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事務所ビルの食堂や売店は別の用途として数えるのか|消防庁が示した従属的な部分の判定基準を解説

事務所ビルの食堂や売店は別の用途になるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

事務所ビルの1階に小さな売店がある。
社員だけが使う食堂が地下にある。
こうした部分があると、その建物は複合用途防火対象物になってしまうのでしょうか。
実は消防庁が、主たる用途に含めてよい部分の線引きを通知で示しています

うちは事務所ビルですが、1階に小さな売店が入っています。
これだけで建物の用途が変わってしまうのでしょうか。

条件を満たせば従属的な部分として主たる用途に含めます。
消防庁の通知が、その条件を具体的に示しています。

条件というのは面積の話ですか。
それとも使われ方の話でしょうか。

どちらもあります。
この記事では通知の原文で、両方の線引きを確認していきます。

この記事の結論
  • 事務所ビルの売店や食堂のような部分は条件を満たせば主たる用途に含めて数えます
  • 根拠は消防法施行令第1条の2第2項後段昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号です
  • 通知の別表はイ欄が主たる用途 ロ欄が従属的な部分になりうる用途という並びです
  • 認められるには管理権原利用者利用時間の三つがそろう必要があります
  • 利用者を宿泊させ又は入居させる用途は面積による扱いから除かれています

事務所ビルの食堂や売店を主たる用途に含めてよい三つの条件を管理権原と利用者と利用時間で示した図

消防庁はなぜ用途の数え方に通知を出したのか

事務所ビルの前に置かれた小さな売店の売り場を見る人
この通知には、はっきりとした出発点があります。
建物の中に二つ以上の用途があるときの数え方が、法令に入ったことです。
消防法施行令第1条の2第2項
法第八条第一項の政令で定める二以上の用途は、(略)この場合において、当該異なる二以上の用途のうちに、一の用途で、当該一の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該一の用途は、当該他の用途に含まれるものとする
令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて(昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号)
消防法施行令(昭和36年政令第37号。以下「令」という。)第1条の2第2項後段の規定の解釈及び運用に関し、令別表第1(1)項から(15)項まで及び(16)項に掲げる防火対象物の範囲については、下記の基準により運用されることが適当ですので、(略)
なお、この通知は消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく技術的助言であることを申し添えます。
条文だけでは線が引けなかったのです
令は「従属的な部分」とだけ書いており、どこまでがそれに当たるかまでは書いていません。
そこで消防庁は、判断の基準を技術的助言としてまとめました。
あて先は各都道府県消防主管部長で、都道府県内の市町村への周知もあわせて求めています。
昭和50年に出たあとも改正が重ねられ、直近の改正は平成27年2月27日付け消防予第81号です。

条文の言葉が広すぎたということですね。
それを埋めるための通知だったとは知りませんでした。

この通知は全国の消防が同じ物差しを使うための土台です。
判定でもめたときは、まずここに戻ります。

どんな部分が従属的な部分として扱われるのか

事務所ビルの横に並ぶ食堂と売店と専用駐車場
通知は、用途ごとに部屋の名前を並べた別表を持っています。
主たる用途の側と、従属になりうる側が対になって示されています。
令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて(昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号)記1
消防法施行令(以下「令」という。)第1条の2第2項後段に規定する「管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められる」部分とは、次の(1)又は(2)に該当するものとする。
(1) 令別表第1(1)項から(15)項までに掲げる防火対象物(以下「令別表対象物」という。)の区分に応じ、別表イ欄に掲げる当該防火対象物の主たる用途に供される部分(これらに類するものを含む。)に機能的従属していると認められる同表ロ欄に掲げる用途に供される部分(これらに類するものを含む。)で、次のアからウまでに該当するもの
イ欄が本業 ロ欄がそれに付いてくる部分です
事務所などの(15)項では、イ欄が事務室・休憩室・会議室で、ロ欄は売店・食堂・専用駐車場・診療室と並びます。
物品販売店舗の(4)項では、イ欄が売場・荷さばき室・商品倉庫・食堂・事務室で、ロ欄は催物場・写真室・遊技場・結婚式場・専用駐車場・美・理容室・診療室・集会室です。
旅館などの(5)項イでは、ロ欄に宴会場・バー・旅行代理店まで挙がっています。
自分の建物がどの項かを先に決めてから、ロ欄に当たる部分を拾うのが早道です。

専用駐車場までロ欄に入っているんですね。
うちの来客用の駐車場も同じ扱いになりそうです。

ロ欄に載っているかどうかは入口の確認にすぎません。
そのうえで次の三つの条件を見ます。

従属と認められるにはなにを満たす必要があるのか

事務所ビルの横に鍵と利用者と時計が並ぶ従属の条件のイメージ
ロ欄に載っていれば自動的に従属になる、というわけではありません。
通知はそのうえに三つの条件を重ねています。
同通知 記1(1)
ア 当該従属的な部分についての管理権原を有する者が主たる用途に供される部分の管理権原を有する者と同一であること
イ 当該従属的な部分の利用者が主たる用途に供される部分の利用者と同一であるか又は密接な関係を有すること
ウ 当該従属的な部分の利用時間が主たる用途に供される部分の利用時間とほぼ同一であること
三つのうち一つでも欠ければ別の用途として数えます
管理権原は、その部分について契約や維持管理を決められる立場のことです。
テナントとして別の会社が入っている売店であれば、この時点で外れます。
利用時間も条件なので、主たる用途と大きくずれる使われ方をしている部分は確かめが要ります。
部屋を一つずつ、この三つに当てはめて確かめてください。

つまり誰が持ち、誰が使い、いつ使うかを見るということですね。
同じ売店でも建物によって結論が変わるわけです。

そのとおりです。
契約書と利用のきまりを手元に置いて確かめると早く進みます。

面積で従属とみなす扱いから外された用途はどれか

事務所ビルの横にある宿泊のための部屋に禁止の印が付いた様子
通知には、面積の割合で従属とみなすもう一つの道があります。
ただし、そこから外された用途があります。
同通知 記1(2)
主たる用途に供される部分の床面積の合計(略)が当該防火対象物の延べ面積の90パーセント以上であり、かつ、当該主たる用途以外の独立した用途に供される部分の床面積の合計が300平方メートル未満である場合における当該独立した用途に供される部分(令別表第1(2)項ニ、(5)項イ若しくは(6)項イ(1)から(3)まで若しくはロに掲げる防火対象物又は同表(6)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)の用途に供される部分を除く。)
泊まらせる用途と住まわせる用途は数から外せません
この括弧書きは平成27年2月27日付け消防予第81号による改正で加えられたものです。
同号は、平成25年政令第368号による改正で(5)項イ並びに(6)項イ及びハ(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)について延べ面積にかかわらず自動火災報知設備の設置が義務付けられたことを理由に挙げています。
面積が小さいからと主たる用途に飲み込ませてしまうと、その設置義務が抜け落ちてしまうからです。
施行は平成27年4月1日で、(6)項イを(1)から(3)までに書き分ける部分は平成28年4月1日からとされました。

小さな仮眠室のような部屋でも油断できませんね。
泊まらせるかどうかで見方が変わるということですか。

その部分が令別表のどの項に当たるかで決まります。
判断が割れる使い方をしているなら所轄消防署に確かめてください。

明日からなにを確認すればよいのか

机に広げた平面図を見ながら建物の用途を確かめる二人
最後に、住まいと一体になっている建物の扱いを見ておきます。
ここは面積の比べ方そのものが変わります。
同通知 記2
一般住宅(個人の住居の用に供されるもので寄宿舎、下宿及び共同住宅以外のものをいう。以下同じ。)の用途に供される部分が存する防火対象物については、前記1によるほか、次により取り扱うものであること。
(1) 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも小さく、かつ、当該令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が50平方メートル以下の場合は、当該防火対象物は一般住宅に該当するものであること。
(略)
(3) 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計とおおむね等しい場合は、当該防火対象物は複合用途防火対象物に該当するものであること。
まず平面図に部屋ごとの用途と面積を書き込みます
次に、それぞれの部分について管理権原と利用者と利用時間の三つを確かめます。
店などの部分が住まいより小さく50平方メートル以下なら一般住宅の扱いですが、これを超えれば令別表対象物か複合用途防火対象物になります。
判定が変われば防火管理者の選任や消防用設備等の要否まで動きます。
迷う部分が一つでもあれば、図面を持って所轄消防署に相談してください。

平面図に用途と面積を書き込むところから始めればよいのですね。
今の図面が古いので、まず現況を描き直します。

現況の図面があれば話が早く進みます。
用途が変わった部分は、変わった日付も一緒に控えておいてください。

よくある質問

Q従属的な部分と判定されると建物の扱いはどうなりますか?
Aその用途は主たる用途に含まれ、二以上の用途としては数えません。消防法施行令第1条の2第2項後段がそのように定めており、その部分があることだけを理由に複合用途防火対象物になることはありません。
Q社員食堂の運営を外部の業者に任せていても従属になりますか?
A通知は管理権原を有する者が同一であることを条件にしています。運営の委託と管理権原の所在は必ずしも一致しないため、契約の中身を確かめたうえで所轄消防署に確認してください。
Q面積が小さければ旅館の部分も主たる用途に含められますか?
A面積による扱いからは(5)項イなどが明文で除かれています。除かれているのは面積による(2)の場合で、(1)の機能的従属については別に条件が定められています。
Qこの通知は今も使われているのですか?
A使われています。昭和50年4月15日付けで出されたあとに改正が重ねられ、直近の改正は平成27年2月27日付け消防予第81号です。消防組織法第37条に基づく技術的助言として、都道府県から市町村へ周知されています。

まとめ

従属的な部分と認められれば主たる用途に含めて数えます
根拠は消防法施行令第1条の2第2項後段です
具体的な線引きは昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号が示しています
別表のイ欄が主たる用途、ロ欄が従属になりうる用途です
認められるには管理権原と利用者と利用時間の三つがそろうことが必要です
面積では90パーセント以上かつ300平方メートル未満という別の道もあります
宿泊させ又は入居させる用途はその面積の道から除かれています

迷っていたところがはっきりしました。
まずは平面図に部屋ごとの用途を書き出します。

それがいちばん確実な第一歩です。
用途区分の整理や消防計画の見直しは、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて(昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号)
  • 「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」の一部改正について(平成27年2月27日付け消防予第81号)
  • 消防法施行令第1条の2第2項(防火管理者を定めなければならない防火対象物等)
  • 消防法第8条第1項(防火管理者の選任及び消防計画の作成)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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