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浮き屋根の耐震基準と変更の扱いはどうなるか|液面揺動と浮き室の板厚測定

浮き屋根の耐震基準と変更の扱いを解説するアイキャッチ画像

大容量の屋外貯蔵タンクでは、地震のときに中身が長い周期で揺れ続けるスロッシングが起きます。
この液面揺動で浮き屋根が壊れないことを求める規定が置かれていますが、どのタンクが対象なのかという入口から解釈が分かれます。
浮きぶた付固定屋根構造は含まれるのか。浮き屋根を直したら本体の変更になるのか。
この規定は浮き屋根だけに課される規定です。

うちのタンクは固定屋根の中に浮きぶたが入っている形式です。
液面揺動の規定の対象になるのでしょうか。

そこは通達がはっきり答えています。
含まれないという整理です。
似た構造でも規定の射程が違うので、最初に確認しておく価値があります。

浮き屋根を補修したときの手続きは、どうなるのでしょうか。

どの告示に関わる変更かで扱いが分かれます。
液面揺動の構造に関わる部分に触れるなら、本体の変更として扱われます。

この記事の結論
  • 液面揺動により損傷を生じない構造を求められる屋外貯蔵タンクに、浮きぶた付固定屋根構造のものは含まれないとされています
  • ν5を求める地震動記録は、地盤特性が同様と考えられる地点のものであれば活用してさしつかえないとされています
  • コンプレッションリングとデッキの重ね継手は、両面を連続隅肉溶接とすることができます
  • 液面揺動の構造に関わる告示に係る浮き屋根の変更は、タンク本体の変更に該当するものとして取り扱われます
  • 既存の浮き屋根の板厚測定は、全浮き室の中から最も腐食が認められる1室を対象とする方法で差し支えないとされています

浮きぶた付固定屋根構造は液面揺動の規定の対象か

固定屋根の下に浮きぶたが入った構造のタンクを断面で示したイメージ
危険物の規制に関する規則第20条の4第2項第3号および告示第4条の21の3は、浮き屋根が液面揺動により損傷を生じない構造を有することを求めています。
外から見ると、浮き屋根式のタンクと浮きぶた付固定屋根構造のタンクはどちらも中身の上に板が浮いています。
規定の射程がどちらまで及ぶのかが照会されました。
問1 規則第20条の4第2項第3号及び告示第4条の21の3の規定により浮き屋根が液面揺動により損傷を生じない構造を有しなければならない屋外貯蔵タンクには、浮きぶた付固定屋根構造の屋外貯蔵タンクは含まれないと解してよいか。
答 お見込みのとおり
「お見込みのとおり」は、照会側の理解をそのまま是認する回答です。
浮きぶた付固定屋根構造は含まれません
固定屋根があるぶん液面の揺れ方が異なり、浮きぶたが受ける影響も浮き屋根とは同じでない、という前提が背景にあると読めます。
自社のタンクがどちらの構造かによって、そもそも検討が要るかどうかが変わります。

似た構造でも、規定の対象が違うのですね。

含まれないと整理されています。
自分のタンクの形式を、まず確かめてください。

地震動記録の「周辺」はどこまで使えるか

敷地と離れた地点で地層が一致していることを示した地震観測のイメージ
告示第4条の20第2項第3号は、特定屋外タンク貯蔵所の存する敷地又はその周辺で得られた強震計地震動記録等に基づきν5を求めることとしています。
敷地内に観測点があるとは限りません。
では「周辺」はどこまでを指すのか。距離で決まるのか。
答 過去の地質調査結果等から、特定屋外タンク貯蔵所の存する敷地と地盤特性が同様と考えられる地点の地震動記録であれば活用してさしつかえない
回答は距離ではなく地盤特性で線を引いています。
地盤特性が同様と考えられる地点なら使えます
根拠として挙げられているのは過去の地質調査結果等です。
近いという理由だけでは足りず、地層の構成が似ていることを資料で示す必要があります。逆に多少離れていても、地盤特性の一致を示せれば使えることになります。

周辺かどうかは、距離では決まらないのですね。

地盤の特性で判断されます。
使う記録の観測点を、資料で確認してください。

コンプレッションリングとデッキの重ね継手の溶接方法

リング材とデッキ板の重ね継手の上下両面に隅肉溶接を施したイメージ
告示第4条の22第1号ハは、浮き屋根の浮き部分の溶接および浮き部分と当該浮き部分以外の部分との溶接について、完全溶込み溶接又はこれと同等以上の溶接強度を有する溶接方法によることとしています。
完全溶込み溶接は突合せを前提とした方法で、重ね継手にそのまま当てはめにくい場面があります。
問3 コンプレッションリングとデッキの重ね継手について、両面を連続隅肉溶接とすることとしてよいか
答 さしつかえない
読みどころは「両面」と「連続」の2語です。
両面を連続隅肉溶接とすることができます
片面だけ、あるいは断続的な隅肉溶接では、告示がいう同等以上の溶接強度を満たしたことにはなりません。
施工要領書の段階で、両面かつ連続であることを図示しておくと審査が滑らかになります。

重ね継手の溶接にも、読み方が示されているのですね。

同等以上の強度が要件です。
溶接の方法を、施工要領書で確かめてください。

浮き屋根の変更はタンク本体の変更にあたるか

浮き屋根のデッキを吊り上げて交換する工事のイメージ
従来、変更の許可に係る特定屋外貯蔵タンクのタンク本体の変更については、放射線透過試験又は磁粉探傷試験及び浸透探傷試験に係る変更の工事が行われる場合とされてきました。
そこに液面揺動の規定が加わり、浮き屋根の変更をどう位置づけるかが問われました。
答 浮き屋根に係る変更のうち、液面揺動により損傷を生じない構造に関するもの、すなわち告示第4条の21の4の規定及び告示第4条の22第1号の規定のうち告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根に係る規定に関する変更については、タンク本体の変更に該当するものとして取り扱う
浮き屋根に手を入れれば何でも本体の変更になるわけではありません。
線引きは、その工事が液面揺動により損傷を生じない構造に関わるかどうかです。
本体の変更として審査を受けることになります
どの告示に係る工事なのかを最初に整理しておけば、手続の重さを見誤りません。

浮き屋根に手を入れれば、必ず本体の変更になるわけではないのですね。

触れる部分で分かれます。
工事の範囲を、告示ごとに整理してください。

既存の浮き屋根の浮き室の板厚はどう測るか

浮き室の内部で上板の板厚を超音波厚さ計により測定しているイメージ
告示第4条の21の3は、一次および二次のモードを考慮した液面揺動の影響によって浮き屋根に作用する荷重により、外周浮き部分に生じる応力が許容応力以下であることを求めています。
既存の浮き屋根で耐震強度を検討するには、いまの板厚が要ります。
浮き室は数多くあり、全室を全面的に測るのは現実的ではありません。
1 全浮き室の中から目視によって最も腐食が認められる1室を板厚測定の対象とする
2 浮き室各部の測定は、浮き室の内面又は外面から行う
3 浮き室各部の測定箇所は、それぞれ最も腐食の認められる箇所及び浮き室仕切り板間の中央部の次の箇所とし、各部ごとにそれぞれ平均値を板厚とする
答1 差し支えない
最も腐食が認められる室を対象にします
選び方は目視で、最も条件の悪い1室を代表させるという考え方です。
そのうえで各箇所の測定値は平均をとります。1点の最小値でも最大値でもなく平均である点は、記録の作り方に直接効いてきます。

板厚の測り方にも決まりがあるのですね。

全室を全面的に測るわけではありません。
記録の様式を、次の開放点検の前に整えてください。

よくある質問

Q. 上板及び下板の測定箇所はどこですか?
内リム及び外リムから50ミリメートル程度の位置で各1箇所とされています。あわせて、円周方向補強部材がある場合はその取付け位置近傍各1箇所、補強部材がない場合は内リムと外リムとの間の中央部各1箇所とされています。
Q. 内リムと外リムの測定箇所はどこですか?
内リムは上板と下板の中央部1箇所とされています。外リムは上板及び下板から100ミリメートル程度の位置で各1箇所とされています。なお補強部材については、それぞれ最も腐食の認められる箇所を測定することとされています。
Q. 測定した値は箇所ごとにどう扱いますか?
各部ごとにそれぞれ平均値を板厚とすることとされています。測定は浮き室の内面又は外面から行うこととされており、どちらからでも差し支えありません。
Q. 既設の準特定屋外タンク貯蔵所で基礎に杭が用いられている場合の地盤はどう判断しますか?
平成20年7月8日付け消防危第290号が扱っています。既設の準特定屋外タンク貯蔵所で基礎に杭が用いられているものの地盤が規則第20条の3の2第2項第2号ロ(2)に適合する場合には、杭の種類、支持の状況等にかかわらず同号の規定に適合していると判断してよいかという照会に対し、回答は「さしつかえない」となっています。

まとめ

  • 液面揺動により損傷を生じない構造が求められる屋外貯蔵タンクに、浮きぶた付固定屋根構造のものは含まれません
  • ν5を求める強震計地震動記録の「周辺」は距離ではなく地盤特性で判断し、敷地と地盤特性が同様と考えられる地点の記録であれば活用できます
  • その根拠には過去の地質調査結果等を用います
  • コンプレッションリングとデッキの重ね継手は、両面を連続隅肉溶接とすることでさしつかえないとされています
  • 浮き屋根の変更のうち液面揺動により損傷を生じない構造に関するものは、タンク本体の変更として取り扱われます
  • 既存の浮き屋根の板厚測定は、全浮き室から目視で最も腐食が認められる1室を対象とする方法で差し支えありません
  • 測定は内面又は外面から行い、各部ごとにそれぞれ平均値を板厚とします
  • 上板及び下板は内リム及び外リムから50ミリメートル程度、外リムは上板及び下板から100ミリメートル程度の位置が測定箇所とされています

測定の箇所まで細かく決まっているのですね。
すっきりしました。

そこは記録の様式から見直したほうが早いです。
次の開放点検の前に整えておきましょう。
㈱防災屋でも記録の組み立てからご相談を承っています。

参考・出典

  • 危険物事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(平成17年3月31日 消防危第67号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長あて)問1・問2・問3・問4
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(平成17年12月19日 消防危第295号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長・東京消防庁・各政令指定都市消防長あて)別紙 屋外タンク貯蔵所関係 問1
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成20年7月8日 消防危第290号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 準特定屋外タンク貯蔵所の基礎及び地盤関係 問1
  • 危険物の規制に関する規則第20条の4第2項第3号・第20条の3の2第2項第2号
  • 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の20第2項第3号・第4条の21の3・第4条の21の4・第4条の22第1号
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

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