既存不適格の建物は、建てた当時の基準のままで使い続けることが認められています。
ところが増築や改築の工事に着手すると、この扱いは原則として続きません。
車庫や備蓄倉庫などを増やす場合には、条件を満たせば容積率の規制を受け直さずに済む緩和があります。
この緩和がどんな範囲で認められているのかを解説します
うちの古いビルに車庫を増築したいんですが、今の容積率の基準に合わせ直しになるんじゃないでしょうか。
建築基準法施行令第百三十七条の八という緩和の規定があります。
まずどんな仕組みか見ていきましょう。
増築すると建物全体がやり直しになると思っていました。
条件を満たせば車庫や備蓄倉庫の部分だけ緩和が続きます。
中身を順番に確認しましょう。
- 建築基準法施行令第百三十七条の八は、既存不適格の建物が増築で車庫や備蓄倉庫などを作っても、条件を満たせば容積率の規制を受け直さずに済むと定めています。
- 緩和の対象になるのは車庫や備蓄倉庫など決められた部分を増築する場合に限られます。
- 増築前からある一般部分の床面積は基準時の合計を超えて増やせません。
- 増築後の車庫等部分にも、施行令第二条第三項が定める区分ごとの割合の上限が適用されます。
- この緩和が使えるのは容積率に関する規定に限られ、他の基準には別の緩和の仕組みがあります。
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目次
なぜ既存不適格の建物は増築すると原則の規制を受け直すのか

ところが増築や改築の工事に着手すると、この扱いは原則として続かなくなります。
建てた当時は基準に適合していても、工事に着手すれば新しい基準に合わせ直すことが求められます。
容積率のように建物全体の規模にかかわる基準は、増築部分だけでなく建物全体に影響しかねません。
このままでは車庫や備蓄倉庫を増やしたいだけでも、既存部分まで容積率オーバーになるおそれがあります。
次は、この原則にどんな緩和が用意されているのかを見ていきましょう。
古いビルに車庫を増築したら、建物全体が今の容積率の基準に合わせ直しになるんですか。
はい、原則は建物全体が今の基準の対象になります。
次はその例外を見ていきましょう。
増築で緩和を保てるのはどんな部分を作るときか

緩和の対象になる部分は、条文であらかじめ限定されています。
具体的にはエレベーターの昇降路・車庫・備蓄倉庫・蓄電池設置部分・自家発電設備設置部分・貯水槽設置部分・宅配ボックス設置部分です。
これらはいずれも、建築基準法施行令第二条が延べ面積に算入しなくてよいと定める部分と重なっています。
一般の居室や事務室を増やす増築には、この緩和は使えません。
次は、増築前からある部分についての条件を見ていきましょう。
車庫や備蓄倉庫以外の部屋を増やす場合は、この緩和は使えないんですか。
はい、対象は決められた部分だけです。
次は既存部分の条件を確認しましょう。
増築前からある部分の床面積はなぜ増やせないのか

既存部分の床面積が増えてしまうと、緩和の前提が崩れます。
「基準時」とは、その建物が既存不適格として扱われることになった時点を指します。
一般部分を広げながら車庫や備蓄倉庫だけ緩和を使う、という増築の仕方はできません。
増築の設計では、緩和対象の部分と一般部分を区別して床面積を管理する必要があります。
次は、緩和対象の部分そのものにかかる上限を見ていきましょう。
一般の部屋を増やしながら車庫も足す、という増築はできないんですね。
はい、一般部分の床面積は基準時のままに保つ必要があります。
次は車庫等部分の上限を確認しましょう。
増築後の車庫等部分にも上限はかかるのか

増築後の車庫等部分にも、床面積の上限が設けられています。
たとえば車庫等部分は五分の一、備蓄倉庫部分は五十分の一という具合に、区分ごとに上限が決まっています。
増築で車庫や備蓄倉庫を大きく広げすぎると、この上限を超えて緩和の対象から外れてしまいます。
上限の計算は、増築後の建物全体の床面積の合計を基準に行います。
次は、実務でこの緩和をどう使えばよいかを見ていきましょう。
車庫を大きく増築しすぎると、緩和が使えなくなることもあるんですね。
はい、区分ごとの上限を超えないよう計画する必要があります。
次は実務での確認の進め方を見ていきましょう。
実務ではどこを確認して増築を進めればよいのか

基準時の資料が手元にあるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。
基準時の資料が残っていない場合は、確認申請の副本や台帳記載事項証明など既存の記録から床面積を確認します。
車庫等部分の上限を超えそうな計画は、増築の範囲や配置を見直すことで収まる場合があります。
判断に迷う点は、設計者や所轄の特定行政庁に事前相談しておくと手戻りを防げます。
容積率だけでなく、他の基準にも別の緩和や適用除外の仕組みがあることもあわせて確認しておきましょう。
基準時の床面積が分かる資料が残っていないかもしれません。
その場合は確認申請の副本などから確認できることがあります。
気になる場合はまず記録を探してみましょう。
よくある質問
まとめ
うちのビルの基準時の床面積も、一度資料で確認してみます!
増築時の緩和の確認を含むご相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第三条第二項・第三項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法第八十六条の七第一項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第百三十七条の八(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第二条第三項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における緩和の適用可否は、基準時の状況や増築の内容によって異なります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





