人口減少が進む過疎地では、給油取扱所そのものの維持が難しくなっているという声をよく聞きます。
消防庁は令和3年、地上に貯蔵タンクを置くという従来なら認められなかった形を、条件付きで解禁しました。
対象になるのは離島や過疎地域など燃料供給が細っている地域に限られ、地域指定や技術基準も細かく決められています。
過疎地の給油取扱所が地上タンクで営業できる条件は、この通知を読めば見えてきます。
うちは山間部でスタンドをやっていますが、地下タンクの入れ替え費用が重くて悩んでいました。
実は令和3年の通知で、条件を満たせば地上にタンクを置く形も認められるようになりました。
地下を掘らなくていいなら、ずいぶん楽になりそうです。
はい。
対象・中身・落とし穴・手順の順に、通知の内容を見ていきましょう。
- 対象は離島や奄美・小笠原、過疎地域自立促進特別措置法の区域など、燃料供給インフラの維持が課題になっている地域です
- あわせてSS過疎地対策計画など自治体の燃料供給拠点確保計画が定められていることが条件になります
- 地上貯蔵タンクはタンク専用室への設置や指定数量40倍以下の容量制限など、政令の技術基準に沿った要件を満たす必要があります
- 移動タンク貯蔵所と可搬式給油設備を接続する場合は保有空地3m以上の確保や静電気対策が欠かせません
- これらは危険物の規制に関する政令第23条(基準の特例)を適用する形で認められています
▼

目次
過疎地の給油取扱所はなぜ地上タンクを置けるようになったのか

消防庁は検討会を設け、地上タンクという新しい形での対応を検討しました。
過疎地域や離島では、給油取扱所の経営自体が地域の生活インフラを支えている一方、老朽化した地下タンクの更新費用などが重荷になっています。
消防庁は吉井博明東京経済大学名誉教授を座長とする検討会を設け、地上に貯蔵タンクを設置する形や、移動タンク貯蔵所と可搬式の給油設備を接続して給油する形について検討しました。
今回の通知はその提言を踏まえ、危険物の規制に関する政令第23条(基準の特例)を適用することで対応する考え方を示したものです。
カーボンニュートラルの流れで給油取扱所を取り巻く環境が変わっていることも、今回の見直しの背景にあります。
地下タンクの入れ替え費用がかさんで、正直このままやっていけるか不安でした。
その負担を軽くするために、地上タンクという選択肢が用意されました。
どんな地域のどんな給油取扱所が対象になるのか

地域の条件と、自治体の計画づくりの両方が必要です。
対象地域は離島振興法・奄美群島振興開発特別措置法・小笠原諸島振興開発特別措置法・過疎地域自立促進特別措置法・沖縄振興特別措置法が指定する区域か、給油所が3カ所以下、または最寄りの給油所まで15km以上ある市町村のいずれかです。
加えて、市町村がいわゆる「SS過疎地対策計画」など燃料供給拠点を確保する計画を持っていることが前提になります。
ハザードマップ上の災害危険がないこと、建築基準法令の用途地域の基準を満たすこと、防火地域・準防火地域以外であることもあわせて求められます。
これらすべてを満たしたときにはじめて、政令第23条の特例基準を適用する対象になります。
うちの町は給油所が2カ所しか残っていないんですが、それだけで対象になりますか。
給油所の数だけでなく、自治体の燃料供給計画があることもあわせて必要です。
地上タンクと移動タンクの給油には何が求められるのか

どちらも既存の屋外タンクや製造所の基準を土台にしています。
地上貯蔵タンクは平家建のタンク専用室に置き、容量は指定数量の40倍、灯油や軽油などを除けば20,000L以下に抑えます。
専用室は壁・柱・床を耐火構造にし、窓を設けず、車両の衝突防止措置も講じます。ただし厚みのある二重殻構造など専用室と同等とみなせる構造であれば代わりに使えます。
移動タンク貯蔵所と可搬式給油設備をつないで給油する場合は、周囲に3m以上の保有空地を確保し、柵やロープで区切ります。
静電気を除去する装置や第五種消火設備(10型粉末消火器)3本以上の設置、危険物取扱者による取扱いも欠かせません。
地上にタンクを置くだけなら、簡単に済みそうな気がしていました。
実際にはタンク専用室や保有空地など、屋外タンクに近い基準がそのまま求められます。
実務で見落としやすいのはどこか

その代わり、移動タンク貯蔵所には運用面での縛りがあります。
地上貯蔵タンクの容量は指定数量の40倍が原則ですが、SS過疎地対策計画で自治体と合意した量までは超過が認められる余地があります。
一方で移動タンク貯蔵所を使う形は、給油業務が終わったら常置場所へ移動させることが前提で、敷地に置きっぱなしにする運用は想定されていません。
原則として移動タンク貯蔵所1台につき油種は一つで、可搬式給油設備も油種ごとに専用のものを用意します。
専用室の代わりに二重殻タンク等を使う場合も、製造者以外の第三者によるリスク評価が前提になっている点を見落とさないでください。
容量オーバーになったら、その場でアウトということですか。
自治体の計画で合意した量までは、超過しても認められる余地があります。
明日からなにを確認すればよいのか

自治体の計画づくりと事前の相談がカギになります。
まず自分の給油取扱所が離島や過疎地域などの地域条件と、給油所数・距離の条件のどちらかに当てはまるかを確認します。
次に市町村がSS過疎地対策計画等の燃料供給拠点確保の計画を持っているか、無ければ策定に動く必要があります。
地上タンクや給油設備の性能確認には製造者以外の第三者による評価を活用し、疑義があれば総務省消防庁へ相談することとされています。
最終的な適用の可否は所轄消防署の判断になるため、計画段階から所轄消防署に事前相談してください。
何から手を付ければいいのか、正直まだ整理できていません。
まずは地域条件の確認と、自治体のSS過疎地対策計画の有無から始めてください。
よくある質問
まとめ
地域条件・計画・技術基準・事前相談の4点を見ればいいと分かりました。
すっきりしました。
その視点を最初に整理しておけば、新設や運用の相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 過疎地の給油取扱所において地上に貯蔵タンクを設置する場合等の運用について(令和3年3月30日 消防危第51号 消防庁危険物保安室長)
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第23条
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第11条・第12条・第17条
- 過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)第2条第2項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





