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天井から下がっている板はなんのためにあるのか|防煙壁の区画と排煙口の手動開放装置の基準を解説

天井から下がっている板はなんのためにあるのか

建物の廊下や売場の天井から、透明な板が下がっているのを見たことがあると思います。
あれは防煙壁と呼ばれ、火災のときに煙が横へ広がるのを食い止めるためのものです。
天井にある排煙口と、壁や天井にある手動開放装置とひと組で働きます。
どれか一つでもふさがれていると煙は外へ出ていきません

売場の天井から下がっているガラスの板を、邪魔だから外したいと言われています。
あれは外してもよいものなんでしょうか。

それは防煙壁といって、建築基準法施行令が置くことを求めている部分です。
外すと排煙設備そのものが基準に合わなくなります。

消防設備の点検では、そんな板の話は出てきませんでした。

建築基準法の側の設備なので、消防用設備等の点検票には載ってこないことがあります。
それでも立入検査では見られる部分なので、どこに何があるかを先に押さえておきましょう。

この記事の結論
  • 天井から下がっている板は防煙壁で、天井面から50センチメートル以上下へ突き出したものをいう
  • 排煙設備を設けた建物は床面積500平方メートル以内ごとに防煙壁で区画する
  • 排煙口は区画された部分の各部分から水平距離30メートル以下で届く位置に設ける
  • 手で操作する部分は壁なら床面から80センチメートル以上1.5メートル以下、天井から吊り下げるならおおむね1.8メートルの高さに置く
  • 使用方法の表示と操作する部分の前は必ず空けておく

排煙設備で見るべき垂れ壁と排煙口と手動開放装置をまとめた図解

天井から下がっている板はなんのためにあるのか

部屋の一角と天井から吊り下がった透明な板を見る担当者
火災で最初に人を追い詰めるのは炎ではなく煙です。
その煙が天井づたいに横へ流れていくのを止めるのが、あの板の役目です。
建築基準法施行令第126条の2第1項(抜粋) (略)間仕切壁、天井面から五十センチメートル以上下方に突出した垂れ壁又ははりその他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので、準耐火構造であるもの(略)又は不燃材料で造り、若しくは覆われたもの(以下「防煙壁」という。)によつて区画されたものを除く。(略)
煙をせき止める壁だと考えてください
条文は防煙壁を、間仕切壁か、天井面から50センチメートル以上下へ突き出した垂れ壁か、はりで作るものとしています。
材料は準耐火構造か、不燃材料で造るか不燃材料で覆うかのいずれかです。
透明に見えるのは網入りガラスなどが使われているからで、見た目が軽くても法令上は壁と同じ扱いになります。
天井の高い売場で下端が届いていないように見えても、勝手に短く切ってはいけません。

ガラスだから壁とは思っていませんでした。

見た目ではなく、天井からどれだけ下へ出ているかで判断される部分です。
まずは自分の建物のどこに下がっているかを図面で拾ってみてください。

どの建物に排煙設備を設けることになっているのか

規模の違う事務所ビルと店舗と平屋が並ぶ様子
防煙壁の話は、排煙設備を設ける建物にだけついてきます。
そこでまず、自分の建物が対象かどうかを条文で確かめます。
建築基準法施行令第126条の2第1項(抜粋) 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が五百平方メートルを超えるもの階数が三以上で延べ面積が五百平方メートルを超える建築物(略)、第百十六条の二第一項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室又は延べ面積が千平方メートルを超える建築物の居室で、その床面積が二百平方メートルを超えるもの(略)には、排煙設備を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物又は建築物の部分については、この限りでない。(略)二学校(幼保連携型認定こども園を除く。)、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場(以下「学校等」という。)三階段の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)その他これらに類する建築物の部分(略)
用途と規模と居室の広さで決まります
劇場や病院や店舗などの特殊建築物は延べ面積500平方メートル超で、用途を問わない建物でも階数3以上で延べ面積500平方メートル超なら対象になります。
窓のない居室と、延べ面積1,000平方メートル超の建物にある床面積200平方メートル超の居室も入ります。
その一方で条文はただし書きに五つの号を置いていて、学校や体育館などの学校等、階段の部分、昇降機の昇降路の部分などは外れます。
自分の建物のどの部屋が対象かは、この用途と面積を図面で当てはめれば見当がつきます。

階段室に排煙口が無いのは、外れているからだったんですね。

階段の部分はただし書きで外れていますが、代わりに避難階段の基準が別にかかります。
外れている部分と守るべき部分を図面に色分けしておくと引き継ぎが楽になります。

排煙口はどこに設けることになっているのか

区画された床と天井の排煙口と距離を測る担当者
排煙設備は排煙口だけがあればよいというものではありません。
どこで区切り、どこに口を開けるかまで条文が決めています。
建築基準法施行令第126条の3第1項(抜粋) 前条第一項の排煙設備は、次に定める構造としなければならない。一建築物をその床面積五百平方メートル以内ごとに、防煙壁で区画すること。(略)三排煙口は、第一号の規定により区画された部分(以下「防煙区画部分」という。)のそれぞれについて、当該防煙区画部分の各部分から排煙口の一に至る水平距離が三十メートル以下となるように、天井又は壁(略)に設け、直接外気に接する場合を除き、排煙風道に直結すること。(略)
先に区画してから口の位置を決めます
条文は床面積500平方メートル以内ごとに防煙壁で区画するよう求め、区画されたひとまとまりを防煙区画部分と呼びます。
そのうえで、防煙区画部分のどの場所からでも水平距離30メートル以下でどれか一つの排煙口に届くように配置します。
排煙口を設ける高さは天井又は壁のうち国土交通大臣が定める部分に限られていて、煙がたまる上のほうに開くことになります。
広い売場を間仕切って部屋を増やすと区画の形が変わるので、レイアウトを変えるときは排煙口との距離を必ず見直してください。

つまり間仕切りを足すと排煙の話にまで跳ね返るということですね。

そのとおりで、内装工事の相談は設計者に排煙のことも伝えて進めてください。
後から排煙口を足すほうがずっと高くつきます。

排煙口を開ける装置はどこにあるのか

前が空いている操作箱と段ボールでふさがれた操作箱の対比
排煙口は普段は閉じていて、火災のときに人の手で開けます。
そのための装置の位置と表示まで条文が決めているのは、いざというとき迷わせないためです。
建築基準法施行令第126条の3第1項(抜粋) (略)四排煙口には、手動開放装置を設けること。五前号の手動開放装置のうち手で操作する部分は、壁に設ける場合においては床面から八十センチメートル以上一・五メートル以下の高さの位置に、天井から吊り下げて設ける場合においては床面からおおむね一・八メートルの高さの位置に設け、かつ、見やすい方法でその使用方法を表示すること。(略)
手が届く高さに置けと書いてあります
壁に付ける場合は床面から80センチメートル以上1.5メートル以下、天井から吊り下げる場合は床面からおおむね1.8メートルです。
そして使用方法を見やすい方法で表示することまでが同じ号に書かれています。
ここでいちばん多い見落としが、装置の前に商品の箱やワゴンを積んで隠してしまうことと、表示のシールが色あせて読めなくなっていることです。
どちらも工事をしなくても直せるので、日常の点検で気づいた日に片づけてください。

倉庫の壁際に台車を寄せているところが、まさにその高さです。

床にテープで枠を引いて物を置かない場所を決めてしまうのが手早いです。
装置の位置を写真に撮って自主検査の記録に添えておくと、担当者が代わっても伝わります。

明日からなにを確認すればよいのか

点検表を持つ担当者と垂れ壁のある部屋と記録の書類
排煙設備は建築基準法の側の設備なので、消防用設備等の点検票を見ていても出てきません。
それでも建物を使う側が常に適法な状態に保つ義務は法律に書かれています。
建築基準法第8条第1項 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない
やることは3つです
一つ目は、天井から下がっている板の位置を図面に落として防煙壁として扱う部分をはっきりさせることです。
二つ目は、排煙口とその手動開放装置の場所を歩いて確かめ、前に物が置かれていないかと使用方法の表示が読めるかを見ることです。
三つ目は、排煙設備が建築基準法第2条第3号の建築設備に当たることをふまえ、特定行政庁が指定していれば同法第12条第3項の定期検査と報告の対象になるので、直近の報告書がどこにあるかを確かめておくことです。
指定の有無は建物ごとに違うので、分からなければ所在地の特定行政庁に問い合わせてください。

報告書がどこにあるか、すぐには出てこないかもしれません。

見つからないときは管理会社か設計事務所に控えが残っていることが多いです。
今のうちに保管場所を決めておくと、立入検査で慌てずに済みます。

よくある質問

Q天井から下がっている板が邪魔なので短く切ってもよいですか?
A防煙壁は天井面から50センチメートル以上下方に突き出したものと条文が定めているので、その寸法を割るように切ることはできません。位置を変えたい場合は設計者を通して確認してください。
Q排煙口を開けるレバーが見当たらないのですがどこを探せばよいですか?
A壁に設けるものは床面から80センチメートル以上1.5メートル以下、天井から吊り下げるものは床面からおおむね1.8メートルの高さにあります。棚や掲示物の陰になっていないかも見てください。
Q学校や体育館には排煙設備が要らないのですか?
A条文のただし書きに学校等として挙げられているので、建築基準法施行令第126条の2第1項の排煙設備の設置は求められません。ただし消防法の側の基準は別に判断されます。
Q排煙設備は消防用設備等の点検で見てもらえますか?
A建築基準法の側の排煙設備は建築設備に当たるため、消防用設備等の点検とは別の枠組みで扱われます。どちらの対象になっているかを建物ごとに確かめてください。

まとめ

天井から下がっている透明な板は防煙壁で、煙が横へ流れるのを食い止める部分である
防煙壁は天井面から50センチメートル以上下方に突き出した垂れ壁などをいう
排煙設備が必要になるのは用途と規模と居室の広さで決まり、学校等や階段の部分などはただし書きで外れる
建物は床面積500平方メートル以内ごとに防煙壁で区画する
排煙口は防煙区画部分の各部分から水平距離30メートル以下で届く位置に設ける
手動開放装置の手で操作する部分は床面から80センチメートル以上1.5メートル以下か、吊り下げならおおむね1.8メートルの高さに置く
使用方法の表示と操作する部分の前は空けておく

明日いちばんに、売場の手動開放装置の前を片づけます。

それだけでも立入検査での指摘は減ります。
判断に迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第3号・第8条第1項・第12条第3項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第126条の2・第126条の3・第16条第3項
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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