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屋外貯蔵タンクの定期点検はなぜドローンでもできるようになったのか|腐食を見逃さない撮影距離の決め方と機体の安全対策を解説

ドローンが屋外貯蔵タンクの側板脇を飛行して点検するようす

屋外貯蔵タンクの定期点検では、側板など高所にある点検困難な部位を、地上や回り階段からの目視、あるいは足場やゴンドラを設置して確認するしかありませんでした。
危険物施設は可燃性蒸気が滞留するおそれのある区域を防爆規制の対象とする決まりがあり、非防爆機器であるドローンの導入がなかなか進んでいませんでした。
そこで消防庁は、危険区域の運用を見直したうえで、ドローンで側板等を点検する際の具体的な手順をまとめたガイドラインを策定しました。
ただしドローンさえ飛ばせば自由に点検してよいわけではなく、機体の安全対策や撮影距離の決め方まで細かく定められています。

うちの屋外貯蔵タンク、側板の点検のたびに足場を組むのが大変なんです。
ドローンでできるようになったって本当ですか。

はい。
消防庁がドローンを使った点検のガイドラインを策定しています。

飛ばせば、それで点検完了ということですか。

いいえ、機体の安全対策や撮影距離の決め方まで条件があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 屋外貯蔵タンクの定期点検・開放時点検でタンク外面をドローンで目視代替するための公式ガイドラインが策定された
  • 根拠は「ドローンを活用した屋外貯蔵タンクの側板等の点検に係るガイドラインについて」(令和5年3月29日 消防危第62号)
  • ドローン機体には自動帰還機能や障害物検知機能など6項目の安全対策が求められる
  • 腐食を見逃さないため撮影距離はカメラの事前検証で決める必要がある
  • 特定屋外貯蔵タンクの側板の詳細点検に該当する場合は、本ガイドラインではなく詳細点検ガイドラインに従う

屋外貯蔵タンクの側板をドローンで撮影して腐食を点検するようすを示す図解

ドローンを活用した屋外貯蔵タンクの点検はなぜガイドラインが必要になったのか

足場を組んで屋外貯蔵タンクの側板を点検する作業員と上空を飛ぶドローンを対比するようす
屋外貯蔵タンクの側板など高所の点検困難部位は、地上や回り階段からの目視、あるいは足場やゴンドラの設置で確認するしかありませんでした。
危険物施設は危険区域内の防爆規制があり、非防爆機器であるドローンの導入がなかなか進んでいませんでした。
「ドローンを活用した屋外貯蔵タンクの側板等の点検に係るガイドラインについて」(令和5年3月29日 消防危第62号 消防庁危険物保安室長) 消防庁では「新技術を活用した屋外貯蔵タンクの効果的な予防保全に関する調査検討会」を開催し、無人航空機(いわゆるドローン)を活用した屋外貯蔵タンクの点検方策について検討を行ってきました。今般、消防庁では当該検討を踏まえ、ドローンを活用した屋外貯蔵タンクの側板等の点検に係るガイドラインを策定しましたので、下記の事項に留意の上、執務上の参考とされるようお願いいたします。
(同ガイドライン 1本ガイドラインの目的 抜粋) 危険物施設においては危険区域内の防爆規制により、非防爆機器であるドローンの導入が進んでいなかったところ、屋外貯蔵タンクにおいては「屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について」(令和4年8月4日消防危第175号)により、一定の条件下における危険区域の合理化が図られたことにより、ドローンを定期点検に導入することが可能となった
この通知は、危険区域の運用見直しを踏まえてドローン点検の使い方をまとめたものです。
危険物施設は可燃性蒸気が滞留するおそれがある区域を防爆規制の対象とする決まりがあり、非防爆機器であるドローンはこれまで自由に飛ばせませんでした。
令和4年の運用通知で危険区域の設定が合理化されたことで、ドローンの飛行が現実的になりました。
この流れを受けた令和5年3月のガイドラインが、実際に側板等を点検する際の手順を定めています。
ガイドライン自体は消防組織法第37条に基づく助言であり、義務ではなく参考として示されたものです。

うちのタンク、足場を組んで点検員に登ってもらうのが毎回大変で。

ドローンでの目視代替が選べる場合があります。
順番に見ていきましょう。

どのタンクのどんな点検が対象になるのか

屋外貯蔵タンクの外面をドローンで確認する場面と足場を組んで詳細点検を行う場面を対比するようす
対象になるのは、屋外貯蔵タンクの定期点検、または開放時の点検で、タンク外面を確認する場面です。
すべてのタンクが本ガイドラインだけで済むわけではなく、対象外になる条件もあります。
(同ガイドライン 記1) 屋外貯蔵タンクの定期点検等において、屋外貯蔵タンクの所有者等がドローンを活用した点検の実施を希望する場合は、別紙「ドローンを活用した屋外貯蔵タンクの側板等の点検に係るガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)により指導すること。
(同ガイドライン 5その他 抜粋) 本ガイドラインは、タンク外面を点検する際の目視代替点検として、ドローン及び撮影機器を用いた点検方策を示したものである。このため、開放中の特定屋外貯蔵タンクが「特定屋外貯蔵タンクの側板の詳細点検に係るガイドラインについて」(平成25年3月29日付消防危第49号)中、詳細点検を実施すべきタンクに該当した場合は、本ガイドラインに基づく点検ではなく、詳細点検ガイドラインに基づく詳細点検を行うべきであること。ただし、同ガイドライン中、直近から目視で確認することとされている事項については、足場やゴンドラ等を設置せずにドローンを活用した点検に替えても差し支えないものであること。
対象は、供用中の定期点検か、開放時の点検でタンクの外面を確認する場面に限られます。
ただし特定屋外貯蔵タンクが、別のガイドラインが定める詳細点検の対象に該当する場合は話が変わります。
その場合は本ガイドラインではなく、平成25年の詳細点検ガイドラインに従う必要があります。
詳細点検の中でも直近から目視するだけの項目は、足場やゴンドラを組まずにドローンへ置き換えてよいとされています。
自分のタンクがどちらの対象になるかは、開放の有無とタンクの区分を先に確認しておく必要があります。

うちのタンクは特定屋外貯蔵タンクなんですが、開放するたびに詳細点検が必要なんでしょうか。

開放のタイミングとタンクの区分次第です。
次は安全対策を見ていきましょう。

ガイドラインは何を求めているのか

自動帰還機能と障害物センサーを備えたドローンが屋外貯蔵タンクの周囲を監視員とともに飛行するようす
ガイドラインは、ドローン機体そのものの安全対策と、飛行時の安全対策を分けて定めています。
どちらも「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」(3省ドローンガイドライン)を土台にしています。
(同ガイドライン 2ドローン機体における安全対策 抜粋) 「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」(石油コンビナート等災害防止3省連絡会議、以下「3省ドローンガイドライン」という。)によるほか、以下の安全対策を講じること。⑴非常時の自動帰還機能が搭載されていること。⑵機体周囲の障害物をセンサー等により検知することで衝突を防止する機能を装備すること。⑹万が一の衝突時に落下を防ぐためのプロペラガード等を装着すること。
(同ガイドライン 3飛行に際しての安全対策 抜粋) 同一タンクヤード内にタンクが複数存する箇所等、周囲の状況によりドローンが監視員の死角に入りやすい箇所で飛行する際は、監視員の増員、複数の離発着場所の設定等、ドローンを見失わない監視体制とすること
安全対策は大きく、機体そのものの性能と、飛ばし方の2つに分かれます。
機体側では、自動帰還機能や障害物検知機能など、事故を未然に防ぐ装備が求められます。
飛行時は、風向きや気象条件に応じた監視体制のほか、タンクが複数並ぶ現場では死角対策も欠かせません。
どちらも土台になっているのが、消防庁だけでなく経済産業省・厚生労働省も加わる3省ドローンガイドラインです。
自社のドローンがこの条件を満たしているかは、運用開始前に一つずつ確認しておく必要があります。

監視員を増やしたり離発着場所を複数用意したりするのは、うちみたいな小さな現場でもやるべきですか。

死角ができやすい配置なら必要です。
タンクの並びを見て判断しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

試し撮りした模様の点状マークが識別できるまで撮影距離を詰めるようすと識別できず失敗した撮影距離を対比表示
機体や飛行の安全対策をクリアしても、撮影の仕方を誤ると腐食の見落としにつながります。
ガイドラインは、撮影距離を勘や経験だけで決めないよう、具体的な検証手順まで示しています。
(同ガイドライン 4タンク外観撮影に関する留意事項 抜粋)⑴静止画の撮影距離決定のための事前検証 タンク所有者等が使用するカメラを用いて自らの定める平面的な検出基準値以上の寸法をもつ腐食等を確実に検出するため、実機カメラを用いた事前検証を行い、撮影距離(タンク-ドローン間の距離)を決定すること
(同ガイドライン 4タンク外観撮影に関する留意事項 抜粋) 撮影した静止画をディスプレイ等で確認し、検出基準値の一段下の点状模様が識別できた撮影距離以下の距離をドローン点検時の撮影距離として決定すること。検出基準値未満の点状模様が識別できない場合は、当該点状模様が識別できるまで撮影距離を短くして撮影及び静止画確認を繰り返すこと。
落とし穴になりやすいのは、撮影距離を「なんとなく近づけて撮る」で済ませてしまうことです。
ガイドラインは、検出したい腐食の寸法を模した模様をカメラで試し撮りし、識別できる距離まで詰めるという手順を求めています。
検出基準値ぎりぎりの模様が見えなければ、識別できるまで距離を縮めて撮り直す必要があります。
もう一つの落とし穴は、特定屋外貯蔵タンクが詳細点検の対象になっているのに、本ガイドラインだけで済ませてしまうことです。
対象タンクの区分を確認しないまま撮影距離だけを整えても、点検そのものが要件を満たさなくなります。

撮影距離って、遠くから広く撮ったほうが効率的な気がしますが。

検出基準値が見える距離まで詰めないと、腐食を見落とします。

明日からなにを確認すればよいのか

展開図面とタブレットのオルソ画像を見比べながら点検結果を記録する作業着姿の点検員
ここまでの内容を、実際に導入する順番に並べ直します。
まず確認すべきは、自社のタンクがどの点検の対象になるかです。
(同ガイドライン 5その他 抜粋) ドローンを活用した目視代替点検の結果は、タンク側板の展開図面等に記録するとともに撮影した静止画、動画を保存すること。また、既存図面への記録に替えて、タンク静止画から生成したタンク全体の3Dモデル、オルソ画像(正射投影画像)等に腐食等の詳細静止画や位置等の情報を紐付け、電子的に記録管理することも差し支えないものであること。
まず、自社のタンクが「特定屋外貯蔵タンクの側板の詳細点検」の対象に該当するかを確認します。
対象外であれば、ドローンによる目視代替点検が使える候補になります。
次に、使用予定のカメラで検出基準値の模様を試し撮りし、撮影距離を決める事前検証を行います。
機体は自動帰還機能や障害物検知機能など、ガイドラインが求める安全対策を満たしているかを確認します。
点検結果は展開図面への記録が基本ですが、3Dモデルやオルソ画像に紐付けた電子的な記録管理も認められています。

まずは自分のタンクが詳細点検の対象かどうかを確認してみます。

それが最初の一歩です。
順番に進めましょう。

よくある質問

Qドローンを使えばどんな屋外貯蔵タンクでも足場を組まずに点検できるのですか?
Aいいえ。特定屋外貯蔵タンクの側板の詳細点検に該当する場合は、本ガイドラインではなく詳細点検ガイドラインに基づく点検が必要です。直近から目視する項目に限り、ドローンへの置き換えが認められています。
Qドローンの機体に決まった性能基準はありますか?
A自動帰還機能や障害物検知機能など6項目の安全対策が求められます。加えて3省ドローンガイドラインの基準も満たす必要があります。
Q撮影距離はどうやって決めればよいのですか?
A検出したい腐食の寸法を模した模様を実機カメラで試し撮りし、識別できる距離まで撮影距離を詰める事前検証で決定します。
Q点検結果はどのように記録すればよいのですか?
Aタンク側板の展開図面に記録するのが基本ですが、3Dモデルやオルソ画像に紐付けた電子的な記録管理も認められています。

まとめ

屋外貯蔵タンクの定期点検・開放時点検でタンク外面をドローンで目視代替するための公式ガイドラインが策定された。
根拠は「ドローンを活用した屋外貯蔵タンクの側板等の点検に係るガイドラインについて」(令和5年3月29日 消防危第62号)
危険区域の合理化を図った「屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について」(令和4年8月4日 消防危第175号)がドローン導入の前提になっている。
ドローン機体には自動帰還機能や障害物検知機能など6項目の安全対策が求められる。
撮影距離は検出基準値の模様が識別できる距離まで詰める事前検証で決定する。
特定屋外貯蔵タンクの側板の詳細点検に該当する場合は、本ガイドラインではなく詳細点検ガイドラインに従う。
点検結果は展開図面のほか3Dモデルやオルソ画像への記録管理も認められる。

うちのタンクの区分から、まず対象になるかどうかを確認してみます!

それがいちばんの近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「ドローンを活用した屋外貯蔵タンクの側板等の点検に係るガイドラインについて」(令和5年3月29日 消防危第62号 消防庁危険物保安室長)
  • 「屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について」(令和4年8月4日 消防危第175号)
  • 「特定屋外貯蔵タンクの側板の詳細点検に係るガイドラインについて」(平成25年3月29日 消防危第49号)
  • 根拠条文 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第62条の4

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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