建築設備の定期検査報告書には、第一面の所有者情報だけでなく、第二面に「建築物の概要」「確認済証交付年月日等」「検査日等」「検査者」という4つのブロックがあります。
第二面は検査対象の建築設備そのものの履歴と、誰が検査したかを特定行政庁に伝えるための書類で、書き方を誤ると受付そのものができないことがあります。
この記事では東京都建築設備定期検査報告実務マニュアルの記入例をもとに、建築物の概要欄の数値の丸め方から、検査者欄になぜ現場に行った全員の氏名が必要なのかまで、4つの視点で解説します。
第二面は「誰が」「いつ」「何を確認した設備に」検査を行ったかを一枚で証明する書類です。
第二面は建築物の概要から検査者欄まで書く欄が多くて大変そうです。
検査していない設備についても記入する必要がありますか。
検査の対象になっていない設備の欄は空欄のままで大丈夫です。
まずは建築物の概要と検査者欄の基本ルールから確認していきましょう。
検査者欄には検査した人の名前を1人書けば十分だと思っていました。
実は現場に行った有資格者は全員書く決まりで、書き方を誤ると資格者証の返納命令につながることもあります。
順番に見ていきましょう。
- 建築物の概要欄の階数・建築面積・延べ面積は直前の確認申請書類の数値を使い、小数点以下3桁目を切り捨てて2桁で記入します
- 確認済証交付年月日と検査済証交付年月日は別の書類・別の日付として両方とも記入する必要があります
- 前回の報告日から今回の報告日までが6箇月を経過していないと、報告書はセンターで受け付けてもらえません
- 検査者欄には現場に行った有資格者を1人残らず記入する必要があり、名義だけの記載は不誠実な行為として扱われます
- 検査対象になっていない建築設備の欄は、無理に埋めずに空欄のまま提出して構いません
▼

目次
建築物の概要欄はどこまで正確に書けばよいのか

数値をどこから拾うかを間違えると、後から特定行政庁に問い合わせが来ることがあります。
階数・建築面積・延べ面積の3つは、いま目の前にある建物を実測して書くものではなく、直前の確認申請書類に記載された数値をそのまま使います。
建築面積・延べ面積は小数点以下3桁目を切り捨てて2桁にそろえるため、申請書類の数値をそのまま転記すると桁数が合わないことがあります。
建物全体の延べ面積と、実際に定期検査の報告対象になる部分の床面積の合計が異なる建物(一部の階だけが報告対象になる複合用途ビル等)では、延べ面積の欄に建物全体の数値を書いたうえで、( )内に報告対象部分の床面積の合計を書き添えます。
「ニ.検査対象建築設備」は換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備の4区分から、実際に検査した設備だけにチェックを入れます。
最初のブロックでつまずくと後続のすべての欄の前提が狂うため、記入前に直前の確認申請書類を手元に用意しておくことが大切です。
うちのビルは1階だけ店舗で残りは事務所なんですが、延べ面積はどう書けばいいですか。
建物全体の延べ面積を書いたうえで、報告対象になる部分の床面積の合計を( )内に書き添える決まりです。
迷ったときは検査者の方に確認してみてください。
確認済証と検査済証はなぜ両方の交付年月日を書くのか

片方だけ書いて安心してしまうと不備で差し戻されることがあります。
建築基準法上、建築設備を新たに建物に設けるときも、確認済証の交付を受けてから工事に着手し、工事が終わったら完了検査を受けて検査済証の交付を受けるという2段階の手続きを踏みます。建築設備への確認は、建築物の確認に関する規定を準用するしくみになっています。
確認済証交付者・検査済証交付者の欄は、建築主事等(特定行政庁)が交付したのか、民間の指定確認検査機関が交付したのかをチェックボックスで区別し、指定確認検査機関の場合はその名称も書きます。
古い建物では検査済証の交付年月日が記録に残っていないこともありますが、その場合も空欄にはせず「平成〇〇年頃完了」のようにおおよその時期を記入します。
建物の履歴を後から追えるように、初回の確認交付年月日等が分かれば備考欄に書き添えておくと次回以降の検査で役立ちます。
うちの検査済証、古い建物なので日付が分からないんですが、どう書けばいいですか。
分からないときは平成〇〇年頃完了のようにおおよその時期で構いません。
分かる範囲の情報を備考欄にも残しておくと安心です。
検査日等の欄でなぜ前回の報告日が重要になるのか

ここでの日付の管理を誤ると、報告書そのものが受け付けてもらえません。
「今回の検査」の欄に書くのは検査が終わった日で、報告書の提出期限は検査を開始した日から数えて原則1ヶ月以内です。開始日と終了日を取り違えると期限の計算がずれてしまいます。
「ロ.前回の検査」欄は前回の検査を行った日ではなく、前回の報告書をセンターに提出した日を書きます。初回の検査であれば「未実施」にチェックを入れます。
前回の報告日から6箇月未満で今回の報告日を迎えると受付されないため、検査のスケジュールを組む段階から前回の報告日を確認しておく必要があります。
「ハ.前回の検査に関する書類の写し」欄は、前回提出した定期検査報告書の控えが手元にあるかどうかを示すもので、初回の検査のときはチェックを入れません。
去年の検査から日が浅い気がするんですが、報告してしまって大丈夫でしょうか。
前回の報告日から6箇月を経過していないと受け付けてもらえない決まりです。
検査を予定する前に前回の報告日を確認しておきましょう。
検査者欄はなぜ現場に行った有資格者全員を書かなければならないのか

ここは名義の扱いを誤ると資格そのものに関わる重い話になります。
「代表となる検査者」と「その他の検査者」に分かれていますが、どちらの欄にも有資格者を記入する決まりで、現場に行った有資格者は必ずすべて記入します。
自分では検査をしていないのに名義だけを検査者欄に貸すような行為は不誠実な行為にあたり、資格者証の返納命令の対象になり得ることが明記されています。
検査者が建築設備検査員であれば資格者証の交付番号を、一級・二級建築士であれば建築士としての登録番号を書きます。建築士の資格で検査を業として行う場合は、建築士法第23条の規定により建築士事務所の登録も必要です。
この欄は換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備のそれぞれについて同じ形式で繰り返されるため、設備ごとに検査者が違う場合は設備ごとに正確に書き分けます。
検査会社の代表者の名前だけ書いておけば十分だと思っていました。
実際に現場に行った有資格者は全員書く必要があり、名義だけの記載は処分の対象になり得ます。
検査を依頼するときは誰が現場に来るかも確認しておくと安心です。
検査対象になっていない設備の欄はどう扱えばよいのか

無理に埋めようとするとかえって書類が読みにくくなります。
建物によっては換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備の4区分すべてが定期検査の対象になるとは限らず、対象外の設備については検査者欄から検査の状況欄まで一貫して空欄のままで提出します。
「ニ.検査対象建築設備」欄でチェックした設備と、以降の検査者欄・検査状況欄で記入している設備が食い違っていないかは、提出前に見比べておくと安心です。
換気設備の概要欄には無窓居室・火気使用室・居室等の系統数や室数、防火ダンパーの有無まで書く欄がありますが、これも換気設備が検査対象のときだけ記入します。
第二面は設備ごとに同じ形式が4回繰り返される書類なので、対象外の欄を空欄のままにする判断ができれば、記入作業そのものはむしろ単純になります。
うちのビルには排煙設備がないので、排煙設備の欄は全部空欄にしていいんですね。
はい、検査対象になっていない設備の欄は無理に埋めずに空欄のままで大丈夫です。
チェックした設備の欄だけを丁寧に埋めていきましょう。
よくある質問
まとめ
第二面は欄が多くて身構えていましたが、対象外の設備は空欄でいいと分かって気持ちが楽になりました!
書類の作り方に不安な点があるときはいつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第6条・第12条第3項・第87条の4
- 建築基準法第12条の2・第12条の3
- 建築士法第23条
- 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版(記入例と記入方法の解説)
※本記事は東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版の記入例と、公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。報告書の様式や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の記入方法については、報告先の特定行政庁または日本建築設備・昇降機センターにご確認ください。





