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木質ペレットの火災はなぜ16件も相次いだのか|バイオマス発電施設に求められる自主保安を解説

木質ペレットの火災はなぜ繰り返されたのかを解説する記事のアイキャッチ画像

バイオマス発電の燃料に使う木質ペレットで、平成30年以降16件もの火災が相次ぎました。
最も多いのは粉塵への着火で、次いで木質ペレット自体の自然発火でした。
消防庁は令和6年2月20日、関係事業所に自主保安の徹底を求める通知を出しています。
基準の数値を守るだけでなく、自ら危険性を評価することが新たに求められました

発電施設で木質ペレットを大量に貯蔵しています。
これまでどおりの管理で大丈夫でしょうか。

令和6年に消防庁が新しい通知を出しています。
従来の基準に加えてリスクアセスメントが求められました

火災が16件も起きていたとは知りませんでした。
原因はやはりペレットの性質にあるんでしょうか。

粉塵自然発火の2つが主な原因です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 通知は平成30年以降に発生した16件の火災(粉塵等着火7件・自然発火3件)を踏まえて令和6年2月20日に発出されました
  • 対象はバイオマス発電のため指定可燃物として木質ペレットを貯蔵等する事業所です
  • 粉塵等対策として換気や窒素供給、帯電防止ミストなど火花や粉塵爆発を防ぐ具体策が示されました
  • 自然発火の対策では水分管理・温度監視・集積高さに加えてリスクアセスメントに基づく判断が求められます
  • 10万キログラム以上を貯蔵等する場合は危険要因を把握し文書として定めることが求められました

木質ペレットの自主保安の徹底に向けた事故確認粉塵対策発熱監視文書化の四段階の図解

木質ペレットの貯蔵施設ではなぜ16件も火災が相次いだのか

バイオマス発電施設のサイロとコンベアから粉塵が立ち上る様子
バイオマス発電は木質ペレットを大量に貯蔵して燃料にする発電方式です。
その貯蔵の現場で、火災が繰り返し起きていました。
バイオマス発電のため指定可燃物として木質ペレットを貯蔵等する施設における自主保安の徹底について(令和6年2月20日 消防危第36号) バイオマス発電のため指定可燃物として木質ペレットを貯蔵等する事業所(以下「関係事業所」という。)の火災(平成30年以降)は16件で、そのうち、木質ペレットの粉塵等が着火物となったものが7件で最も多く、次いで、木質ペレットが自然発火したと推定されるものが3件となっています。
火災の原因は大きく2つに分かれます
最も多いのは、コンベアやボイラー等の設備に付着した粉塵が摩擦熱や高温表面熱で着火する事例です。
次に多いのは、大量に積み上げた木質ペレット自体が水分の影響で発熱し、自然発火に至る事例でした。
消防庁は各消防本部への照会や事業所へのヒアリングでこの実態をつかみ、自主保安の強化を通知として発出しています。
バイオマス発電の拡大とともに木質ペレットの貯蔵量そのものが増えており、事故の芽も比例して増えているのが背景です。

粉塵の着火と自然発火、原因がまったく違うんですね。

そのとおりです。
まずどんな施設が対象になるかを確認しましょう。

バイオマス発電のどんな木質ペレットが通知の対象になるのか

木質ペレットの山と数量を確認する計量マークの様子
指定可燃物としての木質ペレットは、量が一定を超えた時点で規制の対象になります。
まず自分の施設がその対象に入るかを確認します。
消防法第9条の4 危険物についてはその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)、指定数量未満の危険物及び指定可燃物(危険物の性状に類する物品で、その貯蔵及び取扱いの技術上の基準を、市町村条例でこれを定めるものとして政令で定めるもの(以下「指定可燃物」という。))の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
数量の基準は木質ペレットの性質によって2とおりに分かれます
火災予防条例(例)別表第8では、木材加工品及び木くずは10立方メートル以上、再生資源燃料は1,000キログラム以上で指定可燃物になります。
木質ペレットはどちらの区分にもなり得るため、リスクアセスメントの結果を踏まえて実際の性質に応じた判断が必要です。
今回の通知が対象とするのは、この中でもバイオマス発電のために木質ペレットを貯蔵等する事業所に絞られています。
発電用に大量のペレットをサイロ等でまとめて貯蔵する施設ほど、対象になる可能性が高くなります。

うちは1,000キログラムを超えたら再生資源燃料になるんですね。

該当するかどうかは自己判断ではなく、
リスクアセスメントに基づいて決めます

粉塵等による火災をどう防ぐよう求められたのか

換気ダクトと窒素ボンベがサイロに接続された荷卸し場の様子
粉塵等による火災は、コンベアや荷卸し場に日常的に発生する現象が引き金でした。
通知は条例の「その他適当な措置」として、具体的な対策を初めて例示しています。
火災予防条例(例)第34条第1項第4号の「その他適当な措置」としては、火災や爆発を生じさせないための措置として、例えば、次が考えられること。 ア 荷卸し場、サイロ内や搬送路における十分な換気を行う措置 イ サイロ内に酸素濃度を下げるための窒素を供給する措置 ウ 静電気の発生を防止するためのミストを散布する措置 エ 金属同士の接触による火災の発生を防止するための異物除去装置を設ける措置
粉塵対策は換気と窒素と静電気と異物、4つの切り口で考えます
荷卸し場やサイロ内、搬送路は粉塵が舞いやすいため十分な換気が基本になります。
サイロ内では窒素の供給で酸素濃度を下げ、着火そのものを起きにくくする方法も挙げられました。
静電気を防ぐミストの散布や、摩擦熱の原因になる金属片を取り除く異物除去装置も具体策として示されています。
どれも条文の「清掃」「廃棄」だけでは足りない、粉塵爆発を意識した対策です。

窒素を入れるなんて、うちの設備では思いつきませんでした。

あくまで例示のひとつです。
自分の設備に合う対策を選べば足ります。

自然発火のリスクはどう自分で判断すればよいのか

温度センサーが刺さった木質ペレットの山とモニター画面の様子
自然発火のリスクは、これまで基準の数値さえ守れば足りると考えられがちでした。
今回の通知はそこに評価という一手間を加えています。
取り扱う木質ペレットの性質に起因する危険要因について、適切にリスクアセスメントを行い、その結果を踏まえ、当該木質ペレットの実際の貯蔵形態等における発熱又は可燃性ガスの発生のおそれの有無に係る取扱いを判断すること。その結果、「廃棄物固形化燃料等」として取り扱わないこととする場合は、発熱又は可燃性ガスの発生のおそれがないことについて、客観的な試験データ等を求めること。
火災予防条例(例)第34条の2 別表第8で定める数量の100倍以上の再生資源燃料(廃棄物固形化燃料等に限る。)(中略)を貯蔵し、又は取り扱う場合は、当該貯蔵し、又は取り扱う場所における火災の危険要因を把握するとともに、(中略)当該危険要因に応じた火災予防上有効な措置を講じなければならない
「該当しない」と判断するにも根拠が要ります
発熱のおそれが無いと判断して基準の対象外にする場合、その裏付けとして客観的な試験データを示すことが求められました。
再生資源燃料の指定数量の100倍、木質ペレットでいえば10万キログラム以上を貯蔵等する場合は、危険要因を把握したうえで、有効な措置の具体的な方法を文書として明確に定めなければなりません。
10万キログラム未満の事業所も対象外というわけではなく、同じくリスクアセスメントを行う必要性が注意喚起されています。
数値基準を満たすかどうかの手前に、自分の施設で何が起こり得るかを評価する作業が加わったということです。

対象外にすれば楽になると思っていました。

対象外にするほど説明の責任が重くなります。
安易な判断は避けてください。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ担当者とパーム椰子殻の袋が並ぶ倉庫の様子
通知の対象は木質ペレットだけにとどまりません。
最後に、今日から着手できる確認事項を整理します。
木質ペレット以外のバイオマス燃料(パーム椰子殻)が自然発火したと推定される事例等が発生していることを踏まえ、バイオマス発電のため木質ペレット以外の指定可燃物を貯蔵等する事業所において、同様の危険要因が考えられる場合は、上記と同様に対応されたいこと。(中略)疑義等が生じた場合は、危険物保安室に相談されたいこと。
確認は大きく4つです。
まず貯蔵している木質ペレットの数量と区分を棚卸しし、指定可燃物に当たるかを確認します。
続いて粉塵対策(換気・窒素供給・ミスト・異物除去)と、自然発火対策(水分・温度・集積高さ)の実施状況を現場で見て回ります。
該当性の判断根拠をリスクアセスメントの記録として残しているかもあわせて確認します。
パーム椰子殻など木質ペレット以外のバイオマス燃料を扱う施設でも、同じ視点での点検が欠かせません。迷ったときは所轄消防または消防庁危険物保安室に相談します。

木質ペレット以外の燃料も同じ考え方で見直せばいいんですね。

はい。
数量・粉塵・発熱・記録の4つを順番に見てください。

よくある質問

Q消防危第36号はいつどこから出された通知ですか?
A令和6年2月20日付けで、消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長等に宛てて発出されました。消防組織法第37条に基づく助言と位置付けられています。
Q木質ペレット以外のバイオマス燃料は対象外ですか?
Aいいえ。通知はパーム椰子殻など木質ペレット以外の指定可燃物でも同様の危険要因が考えられる場合は、同じ対応を求めています。
Qリスクアセスメントは誰が行うのですか?
A通知は貯蔵等をする関係事業所にリスクアセスメントを求め、消防機関がその内容を踏まえて指導する構成になっています。
Q火災予防条例の基準さえ守れば十分ですか?
A通知が示す考え方では不十分です。基準を機械的に満たすだけでなく、自らの施設の性質に応じたリスクアセスメントを行い、結果を文書として明確にすることが求められています。

まとめ

通知は平成30年以降16件の火災(粉塵等着火7件・自然発火3件)を踏まえ令和6年2月20日に発出されました
対象はバイオマス発電のため指定可燃物として木質ペレットを貯蔵等する事業所です
粉塵対策は換気・窒素供給・帯電防止ミスト・異物除去装置が具体策として示されました
自然発火対策の基本は水分管理・温度監視・5メートル以下の集積高さです
「廃棄物固形化燃料等」への該当性の判断はリスクアセスメントに基づいて行います
10万キログラム以上の大量貯蔵は危険要因を把握し文書として定める義務があります
木質ペレット以外のバイオマス燃料にも同様の対応が求められます

数量・粉塵・発熱・記録の4つを見ればいいと分かりました
すっきりしました。

リスクアセスメントの記録は、毎年見直してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • バイオマス発電のため指定可燃物として木質ペレットを貯蔵等する施設における自主保安の徹底について(令和6年2月20日 消防危第36号 消防庁危険物保安室長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の4
  • 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第34条第1項・第34条の2・別表第8

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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