建築設備定期検査は、建物の用途や規模だけで対象かどうかが決まるわけではありません。
同じ敷地に複数の建物がある場合や、増築でつながった建物、複数のテナントが入る雑居ビルでは「どこからどこまでを1つの建物として数えるか」という数え方そのものが判定を左右します。
東京都では、この数え方について棟の一体性や床面積の合算方法に独自の運用ルールを定めています。
数え方を誤ると、本来は対象外の建物を検査してしまったり、逆に対象の建物を見落としたりする恐れがあります。
うちのビルは道路を挟んで別館があるんですが、これも合算して床面積を判定するんでしょうか。
それとも棟ごとに別々に考えていいんでしょうか。
基本は棟ごとに判定します。
ただし増築や渡り廊下でつながっている場合は扱いが変わることがあるので、順番に確認していきましょう。
雑居ビルのように何店舗も入っている建物だと、床面積の合計はどう出すんですか。
同じ用途区分の店舗は合算しますが、用途が違うと合算しないのがポイントです。
この記事で数え方の基準を整理します。
- 建築設備定期検査の対象となる建築設備(換気・排煙・照明・給排水)は、特定行政庁である東京都が個別に指定しています
- 判定の単位は敷地ではなく原則として棟ごとで、増築や渡り廊下で一体になった建物は1棟として扱われることがあります
- 同じ用途区分に属する複数の店舗は、共用の廊下やホールも含めて床面積を合算して判定します
- 用途区分をまたぐ場合は原則として床面積を合算しません。事務所は延べ面積と用途部分の面積という二重の基準を持ちます
- 判断に迷う建物は、所轄の特定行政庁への確認が確実です
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目次
建築設備定期検査の対象はなぜ棟単位で判定するのか

これらの対象範囲は、建物がある地域の特定行政庁が個別に指定する仕組みになっています。
指定にあたって東京都が基準としているのは、建物の用途・規模・階数の組み合わせと、建物をどの単位で数えるかという2つの要素です。
用途・規模の基準は既存の解説記事に譲り、この記事では後者の数え方に絞って解説します。
敷地内に建物が複数ある場合や、テナントが入り組んだビルほど、この数え方の理解が判定の分かれ目になります。
うちは同じ敷地に本館と別館があるんですが、これは合算されるんですか。
それとも別々に考えるんでしょうか。
次の章で棟の数え方を詳しく見ていきましょう。
敷地単位ではなく棟単位が基本です。
増築や渡り廊下でつながった建物は一棟として扱われるのか

ただし見た目が別棟に見えても、増築の経緯によっては1棟として扱われることがあります。
換気・排煙・照明・給排水の棟の数え方は、東京都の運用に委ねられています。
東京都の実務運用では、同一敷地内に建物が2以上ある場合は原則として棟単位で判定します。
一方で、既存の建物に増築した部分が構造的に一体となっている場合や、渡り廊下で日常的に行き来する構造になっている場合は、まとめて1棟として扱われることがあり、外観だけで判断せず増築の履歴を図面で確認することが欠かせません。
うちは去年フィットネスクラブを増築したんですが、これは本館と一体扱いになるんでしょうか。
構造的に接続していれば一体の1棟として扱われることがあります。
増築時の図面を確認してみましょう。
同じ用途の店舗が複数入る建物では床面積をどう合算するのか

この場合、床面積はどう数えればよいのでしょうか。
- 飲食店・バー・遊技場など同じ用途区分に属する部分は、階や区画が分かれていても床面積を合算します
- 廊下・ホール・階段室など専用部分に付属する共用部分も、主たる用途の床面積に含めて合算します
- 合算の結果が用途区分ごとの基準を超えれば、報告の対象になります
用途区分が同じであれば、これらをすべて合計して530平方メートルとして判定し、500平方メートルを超えるため報告の対象になります。
仮に共用部分を含めずに判定してしまうと、本来は対象になる建物を対象外と見誤るおそれがあります。
テナントごとの契約面積だけでなく、共用部分を含めた図面全体で床面積を拾い出すことが大切です。
テナントの契約面積だけで計算していました。
共用部分まで入れるとは思っていませんでした。
共用の廊下やホールも主たる用途の一部として数えます。
管理会社の図面で確認するのが確実です。
用途の異なるテナントが混在する建物ではなぜ合算されないのか

この場合は先ほどとは違う考え方が必要です。
- 用途区分(表の号)が異なる部分同士は、原則として床面積を合算しません。それぞれの用途区分の基準で個別に判定します
- 事務所その他これに類するものは例外的に、建築物全体の延べ面積と事務所部分の床面積という二重の基準を両方満たして初めて対象になります
- 一方の用途だけで基準に届かなくても、混在する用途を安易に足し合わせて対象と判断しません
飲食店部分は360平方メートルで500平方メートルの基準に届かず、事務所部分も延べ面積が2,000平方メートルを超えないためどちらも対象になりません。
飲食店と事務所を足し合わせれば1,260平方メートルになりますが、用途区分をまたいだ合算は行わないという原則があるためです。
合計すると立派な規模に見える建物でも、用途ごとに基準を満たしていなければ対象外になる点に注意が必要です。
飲食店と事務所を合わせたら結構な面積になるので、てっきり対象だと思っていました。
用途区分をまたぐと合算しないのが東京都の運用です。
用途ごとに基準を確認しましょう。
複雑な建物の対象可否はどう確認すればよいのか

最後に、実務での確認の進め方を整理します。
- まず用途ごとに床面積を区分し、図面と現況を照合して整理します
- 次に敷地内の建物が構造上何棟にまたがるか、増築や渡り廊下の有無を確認します
- 用途区分ごとに合算した床面積・階数を、対象の基準と照らし合わせます
- それでも判断に迷う場合は、所轄の特定行政庁(建築主事等)に確認するのが確実です
テナントの入れ替わりや増築の履歴は、所有者や管理会社に確認しないと図面だけでは分からない場合があります。
自己判断で対象外と決めつけず、迷った時点で早めに相談する姿勢が結果的に手戻りを防ぎます。
㈱防災屋では、図面の整理から特定行政庁への確認まで含めてご相談を承っています。
うちのビルは増築もテナントの入れ替わりも多くて、正直自分では判断がつきません。
図面の整理から一緒に確認できます。
まずは現況の図面を見せていただけますか。
よくある質問
まとめ
棟の数え方や合算のルールがよく分かりました!
うちのビルも図面から見直してみます。
判断に迷ったときは、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第16条第3項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行規則第6条(e-Gov法令検索)
- 東京都建築基準法施行細則第10条・別表(東京都例規集)
- 東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧」
- 「東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025」(一般財団法人日本建築設備・昇降機センター編)に掲載の判断事例を参考に、条文・公表資料に基づき独自に解説を作成
※本記事は公表されている法令および東京都の公表資料に基づく一般的な解説です。棟の判定や床面積の合算方法は建物の構造や利用実態により個別の判断が必要です。実際の対象可否は所轄の特定行政庁(建築主事等)にご確認ください。





