ホームセンターで買ってきた消火器を、店や事務所の隅に置いているという話をよく聞きます。
ところが立入検査でそれを見た消防職員から、これは数に入りませんと言われることがあります。
家庭向けに売られている住宅用消火器は、事業所に置く消火器とは規格そのものが分かれているからです。
住宅用消火器は消防法施行規則が定める消火器具の本数の計算から名指しで外されています
店の裏に消火器を置いてあるのに、数に入らないと言われました。
ちゃんと赤い消火器なのになぜでしょうか。
おそらく住宅用消火器だと思います。
ラベルにその旨が書いてあるはずなので見てみてください。
同じ消火器なのに、置く場所で扱いが変わるのですか。
変わります。
規格を定めた省令の段階で章そのものが分かれていて、能力単位の考え方も別なのです。
- 住宅用消火器とは住宅における使用に限り適した構造及び性能を有する消火器のことです(消火器の技術上の規格を定める省令第1条の2第2号)
- 事業所に置く消火器具の本数は能力単位の数値の合計数で決まりますが、住宅用消火器はその計算から括弧書きで外されています(消防法施行規則第6条第1項)
- 括弧書きの効力は第6条から第10条までに及ぶので、設置基準のどこにも住宅用消火器は入ってきません
- 能力単位を求める規定そのものが「住宅用消火器以外の消火器」に向けて書かれています(同省令第2条)
- 住宅用消火器しか置いていない事業所は、必要な本数がまるごと足りていない状態になります
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目次
住宅用消火器とはどんな消火器なのか

その線は消火器の規格を定めた省令の用語の意義の条にあります。
この省令は用語を定義したあと、第2章を住宅用消火器以外の消火器、第3章を住宅用消火器として、章の段階から書き分けています。
第3章に入っている第39条は、住宅用消火器を蓄圧式であって消火剤を再充てんできない構造でなければならないと定めています。
第40条が求める消火性能も、普通火災に加えて天ぷら油火災とストーブ火災という、住宅で起きる火災を想定した試験になっています。
つまり住宅用消火器は事業所向けの消火器を小型にしたものではなく、最初から別の物として設計された製品です。
まずは手元の消火器がどちらなのかを、思い込みではなくラベルで確かめるところから始めてください
小型の消火器という意味ではなかったのですね。
そもそも作りが違うということですか。
そうです。
試験の中身まで天ぷら油火災のような住宅の火災を想定して組まれています。
事業所の消火器具はなにを満たさなければならないのか

その計算の骨は消防法施行規則の第6条にあります。
まず消防法施行令第10条第2項第1号が、令別表第二でその消火に適応するものとされる消火器具を設置することを求めています。
そのうえで規則第6条第1項が、置いた消火器具の能力単位の数値を足し合わせ、延べ面積または床面積を表の面積で除して得た数以上になるようにと求めています。
表の面積は用途によって50平方メートル・100平方メートル・200平方メートルに分かれ、特定主要構造部が耐火構造で内装を難燃材料にした建物では同条第2項の規定によりその2倍の数値で計算できます。
本数と配置の具体的な計算のしかたは別の記事でくわしく扱っているので、ここでは合計数という考え方だけ押さえておいてください
本数ではなく、足し算した数値で見るということですね。
だから一本あたりの中身が問われるわけですか。
そのとおりです。
そしてこの合計数に住宅用消火器を持ち込めないところが今回の話の中心になります。
住宅用消火器はなぜその数に入らないのか

先ほどの第6条第1項の、消火器具という語のうしろを開いてみます。
しかもこの括弧書きは第6条の中だけで終わらず、この条から第10条までという形で効力の及ぶ範囲まで書いてあります。
規則の第6条から第10条は、設置個数の減少も基準の細目も含めた消火器具の設置基準そのものですから、住宅用消火器はその全体から外れていることになります。
裏づけはもう一つあり、規格を定めた省令の第2条は「消火器(住宅用消火器以外の消火器(交換式消火器を除く。)をいう。以下この章において同じ。)は、次条又は第4条の規定により測定した能力単位の数値が一以上でなければならない」と定めています。
つまり住宅用消火器には能力単位の数値がそもそも与えられていないので、何本並べても合計数は1も増えません。
足りない本数は、住宅用消火器以外の消火器を別に置いて埋めるほかありません
つまり数える土俵にそもそも乗っていないということですね。
ようやく腑に落ちました。
その理解で合っています。
置いてはいけないのではなく数えられないというのが正確な言い方です。
実務で見落としやすいのはどこか

場所ごとに上乗せで求められる部分にも、同じ括弧書きが効いてきます。
配電盤や変圧器のある場所は床面積100平方メートル以下ごとに1個、ボイラー室のように多量の火気を使用する場所は床面積を25平方メートルで除した数以上が必要です。
どちらも第6条の中の規定なので、冒頭の括弧書きで住宅用消火器が外れている点は変わりません。
もう一つ落とし穴になりやすいのが、簡易消火用具との関係です。
水バケツや乾燥砂などの簡易消火用具は同条第7項により、その能力単位の数値の合計数が消火器の合計数の2分の1を超えてはならないとされているので、バケツを増やして埋める方法にも上限があります。
まずは電気設備のある部屋と火気を使う部屋を図面で拾い出し、そこに置いてある消火器の種別を一台ずつ確かめてみてください
厨房と電気室にも別に要るとは知りませんでした。
そこに家庭用を置いていたら二重に足りていないわけですね。
その見方で合っています。
配電盤のある部屋は見落とされやすいので先に確かめてください。
明日からなにを確認すればよいのか

置き方のほうは規則の細目の条に並んでいます。
規格を定めた省令の第44条第2号は、住宅用消火器には住宅用消火器である旨を見やすい位置に表示することを求めています。
同条第14号ハでは消火剤の再充てんができない旨の記載も求められているので、この二つが書いてあれば住宅用と判断できます。
種別を確かめたら、次は規則第9条の細目に沿って、床面からの高さが1.5メートル以下か、「消火器」の標識が見やすい位置にあるかを見ます。
そのうえで住宅用が混ざっていた分だけ合計数が足りなくなるので、必要な能力単位を数え直して不足分を補充してください。
判断に迷うときは、点検を依頼している業者か所轄消防署に種別と本数を一緒に確認してもらうのが確実です
まずはラベルを一台ずつ見て回ればよいのですね。
標識の有無も一緒に見てきます。
それで十分です。
写真を撮っておくと不足分の補充を相談するときに話が早くなります。
よくある質問
まとめ
置いてあるのに足りない理由がラベルひとつで分かるとは思いませんでした。
さっそく全部見て回ります。
その一歩で指摘の多くは防げます。
種別と本数の確認は㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第17条の3の3・第21条の2
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第10条・第37条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第6条・第7条・第8条・第9条
- 消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号)第1条の2・第2条・第39条・第40条・第42条・第43条・第44条
- e-Gov法令検索(デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





