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移動タンク貯蔵所の特例基準はなぜ4つに分かれるのか|緩和と強化が入り混じる仕組みを解説

サイズの異なる複数のタンクローリーが並ぶ工業ヤードのイメージ

移動タンク貯蔵所の基準は、実は1つの条文にまとまっているわけではありません。
積み替え式や航空機給油用など、特定の用途を持つ車両には特例基準が定められています。
ただし「特例」という言葉から基準がすべて緩くなると思われがちですが、実際には話が違います。
この記事では4つの特例の中身から、実務で見落としやすい落とし穴まで条文を根拠に整理してお伝えします

うちのタンクローリーは積み替え式なんですが、普通の車と基準が違うと聞きました。

はい、実は特例基準が定められているんです。

特例ということは、基準が緩くなるということですか。

いえ、むしろ厳しくなる場合もあるんです。
今日はその仕組みを見ていきましょう。

この記事の結論
  • 移動タンク貯蔵所には、危険物の規制に関する政令第15条第2項から第5項で4つの特例基準が定められています
  • 対象は①積載式移動タンク貯蔵所②給油タンク車③アルキルアルミニウム等④国際海事機関基準適合車両の4類型です
  • 特例は必ずしも基準の緩和ではなく、危険性の高い危険物を扱う類型はむしろ基準を超える特例が定められます
  • ④国際海事機関基準に適合する車両は、日本の一部規定の適用そのものが除外されます
  • 自社の車両がどの類型に当たるかは、根拠条文の号番号まで確認する必要があります

移動タンク貯蔵所の特例基準は積載式給油タンク車危険物固有国際基準の4種類に分かれることを示した図解

そもそも移動タンク貯蔵所の特例基準とは何を指すのか

タンクローリーと、そこから枝分かれする複数の法令文書のイメージ
移動タンク貯蔵所の技術上の基準は、原則として1つの条文にまとめられています。
まずはその条文と、そこから枝分かれする特例の関係を確認します。
危険物の規制に関する政令第15条第1項 移動タンク貯蔵所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。(第1号から第17号まで略)
移動タンク貯蔵所には、まず第1項が定める17号の基準が原則としてすべての車両に一律で適用されます
ところが同じ条文の第2項から第5項には、特定の用途を持つ車両向けに特例を定める規定が続きます。
「特例」と聞くと基準が緩和されるイメージがありますが、実際の中身は類型ごとに異なります。
特例の具体的な基準は、政令ではなく総務省令(危険物の規制に関する規則)に委ねられています。
次の項目で、どんな移動タンク貯蔵所がこの特例の対象になるのかを確認します。

特例があるなら、うちの車も対象になるかもしれません。

対象になる車両の条件は、次で確認しましょう。

どの移動タンク貯蔵所がこの4類型に当てはまるのか

用途の異なる4台の移動タンク貯蔵所を並べたイメージ
特例の対象になる移動タンク貯蔵所は、条文が名指しで4つ定めています。
それぞれ根拠になる項番号が異なります。
危険物の規制に関する政令第15条第2項 移動タンク貯蔵所のうち移動貯蔵タンクを車両等に積み替えるための構造を有するもの(第26条、第27条及び第40条において「積載式移動タンク貯蔵所」という。)については、総務省令で、前項に掲げる基準の特例を定めることができる。
同条第3項 航空機又は船舶の燃料タンクに直接給油するための給油設備を備えた移動タンク貯蔵所については、総務省令で、第1項に掲げる基準の特例を定めることができる。
同条第4項 アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、アセトアルデヒド、酸化プロピレンその他の総務省令で定める危険物を貯蔵し、又は取り扱う移動タンク貯蔵所については、当該危険物の性質に応じ、総務省令で、第1項及び第2項に掲げる基準を超える特例を定めることができる。
同条第5項 国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程に定める基準に適合する移動タンク貯蔵所については、総務省令で、第1項、第2項及び前項に掲げる基準の特例を定めることができる。
対象になるのは、用途がはっきり決まっている4種類の移動タンク貯蔵所だけです
①はタンクごと積み替えられる積載式移動タンク貯蔵所、②は航空機や船舶に直接給油する給油タンク車です。
③はアルキルアルミニウム等の総務省令で定める危険物を扱う車両、④は国際海事機関の基準に適合する車両です。
④は既に国際的な安全基準をクリアしていることが前提になっている点で、他の3つとは性格が異なります。
次の項目で、これらの特例の中身が実際にどう違うのかを確認します。

うちは積み替え式だから①に当てはまりそうです。

該当する条文まで確認しておくと安心です。

特例の中身は緩和と強化のどちらなのか

基準が簡素になった車両と補強された車両を見比べるイメージ
特例と聞くと基準が緩くなると思われがちですが、実際は類型によって方向が違います。
条文の言葉づかいに注目すると、その違いがはっきり分かります。
危険物の規制に関する政令第15条第4項 アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、アセトアルデヒド、酸化プロピレンその他の総務省令で定める危険物を貯蔵し、又は取り扱う移動タンク貯蔵所については、当該危険物の性質に応じ、総務省令で、第1項及び第2項に掲げる基準を超える特例を定めることができる。
「特例」という言葉は必ずしも基準の緩和を意味しません
①積載式・②給油タンク車・④国際海事機関基準は、いずれも第1項の基準の一部を置き換えるだけの特例です。
ところが③アルキルアルミニウム等だけは、危険性の高さに応じて基準を超える特例、つまりより厳しい基準が総務省令で定められています。
同じ「特例」という条文の言葉でも、扱う危険物によって方向がまったく逆になる点に注意が必要です。
次の項目で、この違いを見落としやすい実務上の落とし穴を確認します。

特例だから簡単になると思っていました。

危険物の性質によっては厳しくなるんです。

実務で見落としやすいのはどこか

複数の条文が重なり合い一部が適用除外になるイメージ
4つの類型は、それぞれ単独の話とは限りません。
条文の中には、他の特例規定を上書きする規定もあります。
危険物の規制に関する規則第24条の9の3第2項 (略)令第15条第1項第2号から第5号まで及び第7号から第14号まで、第24条の5第4項第1号、第2号(すみ金具に係る部分に限る。)及び第4号、第24条の8第1号から第6号(すみ金具に係る部分に限る。)まで、第7号及び第8号(外面の塗装及び文字の色に係る部分に限る。)並びに第24条の9第1号の規定は、適用しない
④国際海事機関基準に適合する車両は、日本の一部規定そのものが適用除外になります
上の条文が挙げているのは政令第15条第1項の一部の号だけでなく、①積載式や③アルキルアルミニウム等の特例規定の一部も含まれます。
つまり④に当てはまる車両は、国際基準を満たしていることが日本の基準の代わりになっている構造です。
「特例だから」と一律に緩いと思い込むと、実際にどの規定が生きていてどの規定が除外されているのかを見落とします。
自社の車両がどの類型に当たるかを確認するときは、条文の号番号まで照らし合わせることが欠かせません。

うちの車がどれに当たるか、思い込みで判断していました。

条文の号番号まで照らし合わせるのが確実です。

明日からなにを確認すればよいのか

点検リストを手にタンクローリーを確認する場面のイメージ
自社の移動タンク貯蔵所がどの類型に当たるかは、車両の構造と積み荷を見れば判断できます。
次の手順で確認してください。
  • 移動貯蔵タンクが車両等に積み替えられる構造かどうかを確認する(①積載式)
  • 航空機・船舶へ直接給油するための給油設備を備えているかを確認する(②給油タンク車)
  • 貯蔵・取扱う危険物がアルキルアルミニウム等の総務省令で定める危険物に当たるかを確認する(③)
  • 国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程に基づく基準に適合しているかを確認する(④)
  • 該当する類型が分かったら、その根拠となる総務省令の条文番号まで確認し、書類にも残しておく
まずは車両の構造と積み荷の危険物を確認することから始めてください
複数の類型に同時に当てはまる車両もあるため、思い込みで1つに絞らないことが大切です。
判断に迷うときは、所轄の消防署に相談してください。

明日、まず何を確認すればいいですか。

車両の構造と積み荷の危険物を確認してください。

よくある質問

Q移動タンク貯蔵所の特例基準は消防法で決まっているのですか?
Aいいえ。特例の根拠は危険物の規制に関する政令第15条で、具体的な基準は総務省令(危険物の規制に関する規則)が定めています。
Q特例に当てはまれば必ず基準が緩くなりますか?
Aいいえ。③アルキルアルミニウム等を扱う車両は、危険性に応じて基準を超える、つまりより厳しい特例が定められています。
Q複数の類型に同時に当てはまる移動タンク貯蔵所はありますか?
Aあります。たとえば④国際海事機関基準に適合する車両は、①や③の特例規定の一部も適用除外の対象になります。
Q自社の車両がどの類型に当てはまるか分からないときはどうすればよいですか?
A車両の構造と積み荷の危険物を確認したうえで、所轄の消防署に相談することをおすすめします。

まとめ

移動タンク貯蔵所には、危険物の規制に関する政令第15条第2項から第5項で4つの特例基準が定められています
対象は①積載式移動タンク貯蔵所②給油タンク車③アルキルアルミニウム等④国際海事機関基準適合車両の4類型です
特例は必ずしも基準の緩和ではなく、危険性の高い危険物を扱う類型はむしろ基準を超える特例が定められます
④国際海事機関基準に適合する車両は、日本の一部規定の適用そのものが除外されます
複数の特例規定が重なり合う場合があり、思い込みで判断すると見落としが起こります
自社の車両がどの類型に当たるかは車両の構造と積み荷で判断します
判断に迷うときは、根拠条文の号番号まで確認したうえで所轄の消防署に相談します

なるほど、うちの車がどの類型かも条文で確認します!

判断に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第15条(移動タンク貯蔵所の基準)
  • 危険物の規制に関する規則第24条の5・第24条の6・第24条の8・第24条の9の3(移動タンク貯蔵所の特例)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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