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停電してもスプリンクラー設備は水を出せるのか|非常電源の種類と操作回路の配線に求められる耐熱性を解説

停電してもスプリンクラーは水を出せるのか

スプリンクラー設備の加圧送水装置は電気で動いています
ですから停電したままでは、ヘッドが開いても水は上がってきません
そこで消防法施行規則は非常電源操作回路の配線の二つを求めています
ところがその中身はスプリンクラー設備の条には書かれておらず、屋内消火栓設備の規定を読み替えて適用することとされています

点検のときに発電機を回していましたが、スプリンクラーと関係があるのでしょうか。

大いにあります。
停電しても加圧送水装置が止まらないようにするのが非常電源です。

規則を開いてみたのですが、電源の細かい基準が見当たりませんでした。

スプリンクラー設備の条には一行ずつしか置かれていません。
中身は屋内消火栓設備の条を読み替えて使う形になっています。

この記事の結論
  • スプリンクラー設備の非常電源と操作回路の配線は規則第14条第1項第六号の二と第九号にあります
  • どちらの号も中身を書かず、屋内消火栓設備の第12条第1項第四号第五号を引いています。
  • 非常電源は受電設備と自家発電設備と蓄電池設備と燃料電池設備の四つです
  • 特定防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のものは受電設備を選べません。
  • 配線は非常電源のものと操作回路のもので求められる守り方が違います

停電のときスプリンクラー設備を動かす非常電源の種類と時間と切替と配線を示した図解

停電したときスプリンクラー設備はどうなるのか

ポンプと電動機が基礎の上に据えられ立管が天井のヘッドへ伸び横に制御盤が並んでいる図
ヘッドが開けば水が出るように見えますが、その水を押し上げているのはポンプです。
ポンプを回す電気が止まれば、設備は形だけ残って働きません。
消防法施行規則第14条第1項(抜粋) 六の二 非常電源は、第十二条第一項第四号の規定の例により設けること。 九 操作回路の配線は、第十二条第一項第五号の規定に準じて設けること。
電源と配線はどちらも一行だけで済まされています
どちらの号にも具体的な基準は書かれておらず、屋内消火栓設備を定めた第12条第1項のほうを見に行くことになります。
借り方の言い方も号ごとに違い、第六号の二は規定の例により、第九号は規定に準じてと書き分けられています。
さらに第九号は、借りてくる第五号のうち操作回路の配線だけを引いており、同じ号に並んでいる灯火の回路の配線は引いていません。
点検結果報告書で電源や配線の欄を見るときは、根拠がスプリンクラーの条ではなく屋内消火栓の条にあると分かっていれば、業者の説明を追いかけやすくなります。

条文を行き来しないと読めないのですね。

消防用設備の規則はこの書き方がとても多いです。
飛び先の号を控えておくと次から早く読めます。

非常電源にはどんな種類が認められているのか

閉じた金属の箱とエンジン発電機と電池を並べた棚と密閉された装置が一列に並んでいる図
飛び先の第12条第1項第四号は、まず選べる電源の顔ぶれを並べています。
そのうえで、建物によっては顔ぶれが減る仕組みを括弧の中に入れています。
消防法施行規則第12条第1項第四号(抜粋) 四 屋内消火栓設備の非常電源は、非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備(法第十七条の二の五第二項第四号に規定する特定防火対象物(以下「特定防火対象物」という。)で、延べ面積が千平方メートル以上のもの(第十三条第一項第二号に規定する小規模特定用途複合防火対象物を除く。)にあつては、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備)によるものとし、次のイからホまでに定めるところによること。
選べるのは四つですが建物によっては三つに減ります
括弧の外に並んでいるのが原則の四つで、そこから非常電源専用受電設備だけが落ちる場合が括弧の中に書かれています。
落ちる条件は、特定防火対象物であることと、延べ面積が1,000平方メートル以上であることの二つがそろうときです。
ただし同じ面積でも小規模特定用途複合防火対象物に当たるものは、この括弧から除かれています。
自分の建物が飲食店や物品販売店舗や旅館などを含む特定防火対象物で、延べ面積がこの線を超えているなら、非常電源が発電機か蓄電池か燃料電池のどれかになっているはずなので、点検結果報告書の電源の欄で種別を確かめてください。

受電設備が使えなくなる建物があるということですね。

用途と延べ面積の二つで決まります。
増築や用途変更で線を越えることがあるので気をつけてください。

非常電源はどれだけの時間もたせることになっているのか

エンジン発電機と砂の落ちる砂時計と回転式の取っ手が付いた盤が並んでいる図
非常電源は停電のあいだずっと動かし続けるためのものではありません。
消火に必要な時間だけもたせる、という考え方で容量が決められています。
消防法施行規則第12条第1項第四号ロ・ハ(抜粋) ロ 自家発電設備は、イ((ホ)及び(ト)を除く。)の規定の例によるほか、次の(イ)から(ニ)までに定めるところによること。 (イ)容量は、屋内消火栓設備を有効に三十分間以上作動できるものであること。 (ロ)常用電源が停電したときは、自動的に常用電源から非常電源に切り替えられるものであること。 ハ 蓄電池設備は、イ((ホ)及び(ト)を除く。)及びロ(イ)の規定の例によるほか、次の(イ)から(ニ)までに定めるところによること。 (ロ)直交変換装置を有しない蓄電池設備にあつては、常用電源が停電した後、常用電源が復旧したときは、自動的に非常電源から常用電源に切り替えられるものであること。
もたせるのは三十分間以上です
この30分という数字はロ(イ)に書かれたものですが、蓄電池設備はハでロ(イ)の例によるとされ、燃料電池設備もニで同じロ(イ)の例によるとされています。
つまり自家発電設備蓄電池設備と燃料電池設備は、どれを選んでも求められる時間は変わりません。
切り替えのほうは向きが二つあり、停電したときに常用電源から非常電源へ移る自動切替はロ(ロ)が求め、復旧したときに非常電源から常用電源へ戻る自動切替はハ(ロ)が直交変換装置を有しない蓄電池設備について求めています。
点検では発電機を実際に回して切り替わりを見ますので、立ち会う日は建物の照明や機器が一瞬止まることを従業員に知らせておくと現場が混乱しません。

つまり電源の種類が変わっても、もつ時間は同じなのですね。

そのとおりです。
違いが出るのは置き場所と切替の向きのほうです。

配線の基準が二か所に分かれているのはなぜか

壁の中に埋め込まれた電線と天井の下で金属管に通された電線を並べた図
配線の話は一か所にまとまっていません。
電源から設備までの配線と、操作回路の配線が別の号に置かれています。
消防法施行規則第12条第1項第四号ホ ホ 配線は、電気工作物に係る法令の規定によるほか、他の回路による障害を受けることのないような措置を講じるとともに、次の(イ)から(ハ)までに定めるところによること。 (イ)六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線を使用すること。 (ロ)電線は、耐火構造とした主要構造部に埋設することその他これと同等以上の耐熱効果のある方法により保護すること。ただし、MIケーブル又は消防庁長官が定める基準に適合する電線を使用する場合は、この限りでない。 (ハ)開閉器、過電流保護器その他の配線機器は、耐熱効果のある方法で保護すること。
消防法施行規則第12条第1項第五号 五 操作回路又は第三号ロの灯火の回路の配線は、電気工作物に係る法令の規定によるほか、次のイ及びロに定めるところによること。 イ 六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線を使用すること。 ロ 金属管工事、可とう電線管工事、金属ダクト工事又はケーブル工事(不燃性のダクトに布設するものに限る。)により設けること。ただし、消防庁長官が定める基準に適合する電線を使用する場合は、この限りでない。
電線の種類は同じで守り方だけが違います
どちらも六百ボルト二種ビニル絶縁電線か、それと同等以上の耐熱性を持つ電線を使うところまでは共通です。
分かれるのはその先で、非常電源の配線は主要構造部への埋設などで保護することを求め、操作回路の配線は金属管工事などの工事方法を指定しています。
ただし書きの逃げ道も同じではなく、非常電源の側だけがMIケーブルを名指しで挙げており、操作回路の側は消防庁長官が定める基準に適合する電線とだけ書いています。
図面や施工写真を見るときは、電線の型式だけでなく、どこを通っているか、どんな管に入っているかまで合わせて見ておくと、あとから工事のやり直しになりません。

同じ電線を使っていれば、どこを通しても同じだと思っていました。

そこがいちばん食い違いやすいところです。
電線の型式と経路は必ず二つそろえて確かめてください。

明日からなにを確かめればよいのか

点検表を持つ人と無地の表示板が付いた盤と壁に取り付けられた箱が並んでいる図
条文には防火管理者でも目で見て確かめられる項目がいくつも並んでいます。
機器の中身ではなく、置き方と表示に関するものです。
消防法施行規則第12条第1項第四号イ(抜粋) (イ)点検に便利で、かつ、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けること。 (ロ)他の電気回路の開閉器又は遮断器によつて遮断されないこと。 (ハ)開閉器には屋内消火栓設備用である旨を表示すること。 (ヘ)キュービクル式非常電源専用受電設備は、当該受電設備の前面に一メートル以上の幅の空地を有し、かつ、(略)から一メートル以上離れているものであること。 (ト)非常電源専用受電設備(キュービクル式のものを除く。)は、操作面の前面に一メートル(操作面が相互に面する場合にあつては、一・二メートル)以上の幅の空地を有すること。
見るのは表示と空地と点検のしやすさです
まず開閉器の表示で、規定の例によることとされているので、スプリンクラー設備の非常電源であれば当該設備用である旨が読み取れる表示になっているかを見ます。
次に受電設備の前面の空地で、キュービクル式なら1メートル以上、キュービクル式でないものは操作面の前面に1メートル、操作面が相互に面する場合は1.2メートル以上とされています。
そして他の電気回路の開閉器によって遮断されない配線になっているかは図面と現物を突き合わせないと分からないので、点検の立会いの場で業者に説明してもらうのが確実です。
表示が薄れていたり、空地に台車や資材が置かれていたりするのは建物側でその日のうちに直せることなので、まずそこから片付けてください。

盤の前に脚立を置いていたので、明日どかしておきます。

それだけで指摘が一つ減ります。
ついでに開閉器の表示が読めるかも見ておいてください。

よくある質問

Q規定の例によりと規定に準じては違うものなのですか?
A規則第14条第1項は第六号の二で規定の例により、第九号で規定に準じてと書き分けています。書き分けの理由までは条文に書かれていませんので、個別の適用は所轄消防署にご確認ください。
Q非常電源専用受電設備でよい建物もあるのですか?
A第12条第1項第四号は原則として四つの方式を挙げており、括弧で外されるのは特定防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のものだけです。小規模特定用途複合防火対象物はその括弧から除かれています。
Q蓄電池設備にも三十分間の容量が要るのですか?
A同号ハがロ(イ)の規定の例によると定めているので、蓄電池設備にも同じ容量が求められます。燃料電池設備についても同号ニが同じくロ(イ)の例によるとしています。
QMIケーブルを使えば管に入れなくてもよいのですか?
AMIケーブルが名指しで挙げられているのは第四号ホ(ロ)のただし書きで、操作回路を定めた第五号ロのただし書きには書かれていません。どちらの号の話なのかを分けて読む必要があります。

まとめ

スプリンクラー設備の非常電源と操作回路の配線は規則第14条第1項に一行ずつ置かれています
中身は屋内消火栓設備の第12条第1項第四号と第五号を読み替えて適用します。
非常電源は原則として四つの方式から選ぶことになっています
特定防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のものは受電設備が外されます。
もたせる時間は三十分間以上でどの方式を選んでも変わりません
配線は電線の種類が共通で、守り方だけが号ごとに違います。
防火管理者がすぐ確かめられるのは開閉器の表示と盤の前の空地です。

まずは開閉器の表示と盤の前を見に行きます。

その二つが分かれば非常電源の話は業者と対等に進められます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第14条第1項第六号の二・第九号
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第四号・第五号
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の2の5第2項第四号
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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