泡消火設備の点検では、実際に泡を放射することがあります。
その泡消火薬剤にPFOSが含まれていた場合、点検のやり方そのものが変わります。
環境へ放出しないための例外規定が点検基準に加わり、放出してしまった場合の回収・保管の手順まで示されました。
泡消火設備の点検でPFOSを扱うときに何をすればよいかを、平成22年消防予第442号の通知にそって解説します。
うちの泡消火設備、古いタイプなので薬剤にPFOSが入っているかもしれません。
点検のときに何か特別な対応が必要なんでしょうか。
PFOS入りの薬剤を使っている設備は、点検基準そのものに例外規定が加わっているんです。
消火器の薬剤も同じ扱いになるんですか。
はい、消火器も対象です。
順番に確認していきましょう。
- PFOS含有泡消火薬剤を使う泡消火設備は、消火薬剤の機能を維持する措置があれば泡放射によらない点検が認められます
- 泡放射によらない点検をした場合は、点検票の備考欄に薬剤の型式番号等を記載し資料を添付します
- 点検でPFOS入りの薬剤を放出したら、回収してふき取り、密閉できる容器に保管する必要があります
- この回収義務は泡消火設備だけでなく、消火器の放射能力点検にも同じように適用されます
- 薬剤の在庫が無くなったら同じ型式で補充できない場合があり、異なる型式へ補充するときは別の通知による扱いが必要です
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目次
泡消火設備の点検基準はなぜPFOSの例外規定が加わったのか

その規制が、消防庁の点検基準にも影響を及ぼしました。
平成22年、PFOSを含む物質が化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)で規制対象に指定され、消火器・泡消火薬剤の製造や輸入が原則禁止されました。
これを受けて、点検のときにPFOS入りの薬剤が環境へ放出されないよう、点検事業者に回収等が義務付けられることになりました。
そのため、昭和50年消防庁告示第14号の点検基準そのものが一部改正され、留意事項も同時に示されたのです。
なお、この通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されたものです。
PFOSって聞いたことはありますが、まさか泡消火薬剤にも関係あるとは思っていませんでした。
平成22年の規制がきっかけで、点検のやり方そのものが変わったんですよ。
PFOSを含む泡消火薬剤と消火器はどこまでが対象になるのか

どの設備のどの点検項目が関係するのかを確認しましょう。
泡消火設備では、泡放射による点検、加圧送水装置・流水検知装置及び圧力検知装置・一斉開放弁に係る点検、移動式の泡消火設備の点検など、薬剤が実際に放射される点検項目が対象になります。
見落とされがちですが、消火器の放射能力点検も同じ扱いです。PFOS含有の消火器用消火薬剤を使う消火器で放射能力の点検を行う場合も、回収と保管の義務がかかります。
つまり大きな設備だけの話ではなく、建物に置いてある消火器一本一本にも関係してくるということです。
自分の建物のどの設備・どの消火器がPFOS含有薬剤を使っているかは、設置時の届出書類か点検業者への確認でわかります。
消火器まで対象になるとは思っていませんでした。
うちの消火器、古いものが多いので気になります。
設置年が古いものほどPFOS含有の可能性があります。
次の点検のときに点検業者へ確認してもらいましょう。
点検でPFOS入りの薬剤を放出したらどう対応するのか

書類の記載と、現場での回収作業の両方を見ていきます。
機能維持の措置があるために泡放射をせずに点検した場合は、点検票の備考欄に薬剤の型式番号などを記載し、措置が講じられていることを確認できる資料を添付します。
一方、実際に泡を放射して薬剤が出てしまった場合は、その場で終わりにはできません。放出した薬剤を回収し、ふき取った布などとあわせて密閉できる容器に入れて保管することが求められています。
これは化審法省令第8条に基づく義務なので、点検業者に任せきりにせず、回収・保管がきちんと行われたかを建物側でも確認しておくと安心です。
維持台帳に、いつ・どの点検でPFOS含有薬剤を扱ったかを記録しておくと、次回の点検がスムーズになります。
放出した薬剤って、そのまま流してしまいそうな気がします。
絶対に流さないでください。
密閉容器での保管まで、点検業者と一緒に確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

「同じ型式で補充すればいい」という思い込みが落とし穴です。
PFOS含有泡消火薬剤は、すでに製造・輸入が禁止されています。在庫が尽きたあとに点検や火災で薬剤が減っても、同じ型式のものをそのまま買い足せない可能性があるということです。
異なる型式の薬剤を補充する場合の扱いは、この通知ではなく別の通知(平成22年消防予第416号)に定められています。自己判断で混ぜてよいわけではありません。
また、日本消火装置工業会や日本消火器工業会といった業界団体も、この規制を受けた対応を進めています。薬剤メーカーや点検業者に相談すれば、どの型式が使えるかを確認できます。
「型式が同じかどうか」を確認する一手間を省くと、後から補充自体ができなくなる事態につながります。
うちの設備、薬剤が減ってきたら適当に似たものを買って入れようと思っていました。
それは危険です。
補充する前に必ず点検業者へ相談してください。
明日からなにを確認すればよいのか

まず何から手を付ければよいのかを整理します。
設置時の届出書類や点検報告書を見れば、使っている泡消火薬剤・消火器用消火薬剤の型式がわかります。わからなければ点検業者に確認を依頼しましょう。
次の点検の前に、泡放射を伴う点検になるのか、機能維持の措置による省略ができるのかを業者と打ち合わせておくと、当日の対応がスムーズです。
放出時に使う密閉できる容器や布を用意しておくことも忘れないでください。
長い目で見れば、PFOSを含まない薬剤への切替えを検討することが、環境への負荷も点検の手間も減らす近道になります。
つまり、まずは薬剤の型式を確認するところから始めればいいんですね。
そのとおりです。
次の点検の予定を組むときに、点検業者へ一言添えてみてください。
よくある質問
まとめ
PFOSが入っているかどうかを確認するところから始めればいいんですね。
スッキリしました!
型式の確認と回収・保管の手順を押さえておけば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- PFOS含有泡消火薬剤を使用する泡消火設備の点検基準の改正及び点検上の留意事項等について(平成22年9月30日付け消防予第442号)
- PFOSを含有する泡消火薬剤の混合使用について(平成22年9月15日付け消防予第416号)
- 泡消火設備における泡消火薬剤の混合使用について(平成13年11月16日付け消防予第398号)
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律及び同法施行令
- 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





