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休止中の施設があれば防災要員を自宅待機にできるか|整備中の代替措置と泡消火薬剤の更新

休止中の施設がある場合の防災要員の扱いを解説するアイキャッチ画像

石油貯蔵所を休止している。使っていない施設のぶんまで人を張り付けておくのは無駄に見えます。
その要員は自宅からの駆け付けでよいのではないか。
実務としては自然な発想ですが、回答は一言で退けました。
自衛防災組織の要員は現場にいることが前提です

休止中の施設の分の防災要員は、自宅からの駆け付けにしてもよいのでしょうか。

できないとされました。
休止中の施設を除いて算定した資機材に係る要員以外であっても、自宅等からの駆け付けにはできません。

短い整備でも、代わりの車を用意しなければならないのでしょうか。

期間の長さではなく、発災時に使用できない状態が生じるかどうかで判断するとされました。
短くても出動できないなら同じ扱いです。

この記事の結論
  • 休止中の石油貯蔵所等がある場合でも、防災要員を自宅等からの駆け付けとすることはできないとされています
  • 整備の際の代替措置は期間の長さではなく、発災時に使用できない状態や速やかな出動ができない状態が生じるかどうかで判断します
  • 泡消火薬剤の更新は、極力特例期間の終了日前に行うよう指導するとされました
  • やむを得ない場合は、更新前の薬剤の性能を確認するなど災害発生時の使用に支障が生じないよう所要の対策を講じさせます
  • 桟橋を共有する事業所とその他事業所がオイルフェンスを共同使用する契約は、認められないとされています

休止中の施設があれば要員を自宅待機にできるか

休止中のタンクがある事業所へ自宅から駆け付ける形は認められないことを示したイメージ
自衛防災組織に置く防災要員の数は、備え付ける防災資機材等の種類と数から算定します。
石油貯蔵所を休止していれば、その施設を除いて算定できます。ではその結果として要らなくなった人員ではなく、残る要員の勤務形態を緩められないかという問いです。
問 休止中である石油貯蔵所等がある場合、自衛防災組織に置かなければならない防災要員のうち、当該石油貯蔵所等を除いて算定した防災資機材等に係る防災要員以外の防災要員は、自宅等からの駆け付けとすることができるか
答 できない
自宅待機は認められません
回答は理由を書かず、できないとだけ述べています。
前の記事で見たとおり、防災要員が所在してよい範囲は防災資機材等の常置場所から1キロメートル程度が限度とされていました。自宅からの駆け付けは、その枠を大きく外れます。
休止によって必要な要員数そのものは減ります。ただし残った要員に求められる働き方は変わりません。数を減らすことと、勤務形態を緩めることは別だという整理です。

自宅待機は認められないのですね。

はっきり否定されています。
勤務の形態を、体制表で確かめてください。

短い整備でも代替措置が要るか

短期間の整備でも出動できない状態が生じるかどうかで判断することを示したイメージ
平成2年5月31日付けの消防特第120号は、消防庁特殊災害室長からの回答です。
前の記事で見たオーバーホールの話には続きがありました。艤装メーカーへ持ち込むような大がかりな整備ではなく、もっと軽い作業の場合はどうなるのか。
問 化学消防自動車等のオーバーホール時の措置について、次の場合どのようにすべきか。
(1) 車体検査等の比較的簡単な整備を行う場合
(2) 艤装メーカーに持ち込まず、10日程度の修理を行う場合
答 (1) 質問の期間が明確ではないが、発災時に使用できない状態が生じる場合、その間の防災体制については昭和63年1月19日消防特第15号の質疑3-1の回答により承知されたい。
(2) 発災時に速やかな出動ができない状態が生じる場合は、(1)の回答により承知されたい。
期間ではなく状態で決まります
何日までなら不要という線は引かれませんでした。判断の基準として示されたのは状態です。
(1)では発災時に使用できない状態が生じる場合、(2)では発災時に速やかな出動ができない状態が生じる場合。どちらも、その間は代替車両を準備するという昭和63年の回答に戻れとされています。
車体検査で半日リフトに上がっているだけでも、その間に発災すれば出られません。逆に10日預けていても、いつでも引き取って出動できる状態なら扱いは変わります。
日数を数えるのではなく、その瞬間に出られるかどうかを見るということです。

期間ではなく、状態で決まるのですね。

出動できるかどうかで見ます。
整備の予定を、代替の手当てとセットで組んでください。

泡消火薬剤の更新を分割してよいか

泡消火薬剤の更新を期限日をまたいで分割する場合の扱いを示したイメージ
泡消火薬剤には有効期限があります。特定事業所が配備している量は多く、一度に入れ替えるのは容易ではありません。
そこで何回かに分けたいという相談が寄せられました。期限日をまたぐぶんが出ることになります。
問 特定事業所で配備している泡消火薬剤が、平成3年3月1日で失効することとなり、配備量が多量であるため更新を何回かに分けて実施したい旨の相談を受けた。一部を除き同日以降に更新することとなるが、認められるか。
答 極力特例期間の終了日前に更新するよう指導されたい
なお、やむを得ないと判断される場合には、更新前の薬剤の性能を確認するなど災害発生時の使用に支障が生じないよう所要の対策を講じさせること
原則は期限前の更新です
認めるとも認めないとも書かれていません。まず極力終了日前に更新するよう指導するとしています。
そのうえで、やむを得ないと判断される場合の扱いが示されました。求められるのは、更新前の薬剤の性能を確認するなど、災害発生時の使用に支障が生じないようにすることです。
期限を過ぎた薬剤がそのまま使えなくなるわけではなく、性能が保たれているかを確かめれば当面は使えるという考え方が読めます。
逆にいえば、確認もせずに期限切れのまま置いておくことは認められません。分割更新の計画には、性能確認の段取りまで含めておく必要があります。

薬剤の更新は、期限の前が原則なのですね。

分割する場合も説明が要ります。
更新の計画を、期限から逆算してください。

オイルフェンスを他の事業所と共用できるか

桟橋を共有する2つの事業所がオイルフェンスを共同使用する形は認められないことを示したイメージ
前の記事では、隣り合う3つの油槽所が泡消火薬剤を一括して共同保管することが認められた例を見ました。
では、備え付けが義務づけられているオイルフェンスを、義務のかかっていない他の事業所と共用できるか。条件はかなり整っています。
問 桟橋を共有する特定事業所とその他事業所が、オイルフェンスを共同使用する(その他事業所の使用目的は、産業廃棄物の拡散防止である。)契約を締結することは認められるか。
なお、当該桟橋を両事業所が同時に使用することはない
答 認められない
共用は認められません
桟橋を同時に使うことはないと明記されています。取り合いにはなりません。それでも認められませんでした。
前の記事の泡消火薬剤との違いは、共用する相手です。あちらは3つとも第一種事業所で、いずれも同じ義務を負っていました。今回の相手は義務のかかっていないその他事業所です。
しかも使用目的が産業廃棄物の拡散防止であり、石油の流出に備えるものではありません。
備え付けが義務づけられた資機材は、その義務を果たすためにいつでも使える状態でなければならない。他の目的で持ち出される可能性がある形は、たとえ時間が重ならなくても認められないという整理です。

条件が整っていても、共用が認められないこともあるのですね。

備え付けの義務は個別に見ます。
共同化の可否は、事前に確認してください。

2つの市町にまたがる組織の届出先

2つの市町にまたがる海上共同防災組織の届出先を示したイメージ
共同防災組織は、複数の事業者が共同で設置します。海上の組織であれば、活動範囲が市町の境をまたぐことがあります。
変更の届出は、どちらの市町長に出せばよいのか。
問 2市町にまたがつて設置されている海上共同防災組織は、石油コンビナート等災害防止法第19条第3項に基づく変更の届出をいずれの市町長に行うべきか
答 原則として2市町長へ届出るべきであるが、2市町間で調整し、いずれかの市町長へ届出をさせることとしても差し支えない
原則は両方への届出です
原則が示されたうえで、例外の作り方も示されています。
原則は2市町長への届出です。組織が両方の区域にかかっている以上、どちらの市町長も内容を知っている必要があります。
ただし2市町間で調整すれば、いずれか一方への届出で足りるとされました。調整するのは事業者ではなく市町です。行政側で情報を共有する仕組みができていれば、事業者に二重の手間をかけなくてよいという考え方になります。
実務では、まず所轄の市町に調整の有無を確認することになります。

届出先も、原則が示されているのですね。

両方への届出が原則です。
活動の範囲を、図で整理しておきましょう。

よくある質問

Q施設を休止しても防災要員の数は減らせないのですか?
A問いは、休止中の石油貯蔵所等を除いて算定できることを前提にしたうえで、残る要員を自宅等からの駆け付けとしてよいかを尋ねたものです。回答はできないとしています。必要な要員数の算定と、その要員の勤務形態は別の話になります。
Q何日までの整備なら代替措置が不要ですか?
A日数の線は引かれていません。回答は、発災時に使用できない状態が生じる場合、または発災時に速やかな出動ができない状態が生じる場合について、昭和63年1月19日付けの消防特第15号の質疑3-1の回答によるとしています。つまり代替車両の準備が原則です。
Q期限を過ぎた泡消火薬剤はすぐ使えなくなりますか?
A回答は極力特例期間の終了日前に更新するよう指導されたいとしたうえで、やむを得ないと判断される場合には更新前の薬剤の性能を確認するなど災害発生時の使用に支障が生じないよう所要の対策を講じさせることとしています。性能の確認が前提になります。
Q泡消火薬剤の共同保管は認められたのになぜ違うのですか?
A泡消火薬剤の共同保管が認められた事例は、3つの油槽所がいずれも第一種事業所で、消火用屋外給水施設の共同設置がすでに認められている状況でした。オイルフェンスの照会では相手が義務のかかっていないその他事業所で、使用目的も産業廃棄物の拡散防止です。前提が異なります。

まとめ

  • 休止中の石油貯蔵所等がある場合でも、防災要員を自宅等からの駆け付けとすることはできません
  • 必要な要員数の算定から休止中の施設を除くことと、要員の勤務形態を緩めることは別の話です
  • 整備の際の代替措置は期間の長さではなく、発災時に使用できない状態や速やかな出動ができない状態が生じるかで判断します
  • 泡消火薬剤の更新は、極力特例期間の終了日前に更新するよう指導するとされました
  • やむを得ない場合は、更新前の薬剤の性能を確認するなど災害発生時の使用に支障が生じないよう所要の対策を講じさせます
  • 桟橋を共有する事業所とその他事業所がオイルフェンスを共同使用する契約は、同時に使用することがなくても認められません
  • 2市町にまたがる海上共同防災組織の変更の届出は原則として2市町長へ行いますが、2市町間で調整すればいずれか一方でも差し支えありません

使えない時間を作らない、という一本の筋が通っているのですね。
すっきりしました。

休止や整備の計画は、体制の穴になっていないかとあわせて考える必要があります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

参考・出典

  • 石油コンビナート等災害防止法に関する質疑応答(平成2年5月31日 消防特第120号 消防庁特殊災害室長から関係都道府県消防防災主管部長あて回答)
  • 石油コンビナート等災害防止法に関する質疑応答(昭和63年1月19日 消防特第15号 消防庁特殊災害室長から関係都道府県消防防災主管部長あて回答)
  • 石油コンビナート等災害防止法第19条第3項
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の事業所についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

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