移送取扱所には、警報装置や安全制御装置などの保安のための設備とは別に、予備動力源と避雷設備という二つの附帯設備の設置が義務付けられています。
規則第28条の39は予備動力源の設置を、規則第28条の42は避雷設備の設置をそれぞれ定めていますが、条文の書きぶりは同じではありません。
一方には例外を認める文言があり、もう一方にはありません。
今回は、危険物の規制に関する規則第28条の39・第28条の42が定める予備動力源と避雷設備の基準を解説します。
予備動力源も避雷設備も、似たような附帯設備だと思っていました。
いいえ、予備動力源と避雷設備とでは、規定の立て方が異なります。
まずは結論から確認しましょう。
条文の立て方が違うって、どういうことですか。
一方には例外を認める規定があり、もう一方には例外がありません。
順番に見ていきましょう。
- 予備動力源は、規則第28条の39・告示第54条により、常用電力源が故障した場合に自動的に切り替わり、かつ保安設備を有効に作動させる容量を備えなければならない
- 避雷設備は、規則第28条の42・第13条の2の4により、日本産業規格Z9290-3に適合するものを設置しなければならない
- 避雷設備の設置義務には、周囲の状況によって安全上支障がない場合はこの限りでないという例外規定がある
- 予備動力源には、避雷設備のような例外規定は置かれていない
- 自社設備がどちらの規定に基づくかを確認し、例外の有無を踏まえて設置状況を点検することが実務上重要である
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目次
移送取扱所の予備動力源とはどんな設備を指すのか

規則第28条の39は、これらの設備に予備動力源を設置することを義務付けています。
保安のための設備には、告示で定めるところにより予備動力源を設置しなければならない。
条文が定めているのは予備動力源を設置しなければならないという義務そのものだけで、切替えの方法や容量といった中身は告示第54条に委ねられています。
ここでいう保安のための設備とは、警報装置・安全制御装置・圧力制御装置・油撃圧力安全装置・漏えい検知装置などを指し、常用電力源が止まってもこれらを動かし続けるための電源が予備動力源です。
条文自体は一文で完結していますが、実際に何を満たせばよいかは告示の内容を確認しなければ分かりません。
まずは告示が定める具体的な要件を見ていきます。
予備動力源を設置しなさいとしか書いていないんですね。
はい、具体的な中身は告示に委ねられています。
次はその告示の内容を確認しましょう。
予備動力源はどんな条件を満たさなければならないのか

どちらも欠かすことのできない要件です。
規則第二十八条の三十九の規定により、保安のための設備には、次の各号に掲げるところにより予備動力源を設置しなければならない。
一 常用電力源が故障した場合に自動的に予備動力源に切り替えられるよう設置すること。
二 予備動力源の容量は、保安設備を有効に作動させることができるものであること。
一号は常用電力源が故障した場合に自動的に予備動力源に切り替えられることを求めており、担当者が手動で操作しなければ動かない設計は認められません。
二号は予備動力源の容量について、保安設備を有効に作動させることができるものでなければならないと定めています。
容量が不足していれば、切替えそのものはできても保安設備が正常に働かない事態になりかねません。
二つの要件はどちらも欠かせず、切替えの仕組みと容量の両方を確認する必要があります。
自動で切り替わりさえすれば、容量は多少足りなくても大丈夫ですか。
いいえ、容量が不足していると保安設備が正常に働きません。
切替えと容量の両方を確認しましょう。
避雷設備はどんな基準に適合させるのか

規則第28条の42は、この避雷設備が満たすべき基準を定めています。
移送取扱所(危険物を移送する配管等の部分を除く。)には、第十三条の二の四に定める避雷設備を設けなければならない。
ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。
第13条の2の4は、避雷設備が日本産業規格Z9290-3「雷保護―第三部:建築物等への物的損傷及び人命の危険」に適合するものでなければならないと定めています。
対象になるのは移送取扱所そのものであり、条文はかっこ書きで危険物を移送する配管等の部分を除くと明示しています。
つまり避雷設備の設置義務は、配管そのものではなく配管以外の設備が対象になります。
この規定にはただし書きが付いており、次でその内容を確認します。
避雷設備は日本産業規格に適合していれば、それで終わりですか。
条文にはただし書きがあり、例外も定められています。
次はその内容を見ていきましょう。
避雷設備の設置義務にはどんな例外があるのか

このただし書きが、予備動力源には無い避雷設備だけの特徴です。
ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。
たとえば移送取扱所のすぐそばに、それ自体が避雷設備を備えた高い建物や工作物があり、落雷から保護される状況にあるような場合が想定されます。
一方で予備動力源には、この種の例外規定がありません。告示第54条の二つの要件は、周囲の状況にかかわらず一律に満たさなければなりません。
避雷設備の感覚のまま予備動力源を見ると、周囲の状況次第で緩和されるはずだと誤解しやすい点が実務上の落とし穴です。
自社の避雷設備が例外に当たるかどうかは、周囲の建物や工作物との位置関係を具体的に確認しなければ判断できません。
うちの近くには高い建物があるので、避雷設備は要らないと思っていました。
周囲の状況を具体的に確認しないと、例外に当たるかどうかは判断できません。
次は確認の手順を見ていきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

二つの設備は条件の立て方が異なるため、別々に確認する必要があります。
- 予備動力源が常用電力源の故障時に自動的に切り替わる設計になっているかを確認する
- 予備動力源の容量が、接続する保安設備を有効に作動させられるものかを確認する
- 避雷設備が日本産業規格Z9290-3に適合しているかを確認する
- 避雷設備について例外に当たると判断した場合は、周囲の建物や工作物との位置関係を記録として残す
- 予備動力源には避雷設備のような例外規定が無いことを設備台帳に明記しておく
予備動力源は自動切替えと容量の二点を一律に確認し、例外の余地は考えません。
避雷設備は日本産業規格への適合を基本としつつ、周囲の状況による例外に当たるかどうかも合わせて確認します。
二つの設備を同じ発想で点検すると、どちらかの確認が漏れやすくなります。
判断に迷う場合は、専門業者に確認を依頼するのも一つの方法です。
うちの設備台帳にも、確認した根拠を書き加えておきます。
切替えの仕組みもあわせて確認しておくと安心です。
次によくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
予備動力源と避雷設備、うちも例外の有無から確認してみます!
予備動力源と避雷設備の点検について、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する規則第28条の39
- 危険物の規制に関する規則第28条の42
- 危険物の規制に関する規則第13条の2の4
- 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第54条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





