BLOG

メゾネット型の住戸はなぜ上の階の避難階段基準を緩和できるのか|建築基準法施行令が定める第123条の2のみなし規定を解説

メゾネット型の住戸はなぜ上の階の避難階段基準を緩和できるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

共同住宅の中には、玄関が1階にしかなく、内部の階段で上の階へ上がる住戸があります。
いわゆるメゾネット型の住戸で、上の階には独立した玄関がありません。
こうした住戸に、各階ごとの避難階段二方向避難の基準をそのまま当てはめてよいのか、疑問に思う管理者は少なくありません。
建築基準法施行令は、一定の要件を満たすメゾネット型住戸について、上の階を出入口のある階とみなす扱いを定めています

うちのマンション、上の階に別の玄関が無い住戸があるんですけど。
これも普通の階と同じ避難階段の基準がかかるんでしょうか。

条件を満たせば、上の階は避難施設の基準の適用上、下の階と同じ扱いになるんですよ。

それがメゾネット型ってことですよね。
うちにもそういう住戸が何戸かあります。

はい。
今日はその条件を一緒に確認していきましょう。

この記事の結論
  • メゾネット型(複層)住戸は、上の階に出入口が無くても、避難施設の基準の適用上「出入口のある階」とみなされる場合があります
  • 対象は主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸で、階数が二又は三、出入口が一の階のみにあるものに限られます。
  • みなし規定が働くのは、居室から直通階段までの歩行距離が四十メートル以下の場合だけです
  • 緩和されるのは廊下幅・二以上の直通階段・避難階段の設置・特別避難階段の床面積という四つの基準です。
  • 歩行距離が四十メートルを超えれば、上の階は通常どおり独立した階として扱われます

建築基準法施行令第百二十三条の二が定めるメゾネット型住戸のみなし規定を示す図解

メゾネット型の住戸はなぜ上の階に階段基準の緩和が認められるのか

メゾネット型住戸の断面と玄関から上階への内部階段のイメージ
玄関のある階だけを「階」として扱ってよい場合があります。
その仕組みを定めているのが建築基準法施行令の規定です。
(建築基準法施行令 共同住宅の住戸の床面積の算定等)第百二十三条の二 主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸でその階数が二又は三であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階は、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が四十メートル以下である場合においては、第百十九条、第百二十一条第一項第五号及び第六号イ(略)、第百二十二条第一項並びに前条第三項第十二号の規定の適用については、当該出入口のある階にあるものとみなす。
玄関のある階だけを「階」として扱ってよい場合があります。
メゾネット型(複層)の住戸は、上の階に居室があっても独立した玄関を持たず、避難の実態は下の階と一体になっています。
建築基準法施行令第百二十三条の二は、この実態に合わせて、一定の要件のもとで上の階を出入口のある階とみなす扱いを定めています。
みなされるのは、廊下幅や直通階段の設置義務など、避難施設に関する複数の基準です。
次の項目で、この規定が働くための要件を具体的に見ていきます。

玄関が1階だけの住戸って、うちにも何戸かあります。

それなら、この規定が関係するかもしれません。
次で対象の条件を見ていきましょう。

どんな住戸が第百二十三条の二の対象になるのか

出入口が1階だけの住戸と各階に出入口がある住戸を並べた比較
この規定が働くには、住戸の構造と歩行距離の両方が条件を満たす必要があります。
ひとつでも欠けると、通常どおり各階の基準がそのまま適用されます。
(建築基準法施行令第百二十三条の二 抜粋)主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸でその階数が二又は三であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階は(略)。
対象は四つの条件をすべて満たす住戸に限られます。
主要構造部が準耐火構造であること、共同住宅の住戸であること、階数が二又は三であること、出入口が一の階のみにあることの四つです。
木造で防腐措置のない住戸や、耐火構造に満たない住戸は対象になりません。
戸建て住宅や長屋には適用されず、あくまで共同住宅の住戸だけが対象です。
この四条件は、いずれも設計図書や確認申請の記録で確認できる情報です。

準耐火構造で、階数が二か三で、玄関が一の階だけ、ですね。

そのとおりです。
四つとも満たしているか、まず図面で確認してみてください。

具体的にどの基準が出入口のある階にあるとみなされるのか

住戸内の歩行経路と廊下幅・直通階段・避難階段のアイコン
みなし規定が及ぶのは、避難施設に関する四つの基準です。
それぞれ根拠条文が別にあり、みなし規定はその適用場面だけを読み替えます。
(建築基準法施行令第百二十三条の二 抜粋)(略)第百十九条、第百二十一条第一項第五号及び第六号イ(これらの規定を同条第二項の規定により読み替える場合を含む。)、第百二十二条第一項並びに前条第三項第十二号の規定の適用については、当該出入口のある階にあるものとみなす。
緩和されるのは「階を分けて数える」場面での基準だけです。
廊下幅(第百十九条)は共用の廊下に求められる幅の基準、二以上の直通階段(第百二十一条)は各階からの避難経路を複数確保する基準です。
避難階段の設置義務(第百二十二条)は五階以上や地下二階以下の階に課される基準、特別避難階段の床面積基準(第百二十三条)は高層階の付室に関する基準です。
これらの基準を階ごとに適用する場面で、出入口のない上の階を独立した階として数えなくてよい扱いになります。
耐火構造や区画の要件など、階を分けずに建物全体へかかる基準は対象外です。

廊下の幅や避難階段の基準がまとめて緩和されるんですね。

はい。
ただし歩行距離の条件を満たしている間だけです。

歩行距離四十メートルを超えたらどうなるのか

住戸内の長い歩行経路に禁止マークを付けた比較図
この規定でもっとも見落としやすいのが、歩行距離の要件です。
要件を満たさなくなった時点で、みなし規定は働かなくなります。
(建築基準法施行令第百二十三条の二 抜粋)(略)その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が四十メートル以下である場合においては(略)。
歩行距離は住戸内のどの居室からでも四十メートル以下でなければなりません。
上の階の一番奥の部屋から、内部階段を下りて玄関を出るまでの経路すべてが対象です。
リフォームで間取りを変えたり、収納や間仕切りを増やしたりすると、この距離が延びることがあります。
四十メートルを超えれば、上の階は通常どおり独立した階として扱われ、二方向避難や避難階段の基準がそのまま適用されます。
間取り変更のたびに歩行距離を測り直す習慣が欠かせません。

リフォームで部屋を増やしたら、距離が延びてしまいそうです。

そのとおりです。
間取りを変えるたびに測り直してください。

明日からなにを確認すればよいのか

管理者が住戸の図面と歩行距離を確認している様子
この規定が自分の建物に関係するかどうかは、図面と現地の両方で確認できます。
むずかしい判定ではなく、順番に確認すれば足ります。
  • 対象の住戸がメゾネット型で、出入口が一の階のみかを図面で確認する
  • 主要構造部が準耐火構造以上であることを設計図書で確認する
  • 階数が二又は三の範囲に収まっているかを確認する
  • 上の階の各居室から玄関までの歩行距離を実測し、四十メートル以下かを確認する
  • 間取り変更やリフォームの計画があれば、歩行距離への影響を事前に確認する
これらを確認しておけば、増改築や用途変更の際にもみなし規定が働き続けるかを判断できます。
特に歩行距離は、家具の配置ではなく壁や建具でできる実際の経路で測ることが大切です。
疑わしい場合は、設計時の図面や確認申請の記録を所轄の建築主事に確認するのが確実です。
㈱防災屋でも、こうした図面の確認や実測のお手伝いをしています。

図面と現地の両方で確認すればいいんですね。

はい。
次の項目で確認の手順をまとめます。

よくある質問

Qメゾネット型ではない普通の住戸にもこの規定は使えますか?
A使えません。出入口が一の階のみにある住戸という条件があるため、各階に玄関がある通常の住戸には適用されません。
Q戸建て住宅や長屋にもこの規定は適用されますか?
A適用されません。第百二十三条の二は共同住宅の住戸に限った規定です。
Q歩行距離はどこからどこまでを測ればよいですか?
A上の階の居室の各部分から、避難階または地上に通ずる直通階段の一に至るまでの経路を測ります。
Q木造の共同住宅でもこの規定は使えますか?
A使えません。対象は主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸に限られます。

まとめ

メゾネット型住戸は、出入口が一の階のみでも要件を満たせば避難施設規定の適用上緩和されます
対象になるのは主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸に限られます。
階数は二又は三の範囲でなければなりません。
歩行距離四十メートル以下が絶対条件です。
緩和される基準は廊下幅・二方向避難・避難階段・特別避難階段の四つです。
歩行距離を超えれば、通常どおりの基準がそのまま適用されます
管理者は住戸内の歩行距離を実測して確認しておくことが望ましいといえます。

今日の話でうちのメゾネット型の住戸も確認できそうです!

お困りの際は、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第百二十三条の二(共同住宅の住戸の床面積の算定等)
  • 建築基準法施行令第百十九条(廊下の幅)
  • 建築基準法施行令第百二十一条(二以上の直通階段を設ける場合)
  • 建築基準法施行令第百二十二条(避難階段の設置)
  • 建築基準法施行令第百二十三条(避難階段及び特別避難階段の構造)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
メゾネット型の住戸はなぜ上の階の避難階段基準を緩和できるのかを解説する記事のアイキャッチ画像
共同住宅の中には、玄関が1階にしかなく、内部の階段で上の階へ上がる住戸があります。いわゆるメゾネット型の住戸で、上の階には独立した玄関がありません。こうした住戸に、各階ごとの避難階段や二方向避難の基準をそのまま当てはめて...