加圧防排煙設備を設計するとき、「排煙口はすべての部屋に必要なのか」という質問をよく受けます。
実は一定の条件を満たす場所は、あえて排煙口を設けなくてよいと定められています。
ただし免除の条件は場所によって細かく分かれており、思い込みで済ませると審査で指摘を受けます。
この記事では、防煙区画の基本の考え方から排煙口の設置が免除される3つのパターンまで整理して解説します。
うちのビル、加圧防排煙設備を入れる予定なんですが。
全部の部屋に排煙口を付けないといけませんか。
いいえ、条件を満たせば排煙口を省略できる場所があります。
まずは防煙区画の考え方から見ていきましょう。
階段やトイレにも排煙口が必要になるということですか。
そこはむしろ免除される代表例です。
順番に確認していきましょう。
- 加圧防排煙設備の排煙口は、垂れ壁等で区画した防煙区画ごとに1つ設けるのが原則です
- 床面積500平方メートル以下の階段・廊下・浴室便所・エレベーターの機械室や昇降路等は、排煙口の設置そのものを省略できます
- 準耐火構造で床面積100平方メートル以下の防火区画された室も、防火戸の閉鎖条件を満たせば省略できます
- 隣接する排煙室までの水平距離30メートル以下で防火区画された室も同様に省略できます
- 加圧防排煙設備の風道には、原則として自動閉鎖装置を設けたダンパーを設置できません
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目次
加圧防排煙設備の排煙口はなぜ防煙区画ごとに1つでよいのか

「防煙区画」という単位で区切ったうえで、その区画ごとに設置します。
防煙区画は、間仕切壁や天井面から三十センチメートル以上垂れ下がった垂れ壁など、煙の流れを妨げる不燃材料の仕切りで区切られた範囲を指します。
一般の排煙設備を定める消防法施行規則第三十条第一号とほぼ同じ考え方ですが、「イを除く」とされている点に注意が必要です。
イ(防煙区画の面積の上限や給気口によるただし書き)はそのまま使わず、この告示独自のルールに置き換わります。
この原則を頭に入れたうえで、次から見る3つの例外を確認していきます。
垂れ壁で区切ってさえいれば、面積は関係なく防煙区画になるんですか。
はい、この告示自体には防煙区画の面積の上限はありません。
ただし次に見る例外の場所には、それぞれ別の面積条件があります。
どんな場所なら排煙口の設置そのものが要らなくなるのか

まず1つ目は、床面積が小さく火災の危険が少ないとされる場所です。
イ 加圧式消火活動拠点
ロ 階段、廊下、通路その他これらに類する場所
ハ 浴室、便所その他これらに類する場所
ニ エレベーターの機械室、機械換気設備の機械室その他これらに類する室
ホ エレベーターの昇降路、リネンシュート、パイプダクトその他これらに類するもの
階段、廊下、浴室、便所、エレベーターの機械室や昇降路などが、この免除の対象として列挙されています。
ただし面積の上限は500平方メートル以下で、これを超える大空間には適用されません。
また対象になるのは用途で判断される5つの区分だけで、名称が似ているからといって拡大解釈はできません。
図面でこれらの用途に該当する範囲を洗い出すことが、最初の実務です。
エレベーターの昇降路も対象なんですね。
うちのビルにも当てはまりそうです。
昇降路やパイプダクトは典型例です。
面積が500平方メートルを超える大空間の場合は当てはまらないので確認してください。
防火区画された小部屋や排煙室方式はどう扱われるのか

どちらも面積は100平方メートル以下という共通の上限があります。
(三) 各部分から隣接する一の室(排煙室)に設置された一の排煙口までの水平距離が三十メートル以下である室で、次のイからハまでに該当するもの イ 壁(排煙室に面する部分を除く。)及び床は、準耐火構造であること。 ロ 排煙室に面する開口部以外の開口部には、(二)ロと同様の防火戸を設けたものであること。 ハ 床面積が、百平方メートル以下であること。
(二)は室そのものを防火的に閉じ込める考え方で、(三)は隣接する排煙室に排煙を任せる考え方です。
(三)を使う場合は、隣の排煙室までの水平距離30メートル以下という条件も同時に満たす必要があります。
どちらも防火戸の閉鎖方式(自動閉鎖・常時閉鎖・煙感知器連動)が細かく指定されているため、単に防火戸を付ければよいわけではありません。
図面だけでなく、実際に設置される建具の仕様まで確認することが欠かせません。
100平方メートルを超える会議室があるんですが、それでも省略できますか。
100平方メートルを超えるとどちらも使えません。
その場合は原則どおり、その室自体に排煙口が必要です。
実務で見落としやすいのはどこか

ここを見落とすと、設計段階でやり直しになりかねません。
一般の排煙設備では、耐火構造の壁や床を貫く箇所に高温で閉鎖するダンパーを設けることが認められていますが、加圧防排煙設備ではこの発想が逆転します。
排煙中に風道が不用意に閉じてしまうと、加圧による防煙の効果そのものが働かなくなるためです。
ただし書きにあたる限られた場合を除き、ダンパーを設置しないことが原則だと覚えておく必要があります。
図面に自動閉鎖ダンパーの記号があれば、まずこの規定に抵触していないかを確認してください。
普通の排煙設備の感覚でダンパーを入れてしまいそうです。
そこが最も見落とされやすい点です。
加圧防排煙設備では原則、風道にダンパーを設けません。
明日からなにを確認すればよいのか

図面を前に、順番にあてはめていけば判断できます。
・防煙区画が垂れ壁等で正しく区切られているか
・階段や廊下、浴室便所、昇降路等なら床面積500平方メートル以下か
・防火区画した室なら床面積100平方メートル以下で防火戸が自動閉鎖等の条件を満たすか
・排煙室方式なら隣接する排煙室までの水平距離30メートル以下か
・風道に自動閉鎖ダンパーを誤って設けていないか
①まず防煙区画の区切り方を確認し、②該当する室が面積の条件を満たすかを見ます。
③排煙室方式を使う場合は隣接する排煙室までの水平距離30メートル以下かも測っておきます。
④風道の図面に自動閉鎖ダンパーが紛れ込んでいないかも忘れずに確認します。
判断に迷う点があれば、所轄消防署に事前相談することをおすすめします。
チェックリストにすれば、うちの設計者にもそのまま伝えられそうです。
そのとおりです。
次はよくある質問もあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
排煙口が免除される条件、よくわかりました。
これで図面を見直せそうです。
区画や風道の取り扱いで判断に迷ったら、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成21年9月15日消防庁告示第16号、最終改正:令和6年3月29日消防庁告示第6号)第三
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第30条第1号
- 排煙設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成21年総務省令第88号)第2条第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





