建築設備の定期報告は検査員に検査させて特定行政庁へ報告する、という一文だけを見るとシンプルです。
しかし実際には、検査員を養成する講習期間、報告を受け取る特定行政庁、その窓口を担う機関、そして制度全体を所管する国土交通省と、複数の組織が役割を分けて動いています。
どこに何を聞けばよいのか分からないまま、担当者任せにしている建物も少なくありません。
建築基準法第12条第3項が定める定期報告の仕組みを支える4つの機関の役割分担を整理します。
うちの建物の担当者が変わってから、定期報告をどこに出せばいいのか分からなくなりました。
特定行政庁というのは市役所のことですか。
建物がある場所によって、市区町村長か都道府県知事のどちらかになります。
まず特定行政庁が誰なのかを確認しましょう。
検査をする人の資格や、報告を受け取ったあとの流れもよく分かっていません。
それぞれ担当する機関が分かれています。
検査員の資格と4つの機関の役割を、順番に見ていきましょう。
- 国土交通省は、特定行政庁に対して助言・勧告や必要な資料の提供を行う制度全体の後ろ盾です
- 検査員講習を修了し修了考査に合格した人に、建築設備等検査員の資格者証が交付されます
- 特定行政庁は建築主事を置く市町村の長か都道府県知事のいずれかで、建物の所在地ごとに決まります
- 窓口機関は、検査の案内や督促、検査員の名簿整備などを行う実務上の相談先です
- 検査結果は建築設備等検査員が検査し、所在地の特定行政庁へ報告することで完了します
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目次
国土交通省はこの制度で何をしているのか

その特定行政庁の判断がばらつかないよう、国が上から関わる仕組みも用意されています。
特定行政庁は市町村や都道府県ごとに置かれ、それぞれが独自に判断を積み重ねています。
判断が大きくばらついてしまうと、同じような建物でも自治体によって扱いが変わってしまいます。
そこで国土交通省が勧告・助言・資料提供という形で関わり、必要なときには指示まで行える仕組みになっています。
建物の所有者から見れば国土交通省に直接連絡する場面はほとんどありませんが、制度の土台を支えている組織だと知っておくと理解が進みます。
国のほうから建物の担当者に直接連絡してくることもあるんですか。
通常は特定行政庁とのやり取りが中心で、国土交通省と直接のやり取りはほぼありません。
ただ、制度のルールそのものは国が整えていると覚えておいてください。
検査員はどうやって資格を得るのか

建築設備等検査員という資格を持つ人に限られています。
一級建築士・二級建築士は資格者証がなくても検査を行えますが、それ以外の技術者はこの資格者証が必須です。
講習は資格者証の種類ごとに国土交通省令で内容が定められており、修了考査に合格して初めて課程修了となります。
未成年者や、過去に資格者証の返納を命じられて間もない者などには交付されないこともあります。
検査を依頼するときは、担当者が一級建築士・二級建築士か、資格者証を持つ検査員かを確認しておくと安心です。
講習を受ければ誰でも検査員になれるということですか。
課程を修了し、修了考査に合格することが条件です。
依頼する側は資格者証の有無を見積りの段階で確認してください。
報告先の特定行政庁はどうやって決まるのか

建物がどこにあるかによって、報告先そのものが変わります。
建築主事や建築副主事を独自に置いている市町村では、その市町村長が特定行政庁になります。
建築主事等を置いていない市町村では、その地域を管轄する都道府県知事が特定行政庁です。
東京都のように特別区や政令で定める市が独自に建築主事を置いている地域では、区長・市長が特定行政庁になる区域と、都知事が特定行政庁になる区域が同じ都内に混在します。
自分の建物がどちらに当たるかは、所在地の市区町村の建築行政窓口に一度確認しておくと確実です。
うちは東京23区にありますが、都庁ではなく区役所が窓口ということもあるんですね。
はい、建築主事を置く特別区であれば区が特定行政庁になります。
迷ったら建物所在地の区市町村へ先に確認してください。
窓口機関は何をしているのか

建物の所有者が実際にやり取りするのは、多くの場合こちらです。
特定行政庁みずからがすべての実務をこなすのは負担が大きいため、検査の案内・督促や検査員の名簿管理といった実務を窓口機関が代行しているのが実態です。
建物の所有者が「報告書の書き方が分からない」「検査員を紹介してほしい」と感じたときに、最初に連絡するのはこの窓口機関になることが多くなります。
特定行政庁と窓口機関は別の組織であることが多いため、両方の連絡先を控えておくと手間が減ります。
迷ったときは、まず所在地の建築行政窓口に「定期報告の窓口機関はどこか」と尋ねるところから始めてください。
特定行政庁と窓口機関、連絡先が違うことがあるんですね。
はい、両方控えておくと安心です。
次はいよいよ実際の報告の流れを整理します。
結局どこに何を報告すればよいのか

自分の建物で何をすればよいかが、これで一本の線につながります。
まず建築設備等検査員(または一級・二級建築士)に検査を依頼し、結果をまとめてもらいます。
その報告書を、建物の所在地を管轄する特定行政庁へ提出します。分からないことは窓口機関に確認できます。
提出後も安心はできません。特定行政庁や建築主事等には関係者への質問や立入検査を行う権限があり、報告内容が実態と合っているかを後から確かめることがあります。
明日からできることは1つです。次回の検査依頼の前に、自分の建物の特定行政庁と窓口機関の連絡先を控えておいてください。
4つの機関がつながって、ようやく1つの制度になっているとわかりました。
そのとおりです。
連絡先が分からないときは、㈱防災屋にご相談ください。
よくある質問
まとめ
誰に何を聞けばいいかが、やっと分かりました。
これで担当者が変わっても迷わずに済みます。
国土交通省・検査員講習実施機関・特定行政庁・窓口機関の4つです。
まずは自分の建物の特定行政庁と窓口機関を控えてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第2条第三十五号(特定行政庁の定義)
- 建築基準法第12条(報告、検査等)
- 建築基準法第12条の3(建築設備等検査員資格者証)
- 建築基準法第14条(都道府県知事又は国土交通大臣の勧告、助言又は援助)
- 建築基準法第17条(特定行政庁等に対する指示等)
※本記事は建築基準法等の現行条文に基づく一般的な解説です。特定行政庁や窓口機関の具体的な担当区分は自治体ごとに異なります。個別の事案についての適用は、建物所在地の特定行政庁または窓口機関にご確認ください。





