令和4年8月、福岡県北九州市小倉北区の旦過地区で、3,300平方メートルを焼く火災が発生しました。
同じ地区では、その前の4月にも1,924平方メートルを焼く火災が起きていました。
消防庁は、木造の建物が密集する地域を「重点防火指導対象地域」として指定し、街ぐるみで備えるよう通知を出しました。
自分の店や建物の対策だけでは、隣接する古い木造家屋からの延焼リスクは消えません。
うちの店は消火器も警報器もちゃんと付けてるので、防火対策は万全のはずなんですが。
個々の建物の対策とは別に、地域全体としての備えを求められることがあります。
はい。木造の建物が密集する地域には、消防庁が特別な指導基準を示しています。
この記事の結論
- 令和4年8月の北九州市小倉北区の火災を受け、消防庁は木造飲食店等が密集する地域への重点的な防火指導を都道府県に通知した
- 重点防火指導対象地域は、延べ面積が概ね3,000平方メートル以上で建築年数が古い木造密集地域などが対象になる
- 防火指導では火気設備の管理・住宅用火災警報器・消火器具・地域訓練の4本柱で対策を求めている
- 飲食店を含む令別表第一(3)項の防火対象物は、火を使用する設備を設けていれば面積を問わず消火器具の設置が必要
- 個々の建物が基準を満たしていても、隣接する古い木造家屋の密集という地域全体のリスクは残る
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木造飲食店が密集する地域はなぜ重点防火指導の対象になるのか
令和4年8月10日、福岡県北九州市小倉北区の旦過地区で、3,300平方メートルを焼損する火災が発生しました。
同じ地区では、その前の4月19日にも1,924平方メートルを焼損する火災が起きています。
木造飲食店等が密集する地域に対する防火指導について(通知)(令和4年8月26日 消防消第301号・消防予第423号) 令和4年8月10日、福岡県北九州市小倉北区の旦過地区において、床面積3,300平方メートルを焼損する火災が発生しました。本火災が発生した旦過地区は、建築年数の古い木造建築物が密集する地域に所在しており、同地区においては、令和4年4月19日に床面積1,924平方メートルを焼損する火災が発生しています。このような地域では、火災が発生した場合に大規模な火災につながる危険性が高いことから、防火対象物ごとに講じる防火安全対策のみならず、平素から地域の住民、自治会及び商店街組合等の地域関係者が自ら出火防止対策や各種訓練を行っていくことが防火対策上必要です。
同じ地域でわずか4か月のうちに大規模火災が2件続いたことが、通知が出される直接のきっかけになりました。
発出元は
消防庁消防・救急課長と予防課長の連名で、宛先は都道府県の消防防災主管部局と東京消防庁・指定都市消防長です。
木造建築物が密集する地域は、
一度出火すると延焼が拡大しやすいという共通の弱点を抱えています。
そのため通知は、個々の建物の対策だけでなく、住民や商店街組合を含めた地域ぐるみの取組みを求めています。
うちの周りも古い店が並んでいて、正直ちょっと心配です。
同じような環境の地域では、消防本部が重点的な防火指導の対象に指定することがあります。
重点防火指導の対象地域はどうやって決まるのか
対象地域には、あらかじめ指定されている地域と、消防本部や消防署長がそのつど認める地域の2通りがあります。
判断のものさしになる目安が、通知の中に示されています。
(1) 重点防火指導対象地域 次のア及びイに該当する地域を重点的な防火指導の対象地域(以下「重点防火指導対象地域」という。)とする。 ア「糸魚川市大規模火災を踏まえた「木造の建築物が多い地域などの大規模な火災につながる危険性の高い地域」の指定要領等について(通知)」(平成29年7月31日付け消防消第193号)に基づき大規模な火災につながる危険性が高い地域として、消防本部が指定する又は指定する予定のある地域であること。 イ 次に掲げる事項を勘案し、特に(2)の防火指導を重点的に行う必要があると消防長又は消防署長が認める地域であること。 (ア) 大規模(※1)なアーケード商店街など、多くの木造飲食店(消防法施行令別表第一(3)項に掲げる防火対象物で、木造の建築物であるものをいう。)が存する地域であること。 (イ) 建築年数の古い(※2)木造の建築物が多い地域であること。 (ウ) 隣接する建築物が相互に接続し、又は間隔が狭い等、火災が発生した場合に延焼が拡大しやすく、大規模な火災につながる危険性が特に高いと考えられる地域であること。 ※1 延べ面積の合計が概ね3,000平方メートル以上であることを目安とする。 ※2 概ね60年以上を目安とする。
大規模・築古・隣接という3つの条件は、いずれも「概ね」という目安であって、厳密な数値基準ではありません。
先に指定済みの地域があるほか、
消防長や消防署長がそのつど個別に認める地域も対象になります。
対象になりやすいのは
令別表第一(3)項の飲食店を含む木造建築物が多い地域で、面積や築年数はあくまで目安として使われます。
自分の地域が対象かどうかは一覧で公表される制度ではないため、所轄の消防署に確認するのが確実です。
うちの近くのアーケード商店街も、対象になるかもしれないということですね。
面積や築年数はあくまで目安です。
気になる方は所轄の消防署に確認してみてください。
防火指導は何を求めているのか
重点防火指導対象地域では、消防本部から地域の関係者へ、次の4つの柱で防火指導が行われます。
このうち住宅用火災警報器と消火器具は、個別の建物にすでに設置義務がある設備です。
(2) 防火指導の実施事項 重点防火指導対象地域に対し、地域の住民、自治会及び商店街組合等の地域関係者との連携を通じ、次に掲げる事項を主眼とした重点的な防火指導を図ること。 ア 火を使用する設備又は器具の適切な取扱い及び維持管理 本火災の原因は調査中であるものの、飲食店において天ぷら油から出火した可能性が高いことから、火を使用する設備又は器具の取扱い中は、その場を離れないことを徹底するなど、火を使用する設備又は器具の適切な設置、取扱い及び維持管理について周知徹底を図ること。 イ 住宅用火災警報器の設置及び維持管理 店舗併用の住宅を含め、住宅の用途に供される防火対象物にあつては、消防法第9条の2の規定により、寝室部分等に住宅用火災警報器の設置が義務づけられていること及び適切な維持管理について周知徹底を図ること。なお、特に店舗部分が飲食店である場合は、火災の早期覚知の観点から、厨房部分に住宅用火災警報器を設置すること及び連動型の住宅用火災警報器を設置することが防火対策上有効であること。 ウ 消防用設備等の適正な設置及び維持管理 令別表第一(3)項に掲げる防火対象物(火を使用する設備又は器具を設けたものに限る。)には、令第10条第1項第1号ロの規定により、原則として消火器具の設置が義務づけられていること及び適切な維持管理について周知徹底を図ること。 エ 地域ぐるみの訓練等の実施 一度火災が発生すると大規模な火災に発展する可能性があることを十分に周知するとともに、自治会や商店街組合等の地域関係者に対し、地域関係者を主体とした地域ぐるみの訓練等の自主的な取組みを促すこと。
天ぷら油からの出火が疑われたことから、火気設備の取扱いが最初の柱に置かれています。
飲食店部分には
厨房への住宅用火災警報器の設置と連動型化が有効とされ、住宅用途がある建物にはすでに第9条の2で設置義務があります。
消火器具についても、
令第10条第1項第1号ロにより火を使用する設備がある(3)項の飲食店は面積を問わず設置義務があります。
これらの個別対策に加えて、住民や商店街を巻き込んだ訓練までが指導の対象になっている点が特徴です。
警報器も消火器も、うちはもう設置義務があるので大丈夫ですよね。
設置に加えて、厨房への連動型警報器や維持管理まで確認するとより安心です。
見落としやすいのはどこか
自分の建物の対策が整っていても、それだけでは地域全体のリスクは解消しません。
指定の目安が「概ね」である点も、見落とされやすいところです。
(2) 重点防火指導対象地域における取組みのフォローアップ 重点防火指導対象地域の指定状況や同地域における防火指導の実施状況について、定期的にフォローアップ調査を行う予定であること。初回の調査については、本年11月9日から実施される「秋季全国火災予防運動」にあわせて行う予定であること。
重点防火指導対象地域は一覧で公表される制度ではないため、自分の地域が対象かどうかは意識しないと気づけません。
大規模・築古・隣接という目安は
「概ね」の数値であり、わずかに下回るからといって対象外と決まるわけではありません。
指導の実施状況は
秋季全国火災予防運動にあわせてフォローアップ調査が行われる予定で、地域の取組みは一度きりで終わりません。
自分の建物の設備が整っていても、
隣接する木造家屋の密集という環境要因までは変えられない点も踏まえておく必要があります。
うちの店だけ頑張っても、隣が古い木造だと不安は残りますね。
だからこそ地域ぐるみの訓練が指導の柱に入っています。
明日から何を確認しておけばよいのか
重点防火指導対象地域に該当するかどうかにかかわらず、木造密集地域の店舗や住宅では次の点を確認しておきたいところです。
個別の設備確認と、地域としての参加の両方が必要です。
木造飲食店等が密集する地域に対する防火指導について(通知)(令和4年8月26日 消防消第301号・消防予第423号) 貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対して、この旨周知していただきますようお願いします。なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言であることを申し添えます。
まず、火を使用する設備や器具の周りを片付け、その場を離れない習慣から見直します。
次に、
住宅用火災警報器が寝室と厨房の両方にあるか、連動型になっているかを確認します。
飲食店部分の
消火器具が維持管理されているかもあわせて点検し、不明な点は所轄消防署に相談します。
最後に、自治会や商店街組合が呼びかける
地域ぐるみの訓練には、可能な範囲で参加しておきます。
まずは警報器と消火器の場所を確認して、訓練にも参加してみます。
まずできることから、一つずつ確認していきましょう。
よくある質問
Q重点防火指導対象地域に指定されると、法律上の新しい義務が生じますか?
Aいいえ。通知は消防組織法第37条の助言として出されたもので、住宅用火災警報器や消火器具などの既存の設置義務自体が変わるわけではありません。
Q自分の地域が重点防火指導対象地域かどうかはどこで確認できますか?
A一覧が公表される制度ではないため、所轄の消防署に個別に確認するのが確実です。
Q飲食店の消火器具は面積が小さくても必要ですか?
Aはい。令別表第一(3)項の飲食店で火を使用する設備又は器具を設けている場合、令第10条第1項第1号ロにより面積を問わず消火器具の設置が必要です。
Q住宅用火災警報器は寝室以外にも設置したほうがよいですか?
A店舗併用住宅で店舗部分が飲食店の場合、厨房部分への設置と連動型化が防火対策上有効とされています。
まとめ
✔令和4年8月の北九州市小倉北区の火災を受け、木造飲食店等が密集する地域への重点的な防火指導が通知された。
✔対象地域は、既存の指定地域か、消防長・消防署長が個別に認める地域のいずれかになる。
✔目安は延べ面積概ね3,000平方メートル以上・築年数概ね60年以上・建物の隣接や間隔の狭さの3点。
✔防火指導は火気設備の管理・住宅用警報器・消火器具・地域訓練の4本柱で行われる。
✔飲食店部分には厨房への連動型住宅用火災警報器の設置が有効とされる。
✔令別表第一(3)項の飲食店は、火を使用する設備があれば面積を問わず消火器具の設置義務がある。
✔個々の建物の対策に加え、住民・自治会・商店街ぐるみの訓練への参加が求められる。
警報器・消火器・訓練参加まで、まとめて確認してみます。
それがいちばんの近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 木造飲食店等が密集する地域に対する防火指導について(通知)(令和4年8月26日 消防消第301号・消防予第423号)
- 根拠条文 消防法第9条の2、消防法施行令第10条第1項第1号ロ、消防法施行令別表第一(3)項、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
- 糸魚川市大規模火災を踏まえた「木造の建築物が多い地域などの大規模な火災につながる危険性の高い地域」の指定要領等について(通知)(平成29年7月31日 消防消第193号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。