建築設備の定期検査(12条点検)を毎年きちんと受けていても、それだけで建物の法定点検が全部終わったことにはなりません。
高圧で受電する電気設備には電気主任技術者、屋上の受水槽には水道法に基づく定期検査というように、建物の設備ごとに別々の法律が管理を義務づけています。
これらは建築基準法とは別の法律に基づく義務のため、12条点検さえ受けていれば安心とは言えません。
建築設備定期検査と並行して確認しておきたい5つの法定点検を、根拠となる法律ごとに整理して解説します。
うちのビルは建築設備の定期検査だけ毎年受けていれば、法律上は十分だと思っていました。
電気やタンクの点検までは正直考えたことがありません。
実は建築基準法以外の法律にも、建物の設備ごとに点検義務が定められています。
代表的な5つの法律を今日は整理してご紹介します。
言われてみれば、電気の点検とか受水槽の掃除とか、別の業者にお願いしている気がします。
それぞれ根拠になる法律が違うので、担当も資格も別々になります。
まず全体像から見ていきましょう。
- 建築設備の定期検査(12条点検)は建築基準法第8条が定める維持保全義務の一部にすぎません
- 高圧で受電する自家用電気工作物には電気主任技術者の選任と保安規程の届出が必要です
- 電気通信回線への接続工事は工事担任者の資格を持つ人が行うことになっています
- 屋上の受水槽など簡易専用水道には水道法に基づく年1回の管理と検査が義務づけられています
- 浄化槽を設置している建物は保守点検・清掃・法定検査の3つをすべて行う必要があります
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目次
建築設備の定期検査は建築基準法のどんな義務の一部なのか

建築基準法が定める、もっと大きな義務の一部として位置づけられています。
建築基準法第8条は、建物の所有者・管理者・占有者に対し、敷地・構造・設備を常に適法な状態に保つよう努力義務を課しています。
建築設備定期検査(第12条第3項)は、このうち建築設備の部分が適法に維持されているかを、資格者の目でチェックし行政へ報告する仕組みです。
つまり検査は維持保全義務そのものではなく確認手段であり、検査に合格したからといって他の法律の義務まで免除されるわけではありません。
この後に見る電気・通信・給水・浄化槽の点検は、いずれも建築基準法とは別の法律が独自に求めているものです。
12条点検さえ受けていれば、建物の点検は一通り終わっていると思っていました。
12条点検は維持保全義務の一部を確認するものです。
この後の4つの法律は、それぞれ別に義務が発生します。
高圧で受電する自家用電気工作物にはどんな保安体制が必要なのか

この受電設備には、建築基準法とは別の法律が独自の資格者を求めています。
高圧(600ボルトを超える)で受電する自家用電気工作物を持つ建物は、保安規程を定めて届け出るとともに、電気主任技術者を選任しなければなりません。
主任技術者は自社で雇う方法のほか、電気保安協会等に業務を委託して兼任してもらう方法も認められています。
建築設備定期検査の換気・排煙・非常用照明・給排水は建物の共用設備を対象にしますが、受電設備の保安はまったく別の資格者と別の法律が担当している点に注意が必要です。
自社ビルに高圧受電設備があるかどうか分からない場合は、まず電気工事の契約書や受電盤の表示を確認してみましょう。
うちのビル、電気の点検は電力会社がやってくれているものだと思っていました。
高圧受電なら電気主任技術者の選任は建物側の義務です。
委託契約の有無を一度確認してみてください。
電気通信回線の工事にはなぜ有資格者の関与が必要なのか

実は電気通信の分野にも専門の国家資格が定められています。
電話回線やビル内LANなどの端末設備を電気通信回線に接続する工事は、工事担任者資格者証を持つ人が行うか、その人に実地監督させることが法律で決められています。
資格には扱える設備の規模に応じていくつかの種類があり、規模の大きい建物ほど上位の資格が必要になる場合があります。
テナント入れ替えや大規模な配線工事を発注する際は、工事業者が工事担任者資格を持っているかを見積もり段階で確認しておくと安心です。
テナントの入れ替えで配線工事を頼むとき、何を確認すればいいですか。
発注前に工事担任者資格者証の有無を確認してください。
見積書に資格者の記載があるかも見てみましょう。
屋上の受水槽にはどんな法律に基づく管理と検査が必要なのか

容量によって義務の内容が変わる点も見落とされがちです。
有効容量が10立方メートルを超える受水槽は簡易専用水道に該当し、清掃や点検の基準に従った管理と、年1回の第三者検査が義務づけられます。
10立方メートル以下の小規模な受水槽は水道法上の簡易専用水道には当たりませんが、多くの自治体が条例で同様の努力義務を定めています。
建築設備定期検査の給排水設備の検査は水質そのものを検査するものではないため、受水槽の清掃・水質検査は別途スケジュールを組んでおく必要があります。
うちの受水槽、簡易専用水道に当たるかどうかはどこで確認できますか。
まず受水槽の有効容量を確認しましょう。
10立方メートルが分かれ目になります。
浄化槽を設置している建物にはどんな保守と検査が必要なのか

浄化槽には保守点検・清掃・検査という別々の義務があります。
浄化槽管理者には保守点検と清掃を毎年1回以上行う義務があり、規模の大きな浄化槽では技術管理者を置くことも求められます。
これらとは別に、都道府県知事が指定する検査機関による水質の定期検査を毎年1回受ける義務もあります。
保守点検と清掃はそれぞれ専門業者に委託できますが、検査まで委託先任せにせず、管理者自身が受検状況を把握しておくことが大切です。
保守点検の業者にお願いしていれば、検査も終わっていると思っていました。
保守点検と定期検査は別の義務です。
検査結果の通知が届いているか確認してみてください。
よくある質問
まとめ
建築設備の点検だけで安心してはいけないんですね。
うちのビルの電気やタンクも一度確認してみます!
それぞれ担当業者と資格が違うので、一覧にして管理すると安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第8条(維持保全)・第12条第3項(建築設備の定期検査報告義務)
- 電気事業法第42条(保安規程)・第43条(主任技術者)
- 電気通信事業法第71条(工事担任者による工事の実施及び監督)
- 水道法第34条の2(簡易専用水道の管理)
- 浄化槽法第8条〜第11条(保守点検・清掃・浄化槽管理者の義務・定期検査)
※本記事は建築基準法・電気事業法・電気通信事業法・水道法・浄化槽法の現行条文に基づく一般的な解説です。実際に適用される基準や手続きは建物の規模や設備の状況によって異なります。個別の判断は各設備の管理を委託している専門業者、または所轄の行政機関にご確認ください。





