民泊や簡易宿所の広がりを受けて、分譲マンションの一室が旅館業の届出をするケースが出てきました。
実はマンションの一部を旅館やホテルの用途にすると、消防法上の扱いが建物全体で変わることがあります。
国は平成30年、このケースを想定してスプリンクラー設備や誘導灯の設置基準を新たに整理しました。
管理組合やオーナーは、一室の用途変更が建物全体の設備基準にどう影響するかを知っておく必要があります。
「空き部屋を民泊に貸したい」という相談を受けることが増えました。
まさかそれで建物全体の消防設備の基準まで変わるとは思いませんでした。
共同住宅の一部が旅館やホテルの用途になると、建物全体の防火対象物としての区分が変わるんです。
今日はその中身と、平成30年の改正で緩和された条件について説明します。
うちのマンションは11階建てなので、対象になりそうな気がします。
全部の階にスプリンクラーが要るとなると、費用も工事も大変です。
そこは救済策が用意されています。
一定の区画をすれば10階以下の設置を免除できる仕組みがあるので、順番に見ていきましょう。
- マンションの一部を令別表第一(5)項イ(旅館・ホテル・簡易宿所等)として使うと、建物全体が(16)項イの複合用途防火対象物として扱われます
- 11階建て以上の共同住宅では10階以下の階にもスプリンクラー設備・誘導灯の設置が原則義務付けられますが、一定の区画をすれば免除できる条件が新設されました
- 特定共同住宅等に関する40号省令の対象施設に、共同住宅の一部を(5)項イとして利用する防火対象物が加えられました
- 10階建て以下の特定共同住宅等では、共同住宅用スプリンクラー設備による代替が認められるようになりました
- この改正は平成30年6月1日付け消防予第369号による整備で、公布の日から施行されています
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目次
マンションの一部を民泊にする改正はなぜ必要になったのか

国はこの動きを見越して、消防用設備等の設置基準を先に整理しています。
平成30年に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、同じ時期に旅館業法施行令の客室面積基準も緩和されました。
これにより、令別表第一(5)項ロ(共同住宅)の一部が同表(5)項イ(旅館・ホテル・簡易宿所等)の用途で使われる建物が増えると想定されたのです。
国は先回りして、こうした建物の消防用設備等の設置基準を合理化する改正を行いました。
この改正は令別表第一(5)項イの用途に供される部分が1戸でもあれば当てはまる話なので、規模の大小にかかわらず知っておく必要があります。
民泊新法ができたのは知っていましたが、消防の基準まで整理されていたとは知りませんでした。
マンションが対象になるとは思っていませんでした。
共同住宅は元々(5)項ロという区分ですが、旅館業の部分が入ると別の区分が絡んできます。
次は、その用途区分がどう変わるのか見ていきましょう。
マンションの一部が旅館業になるとなぜ用途区分が変わるのか

その結果、消防用設備等の設置範囲が一気に広がります。
共同住宅の一部が令別表第一(5)項イの用途に供されると、その建物は同表(16)項イ(特定複合用途防火対象物)に位置付けられます。
(5)項ロだけの共同住宅なら、スプリンクラー設備は11階以上の階だけが対象でしたが、(16)項イになると10階以下の階も含めた全ての階が対象になります。
誘導灯も同様で、(5)項ロなら地階・無窓階・11階以上の階だけが対象でしたが、(16)項イになると全ての階に設置義務が及びます。
つまり用途変更をした部屋自体は小さくても、建物全体の設備コストが跳ね上がる可能性があるということです。
民泊部分は1戸だけなのに、建物全体の設備基準が変わってしまうんですね。
これは管理組合として早めに知っておきたい話です。
そのとおりです。
ただし11階建て以上には、この負担を軽くする免除の条件が新しく用意されました。
11階建て以上のマンションはどうすればスプリンクラーと誘導灯を免除できるのか

条文が求める区画の作り方を確認しましょう。
住戸利用施設((5)項イと(6)項ロ・ハの用途に供される部分)の居室を、耐火構造の壁及び床で区画することが最初の条件です。
そのうえで内装は準不燃材料や難燃材料にし、区画の開口部には特定防火設備の防火戸(自動閉鎖装置付き等)を設ける必要があります。
さらに住戸利用施設の各独立部分の床面積が100㎡以下であることも条件に含まれます。
これらをすべて満たした階だけが、10階以下のスプリンクラー設備・誘導灯の設置義務から外れます。
耐火構造の壁と防火戸を整えれば免除になるんですね。
もとから鉄筋コンクリート造のマンションなら、意外と条件を満たせそうです。
構造だけでなく、開口部や防火戸の細かい仕様まで見る必要があります。
もう一つ、10階建て以下の建物向けに用意された制度も見ておきましょう。
40号省令の対象拡大で何が変わったのか

今回の改正はこちらの対象範囲も広げました。
特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号。以下「40号省令」)は、区画や内装制限を条件に消防用設備等を簡易な代替設備に置き換えられる制度です。
今回の改正で、共同住宅の一部を(5)項イとして利用する防火対象物もこの制度の対象に加わりました。
さらに10階建て以下の建物では、(5)項ロ部分に本来必要なスプリンクラー設備を、住戸ごとの簡易な共同住宅用スプリンクラー設備で代替できるようになっています。
11階建て以上の「区画すれば免除」とは別枠の制度なので、自社の建物の階数に応じてどちらの話に当たるかを整理する必要があります。
11階建て以上の話と10階建て以下の話が別の制度だったんですね。
うちのマンションがどちらに当たるか、階数だけでなく確認が要りそうです。
そのとおりです。
最後に、民泊を検討する前に確認しておく手順をまとめておきますね。
マンションの一部を民泊にする前に何を確認すればよいのか

図面と現況を照らし合わせるところから始められます。
そのうえで、共同住宅の一部を(5)項イとして使う予定の部屋が、延べ面積や床面積の要件に当てはまるかを確かめます。
11階建て以上なら、住戸利用施設の区画・内装・防火戸が免除の要件を満たせる構造かどうかを図面で確認します。
10階建て以下なら、40号省令の対象施設として扱えるか、共同住宅用スプリンクラー設備での代替が使えるかを検討します。
どちらのケースでも、用途変更の届出を出す前に所轄消防へ事前相談しておくと手戻りが少なくなります。
まずは自分の建物の階数と、部屋の面積から確認するんですね。
それなら管理組合の資料だけでも最初の整理ができそうです。
はい、それが一番早いです。
最後によくある質問をまとめておきます。
よくある質問
まとめ
民泊の相談が来たら、まず建物の階数と区画を確認してみます!
区画や設備の判断で迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防法施行規則等の一部を改正する省令の公布について」(平成30年6月1日付け消防予第369号 消防庁次長)
- 「消防法施行規則等の一部を改正する省令等の参考資料の送付について」(平成30年6月1日付け事務連絡 消防庁予防課)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第1項第3号・第26条第1項第1号・第29条の4第1項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条第1項第1号の2・第28条の2第1項第4号の2
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条第1号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





