建築設備の定期検査報告書の第二面には、換気設備を検査対象にした建物だけが記入する「換気設備の概要」というブロックがあります。
無窓居室・火気使用室・居室等という3つの区分にチェックを入れ、防火ダンパーの有無まで書き分ける欄で、区分を取り違えると別表1・別表2の室数が合わなくなります。
この記事では東京都建築設備定期検査報告実務マニュアルの記入例をもとに、無窓居室の判定基準から、検査の指摘があったときの書き方、不具合の発生状況欄との違いまで解説します。
換気設備の概要欄は、居室の区分と防火ダンパーの有無を正しく書き分けて初めて後続の検査結果表とつながる欄です。
換気設備の概要欄には無窓居室や火気使用室などいろいろな区分がありますが、うちのテナントはどれに当てはまるのか毎回迷います。
無窓居室・火気使用室・居室等はそれぞれ根拠になる条文が違うので、区分ごとに整理して見ていきましょう。
防火ダンパーの有無の欄も忘れずに確認します。
検査で指摘があったときと、不具合として書くときは同じ欄に書けばいいんですよね。
いいえ、指摘と不具合は意味が違う別の欄です。
混同すると添付書類が漏れることがあるので、最後にしっかり整理します。
- 「無窓居室」欄の判定は法第28条第2項の換気20分の1ルールに基づくもので、排煙設備の無窓居室(法第35条)とは根拠条文も基準の数値も別物です
- 「火気使用室」は法第28条第3項の対象室で、区画された70kWを超えるボイラー室は対象に含まれません
- 「居室等」は劇場・集会場等の居室のことで、無窓居室の欄と重複して記入してはいけません
- 「防火ダンパーの有無」は風道が防火区画を貫通する部分の措置に関わる欄で、延焼のおそれのある部分の防火ダンパーは検査対象外です
- 「不具合」と「要是正」は別の概念で、今回・前回の指摘事項は不具合の欄には含めません
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目次
無窓居室と火気使用室はどう見分けて記入するのか

どちらも該当する室がなければ「無」にチェックを入れれば足り、無理に空欄を作る必要はありません。
無窓居室の欄に書くのは、居室の床面積に対する有効な開口部の面積が20分の1に満たない居室で、法第28条第2項が定める換気の技術的基準に沿って判定します。
火気使用室は、法第28条第3項が定める室(特殊建築物の居室を除く)のことで、ガス等を使用する厨房・湯沸室・浴室等が該当し、区画された70kWを超えるボイラー室は法第28条第3項に該当しないため火気使用室には含まれません。
機械換気設備で単独換気をしている火気使用室は「1系統1室」、共用ダクトで複数室をまとめて換気している場合は「排風機の台数=系統数」「対象になる部屋数=室数」という数え方になります。
なお、この換気上の無窓居室は、排煙設備の設置対象になる「窓その他の開口部を有しない居室」(法第35条・施行令第116条の2)とは根拠条文も判定の割合も異なる別の概念なので、両者を混同しないよう注意が必要です。
無窓居室というと排煙のときに出てきた言葉と同じだと思っていました。
換気設備の欄にも無窓居室があるんですね。
はい、名前は同じでも根拠条文と基準の割合が違う別の区分です。
混同しないよう気をつけましょう。
居室等(劇場・集会場等)の欄はどんなときに使うのか

どちらの欄に書くべきか迷ったら、まず建物の用途から確認します。
居室等に該当するのは、劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場等の用途に使われる建築物の居室で、無窓かどうかにかかわらずこの区分にチェックを入れます。
この「居室等」は法第2条第4号が定義する一般的な「居室」(居住・執務・作業・集会・娯楽等の目的で継続的に使用する室)とは意味が異なる、用途で絞り込んだ特別な区分だという点に注意が必要です。
無窓居室と居室等の両方に該当しそうな部屋があっても、記入するのはどちらか一方だけで、二重に書き込むと別表との室数の突き合わせが合わなくなります。
用途変更で劇場的な使い方に切り替わった部屋がある場合は、次回の検査までに区分の見直しが必要かどうかを検査者と確認しておくと安心です。
うちのビルの多目的ホールは無窓居室でもあるんですが、両方の欄に書いた方がいいですか。
いいえ、居室等に該当するなら居室等の欄だけに書きます。
無窓居室の欄と重複させないのが決まりです。
防火ダンパーの有無はなぜ換気設備の欄に書くのか

ここにチェックを入れ忘れると、防火ダンパー自体の検査結果が記入できなくなります。
建築基準法施行令第112条第21項は、換気・暖房・冷房の設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合に、その部分または近接する部分に防火設備を設けるよう義務づけており、この防火設備が現場では防火ダンパーと呼ばれます。
一方で、延焼のおそれのある部分に設ける防火ダンパーは、この欄でいう検査対象には含まれない点に注意が必要です。
「有」にチェックを入れた建物では、続く検査結果表で取付けの状況・作動の状況・温度ヒューズ・点検口の有無といった個別項目まで検査が必要になるため、このチェック1つが後続の検査項目の量を決めています。
防火ダンパーの設置の有無自体が分からない場合は、設計図書や過去の報告書の写しで確認してから記入すると誤りを防げます。
防火ダンパーがあるかどうか、自分では見た目でよく分からないんですが大丈夫でしょうか。
設計図書や過去の報告書で確認するのが確実です。
検査を依頼した際に検査者にも一緒に確認してもらいましょう。
換気設備の検査で指摘があったときはどう記入するのか

組み合わせのパターンが複数あるため、記入例で型を覚えておくと迷いません。
指摘の内容は「要是正の指摘あり」「既存不適格」「指摘なし」の組み合わせで書き、既存不適格だけにチェックが入ることはないという決まりがあります。既存不適格に当たる指摘は、指摘の概要欄への記入も不要です。
「ロ.指摘の概要」には、要是正の指摘があった検査項目の番号を書き添え、どの項目が問題だったのかを後から追えるようにします。
改善予定の有無で「有」を選んだ場合は改善予定の年月まで記入し、複数の項目で予定が異なるときは、そのうち最も早い年月を書くというルールになっています。
この欄の記入方法は換気設備に限らず、排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備でも共通の考え方が繰り返されます。
指摘された項目が複数あって、改善予定の時期がバラバラなんですが、全部書かないといけませんか。
改善予定の欄に書くのは最も早い年月だけで大丈夫です。
指摘の概要欄に該当する項目番号をすべて書いておきましょう。
換気設備の不具合の発生状況は指摘とどう違うのか

指摘と不具合を同じものだと思っていると、必要な書類を添付し忘れることがあります。
不具合として書くのは、前回の検査後に発生した機器の故障・異常動作・損傷・腐食等の劣化で、検査員が今回の検査で新たに見つけた要是正の指摘や、前回までの指摘事項はここには含めません。
「イ.不具合」で「有」にチェックを入れた場合は、第三面の該当欄への記入と資料の添付が必要になるため、聞き取りの段階でこの欄まで記入するかどうかを意識しておく必要があります。
「ハ.改善の状況」は、第三面に記入した不具合がすべて改善済みなら「実施済み」、改善予定があるなら予定年月とあわせて「改善予定」、予定がなければ「予定なし」にチェックを入れます。
指摘(要是正)は検査員が基準への適合状況を判定した結果、不具合は日常の使用状況から生じた劣化という違いを意識すると、この欄とその前の欄を混同せずに記入できます。
今回の検査で指摘された項目は、不具合の欄にも書いておいた方が確実じゃないですか。
いいえ、今回や前回の指摘事項は不具合の欄には含めません。
不具合は所有者や管理者への聞き取りで把握したものだけを書きます。
よくある質問
まとめ
無窓居室が2種類あることも、指摘と不具合の違いも初めて知りました!
報告書の書き方に不安な点があるときはいつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項・第28条第2項・第28条第3項
- 建築基準法施行令第20条の2・第20条の3・第112条第21項
- 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版(記入例と記入方法の解説)
※本記事は東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版の記入例と、公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。報告書の様式や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の記入方法については、報告先の特定行政庁または日本建築設備・昇降機センターにご確認ください。





