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製造所の空地はなぜ必要なのか|隔壁や散水設備で幅を減らせる条件を解説

耐火構造の塀のそばを担当者が図面を持って歩いている工場の外観イメージ

製造所や一般取扱所では、危険物を取り扱う建築物のまわりに一定の幅の空地を確保することが義務付けられています。
ところが実際の敷地では、隣の建物との間隔を十分に取れないことも少なくありません。
そんなときのために、条文には空地の幅を減らしたり、まったく保有しなくてよくなったりする特例が用意されています。
この記事では、製造所の空地の基本ルールと、幅を減らせる条件・保有しなくてよい条件を条文に沿って解説します

敷地が狭くて、決められた幅の空地を確保できないときはどうすればいいんでしょうか。

条文に定められた特例を使えば、幅を減らしたり保有しなくてよくなったりする場合があります。
まずは空地の基本ルールから確認していきましょう。

特例を使えば、空地はまったく無くしてもいいということですか。

いいえ、消防活動のための空地だけは必ず残さなければなりません
順番に条文を見ていきましょう。

この記事の結論
  • 製造所は、危険物を取り扱う建築物等の周囲に指定数量の倍数に応じた幅の空地を保有することが原則です
  • 空地の幅は指定数量の倍数が十以下なら3メートル以上十を超えると5メートル以上です
  • 耐火構造の塀と冷却用の散水設備等、出入口周辺の消防活動用空地を整えれば、告示の要件の範囲内で幅を減らせます
  • 作業工程が連続していて空地の確保が作業に著しく支障を生じる場合は、小屋裏に達する防火上有効な隔壁を設けることで空地を保有しないことができます
  • どの特例を使っても、出入口周辺の消防活動のための空地だけは必ず確保しなければなりません

製造所の空地の基本と幅を減らせる特例を示す図解

製造所の空地はなぜ必要なのか

製造所の建築物のまわりに空地を保有し隣の建物と間隔を空けているイメージ
製造所では危険物を取り扱う建築物のまわりに、決められた幅の空地を確保することが求められています。
まずはその基本となる条文を確認します。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第二号(製造所の基準)
危険物を取り扱う建築物その他の工作物(危険物を移送するための配管その他これに準ずる工作物を除く。)の周囲に、次の表に掲げる区分に応じそれぞれ同表に定める幅の空地を保有すること。ただし、隔壁の設置その他の防火上有効な措置として総務省令で定める措置を講じたときは、総務省令で定めるところにより、その空地の幅を減じ、又はその空地を保有しないことができる
この空地は、火災が起きたときに隣接する建物や設備へ燃え移らせないための緩衝地帯です
政令が定める幅は危険物の量に応じて分かれており、指定数量の倍数が十以下なら3メートル以上十を超えると5メートル以上の空地が必要です。
対象になるのは危険物を取り扱う建築物その他の工作物で、危険物を移送する配管そのものはこの空地の対象から除かれます
条文にはただし書があり、隔壁の設置など一定の措置を講じれば空地の幅を減らしたり、保有しなくてよくなったりする場合があります。
このただし書を具体的に定めているのが規則第十三条で、次から順番に見ていきます。

指定数量が同じでも、空地の幅が変わることってあるんですか。

指定数量の倍数が十を超えるかどうかで幅が変わります。
次は幅を減らせる条件を見てみましょう。

空地の幅はどうやって減らせるのか

建物の外壁に耐火構造の塀と散水設備を設けて空地の幅を減らすイメージ
空地を確保できない事情がある事業所のために、幅を減らすための条件が規則で定められています。
まずは条文を確認します。
危険物の規制に関する規則第十三条第一項第二号・第二項(製造所及び一般取扱所の空地の特例)
イ 危険物を取り扱う建築物等の周囲で(略)空地を保有することができない部分に、耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置を講ずるとともに、延焼防止上有効に冷却するための散水設備等を設けること。
ロ 危険物を取り扱う建築物等の主要な出入口の周辺に、消防活動のための空地を保有すること。
2 前項第二号に規定する措置を講じた場合には、告示で定める要件を満たす範囲内において、(略)空地の幅を減ずることができる。
空地の幅を減らすには、塀と散水設備、出入口の空地という組み合わせを整える必要があります
まず建物の外壁側には耐火構造の塀を設けたうえで、延焼を防ぐために冷却用の散水設備等を備えます。
それだけでなく、消防隊が活動できるよう主要な出入口の周辺には別途消防活動用の空地を確保しなければならず、塀と散水設備だけでは要件を満たしません。
これらの措置を講じても、幅を減らせる範囲は自由ではなく、告示が定める要件を満たす範囲内に限られます。
つまりこの特例は「幅を狭くできる」措置であって、次に説明する「空地そのものをなくせる」措置とは別の話です。

塀と散水設備さえあれば、出入口の空地は無くてもいいんですよね。

いいえ、出入口の空地は塀や散水設備とは別に必要です。
次は空地をまったく無くせる場合を見てみましょう。

どんな場合に空地を全く保有しなくてよいのか

隣り合う二つの建物の間を小屋裏まで達する隔壁でつないでいるイメージ
幅を減らすだけでなく、空地をまったく保有しなくてよい場合も条文に定められています。
その条件を確認します。
危険物の規制に関する規則第十三条第一項第一号・第三項第一号(製造所及び一般取扱所の空地の特例)
一 製造所又は一般取扱所と、当該製造所又は一般取扱所の作業工程と連続する他の作業工程の存する場所との間に小屋裏に達する防火上有効な隔壁を設けること。
一 製造所又は一般取扱所の作業工程が他の作業工程と連続しているため危険物を取り扱う建築物等の周囲に(略)空地を保有することにより当該製造所又は一般取扱所の当該作業に著しく支障を生ずるおそれがある場合において、第一項第一号に規定する措置を講じたとき(略)空地を保有しないことができる。
空地を保有しなくてよいのは、作業工程が連続していて空地の確保が作業の支障になる場合に限られます
条文が求める措置は小屋裏まで達する防火上有効な隔壁で、途中までしかない壁や間仕切り程度では足りません。
さらに空地を確保すると作業に著しく支障を生ずるおそれがある場合という条件も同時に満たす必要があり、隔壁さえ設ければ自動的に空地が不要になるわけではありません。
なお規則第十三条第三項には、耐火構造の塀と散水設備等の措置を講じ、告示の要件を満たす場合にも空地を保有しなくてよいとする、もう一つの経路も定められています。
どちらの経路を選ぶにせよ、要件を満たしているかどうかは所轄消防署の確認を受けて判断します。

隔壁さえ作れば、うちも空地を無くせるかもしれません。

作業工程が連続しているかどうかも条件になります。
次は特例を使うときの落とし穴を見ていきましょう。

空地の特例で見落としやすいのはどこか

出入口前の空地を確保している建物と物を置いて塞いでいる建物を比較したイメージ
空地の特例を使うときに見落としやすい点を整理します。
特に出入口まわりの扱いに注意が必要です。
危険物の規制に関する規則第十三条第一項第二号ロ(製造所及び一般取扱所の空地の特例)
ロ 危険物を取り扱う建築物等の主要な出入口(出入口がない場合には、当該建築物等の消防活動のために必要な道路等に面する部分)の周辺に、消防活動のための空地を保有すること。
空地の幅を減らしたり保有しないことにしたりしても、出入口周辺の消防活動用の空地だけは特例の対象外です
出入口前に物を置いて塞いでしまうと、たとえ塀と散水設備を整えていても要件を満たさなくなります
また、幅を減らす場合も保有しない場合も、条文が求めているのは告示で定める具体的な要件を満たしていることであり、自己判断で「塀と散水設備があるから大丈夫」と扱うのは早計です。
出入口がない建築物等の場合は、消防活動に必要な道路等に面する部分に読み替えて空地を確保する点も見落としやすいところです。
図面上で空地を減らす計画を立てるときは、この出入口まわりの空地を最初に確保してから、残りの部分の措置を検討する順序が安全です。

出入口前は在庫置き場にしていますが、大丈夫でしょうか。

出入口前を塞ぐ配置は要件を満たしません
最後に日々の確認手順をまとめます。

明日から製造所の空地の何を確認すればよいのか

担当者が図面を広げて建物のまわりの空地を確認しているイメージ
ここまでの基準を、実際の確認作業にどう落とし込めばよいか整理します。
順番に見ていきましょう。 まず自社の図面で、危険物を取り扱う建築物等の周囲にどれだけ空地が取れているかを確認してください
指定数量の倍数が十以下なら3メートル、十を超えるなら5メートルが原則の幅なので、まずこの数値と現況を照らし合わせます。
不足している場合は、耐火構造の塀と散水設備等による幅の減少か、小屋裏に達する隔壁による空地の不保有のどちらの経路が使えるかを検討します。
どちらの経路でも出入口周辺の消防活動用の空地は残さなければならないので、先に出入口まわりの配置を固めてから空地の計画を立てます。
告示が定める具体的な要件は事業所ごとに確認が必要なので、特例を使う計画を立てる段階で所轄消防署に相談しておくと手戻りがありません。

うちの図面で、まず空地の幅を測ってみます。

出入口まわりの配置も忘れずに確認してください。
これで確認の流れが一通り整いました。

よくある質問

Q製造所の空地は指定数量が少なければ不要になりますか?
Aいいえ。危険物の規制に関する政令第九条第一項第二号により、指定数量の倍数が十以下でも3メートル以上の空地を保有することが原則です。倍数が十を超えるとさらに広い幅が必要になります。
Q空地の幅を減らすにはどうすればよいですか?
A危険物の規制に関する規則第十三条第一項第二号が定める耐火構造の塀と冷却用の散水設備等を設け、出入口周辺に消防活動用の空地を確保すれば、告示の要件を満たす範囲内で幅を減らせます。
Q空地をまったく保有しなくてよい場合はありますか?
Aあります。作業工程が連続していて空地の確保が作業に著しく支障を生じる場合に、小屋裏に達する防火上有効な隔壁を設けたときなど、規則第十三条が定める条件を満たせば空地を保有しないことができます。
Q空地の特例を使えば出入口前に物を置いても構いませんか?
Aいいえ。出入口周辺の消防活動のための空地は、特例を使う場合でも必ず確保しなければならない要件です。物を置いて塞ぐと特例の要件を満たさなくなります。

まとめ

製造所は、危険物を取り扱う建築物等の周囲に空地を保有することが原則です
空地の幅は指定数量の倍数が十以下なら3メートル以上十を超えると5メートル以上です
耐火構造の塀と冷却用の散水設備等、出入口周辺の消防活動用空地の3つがそろって初めて幅を減らせます
幅を減らせる範囲は告示が定める要件の範囲内に限られます
空地を全く保有しなくてよいのは、作業工程の連続で著しく支障が生じる場合に小屋裏に達する隔壁を設けたときなどです
出入口周辺の消防活動用空地は、どの特例を使っても必ず確保しなければなりません
特例を使うかどうかにかかわらず、要件を満たしているかは所轄消防署に確認するのが安全です

分かりました、図面での空地の確認と出入口まわりの配置を見直してみます!

空地の特例は要件が細かいので、迷ったら早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第九条第一項第二号
  • 危険物の規制に関する規則第十三条(製造所及び一般取扱所の空地の特例)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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