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対象火気設備の離隔距離はどうやって計算で決まるのか|メーカーの温度試験と告示の基準を解説

対象火気設備の距離はどうやって計算で決まるのかを示すアイキャッチ

業務用の厨房設備やボイラーを壁ぎわに寄せて据え付けるとき、離隔距離の数字がどこから来るのか迷ったことはありませんか。
消防法施行令の委任を受けた総務省令には、別表に載っていない機種の距離を消防庁長官が定める方法で計算してよいという規定があります。
その計算の中身を定めているのが平成14年消防庁告示第1号です。
この記事では告示が定める温度試験の考え方と、現場で確認すべき手順を解説します。

厨房のボイラーを壁いっぱいまで寄せて据えてしまいました。

対象火気設備等は建築物等や可燃物との間に火災予防上安全な距離を保つ位置に設けることになっています。
別表に載っていない機種は数字の出どころが変わります。

その数字はどうやって決まるのですか。

消防庁長官が定める方法=告示の温度試験で個別に算定します。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 対象火気設備等は建築物等や可燃物との間に火災予防上安全な距離を保つ位置に設けます。(消防法施行令第5条第1項第1号)
  • 別表に無い機種の距離は消防庁長官が定める方法によります。(委任省令第5条第1項第3号)
  • その方法を定めるのが平成14年消防庁告示第1号で、通常燃焼時と異常燃焼時の両方で距離を確認します。
  • 許容最高温度は気体・液体燃料が135度、電気が150度です。(告示第2、七)
  • 固体燃料を使う設備には5回のサイクル試験による特例が、安全性が高い構造には距離を零にできる特例もあります。(告示第5・第6)

対象火気設備等の離隔距離の決め方を通常燃焼の試験から試験結果の保管まで示した図解

この告示はどんなときに使うのか

壁に取り付けられたガス給湯器の横に技術資料が積まれた図
別表に載っている機種と入力なら、そこに書かれた数字で距離が決まります。
問題は、別表に無い機種や入力が出てきたときです。
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令第5条
令第5条第1項第1号の総務省令で定める火災予防上安全な距離は、次の各号に掲げる距離のうち、消防長又は消防署長が認める距離以上の距離とする。一 別表第一に掲げる離隔距離 二 別表第二に掲げるもの(略) 三 対象火気設備等の種類ごとに、それぞれ消防庁長官が定めるところにより得られる距離
第三号の「消防庁長官が定めるところにより得られる距離」が、この告示にあたります。
告示の正式名称は対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準(平成14年消防庁告示第1号)で、同じ省令の第5条と第20条の規定に基づいて定められています。
別表に載っていない機種や入力のとき、あるいはメーカーが独自に温度試験を行って距離を短縮したいときに、この告示の計算方法が使われます。
つまり告示は数字そのものではなく、数字を導き出すための試験の手順を定めた文書です。
まず自分の設備が別表の行に当てはまるかどうかを確認し、当てはまらなければこの告示の出番だと考えてください。

別表に無い機種は数字が無いということですか。

数字が無いのではなく試験で決めるという扱いです。
その試験の中身を次に見ていきましょう。

距離を決める物差しは何を指すのか

発熱する機器の側面に温度計を当て自動遮断弁を並べた図
試験は温度を測るだけではありません。
まずは告示が定める言葉の意味を押さえておきます。
対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準 第2(用語の定義)
七 許容最高温度 通常燃焼の場合又は異常燃焼で安全装置を有しない場合にあっては百度を、異常燃焼で安全装置を有する場合にあっては次の表に定める温度をいう。気体燃料を使用するもの又は液体燃料を使用するものは百三十五度、電気を熱源とするものは百五十度とする。
二 安全装置 (略)対象火気設備、器具等が故障等により異常となった際に、自動的に燃焼部への燃料又は発熱部への電力の供給を遮断し、かつ、当該供給を自動的に再開しない装置又はシステムをいう。
許容最高温度は近くの可燃物の表面が超えてはいけない温度の上限です。
安全装置が無い場合、または通常燃焼の場合は100度、安全装置付きの異常燃焼では気体・液体燃料が135度、電気が150度まで許容されます。
ここでいう安全装置は、異常時に燃料や電力の供給を止めるだけでなく、その供給を自動的に再開しない装置に限られます。
試験のときに部屋を想定して暖めておく基準周囲温度は35度と定められており、これより低い部屋で試験するときは差を足して行います。
用語の定義を取り違えると距離の計算全体がずれるので、まずこの物差しを正確に押さえてください。

安全装置があれば数字が甘くなるということですか。

甘くなるのではなく安全装置が働く前提で温度の上限が変わる仕組みです。
装置が自動で復帰してしまう機種は対象になりません。

離隔距離はどうやって計算されるのか

通常の炎と大きな炎の機器を並べ壁までの距離線を示した図
ここからが計算の本体です。
告示は二つの燃焼状態を試験し、長い方を採用すると定めています。
対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準 第3(離隔距離の決定)
対象火気設備、器具等の離隔距離は、次の各号に定める距離のうち、いずれか長い距離とする。一 通常燃焼時において、近接する可燃物の表面の温度上昇が定常状態に達したときに、当該可燃物の表面温度が許容最高温度を超えない距離又は当該可燃物に引火しない距離のうちいずれか長い距離 二 異常燃焼時において、対象火気設備、器具等の安全装置が作動するまで燃焼が継続したときに、近接する可燃物の表面温度が許容最高温度を超えない距離又は当該可燃物に引火しない距離のうちいずれか長い距離
通常燃焼と異常燃焼の両方を試験し、長い方の距離を採用します。
通常燃焼時は温度上昇が30分で0.5度以下になる定常状態まで機器を運転し、可燃物の表面温度を測ります。
異常燃焼時は安全装置が作動するまで燃焼を続けさせ、同じように表面温度を確認します。
安全装置を持たない機種は定常状態の判定だけで距離を決めます。
複数の温度制御装置や安全装置がある機種は、一つずつ無効または有効にして試験を繰り返し、最も長い距離を採用します。

通常時だけ測れば足りると思っていました。

異常時の想定も欠かせません。
二つの結果のうち長いほうが正式な距離になります。

固体燃料や特別な構造はどう扱われるのか

薪ストーブと薪の山にサイクルを示す矢印を添えた図
燃料や構造によっては、特別な扱いが用意されています。
ここを知らずに距離を詰めると、試験の前提から外れてしまいます。
対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準 第5(固体燃料を使用する対象火気設備、器具等の離隔距離の特例)
固体燃料を使用する対象火気設備、器具等の離隔距離にあっては、(略)当該対象火気設備、器具等に、最大投入量まで固体燃料を投入して、当該燃料の重量が、最大投入量の重量に二分の一を乗じて得た重量まで減少するまで燃焼させることを一サイクルとして五回繰り返す試験を行い、当該試験において、四以上のサイクルで(略)いずれか長い距離とすることができる。
固体燃料の設備は5回のサイクル試験で距離を決めることができます。
最大投入量まで燃料を入れ、重量が2分の1まで減るまで燃やすことを1サイクルとし、これを5回繰り返します。
このうち4サイクル以上で基準を満たせば、その距離を採用できます。
試験前の予熱は3時間が限度で、サイクルの間は燃焼状態を保ち続けなければなりません。
一方、通常燃焼時や連続運転時の表面温度が許容最高温度を超えない構造であれば、告示第6により距離をにできる特例もあります。

ストーブは薪を足すたびに燃え方が変わりますよね。

だからこそ5回のサイクルで確かめる決まりになっています。
一度の燃焼だけでは判断できません。

明日から何を確認すればよいのか

銘板を確認する担当者とチェックリストの図
最後に、現場で確認する順番を整理します。
試験は自分で行うものではなく、メーカーの資料を確かめる作業です。
対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準 第4(運用上の注意)
第三に定める離隔距離の決定に当たっての運用上の注意は、次の各号に定めるものとする。一 基準周囲温度は、三十五度とする。二 試験周囲温度が基準周囲温度未満の場合においては、許容最高温度と基準周囲温度の差を試験周囲温度に加えた温度により、試験を行うものとする。
まず機器の銘板と仕様書で燃料の種類と入力を確認します。
そのうえでメーカーが告示に基づく温度試験を行っているかをカタログや技術資料で確かめてください。
試験データが無い機種は、素直に別表の数値によるか、所轄消防署に相談する必要があります。
現場で温度計を当てて即断してよい話ではなく、試験の記録が前提になる点を忘れないでください。
模様替えで機器の周りが変わったときも、このデータを取り直す機会だと考えてください。

現場で温度を測れば十分だと思っていました。

一度の実測では足りません。
告示の手順どおりの試験データが根拠になります。

よくある質問

Q別表に載っている機種でもこの告示を使えますか?
A別表に数値がある機種は、まず別表の距離によります。この告示の計算方法を使うのは、別表に無い機種や入力のとき、またはメーカーが独自に距離を短縮したいときです。
Q通常燃焼と異常燃焼、どちらか一方だけ満たせばよいのですか?
Aいいえ。告示は両方を試験し、いずれか長い距離を採用すると定めています。片方だけで判断することはできません。
Q安全装置さえ付けておけば距離を短くできますか?
A安全装置は異常時に燃料や電力を自動的に遮断し再開しないものに限られます。条件を満たさない装置では告示の緩和は使えません。
Q固体燃料の設備にも通常の試験方法が使えますか?
A固体燃料の設備には5回のサイクル試験による特例が別に用意されています。燃料の燃え方が一定しないための特例です。

まとめ

対象火気設備等は建築物等や可燃物との間に火災予防上安全な距離を保つ位置に設けます
別表に無い機種の距離は消防庁長官が定める方法によります
その方法を定めるのが平成14年消防庁告示第1号です
許容最高温度は気体・液体燃料が135度、電気が150度です
通常燃焼と異常燃焼の両方を試験し、いずれか長い距離を採用します
固体燃料の設備には5回のサイクル試験による特例があります
判断に迷ったら機器の銘板と試験データを控えて所轄消防署に確認します

今日のうちに銘板を確認します!

距離は温度試験のデータをもとに個別に決まります
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準(平成14年3月6日消防庁告示第1号、最終改正:令和5年5月31日消防庁告示第8号)
  • 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第5条・第20条
  • 消防法施行令第5条第1項第1号

※本記事は公表されている法令および消防庁告示に基づく一般的な解説です。個別の設備の距離短縮の可否は所轄消防署の判断によります。設置や改修を計画する際は、必ず所轄消防署または専門業者にご確認ください。

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