防火管理者を選んでいない建物と、防火管理者はいるのに仕事をしていない建物。
どちらも消防法違反ですが、実は罰則の重さが違います。
消防法第8条には、消防長・消防署長が出せる2種類の命令が定められていて、それぞれに別の罰則が対応しています。
なぜ罰則の重さが違うのか、条文から読み解いていきましょう。
防火管理者は選任してるんですけど、訓練とかはサボり気味です…。
それ、実は選任していない場合より罰則が重くなります。
え、選んでるだけマシだと思ってました。
条文の作り自体がそうなっています。順番に見ましょう。
- 防火管理者が未選任のときの命令は消防法第8条第3項の「選任命令」です
- 選任済みでも業務が行われていないときの命令は消防法第8条第4項の「業務適正執行命令」です
- 業務適正執行命令違反のほうが選任命令違反より罰則が重く設計されています
- この命令の仕組みは第36条の準用により防災管理者にも適用されます
- 「選んでさえいればよい」という理解は条文の設計と逆になっています
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目次
防火管理者を選任していないと消防長はどう対応するのか

条文にはっきりと命令の根拠が書かれています。
学校・病院・工場・百貨店・複合用途防火対象物など、消防法第8条第1項が定める建物の管理権原者(所有者・管理者・占有者)は、そもそも防火管理者を定める義務を負っています。それが果たされていないと消防機関が判断したときに出されるのが、この選任命令です。
命令はいきなり罰則につながるわけではありませんが、これに従わなければ次に見る罰則の対象になります。
まずは「選任義務そのものを果たしていない」段階の話だと押さえてください。
ここまではよく聞く話ですね。
選任した後にも別の命令があります。
防火管理者は選任済みでも命令を受けることがあるのか

条文は選任した後の状態についても命令の根拠を用意しています。
第8条第1項が防火管理者に求めている業務は、消防計画の作成、消火・通報・避難訓練の実施、設備の点検整備、火気の監督、収容人員の管理など多岐にわたります。
選任はしているのに、これらの業務が法令や消防計画のとおりに行われていないと消防機関が判断すれば、この命令の対象になります。避難訓練をやっていない、消防計画が形だけになっている、といった状態が典型例です。
「選任済みだから大丈夫」ではなく、選任後の実態が問われる命令だと理解してください。
選んでるだけじゃ終わらないんですね。
罰則の重さを比べてみましょう。
選任命令と業務適正執行命令で罰則の重さが違うのはなぜか

選任命令(第3項)違反は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金ですが、業務適正執行命令(第4項)違反は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金と、期間・金額とも2倍近くに設定されています。
これは「防火管理者を選んでさえいれば罰則が軽くなる」という考え方とは逆の設計です。むしろ、選任した以上は業務を実質的に機能させる責任のほうが重く問われる、という条文の姿勢が読み取れます。
「名前だけ選任しておけばよい」という発想は、罰則の重さの面でも根拠がないということです。
金額も期間もほぼ倍なんですね。
適用範囲の広さも見てみましょう。
この命令の仕組みは防火管理者以外にも適用されるのか

第8条第3項の選任命令、第4項の業務適正執行命令のどちらも、条文の言葉を防火管理者から防災管理者へ置き換えるだけで、同じ仕組みが働きます。
つまり地震などの災害に備える防災管理者を置いている建物でも、選任していない場合と業務が機能していない場合とで、同じように罰則の重さが変わる構造になっているということです。
防災管理者を選任している建物の管理権原者も、この条文の作りを他人事と思わないでください。
名前だけ選んでおけばいい、は逆に危ないんですね。
はい。この仕組みは防災管理者にも及びます。
選んでいるだけでは足りないとどう向き合えばよいのか

第8条第1項が列挙する業務(消防計画の作成・訓練・点検整備・火気監督・収容人員管理など)が実際に継続して行われているかを、管理権原者自身が把握しておく必要があります。
「防火管理者を選んだ」という事実だけを残して業務が形骸化していれば、それは第4項の対象になり得ます。
選任時だけでなく、日常的に業務が回っているかを確認する体制を、選任と同時に考えておいてください。
選んだあとの中身のほうが大事なんですね。
業務が回っているかを確認してください。
よくある質問
まとめ
うちの防火管理者、もう一度業務の中身を確認してみます。
訓練も今年はちゃんとやろうと思います。
それが一番大事です。
選任して終わりにしないでください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条、第36条第1項、第41条第1項第2号、第42条第1項第1号(e-Gov法令検索、令和7年6月1日施行版)
- 逐条解説消防法(第2章火災の予防・第8条の解説を地図として使用し、条文は上記の現行テキストで確認)
※本記事は消防法の現行条文に基づく一般的な解説です。実際の運用や個別の判断については、所轄消防署にご確認ください。





