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連結送水管の放水口はなぜ建物の種類で間隔が変わるのか|水平距離の基準となる4つの区分を解説

高層建築物の階段室の壁に赤い連結送水管の放水口が設置されている写真

連結送水管は、建物の外にある送水口から消防隊がポンプ車で水を送り込み、各階の放水口までホースをつなぐための設備です。
放水口はどこにでも自由な間隔で設置できるわけではなく、消防法施行令は放水口ごとにカバーできる範囲の上限を水平距離で定めています。
高層建築物・地下街・アーケード・道路の部分では、この上限の数値が同じではありません。
建物の種類によって基準がどう変わるのかを、条文にもとづいて解説します。

うちのビル、階によって放水口の数がちがうんですが、これって統一しなくていいんでしょうか。

実は消防法施行令第29条第2項第1号が、水平距離の基準を建物の種類ごとに分けているんです。

うちは高層ビルなので、その基準に当てはまるということですね。

はい、ただし地下街やアーケードとは数字が違います。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 放水口は防火対象物の種類ごとに水平距離の上限が決められています(消防法施行令第29条第2項第1号
  • 高層建築物の三階以上の階は水平距離50メートル以下です
  • 地下街(別表第一(十六の2)項)も50メートル以下です
  • アーケードと道路の用に供される部分は25メートル以下です
  • 距離の基準に加え、消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設ける必要があります

連結送水管の放水口の水平距離基準は高層建築物と地下街とアーケードと道路の部分で異なることを示した図解

連結送水管の放水口はなぜ間隔まで決められているのか

建物の外壁に沿って複数の階に放水口が均等な間隔で並び物差しで間隔を測っているイメージ
連結送水管は、地上の送水口から送り込んだ水を建物内の配管を通じて各階の放水口まで届ける設備です。
放水口の数が足りなかったり配置が偏っていたりすると、消防隊のホースが届かない範囲が生まれてしまいます。
消防法施行令第29条第2項第1号 放水口は、次に掲げる防火対象物又はその階若しくはその部分ごとに、当該防火対象物又はその階若しくはその部分のいずれの場所からも一の放水口までの水平距離がそれぞれに定める距離以下となるように、かつ、階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所で消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること。
放水口はどこからでも一定の距離以内に届くように配置しなければなりません
条文が定めているのは水平距離の上限で、この距離を超える場所があると基準を満たしません。
上限の数値は防火対象物の種類ごとにイからニまでの4区分で定められています。
まずは自分の建物がどの区分に当たるのかを確認することから始まります。
次は、この区分ごとの数値を見ていきます。

うちは何階建てだから、この区分に入るのかいまいちわかりません。

建物の高さと延べ面積、用途で区分が決まります。
次で4つの区分を確認しましょう。

放水口の水平距離は建物の種類でどう変わるのか

高層建築物と地下街とアーケードと道路の部分の4つの建物タイプが並んでいるイメージ
水平距離の上限は、消防法施行令第29条第1項の各号に対応する形でイからニまでの4区分に分かれています。
同じ連結送水管でも、建物の種類が変われば基準の数値も変わります。
消防法施行令第29条第2項第1号 イ 前項第一号及び第二号に掲げる建築物の三階以上の階 五十メートル ロ 前項第三号に掲げる防火対象物の地階 五十メートル ハ 前項第四号に掲げる防火対象物 二十五メートル ニ 前項第五号に掲げる防火対象物の道路の用に供される部分 二十五メートル
水平距離の上限は建物の高さや用途によって50メートルまたは25メートルに分かれます
地階を除く階数が七以上・五以上の高層建築物の三階以上の階と、延べ面積千平方メートル以上の地下街は50メートル以下です。
一方、アーケード道路の用に供される部分は25メートル以下と、半分の距離に抑えられています。
どちらの区分に当たるかは、消防法施行令第29条第1項各号のどれに該当する防火対象物かで決まります。
次は、水平距離とあわせて条文が求めているもう一つの条件を確認します。

うちのビル、高層階の基準はわかりましたが、地下の駐車場部分も対象になるんでしょうか。

この区分の地下街は別表第一(十六の2)項という独立した用途です。
一般的な地下駐車場とは別に確認してください。

消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置とはどこか

階段室と非常用エレベーター乗降ロビーの脇の壁に放水口が設置されているイメージ
条文が定めているのは水平距離の数値だけではありません。
放水口をどこに取り付けるかについても、具体的な場所が挙げられています。
消防法施行令第29条第2項第1号 (略)かつ、階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所で消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること
放水口は階段室や非常用エレベーターの乗降ロビーなど消防隊が活動しやすい位置に設けます
条文が挙げているのは階段室非常用エレベーターの乗降ロビーで、「その他これらに類する場所」も対象に含まれます。
物置や什器の裏など、消防隊がすぐに使えない場所に設けても基準を満たしたことにはなりません。
水平距離の数値を満たしていても、設置場所の条件を欠けば基準を満たしたことになりません。
次は、この水平距離という言葉自体を読み違えやすい点を確認します。

距離さえ合っていれば、廊下の隅でもどこでもいいのかと思っていました。

距離と設置場所の条件は別々に満たす必要があります。
両方をあわせて確認してください。

水平距離と歩行距離を混同していないか

廊下を曲がりくねって進む点線の経路とその両端を直線で結んだ物差しの対比イメージ
「水平距離」という言葉は、避難関係の基準でよく使われる「歩行距離」と混同されやすい表現です。
どちらも距離を表す言葉ですが、測り方の考え方が異なります。
消防法施行令第29条第2項第1号 (略)当該防火対象物又はその階若しくはその部分のいずれの場所からも一の放水口までの水平距離がそれぞれに定める距離以下となるように(略)。
条文が定めているのは歩行距離ではなく水平距離です
歩行距離は廊下や階段に沿って実際に歩く経路の長さを指すのに対し、水平距離は2点を結んだ直線の長さを指します。
避難口誘導灯の有効範囲などは歩行距離で測りますが、連結送水管の放水口は水平距離で測る点が異なります。
図面上で廊下の経路をなぞった長さをそのまま基準の数値と比べると、実際より長く見積もってしまうことがあります。
次は、ここまでの内容を踏まえて確認すべき手順を整理します。

廊下の曲がり角のぶんも足して距離を測っていました。
それだと違うんですね。

はい、直線距離で測り直す必要があります。
次で確認の手順を見ましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと巻尺と図面で放水口の位置を確認しているイメージ
ここまでの条件を踏まえると、確認すべき順番が見えてきます。
最後に、そもそもの設置義務がどこから来ているかもおさえておきましょう。
消防法第17条第1項 (略)関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない
まず自分の建物が令第29条第1項のどの号に当たるかを確認してください
次に、図面上で各放水口から水平距離を直線で測り、離れすぎている場所が無いかを確かめます。
放水口が階段室や非常用エレベーターの乗降ロビーなど消防隊が活動しやすい位置にあるかもあわせて見ます。
判断に迷う場合は自己判断で放水口の増設や移設を進めず、所轄消防署に確認してから対応してください。

うちの図面を見直して、まず放水口までの直線距離を測ってみます。

区分の見極めと直線距離の実測がポイントです。
不明な点は所轄消防署にも確認してください。

よくある質問

Q水平距離は廊下を歩いた距離と同じ意味ですか?
Aいいえ。水平距離は2点を結んだ直線の長さを指すもので、廊下や階段に沿って実際に歩く経路の長さである歩行距離とは測り方が異なります。
Q地下街とアーケードで基準の距離が違うのはなぜですか?
A消防法施行令第29条第2項第1号は、防火対象物の区分ごとに異なる距離を定めています。地下街は50メートル以下、アーケードと道路の用に供される部分は25メートル以下です。区分ごとに数値が分かれている理由までは条文に書かれていません。
Q消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置とは具体的にどこを指しますか?
A条文は階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所を挙げています。物置の裏など消防隊がすぐに使えない場所は該当しません。
Q水平距離の基準さえ満たしていれば設置場所はどこでもよいですか?
Aいいえ。水平距離の基準と、消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置という条件は別々に満たす必要があります。両方をあわせて確認してください。

まとめ

施行令第29条第2項第1号が連結送水管の放水口の水平距離基準を定めています
高層建築物の三階以上の階と地下街は水平距離50メートル以下です
アーケードと道路の用に供される部分は水平距離25メートル以下です
放水口は階段室や非常用エレベーターの乗降ロビーなど消防隊が活動しやすい位置に設けます
水平距離は直線の長さを指し、歩行距離とは測り方が異なります
距離の基準と設置場所の条件は別々に満たす必要があります
消防法第17条第1項により設置した設備を維持する義務も続きます

水平距離と設置場所、両方を確認すればいいことが分かりました。
まずうちの建物の区分から確認してみます。

区分と距離を取り違えると点検で指摘されます
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第17条
  • 消防法施行令第29条
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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