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野外ステージの観覧席は自由にいすを並べてよいのか|火災予防条例が定める屋外の客席の基準を解説

野外ステージの観覧席は自由にいすを並べてよいのかを解説する記事のアイキャッチ画像

野外ステージや屋外のイベント会場で観覧席を組むとき、いすは並べるだけでよいと思われがちです。
ところが火災予防条例には、屋内の客席とは別に屋外の客席だけを受け持つ条が置かれています。
いすの固定から通路の幅、避難口までの歩行距離まで、数値で決められた項目が並んでいます。
屋根が無いのだから決まりも掛からない、という思い込みがいちばん危ないところです

来月うちの会社で屋外の音楽イベントをやることになったんです。
観覧席はパイプいすを並べるだけで大丈夫ですよね。

そこがいちばん誤解の多いところです。
火災予防条例は屋外の客席にも条を置いていて、いすは床に固定することとされています。

固定ですか。
屋根も壁も無い場所でそこまで求められるとは思っていませんでした。

理由までは条文に書かれていませんが、屋外の客席には屋外だけの条が別に置かれています。
いすの固定から通路の取り方まで、確かめる項目が並んでいますよ。

この記事の結論
  • 火災予防条例(例)は劇場等の客席を屋内屋外に分けて条を置いており、屋外の客席を受け持つのが第36条です
  • 屋外の客席でもいすは床に固定しなければなりません
  • いす背の間隔は75センチメートル以上で、いす背が無くいす座が固定されている場合だけ70センチメートル以上まで下げられます
  • 立見席には奥行3メートル以下ごとに高さ1.1メートル以上の手すりが要ります
  • 通路までの近さを歩行距離で測るのは屋外の客席だけです

屋外の客席で確かめる四つの項目をまとめた図解

屋外の客席とはどこを指すのか

屋根のある建物と屋根の無い段状の観覧席を並べたイラスト
屋外の客席という言葉は、条文の中でははっきり別のものとして扱われています。
まずどこからどこまでが対象になるのかを押さえます。
火災予防条例(例)第23条第1項第一号 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂若しくは集会場(以下「劇場等」という。)の舞台又は客席
同第36条 劇場等の屋外の客席は、次の各号に定めるところによらなければならない。
屋根の有無で適用される条が入れ替わります
火災予防条例(例)の第5章は避難管理を扱っていて、その先頭の第35条が屋内の客席、続く第36条が屋外の客席を受け持ちます。
条文を並べて読むと、第36条には見出しが付いておらず、第35条に付いた(劇場等の客席)という見出しがそのまま第36条まで掛かっています。
劇場等の中身は第23条第1項第一号で決められていて、劇場や映画館だけでなく演芸場や観覧場や公会堂や集会場まで含みます。
消防法の側を見ると第8条の2の4が廊下や階段や避難口の管理を求めていますが、席の並べ方や通路の幅までは書いていません。
そこを受け持つのが条例なので、自分の会場の席が屋根の下にあるのか外にあるのかを最初に確かめてください。

うちの会場は屋根が客席の半分だけ掛かっています。
その場合はどちらで見ればよいのでしょうか。

条文は屋内か屋外かで分けているだけで、境目の決め方までは書いていません。
図面を持って所轄消防署に見てもらうのがいちばん早い方法です。

いすと立見席にはどんな決まりがあるのか

床に固定されたいすの列と置いただけのばらばらのいすを比べたイラスト
第36条は四つの号でできていて、前の三つが席そのものの決まりです。
まずいすと立見席から見ていきます。
火災予防条例(例)第36条 劇場等の屋外の客席は、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 いすは、床に固定すること
二 いす背の間隔は、75センチメートル以上とし、座席の幅は、40センチメートル以上とすること。ただし、いす背がなく、かつ、いす座が固定している場合にあつては、いす背の間隔を70センチメートル以上とすることができる
三 立見席には、奥行3メートル以下ごとに、高さ1.1メートル以上の手すりを設けること
並べるだけでは条文を満たしません
第一号は床に固定することとしか書いていないので、固定の方法までは条文からは読み取れません。
第二号は寸法が二つあり、いす背の間隔が75センチメートル以上、座席の幅が40センチメートル以上です。
ただし書きが効くのはいす背が無く、かついす座が固定されている場合だけで、二つの条件がそろって初めて70センチメートル以上まで下げられます。
第三号は立ち見の部分で、奥行3メートル以下ごとに高さ1.1メートル以上の手すりを設けることとされています。
仮設の観覧席を組む会社に発注するときは、この三つの数値を仕様書に書いておくと後から直す手間が消えます。

いす背が無ければ間隔を詰めてよい、と覚えていました。
いす座の固定まで条件だったんですね。

ただし書きは「かつ」でつないであるので、片方だけでは効きません。
ベンチ式の席を使うときこそ条文を読み直してください。

通路はどれだけ空けておけばよいのか

いすの列の間を通る通路と出入口と物差しを置いたイラスト
第36条の第四号だけがイからニまでの四つに分かれています。
ここが屋外の客席のいちばん細かいところです。
火災予防条例(例)第36条第四号 客席の避難通路は、次によること。
イ いす席を設ける客席の部分には、横に並んだいす席10席(いす背がなく、かつ、いす座が固定している場合にあつては、20席)以下ごとに、その両側に幅80センチメートル以上の通路を保有すること。(略)
ロ いす席を設ける客席の部分には、幅1メートル以上の通路を、各座席から歩行距離15メートル以下でその一に達し、かつ、歩行距離40メートル以下で避難口に達するように保有すること
ハ ます席を設ける客席の部分には、幅50センチメートル以上の通路を、各ますがその一に接するように保有すること。
ニ ます席を設ける客席の部分には、幅1メートル以上の通路を、各ますから歩行距離10メートル以内でその一に達するように保有すること。
席の数と距離の二つで測ります
イは席の数で、横に並んだいす席10席以下ごとに両側へ幅80センチメートル以上の通路を取ります。
いす背が無くいす座が固定されている場合は20席以下ごとまで伸ばせるので、席の形が通路の本数を左右します。
ロは距離で、各座席から歩行距離15メートル以下で幅1メートル以上の通路に達し、そこから歩行距離40メートル以下で避難口に達するように保つこととされています。
ハとニはます席で、幅50センチメートル以上の通路が各ますに接していることと、歩行距離10メートル以内で幅1メートル以上の通路に達することの両方が要ります。
席の配置図を作る段階でこの四つを当てておくと、当日に席を抜いて並べ直す事態を避けられます。

通路の幅だけ見ていれば足りると思っていました。
座席から通路までの距離まで決められているんですね。

幅と距離は別々の号なので、片方を満たしても足りません。
配置図に通路の幅と歩行距離を両方書き込んでおくと確認が早く済みます。

屋内の客席と同じつもりでよいのか

屋根のある客席と屋根の無い客席で手すりの高さが違うことを示したイラスト
屋内の第35条を覚えている方ほど、数値をそのまま持ち込みがちです。
二つの条を並べると、そろっていない項目が次々に出てきます。
火災予防条例(例)第35条 劇場等の屋内の客席は、次の各号に定めるところによらなければならない。
二 いす背(略)の間隔は、80センチメートル以上とし、いす席の間隔(前席の最後部と後席の最前部の間の水平距離をいう。以下この条において同じ。)は、35センチメートル以上とし、座席の幅は、40センチメートル以上とすること。
三 立見席の位置は、客席の後方とし、その奥行は、2.4メートル以下とすること
同じ客席でも数値はそろっていません
一つ目はいす背の間隔で、屋内が80センチメートル以上なのに対して屋外は75センチメートル以上と、屋外のほうが小さい値で足ります。
二つ目はいす席の間隔で、屋内には前席の最後部と後席の最前部の間を35センチメートル以上とする定めがありますが、屋外の条にはこの項目そのものがありません
三つ目は立見席で、屋内は置き場所と奥行の上限(客席の後方かつ2.4メートル以下)を決めているのに対し、屋外は奥行3メートル以下ごとの手すりを求めていて、規制の向きが逆を向いています。
四つ目は通路の測り方で、屋内は通過する人数から幅を計算しますが、屋外は幅の数値が決め打ちで、代わりに歩行距離が入ります。
条例(例)の全文を数え直すと歩行距離という語は三か所しかなく、三つとも第36条の第四号でした。

ホールの図面をそのまま屋外へ持ち出すところでした。
数字が近いだけに気づきにくいですね。

屋内と屋外は条が分かれているので、片方だけを覚えると必ずどこかがずれます。
屋外の会場を持つ方は第36条だけを抜き出して手元に置いてください。

明日からなにを確認すればよいのか

点検票を持つ人といすの列と巻尺を並べたイラスト
条文には基準を外せる場合も書かれています。
ただし外せるかどうかを決めるのは会場の側ではありません。
火災予防条例(例)第36条の2(基準の特例) 前2条の規定の全部又は一部は、消防長(消防署長)が劇場等の位置、収容人員、使用形態、避難口その他の避難施設の配置等により入場者の避難上支障がないと認めるときにおいては、適用しない
特例は自分で当てるものではありません
第36条の2の前2条は第35条と第36条を指すので、屋内にも屋外にも特例の道が用意されています
判断するのは消防長(消防署長)で、位置や収容人員や使用形態や避難口の配置を見たうえで認めるかどうかが決まります。
やることは三つで、席が屋内か屋外かを図面で切り分けること、いすの固定と三つの寸法を実測すること、通路の幅と歩行距離を配置図に書き込むことです。
そのうえで、条例(例)ではなく自分の市町村の条例の条文に当たり直してください。
条例(例)はあくまで国が示した例なので、条番号も数値も市町村ごとに違うことがあります。

つまり配置図を書く段階で消防署に相談しておけばよいのですね。
組んでから直すより早そうです。

そのとおりです。
席を組んだ後の手直しは費用も時間もかかるので、図面の段階で当てておくのがいちばん安く済みます。

よくある質問

Q屋外の客席にパイプいすを並べるのは認められないのですか?
A火災予防条例(例)第36条第一号はいすは床に固定することとしています。固定の方法や、どこまでを固定とみるかは条文には書かれていないので、実際の取扱いは自分の市町村の条例と所轄消防署に確かめてください。
Qます席に入れてよい人数は屋内と屋外で同じですか?
A違います。第39条第三号は、一のます席に屋内の客席では7人以上、屋外の客席では10人以上の客を収容しないこととしています。条文をそのまま読めば屋内は6人まで、屋外は9人までという数え方になります。
Q体育館で一日だけイベントを開く場合も第36条を見るのですか?
A第42条は第35条から第36条の2までの規定を、体育館や講堂を一時的に劇場等や展示場やディスコ等の用途に供する場合について準用すると定めています。準用の中身は下の関連記事で詳しく扱っています。
Q屋外の客席にも基準を外してもらえる道はありますか?
A第36条の2に基準の特例が置かれています。前2条は第35条と第36条を指すので屋外の客席も対象ですが、認めるかどうかを決めるのは消防長(消防署長)であって、会場の側が自分で当てるものではありません。

まとめ

火災予防条例(例)の第5章避難管理は、第35条が屋内の客席、第36条が屋外の客席を受け持っています
第36条には見出しが付いておらず、第35条に付いた(劇場等の客席)という見出しがそのまま掛かっています
屋外の客席でもいすは床に固定することとされています
いす背の間隔は75センチメートル以上、座席の幅は40センチメートル以上で、いす背が無くいす座が固定されている場合だけ70センチメートル以上まで下げられます
立見席には奥行3メートル以下ごとに高さ1.1メートル以上の手すりが要ります
通路は席の数と歩行距離の両方で測ります
第36条の2の特例は第35条と第36条の両方に及びますが、認めるのは消防長(消防署長)です

屋外の会場でも第36条を見ればよいと分かって助かりました。
さっそく配置図に通路と歩行距離を書き込みます。

図面の段階で当てておけば当日の手直しはほとんど出ません。
屋外の観覧席の組み方でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4・第9条 e-Gov法令検索
  • 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第23条・第35条・第36条・第36条の2・第39条・第42条 総務省消防庁

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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