建設現場に建てた仮設の寄宿舎、労働基準監督署への届出だけで済ませていないでしょうか。
建設業附属寄宿舎の防火安全は、労働基準監督機関と消防機関がそれぞれ別の法令で見てきました。
昭和59年、消防庁は労基署の点検結果を消防にも伝える通報連絡制度を設けました。
そこで示されたのは、労基署への届出だけでは消防への届出を済ませたことにならないという原則です。
現場の宿舎は労基署の立入り検査だけ受けていて、消防への届出はしていませんでした。
それは労基署と消防、両方への届出が必要な場面かもしれません。
建物自体は建設業附属寄宿舎規程どおりに建てたので、防火設備も足りていると思います。
規程どおりでも消防への届出とは別の話です。
昭和59年に出た通知を見ていきましょう。
- 建設業附属寄宿舎(工期が予定される工事現場の仮設宿舎)には、避難階段・警報設備・消火設備の設置が義務付けられています
- 労基署が臨検で不備を見つけると、所轄の消防機関に通報され、消防が査察を行う仕組みがあります
- 労基署への寄宿舎設置届と、消防への使用開始届は別の手続きで、両方の提出が必要です
- 仮設宿舎は現場ごとに設置・撤去されるため、そのたびに使用開始の届出をやり直す必要があります
- 不備は労基署からの通報を待たず、自主点検で先に直しておくことが望まれます
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目次
建設現場の寄宿舎はなぜ労基署から消防に通報が入るようになったのか

労働基準監督機関と消防機関がそれぞれ別々に動いていたことが、対応の遅れにつながっていました。
建設業附属寄宿舎とは、工事現場に併設された労働者向けの仮設の宿舎のことです。
労働基準法別表第一第三号に掲げる建設工事のように、完了の時期があらかじめ決まっている事業の附属施設が対象になります。
これらの寄宿舎の設備は労働基準監督機関が労働者保護の立場から監督していましたが、消防法上の届出や設備までは目が届きにくい構造でした。
昭和59年の通知は、この構造上のすき間を埋めるために出されたものです。
自分の現場の宿舎が、労基署にしか目を向けられていないままになっていないか考えてみてください。
現場の宿舎は労基署の立入りだけ受けていて、消防への届出は特に意識していませんでした。
それぞれ別の役所なので見落としが起きやすいところです。
次の見出しで対象になる寄宿舎を確認しましょう。
どんな建設現場の寄宿舎が対象になるのか

工期が終われば撤去される点が、一般的な寄宿舎と違うところです。
労働基準法別表第一第三号は、土木・建築その他工作物の建設や解体など、完了の時期が予定されている事業を指します。
建設業附属寄宿舎規程(昭和42年労働省令第27号)は、この事業に付属する寄宿舎の避難階段・警報設備・消火設備の基準を定めています。
一方で、社員寮のように工期と関係なく使い続ける施設は、この規程ではなく通常の防火対象物として扱われます。
自分の現場の宿舎が、工期に合わせて設置・撤去される仮設のものかどうかをまず確認してください。
うちの宿舎はプレハブですが、実は同じ場所に何年も置きっぱなしです。
使い方の実態によっては通常の防火対象物として扱われることもあります。
迷う場合は所轄消防署に確認しておくと安心です。
通報連絡制度は何を求めているのか

どちらか一方だけが動く仕組みではありません。
労働基準監督機関が現場を臨検した際に、避難階段・警報設備・消火設備のいずれかに不備があると分かれば、所轄の消防機関にその内容が通報されます。
通報を受けた消防機関は、消防法上の不備のおそれが大きいと判断すれば実際に査察を行い、その結果を労基署へ回報します。
つまり、労基署の立入りで見つかった不備が、そのまま消防の査察につながる可能性があるということです。
「労基署の指摘だから消防とは関係ない」とは言えない仕組みになっています。
労基署に避難階段のことを指摘されたら、消防にも伝わってしまうということですか。
不備が大きいと判断されれば消防の査察につながります。
先に自主点検で直しておくほうが安心です。
実務で見落としやすいのはどこか

消防への届出は、それとは別に必要になります。
建設業附属寄宿舎規程に基づく寄宿舎設置届は労働基準監督署あてのもので、これを出しても消防への届出を兼ねることにはなりません。
通知が「必ずしもすべてが届け出られていない」と名指ししたのは、まさにこの二重の届出が抜け落ちるケースでした。
仮設の宿舎は工期ごとに設置・撤去を繰り返すため、そのたびに使用開始の届出が必要になることも見落とされがちです。
現場が変わるたびに、労基署向けと消防向けの両方の届出を確認する習慣をつけてください。
現場ごとに労基署への届出は毎回出していますが、消防への届出は現場責任者に任せきりでした。
その任せきりが抜け漏れの原因になりやすいところです。
本社側でも両方の届出をチェックリストにしておくと安心です。
明日からなにを確認すればよいのか

新しい設備を増やさなくても、今日から始められる確認です。
まず建設業附属寄宿舎規程が定める避難階段・警報設備・消火設備が寄宿舎に備わっているかを見て回ります。
次に、労基署への寄宿舎設置届と、消防への使用開始届の両方が現場ごとに提出されているかを確認します。
新しい現場に宿舎を設置するときは、この2つの届出をセットで進める段取りをあらかじめ組んでおきます。
不備や届出漏れに気づいたら、労基署からの通報を待たずに自分から所轄消防署に相談してください。
次の現場からは、届出を2つセットで確認するようにします。
それが一番確実な進め方です。
順番に進めていきましょう。
よくある質問
まとめ
2つの届出をセットで確認する大事さがよく分かりました!
労基署と消防、両方の届出を忘れずに進めましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建設業附属寄宿舎に係る防火安全の推進について(通知)(昭和59年3月31日 消防予第55号 消防庁予防救急課長)
- 建設業附属寄宿舎規程(昭和42年労働省令第27号)第8条・第11条・第12条
- 労働基準法別表第一第三号/火災予防条例(例)第43条(防火対象物の使用開始の届出等)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





