BLOG

工業地域で劇場や映画館はなぜ建てられないのか|建築基準法別表第二(を)項第四号の規制を解説

工業地域は劇場も映画館も建てられないことを示すアイキャッチ

工業地域は工場のための地域というイメージが強いかもしれません。
しかし建築基準法では、劇場や映画館、ナイトクラブといった娯楽施設も名指しで建築が禁止されています。
規制の理由も、住居系の用途地域とはまったく異なります。
今回は建築基準法別表第二(を)項第四号の規制を解説します

工業地域の空き工場に、映画館を誘致する話が来ているんですが、これって建てられるんでしょうか。

それは別表第二(を)項第四号に引っかかりますね。
まず条文を確認しましょう。

工場ばかりの地域なのに、なぜ映画館まで禁止されているんですか。

実は第二種住居地域とまったく同じ文言で禁止されているんです。
次はその中身を見ていきましょう。

この記事の結論
  • 工業地域内では、建築基準法別表第二(を)項第四号により劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場又はナイトクラブその他これに類する政令で定めるものは建築できません(建築基準法第48条第12項)。
  • この文言は第二種住居地域を定める(へ)項第三号とまったく同一で、住居系と工業系という両極端の用途地域に同じ規制が置かれています
  • 施行令第百三十条の七の三は「ナイトクラブを除く」客にダンスと飲食をさせる施設も政令で追加指定しています。
  • 近隣商業地域・商業地域を定める(り)項・(ぬ)項には対応する禁止規定が置かれていません
  • 準住居地域だけは客席部分二百平方メートルという面積要件で可否が分かれます。

工業地域では劇場や映画館やナイトクラブが禁止され商業地域では規制されないことを示す図解

工業地域に劇場や映画館は建てられないのか

映画館の建物と工場の建物が並ぶイラスト
工業地域は工場や倉庫のための用途地域という印象が強く、規制もその方向に偏っていると思われがちです。
しかし建築基準法は、劇場・映画館・ナイトクラブといった娯楽施設についても名指しで建築を禁止しています。
建築基準法第48条第12項 工業地域内においては、別表第二(を)項に掲げる建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が工業の利便上又は公益上必要と認めて許可した場合においては、この限りでない。
建築基準法別表第二(を)項第四号 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場又はナイトクラブその他これに類する政令で定めるもの
この号が禁止しているのは工場に関係する用途ではなく、不特定多数が集まる娯楽施設そのものです
劇場・映画館・演芸場・観覧場という集客施設と、ナイトクラブという飲食娯楽施設が一つの号にまとめて列挙されています。
ただし書のとおり特定行政庁の許可を受ければ例外的に建築できますが、その基準は「工業の利便上又は公益上必要」という工業系の理由に限られます。
次は、「これに類する政令で定めるもの」が具体的に何を指すのかを確認しましょう。

劇場や映画館だけでなく、ナイトクラブまで同じ号に入っているんですね。

はい、別表第二(を)項第四号が一つの号でまとめて禁止しています。
次は政令が追加する範囲を見ていきましょう。

ナイトクラブその他これに類する政令で定めるものとは何を指すのか

ナイトクラブの建物とダンスホールの建物が並ぶイラスト
条文の「その他これに類する政令で定めるもの」は、ナイトクラブそのものとは別の施設を指しています。
政令の中身を確認すると、規制の対象は意外な形で広がっています。
建築基準法施行令第百三十条の七の三 法別表第二(へ)項第三号及び(を)項第四号(略)の規定により政令で定める建築物は、客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客の接待をするものを除く。)を営む施設(ナイトクラブを除く。)とする。
政令が指定しているのは、ナイトクラブそのものではなく「ナイトクラブを除く」ダンスホール等の施設です
条文本体の「ナイトクラブ」はすでに別表第二の号自体で名指しされているため、政令はあえてそれを除いた客にダンスをさせ、かつ客に飲食をさせる施設を追加しています。
また「客の接待をするものを除く」とあるため、接待を伴う施設はこの政令の対象ではなく、別の号(キャバレー等)の系統で扱われます。
つまりこの号は、劇場・映画館・演芸場・観覧場・ナイトクラブという条文本体の列挙と、政令が追加するダンスホール等の両方をあわせて禁止しています。
次は、同じ文言が置かれている第二種住居地域との関係を確認しましょう。

ナイトクラブという言葉が条文にあるのに、政令はそれを除いているんですね。

はい、条文本体ですでに禁止済みだからです。
次は住居系の地域との関係を見ていきましょう。

商業地域では規制されないのに工業地域ではなぜ禁止されるのか

商業地域の映画館に許可マーク工業地域の映画館に禁止マークが付いたイラスト
劇場や映画館は本来、商業性の強い用途地域にこそふさわしい施設に思えます。
実際に条文を確認すると、規制のかかり方は直感とは逆になっています。
建築基準法別表第二(り)項 近隣商業地域内に建築してはならない建築物 一 (ぬ)項に掲げるもの 二 キャバレー、料理店その他これらに類するもの 三 個室付浴場業に係る公衆浴場その他これに類する政令で定めるもの
建築基準法別表第二(ぬ)項 商業地域内に建築してはならない建築物 一 (る)項第一号及び第二号に掲げるもの(略)
近隣商業地域・商業地域を定める(り)項・(ぬ)項には、劇場・映画館・ナイトクラブを禁止する号がそもそも置かれていません
つまり近隣商業地域と商業地域では、この用途の建築に名指しの制限がかかりません。
一方で(へ)項第三号(第二種住居地域)は工業地域の(を)項第四号とまったく同じ文言でこの用途を禁止しており、住居系と工業系という性格の異なる両極端の地域で同じ規制が敷かれています。
建築基準法第48条第6項のただし書は「住居の環境を害するおそれがない」ことを許可基準にしていますが、第12項(工業地域)のただし書は「工業の利便上又は公益上必要」が基準で、審査の物差しそのものが異なります。
次は、間にある準住居地域ではどう扱われるかを確認しましょう。

近隣商業地域や商業地域には規制が無いのに、住居地域と工業地域という両端で禁止されるんですね。

はい、用途地域ごとに規制の理由が違うことがよく分かる例です。
次は準住居地域を確認しましょう。

準住居地域だけ床面積二百平方メートルで可否が分かれるのはなぜか

小さい劇場の建物に許可マーク大きい劇場の建物に禁止マークが付いたイラスト
第二種住居地域と工業地域は面積を問わず一律禁止ですが、間にある準住居地域だけは扱いが異なります。
条文を確認すると、床面積という具体的な基準で線引きされています。
建築基準法別表第二(と)項第五号 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場のうち客席の部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの又はナイトクラブその他これに類する用途で政令で定めるものに供する建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの
準住居地域では、客席部分が二百平方メートル未満の小規模な劇場・映画館であれば建築が可能です
第二種住居地域・工業地域が用途そのもので一律に禁止するのに対し、準住居地域は床面積二百平方メートルという具体的な基準で可否を分けています。
ナイトクラブその他これに類する用途で政令で定めるものも同じく、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上かどうかで判断されます。
つまり同じ劇場・ナイトクラブでも、両極端の地域では面積を問わず禁止、準住居地域では規模次第という扱いの差が生まれます。
次は、実務で明日から確認すべき手順を整理しましょう。

同じ劇場でも、地域によって全面禁止だったり面積次第だったりするんですね。

はい、地域ごとの扱いの差を押さえておくと計画がスムーズです。
次は確認の手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

製図机の設計図面と役所の受付窓口のイラスト
劇場・映画館・ナイトクラブに類する施設の計画では、設計の初期段階で用途地域を確認することが欠かせません。
着工前に確認しておくべき点を整理します。
  • 計画地が第二種住居地域・準住居地域・工業地域のいずれかに該当するかを都市計画図で確認する
  • 準住居地域の場合は、客席部分の床面積が二百平方メートル以上かどうかを図面で確認する
  • 計画する施設が政令の対象となるダンスホール等に当たらないかを用途で確認する
  • 該当性の判断に迷う場合や、どうしても計画したい場合は、特定行政庁の建築指導窓口へ許可の可能性を確認する
用途地域の確認と床面積の算定、この2点を早い段階で押さえることが出発点です
近隣商業地域・商業地域であれば、この号による名指しの禁止はありません。
判断に迷う用途は、特定行政庁の建築指導窓口で個別に確認しておくと安全です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

まず用途地域と床面積、この2点を確認します。

はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q工業地域では劇場や映画館は規模を問わず建てられませんか?
A建てられません。建築基準法別表第二(を)項第四号は、工業地域内で劇場・映画館・演芸場・観覧場・ナイトクラブその他これに類する政令で定めるものを床面積の大小を問わず一律に禁止しています。
Q第二種住居地域でも同じ規制がありますか?
Aあります。第二種住居地域を定める(へ)項第三号が、(を)項第四号とまったく同じ文言でこの用途を禁止しています。
Q近隣商業地域や商業地域なら建てられますか?
A建てられます。近隣商業地域を定める(り)項、商業地域を定める(ぬ)項のいずれにも、劇場・映画館・ナイトクラブを禁止する号は置かれていません。
Qどうしても工業地域に計画したい場合に許可を受ける方法はありますか?
Aあります。建築基準法第48条第12項のただし書により、特定行政庁が工業の利便上又は公益上必要と認めて許可した場合は建築できますが、個別の審査を要する特別な手続です。

まとめ

工業地域内では建築基準法別表第二(を)項第四号により、劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場又はナイトクラブその他これに類する政令で定めるものの建築が禁止されています。
この文言は第二種住居地域を定める(へ)項第三号とまったく同一で、住居系と工業系という両極端の用途地域に同じ規制が置かれています
施行令第百三十条の七の三は、ナイトクラブを除く「客にダンスをさせ、かつ客に飲食をさせる施設」も政令で追加指定しています。
近隣商業地域・商業地域を定める(り)項・(ぬ)項には対応する禁止規定が置かれていません
準住居地域だけは客席部分二百平方メートルという面積要件で可否が分かれます。
建築基準法第48条第6項第12項のただし書は許可基準そのものが異なります。
どうしても計画したい場合は、特定行政庁の許可という個別審査の道が置かれています。

まず用途地域を確認して、計画を見直します!

床面積の算定も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第6項・第12項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法別表第二(へ)項第三号・(を)項第四号・(と)項第五号・(り)項・(ぬ)項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十条の七の三(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や規定の適用範囲は個別の土地の状況によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
工業地域は劇場も映画館も建てられないことを示すアイキャッチ
工業地域は工場のための地域というイメージが強いかもしれません。 しかし建築基準法では、劇場や映画館、ナイトクラブといった娯楽施設も名指しで建築が禁止されています。 規制の理由も、住居系の用途地域とはまったく異なります。 ...