容及び従業員数、②放射性同位元素等の所在場所の図面、③使用している放射性同位元素の核種、数量及び性状、④応急の措置を講ずる場合の責任者並びに通常時の連絡担当者の氏名及び連絡先、⑤発生しうる事象並びに応急の措置を講ずる判断の基準及び対応の手順、⑥応急の措置を講ずるために必要な設備若しくは資機材又はそれらの保管場所、⑦緊急時の連絡先が考えられる
連携の中身は「連絡先を書けば足りる」ものではありません。
イからニの職務・設備・手順・訓練を整えたうえで、それを誰と共有するかを定めるのがホの連携です。
消防本部側は「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」(平成26年3月消防庁)を踏まえて予防査察や警防計画の作成を行うため、施設側の情報が具体的であるほど現場の活動は的確になります。
所在場所の図面や核種・数量は、消防隊が到着してから聞き取るのではなく、事前に共有しておく情報です。
連絡担当者の氏名や緊急連絡先は、異動があるたびに更新しないと形だけの規程になってしまいます。

連絡先だけ書いておけばええと思ってました。

図面や核種の情報まで含めて連携です。
次は見落としやすい点を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

古い予防規程の書類を見直す担当者のイラスト
見落としやすい点は大きく2つあります。
対象の狭さと、既存の届出への対応です。
整備規則施行の際現に放射線障害予防規程を原子力規制委員会に届け出ている者は、当該放射線障害予防規程を改正後の規則に規定する事項について定めるものに変更し、平成31年8月30日までに原子力規制委員会に届け出なければならないこととされています。また、改正規則により連携が求められる使用者等の他にも放射性同位元素等取扱施設は全国的に所在しており、消防本部においては、管内の当該施設の事業者と十分に連絡をとり、状況把握に努めるなど、適切に事前対策を講じられるよう求められています。
古い予防規程は自動的には更新されません。
平成30年の改正より前に届け出た予防規程は、連携に関する事項を追加したうえで変更届を出さない限り、書類の上では要件を満たさないままになります。
新設の施設だけでなく、既存の施設ほど見直しが漏れやすい点です。
また、原子力規制委員会が定める対象に該当しない施設であっても、消防本部からは管内の状況把握のために情報提供を求められることがあります。
「うちは対象外だから関係ない」と決めつけず、消防本部からの照会には応じる姿勢が必要です。

うちの予防規程、届け出たのはだいぶ前なので心配になってきました。

まずは規程の写しを確認してみましょう。
最後にやることをまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

放射線取扱主任者と消防担当者が図面を確認するイラスト
まず自施設が対象かどうかを確認し、対象であれば予防規程の記載を点検します。
対象外でも所轄消防本部との情報共有は続けます。
  • 使用している放射性同位元素の核種・数量・装置の種類が原子力規制委員会の指定対象に当たるか確認する
  • 対象であれば、予防規程に連携に関する事項(職務組織・設備資機材・実施手順・訓練・連携先)が定められているか確認する
  • 平成30年より前に届け出た予防規程は、変更届を提出済みかを確認する
  • 所在場所の図面、核種・数量、責任者の連絡先など消防本部が必要とする情報を整理しておく
  • 所轄消防本部に連絡し、事前協議の要否を確認する
点検は書類を読み直すだけで始められます。
まずは放射線取扱主任者と予防規程の写しを確認し、連携に関する事項の有無をチェックします。
記載が無ければ、変更内容をまとめて原子力規制委員会への届出を準備します。
記載があっても、連絡担当者や設備の情報が古いままなら実質的に機能しません。
所轄消防本部への連絡は、届出の前後どちらでもかまわないので、早めに済ませておくと事前協議がスムーズです。

今日にでも予防規程を引っ張り出して確認します。

それが一番早い確認方法です。
よくある質問もあわせてご覧ください。

よくある質問

Qすべての放射性同位元素取扱施設が対象になりますか?
Aいいえ。対象は原子力規制委員会が定める特定の放射性同位元素または放射線発生装置を使用する許可届出使用者等に限られます。対象外の施設でも、消防本部から状況把握のための情報提供を求められることがあります。
Q予防規程にはどんな項目を追加すればよいですか?
A都道府県警察・消防機関・医療機関その他の関係機関との連携に関する事項を、既存の職務組織・設備資機材・実施手順・訓練の各項目とあわせて定めます。
Qすでに予防規程を届け出ている施設はどうすればよいですか?
A改正前のままでは要件を満たさないため、連携に関する事項を追加したうえで原子力規制委員会に変更届を提出する必要があります。
Q消防本部にはどんな情報を伝えればよいですか?
A事業所の業務内容や従業員数、所在場所の図面、核種・数量・性状、責任者と連絡担当者の連絡先、想定される事象と対応手順、必要な設備資機材とその保管場所、緊急連絡先の7つが目安として示されています。

まとめ

平成30年の原子力規制委員会規則の改正で、放射線障害予防規程に連携の項目が追加されました
対象は原子力規制委員会が定める特定の放射性同位元素や放射線発生装置を使う施設に限られます
予防規程には職務組織・設備資機材・実施手順・訓練・連携先の5項目を定めます
消防本部へは所在場所の図面や核種・数量など7つの情報を事前に伝えます
平成30年より前に届け出た予防規程は変更届を出さないと要件を満たしません
対象外の施設でも消防本部から状況把握のための情報提供を求められることがあります
まずは予防規程の写しを確認し、連携に関する事項の有無から点検します

まず対象かどうかから確認すればいいんですね、スッキリしました。

予防規程の点検はいつでもお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う原子力規制委員会関係規則の整備等に関する規則の施行について」(平成30年消防特第40号・消防庁国民保護・防災部特殊災害室長)
  • 放射性同位元素等の規制に関する法律第21条(放射線障害予防規程)
  • 放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則第21条第1項第14号
  • 「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」(平成26年3月消防庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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