屋内消火栓の代わりに設置できるパッケージ型消火設備には、設置場所の条件だけでなく、中に入れる消火薬剤そのものにも細かな基準があります。
使える薬剤の種類、貯蔵量、そして性能の基準は、告示によってひとつずつ数値で定められています。
特に薬剤の凝固点は、寒冷地や屋外に設置する際に見落とされがちなポイントです。
この記事では、パッケージ型消火設備に使う消火薬剤の種類・貯蔵量・性能基準を解説します
倉庫に置いてあるパッケージ型消火設備、中の消火薬剤は何を使ってもいいものなんでしょうか。
いいえ、使える薬剤の種類は告示で決まっていて、貯蔵量や性能まで数値で定められています。
設置場所の温度条件は知っていたんですが、薬剤そのものの基準は考えたことがなかったです。
特に凝固点の基準は見落とされがちです。
順番に見ていきましょう。
- 使える消火薬剤の種類は強化液・機械泡・浸潤剤等入り水の3系統に限られています。
- 貯蔵量は薬剤の種類とⅠ型・Ⅱ型の区分ごとに下限が決まっています。
- 強化液は凝固点が零下20度以下であることが性能基準として定められています。
- 機械泡と浸潤剤等入り水は使用温度の下限値未満の凝固点が求められます。
- 凝固点の基準を外れると、寒冷地や屋外で薬剤が凍結し放射できなくなるおそれがあります。
▼
目次
パッケージ型消火設備の消火薬剤にはどんな種類が使えるのか

まずはどんな薬剤が認められているのかを確認します。
機械泡は第一種と第二種、浸潤剤等入り水は第一種から第三種まで分かれており、あわせて6区分が告示で認められた薬剤の全体像です。
油火災に強い薬剤や環境性能に配慮した薬剤など見た目は多様でも、パッケージ型消火設備に使えるかどうかはこの6区分に当てはまるかで決まります。
次の項目では、薬剤の種類ごとに変わる貯蔵量の基準を見ていきます。
強化液以外にも、いろいろな種類が認められているんですね。
はい、ただし告示が定める6区分の中からしか選べません。
消火薬剤の貯蔵量はⅠ型とⅡ型でどう変わるのか

Ⅰ型は防護できる面積が広い分、貯蔵量の基準も大きくなっています。
条文が定める下限は次のとおりです。
| 消火薬剤の種類 | Ⅰ型 | Ⅱ型 |
|---|---|---|
| 強化液 | 200リットル | 60リットル |
| 第一種機械泡 | 200リットル | 60リットル |
| 第二種機械泡 | 120リットル | 60リットル |
| 第一種浸潤剤等入り水 | 200リットル | 60リットル |
| 第二種浸潤剤等入り水 | 120リットル | 60リットル |
| 第三種浸潤剤等入り水 | 80リットル | 60リットル |
点検の際は、貯蔵量が減っていないかだけでなく、そもそも設置されている薬剤の量が型式にあった基準を満たしているかを確認します。
同じⅠ型でも、薬剤によって貯蔵量が違うんですね。
はい、放射率の違いがそのまま貯蔵量の差になっています。
消火薬剤の性能基準は何を定めているのか

なかでも強化液には、凝固点についての具体的な数値基準があります。
このほかにも、著しい毒性や腐食性を持たないこと、アルカリ性反応を呈すること、結晶の析出や沈殿物が生じないことなど、複数の条件が同時に課されています。
凝固点の基準があるのは、薬剤が凍結すると放射できなくなるためで、性能試験も温度20度の状態で行うことが第八の中で定められています。
凝固点まで数値で決まっているとは思いませんでした。
はい、零下20度以下という具体的な数値が基準です。
機械泡や浸潤剤等入り水の凝固点で見落としやすいのはどこか

ここを混同すると、寒冷地での薬剤選定を誤るおそれがあります。
つまり、その設備をどの温度環境で使う想定かによって、必要な凝固点の水準そのものが変わるということです。
本体に表示された使用温度範囲の下限を確認せずに薬剤だけを見て「凍結しない」と判断すると、実際の設置環境では凝固点の基準を満たしていない場合があります。
寒冷地や屋外倉庫のように冬季に冷え込む場所ほど、薬剤の種類と使用温度範囲の両方を照らし合わせて確認する必要があります。
薬剤の種類だけ見ていても、それだけでは判断できないんですね。
はい、使用温度範囲との組み合わせで判断してください。
明日からなにを確認すればよいのか

手がかりは、本体表示にある消火薬剤の種別です。
まずはこの2つの表示を確認し、設置場所が冬季にどこまで冷え込むかと照らし合わせてください。
点検要領でも、機器点検の消火薬剤等の確認として、性状や貯蔵量が基準を満たしているかを点検資格者が確認します。
設置後に薬剤を詰め替える場合も、同じ種類・同じ性能の薬剤を使っているかを必ず確認しましょう。
まずは本体の表示を確認して、冬場の気温と照らし合わせてみます。
次の点検のときに、あわせて確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
消火薬剤の種別と表示を、もう一度確認してみます!
消火薬剤の点検のご相談もお受けしています。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- パッケージ型消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成16年5月31日消防庁告示第12号)第七・第八・第九
- 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年10月16日消防庁告示第14号)
- 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日消防予第172号)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





