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大容量泡放射システムの泡が告示の基準に適合しないと不合格か|濃度を高める場合と命令を出す相手

大容量泡放射システムの泡が告示の基準に適合しない場合の扱いを解説するアイキャッチ画像

大容量泡放射システムは、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの全面火災に備えて配備するものです。
泡放水砲と泡消火薬剤を組み合わせて放射し、その泡がタンクに届くかを検証します。
その検証で、泡の性状が告示の基準に届かなかった。
それでも回答は、ただちに不合格とはしませんでした

泡の性状が告示の基準に適合しませんでした。
不合格になるのでしょうか。

適合しない場合であっても、消火の機能を有効に発揮する性能を有することが確認できれば足りるとされました。

期限までに備え付けられなかった場合、命令は誰に出されるのでしょうか。

配備義務は個々の特定事業者に課せられています。
市町村長等が事業者に命じるもので、都道府県知事等が広域共同防災組織に命じることはできません。

この記事の結論
  • 泡の性状が告示の基準に適合しない場合であっても、消火の機能を有効に発揮する性能を有することが確認できれば足りるとされています
  • 最小放水量で消火上有効な泡を放出できないとの検証結果に至った場合は、基準放水能力以上の放水能力を有する泡放水砲を備え付ける必要があります
  • 泡放水砲およびポンプが増える場合は、政令第7条第3項により算定される人数の防災要員を置く必要があります
  • 1パーセント型泡消火薬剤の混合濃度を高めて使用することは、使用が予定されている濃度で性能が確認できれば差し支えありません
  • 大容量泡放射システムの配備義務は個々の特定事業者に課せられており、広域共同防災組織に課せられているものではありません

泡が告示の基準に適合しないと不合格か

泡放水砲から放射した泡がタンク内に到達するまでの評価の観点を示したイメージ
平成20年11月4日付けの消防特第181号は、大容量泡放射システムに関する執務資料です。
配備にあたっては、泡放水砲と泡消火薬剤の組み合わせで実際に放射し、発泡倍率と25パーセント還元時間を確認します。この2つをまとめて泡性状といいます。
その泡性状が告示の基準に届かなかった場合が問われました。
問1 ……大容量泡放水砲と大容量泡放水砲用泡消火薬剤の組合せで泡放射した場合の泡性状が、告示の基準に適合しない場合、ただちに不合格とすべきか
答1 ……大容量泡放水砲は、省令第19条の2第1項第1号において、「消火の機能を有効に発揮する泡をタンク内に到達させる能力を有するものであること」とされており、……泡性状は、当該泡が告示の基準に適合しない場合であっても、「消火の機能を有効に発揮する」性能を有するものであることが確認できれば足りる
見るのは最終的な機能です
条文が求めているのは消火の機能を有効に発揮することです。泡性状の数値そのものではありません。
薬剤の側は、告示に定められた基準に適合するものを用いることとされており、それは消防法に基づく検定制度で確認されています。つまり薬剤単体の品質はすでに担保されています。
問われているのは、その薬剤と放水砲を組み合わせて実際に飛ばしたときに、消火できる泡がタンクに届くかどうかです。
確認方法の一例も示されました。同様の性状を有する泡を用いて告示第3条の試験方法により、有効な消火性能を有することを確認する方法などが考えられるとされています。

機能を確認できれば足りる場合があるのですね。

性能で判断されます。
検証の結果を、資料として残しておいてください。

最小放水量で足りないと分かったらどうするか

放水能力が足りない場合により大きい泡放水砲と防災要員が必要になることを示したイメージ
大容量泡放水砲の基準放水能力は、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの直径に応じて定められています。
ところが検証してみると、政令に規定されている最小放水量では消火上有効な泡を放出できないという結果が出ることがあります。
問2(1) ……政令第13条第1項に規定されている最小放水量で放射した場合には消火上有効な性能を有する泡を放出できないとの検証結果に至つた場合、法令上必要とされる基準放水能力以上の放水能力を有する泡放水砲を備え付ける必要があると解してよいか。
(2) (1)により、泡放水砲及びポンプの数が増加することとなる場合は、当該泡放水砲及びポンプに対する防災要員を置く必要があると解してよいか。
答2(1) お見込みのとおり
(2) 当該タンクに対して、法令上必要とされる基準放水能力以上の放水能力を確保するために必要な大容量泡放水砲用防災資機材等の数量に基づき、政令第7条第3項の規定により算定される人数の防災要員を置く必要がある
設備が増えれば人も増えます
検証の結果が悪ければ、より能力の高い泡放水砲を備え付けることになります。
見落としやすいのは(2)です。泡放水砲とポンプが増えれば、それに応じた防災要員も置かなければなりません。人数は政令第7条第3項により算定されます。
これまでの記事で見てきた、置いた資機材に体制を合わせるという考え方がここでも通っています。
なお(3)として、備え付ける必要が生じた泡放水砲、ポンプおよび防災要員が確保されない場合は法第21条第1項第3号に基づく措置命令を行うことについても問われ、(1)および(2)により承知されたいとされました。

能力の高い設備が要ると、人も増えるのですね。

体制に跳ね返ります。
設備の選定は、人員とあわせて検討してください。

1パーセント型の薬剤を濃く使ってよいか

混合濃度を高めると必要な泡消火薬剤の備え付け量も増えることを示したイメージ
泡消火薬剤には、水に対して何パーセント混ぜるかという設計値があります。1パーセント型はその名のとおり1パーセントで使うものです。
泡の有効性を上げるために、これを濃くして使えないかという問いでした。
問3 泡の有効性を向上させるため、大容量泡放水砲用1パーセント型泡消火薬剤(1パーセント濃度で告示に基づく試験を行つた場合に、大容量泡放水砲に適合し、消火の機能を有効に発揮するとともに、耐油汚染性、耐火性、耐密封性等の性能を有していることが確認されているもの)について、その混合濃度を1パーセントよりも高めて使用することは差し支えないか
答3 当該泡消火薬剤の泡水溶液を用いて、使用が予定されている濃度で告示に基づく試験を行つた場合の性能が確認できれば、当該濃度により使用して差し支えない
なお、混合濃度を高めて使用することとした場合であつても、政令第14条第5項により当該濃度で120分間継続して泡水溶液を放水するものとした場合に必要な量の大容量泡放水砲用泡消火薬剤を備え付ける必要があることを念のため申し添える。
備蓄量も増えます
濃くして使うこと自体は認められます。ただし条件があり、実際に使う濃度で告示に基づく試験を行い、性能が確認できることが必要です。1パーセントで確認したから濃くしても大丈夫、とはなりません。
そして念のためとして添えられた一文が実務では重要です。政令第14条第5項は、120分間継続して放水できる量の薬剤を備え付けることを求めています。
濃度を上げれば、同じ時間放水するのに要る薬剤の量も増えます。1パーセントを2パーセントにすれば、単純には備蓄量が倍になります。
性能を上げる選択が、そのまま保管設備の規模に跳ね返るということです。

濃くして使うこともできるのですね。

備蓄量も増えます。
使う濃度を、備蓄の計画に反映してください。

道府県ごとに検証結果が変わることはあるか

同一の試験結果データを複数の道府県防災本部が共有して検証する構成のイメージ
広域共同防災組織は複数の道府県にまたがることがあります。泡の有効性の確認・検証は、各石油コンビナート等防災本部が行います。
同じデータを見ているのに、判断が分かれることはないのか。
問4 各石油コンビナート等防災本部が行う泡の有効性の確認・検証の結果について、同一の試験結果データを用いているにもかかわらず、各道府県防災本部で行う検証結果が異なるものとなることがあり得るのか。そのような場合、タンクへの放射条件の決定に関して、各道府県防災本部で異なつた指導を行うことが考えられるが差し支えないか。
答4 ……同一の放射条件で放射した場合の泡の性状は、放射時の気候条件等の違いを無視すれば基本的に同じであり、泡の有効性の確認・検証に大きな差異が生ずる可能性は低いものと考えられるが、特に泡放射試験の結果が告示基準を下回る場合の取扱いについては、一の広域共同防災組織に関係する道府県防災本部が相互に情報交換を行い、又は消防庁に相談する等、確認・検証に当たつての判断根拠が合理的なものとなるよう配慮いただきたい
相互の情報交換を求めています
まず、大きな差異が生ずる可能性は低いという見通しが示されています。同じ放射条件なら泡の性状は基本的に同じだからです。
そのうえで、告示基準を下回る場合の取扱いには注意が向けられました。ここは判断が分かれやすい場面です。
求められたのは、関係する道府県防災本部が相互に情報交換を行うこと、または消防庁に相談することです。目的は、判断根拠が合理的なものとなるようにすることとされています。
事業者の側から見れば、またがる道府県のどこか1つに相談して終わりにせず、関係する本部が同じ材料を持っているかを確かめておく必要があります。

判断が分かれないよう、情報交換が求められているのですね。

同じ条件なら結果も近くなります。
検証の条件を、記録に残しておきましょう。

期限までに備え付けられない場合は誰に命じるか

配備義務が個々の特定事業者に課せられ広域共同防災組織には命じられないことを示したイメージ
大容量泡放射システムには配備期限が定められていました。広域共同防災組織に備え付ける方法も認められています。
では期限までに備え付けられなかったとき、行政処分の相手は誰になるのか。
問5 大容量泡放射システムの配備期限(平成20年11月30日)までに、広域共同防災組織に大容量泡放射システムが備え付けられない場合の行政処分は、市町村長等、都道府県知事又は主務大臣のいずれが行うこととなるのか
答5 ……大容量泡放射システムの配備義務は、個々の特定事業者に課せられているものであり、広域共同防災組織に課せられているものではない
したがつて、……市町村長等が当該システムを配備しなければならない特定事業者に対して大容量泡放射システムを備え付けるよう命ずることができるものであり、都道府県知事等が広域共同防災組織に対して大容量泡放射システムを備え付けるよう命ずることはできない
相手は個々の事業者です
広域共同防災組織に備え付けたことで義務を果たしたとみなされる仕組みはあります。ただしそれは、備え付けを要しないこととされているだけです。
義務そのものは、はじめから個々の特定事業者に課せられています。組織に課せられているわけではありません。
したがって命令の相手も個々の事業者になり、命じるのは市町村長等です。都道府県知事等が組織に対して命ずることはできないと明言されています。
共同で配備する仕組みに参加していても、責任が組織に移るわけではないという整理です。

命令の相手は、個々の事業者なのですね。

義務が課されている先だからです。
共同で備える場合も、責任の所在を確かめてください。

よくある質問

Q泡性状が基準を下回っても必ず認められるのですか?
A回答は、告示の基準に適合しない場合であっても消火の機能を有効に発揮する性能を有するものであることが確認できれば足りるとしています。確認そのものは必要です。方法の一例として、同様の性状を有する泡を用いて告示第3条に示す試験方法により有効な消火性能を確認する方法などが挙げられています。
Q泡放水砲を増やすと防災要員も増えますか?
A回答は、基準放水能力以上の放水能力を確保するために必要な大容量泡放水砲用防災資機材等の数量に基づき、政令第7条第3項の規定により算定される人数の防災要員を置く必要があるとしています。
Q濃度を上げると備蓄量はどうなりますか?
A回答は、混合濃度を高めて使用することとした場合であっても、政令第14条第5項により当該濃度で120分間継続して泡水溶液を放水するものとした場合に必要な量を備え付ける必要があるとしています。濃度を上げれば必要量も増えます。
Q共同で配備すれば責任も共同になりますか?
A回答は、配備義務は個々の特定事業者に課せられているものであり広域共同防災組織に課せられているものではないとしています。備え付けた組織があることで自らの備え付けを要しないこととされる仕組みですが、義務の名宛人は変わりません。

まとめ

  • 泡の性状が告示の基準に適合しない場合であっても、消火の機能を有効に発揮する性能が確認できれば足りるとされています
  • 確認方法の一例として、同様の性状を有する泡を用いて告示第3条に示す試験方法によることが挙げられました
  • 最小放水量で消火上有効な泡を放出できない場合は、基準放水能力以上の泡放水砲を備え付ける必要があります
  • 泡放水砲およびポンプが増える場合は、政令第7条第3項により算定される防災要員を置く必要があります
  • 1パーセント型薬剤の濃度を高めることは、使用が予定されている濃度で性能が確認できれば差し支えありません
  • ただし当該濃度で120分間継続して放水できる量の薬剤を備え付ける必要があります
  • 配備義務は個々の特定事業者に課せられており、都道府県知事等が広域共同防災組織に命ずることはできません

数値の基準と、最終的に果たすべき機能を分けて見ているのですね。
すっきりしました。

性能を上げる選択が設備や人員に跳ね返ることも多いです。
㈱防災屋でも計画の組み立てからご相談を承っています。

参考・出典

  • 大容量泡放射システムに関する執務資料の送付について(平成20年11月4日 消防特第181号 消防庁特殊災害室長から関係道府県消防防災主管部長・関係政令指定都市消防長あて)
  • 広域共同防災規程作成指針及び広域共同防災規程作成指針の概説等について(平成19年1月26日 消防特第10号)
  • 大容量泡放水砲等泡消火薬剤の基準(平成18年消防庁告示第2号)
  • 石油コンビナート等災害防止法第16条第4項・第19条の2・第21条第1項第3号
  • 石油コンビナート等災害防止法施行令第7条第3項・第13条第1項・第14条第5項
  • 石油コンビナート等における特定防災施設等及び防災組織等に関する省令第19条の2・第19条の4
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の事業所についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

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