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住宅用火災警報器の設置はなぜ全国で広がったのか|2001年の住宅防火基本方針が掲げた高齢者重点の死者半減目標を解説

住宅用火災警報器はなぜ高齢者を重点に広がったのかのアイキャッチ画像

いまの住宅用火災警報器の設置は、最初から法律の義務として始まったわけではありません。
出発点は、2001年に消防庁が定めた1つの政策方針でした。
消防予第91号は、10年後の死者半減という前の目標が未達だったことを踏まえ、高齢者を重点に置いた新しい方針を示した通知です。
住宅用防災機器の普及と地域連携を同時に進める「連携と実践」という考え方が、ここから始まりました。

住宅用火災警報器は最初から設置が義務だったと思っていました。

実は2001年の基本方針が先にありました。
順番に見ていきましょう。

方針だけで、法律の義務ではないということですか。

そのとおりです。
今の義務とのつながりも合わせて説明します。

この記事の結論
  • 消防予第91号(2001年)は、前の10年計画が死者半減目標を達成できなかったことを踏まえ「住宅防火基本方針」を新たに定めた通知です。
  • 新方針は高齢者等の死者低減を重点目標に、今後10年間で死者を半数に抑えることを目指しました。
  • 具体策として住宅用火災警報器等の普及促進と、福祉関係者を含む地域連携(防火対策推進協力者制度)を掲げました。
  • この基本方針そのものには法的な義務はなく、現在の設置義務は後の消防法第9条の2(2004年改正)によるものです。
  • 今日確認すべきは、高齢者世帯の設置・点検状況と、地域の福祉関係者との連携窓口です。

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住宅防火基本方針が高齢者世帯を重点に地域連携を進める4ステップを示した図解

消防庁はなぜ2001年に新たな住宅防火基本方針を定めたのか

折れ線グラフが描かれた書類パネルと一軒家の形が線でつながるイラスト
平成3年に定めた前の基本方針は、10年後に死者を半減させるという目標を掲げていました。
ところが2001年までの実績を見ると、その目標には届いていませんでした。
消防予第91号 住宅防火対策につきましては、平成3年に策定した「住宅防火対策推進に係る基本方針」に基づき、「10年後における住宅火災による死者数の半減」を目標として、各種施策を国民運動的に推進してきたところです。この結果、住宅火災による死者数にあっては、人口の増加及び高齢化の状況を踏まえれば、抑制状態の傾向にあり、半減という目標は達成できなかったものの住宅防火対策の推進による相応の効果は上がっていると考えられます。当庁では今後、本格的な高齢社会を迎えるに当たり、住宅火災による死者のうち高齢者等の占める割合が半数以上と依然として多発している状況に鑑み、高齢者等を中心とした住宅火災による死者のより一層の低減を図ることを目的として、(略)新たに「住宅防火基本方針」を別添のとおり策定しました。
前の基本方針は10年後の死者半減を目標にしていましたが、人口増加と高齢化を踏まえると実際は抑制傾向にとどまり、目標そのものは達成できませんでした。
その一方で、住宅火災による死者のうち高齢者等が占める割合は半数以上と、依然として高いままでした。
この2点を踏まえ、消防庁は過去10年間の成果と反省をもとに、高齢者等を中心とした新しい方針を作ることにしました。
前の目標が未達だったことと、高齢者の死者が多いままだったことが、新方針を定めた直接のきっかけです。

目標が未達だったからこそ、新しい方針が必要になったんですね。

はい。
とくに高齢者の死者が多いままだった点が重視されました。

基本方針はどの住宅のどんな世帯を重点に据えたのか

中心の一軒家の形に3つの小さな家の形が線でつながるイラスト
新しい方針は、すべての住宅を同じやり方で扱うわけではありません。
自分で備える住宅と、地域で支える住宅を分けて考えています。
住宅防火基本方針 個人が私生活を営む場である住宅の防火責任は、当該個人が負うべきものとの考えのもとに、(略)このため、住宅防火を推進するためには、まず、個人の責任において個々の住宅における防火安全のグレードアップを図ることが必要である。一方、火災発生時に初期消火や避難などの適切な対応が困難である高齢者や障害者等が居住する住宅にあっては、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等による防火対策を含めた地域における住宅防火対策の推進が不可欠である。
住宅の防火責任は、基本的にはそこに住む個人が負うという考え方が前提になっています。
ただし、初期消火や避難が難しい高齢者や障害者等が住む住宅では、個人の備えだけでは足りません。
そこで、ホームヘルパーや民生委員といった福祉関係者と連携した地域ぐるみの対策が不可欠とされました。
「連携と実践」をスローガンに、個人の備えと地域の支えを両方進めるのがこの方針の考え方です。

高齢者のお宅は、本人任せにしないということですね。

そうです。
福祉関係者との連携が前提になっています。

基本方針は具体的にどんな対策を進めることにしたのか

円盤型の火災警報器と消火器と布状の防炎品が並ぶイラスト
考え方が決まったところで、実際にどんな対策を進めることにしたのでしょうか。
目標の期間と、普及させる機器の種類が具体的に示されています。
住宅防火基本方針 高齢化の進展とともに住宅火災による死者の増加が見込まれるなか、住宅火災による死者の大幅な低減を図ることを目途に、今後10年間の目標として、放火自殺者等を除く住宅火災による死者の発生数を現状から予測される死者発生数の半数に低減・抑制することを目指す。(略)目標期間を前期5か年(平成13年度から17年度)と後期5か年(平成18年度から22年度)に分け、前期の実績を踏まえて、後期5か年の必要な対策の見直しを講じるものとする。(略)住宅火災における逃げ遅れの死者を低減するため、火災をいち早く感知し、早期に警報を発する住宅用火災警報器等の設置促進を図る。
目標は今後10年間で死者数を現状予測の半数に抑えることとされ、前期5か年と後期5か年に分けて実績を見直す仕組みでした。
具体策の中心は住宅用火災警報器等の設置促進で、高齢者世帯への重点的な普及や、消火器・防炎品等の普及促進もあわせて進めることとされました。
さらに、福祉関係者や自治会等が連携する防火対策推進協力者制度を新たに設け、地域での見守りを後押ししました。
住宅用火災警報器等の普及と、地域の協力者制度づくりが、この基本方針の2本柱です。

住宅用火災警報器のほかに、消火器や防炎品も対象だったんですね。

はい。
ただ中心は住宅用火災警報器等の普及でした。

この基本方針だけでは見落としやすいのはどこか

書類パネルと天秤の形と法律書を示す厚い書類パネルが並ぶイラスト
ここまでの内容は、2001年当時の政策方針です。
今の読者が見落としやすいのは、この方針自体には義務がないという点です。
住宅防火基本方針 個人が私生活を営む場である住宅の防火責任は、当該個人が負うべきものとの考えのもとに、火気管理等の防火管理並びに消防用設備等の設置及び維持管理の規制については、火災発生時に人命危険等を共有する共同住宅等の一部を除き、法令による義務を課していない。
消防法第9条の2第1項 住宅の用途に供される防火対象物((略)以下この条において「住宅」という。)の関係者は、次項の規定による住宅用防災機器(住宅における火災の予防に資する機械器具又は設備であって政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)の設置及び維持に関する基準に従って、住宅用防災機器を設置し、及び維持しなければならない。
2001年の基本方針は、あくまで国民運動として普及を促す政策であり、本文でも住宅には法令による義務を課していないと明記されています。
また、方針が掲げた前期5年・後期5年の10年計画(平成13年度から22年度)は、すでに期間を終えています。
今の住宅用防災機器の設置義務は、2004年の消防法改正で加わった第9条の2が根拠で、具体的な基準は市町村条例に委ねられています。
2001年の方針は今の義務のきっかけであって、方針そのものが今の義務ではない点を混同しないようにします。

2001年の方針と、今の設置義務は別のものなんですね。

そのとおりです。
今の根拠は消防法第9条の2です。

防火管理者が今日からなにを確認すればよいか

チェックリストを持つクリップボードと一軒家の形が線でつながるイラスト
経緯が分かったところで、実務ではどこから確認を始めればよいのでしょうか。
確認の軸は、いつも高齢者等が住む世帯です。
住宅防火基本方針 既存の住宅において高齢者等が居住する家庭に対しては、重点的に普及・設置促進を図るとともに、各個人で住宅用火災警報器等の点検及び機能の低下した機器の更新ができない場合、福祉団体等との連携により点検等の促進を図る。(略)福祉団体等との連携・協力を図り、高齢者や障害者等が居住する住宅について訪問診断を重点的に実施するなど、防火指導の推進を図る。
まず、管内の高齢者世帯で住宅用防災機器の設置と点検の状況がどうなっているかを把握します。
機器の交換や点検を自分でできない世帯があれば、福祉団体等との連携窓口を確認し、つなげられる体制があるかを確かめます。
あわせて、設置基準そのものは消防法第9条の2と市町村条例が根拠になることを、周知資料に正しく書いているか見直します。
高齢者世帯の設置・点検状況と、福祉関係者とつながる窓口の有無を、まず確認します。

高齢者のお宅をまず確認するところから始めればいいんですね。

そのとおりです。
福祉関係者との連携も忘れずに確認してください。

よくある質問

Q住宅防火基本方針とはどんな通知ですか?
A2001年に消防庁が消防予第91号で各都道府県に通知した、高齢者等を重点に住宅火災の死者低減を目指す政策方針です。
Qこの基本方針に法的な義務はありますか?
Aありません。住宅の防火責任は個人が負うという前提に立った普及促進策で、今の設置義務は後の消防法第9条の2によるものです。
Q目標はどのように設定されましたか?
A今後10年間(前期5年・後期5年)で、放火自殺者等を除く住宅火災の死者を、現状から予測される発生数の半数に低減・抑制することを目標としました。
Q現在の住宅用防災機器の設置義務はどの条文に基づきますか?
A消防法第9条の2です。設置及び維持に関する基準は、政令で定める基準に従って市町村条例で定められます。

まとめ

✔消防予第91号(2001年)は、前の10年計画が死者半減目標を達成できなかったことを踏まえて定められた新しい住宅防火基本方針です。
✔住宅火災による死者のうち高齢者等の占める割合が半数以上だったことが、新方針を定めた直接のきっかけです。
✔住宅の防火責任は個人にあるとしつつ、高齢者等の世帯は福祉関係者との地域連携で支える考え方です。
✔具体策の中心は住宅用火災警報器等の普及促進で、消火器・防炎品の普及や防火対策推進協力者制度もあわせて進められました。
✔この基本方針自体には法令による義務はなく、前期5年・後期5年の10年計画はすでに終了しています。
✔現在の設置義務は、2004年の消防法改正で加わった第9条の2と市町村条例が根拠です。
✔確認するときは、まず高齢者世帯の設置・点検状況と福祉関係者との連携窓口から始めます。

高齢者世帯の確認から始めればいいんですね!

地域連携の窓口も合わせて確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第91号「新たな住宅防火対策の推進について」(平成13年4月1日、消防庁長官)
  • 住宅防火基本方針(消防予第91号別添、平成13年4月1日、消防庁)
  • 消防法第9条の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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